君に恨まれても

 

 

 赤い大地、赤い海、瓦礫の山に埋もれた大地、もうだれもいないような世界に二人の人がいた。

「アスカ!!アスカ!!死んじゃ駄目だよ!」

「ごめんね・・・・シンジ・・あたしもう駄目みたい。」

一人は学生服を着ている少年、もう一人はボロボロの赤いプラグスースを着て全身包帯だらけの少女。

「そんなことないよ!」

「シンジ・・・・あたしってバカだよね。自分にいはEVAしかないと勝手に思い込んで勝手に壊れて、シンジに一杯迷惑かけちゃったよね。」

少女が少年の頬に手を当て、少年はその手を涙を流し力強く握り締める。

「シンジ・・・・・ごめんね・・・・・・こんな私を好きになってくれてありがとう・・・・・・シンジ、愛してる・・・・・・」

「アスカ・・・・・僕も愛してるよ・・・・。」

少女は少年の言葉を聞くとやさしく微笑み、そして目を静かに閉じる。

「ア・・・・ス・・・カ・・・・・・・アスカーーーー!!!!!!!!」

少女の体を抱きしめ嘆き悲しむ少年、。

どのくらいだったのか、少年は少女の体を抱き上げ赤い海にあるいていく。

そして、ゆっくりと少女の体を赤い海に静め、少年は空を見上げる。

「こんな結末があっていいはずないじゃないか・・・・そうだろ、カオルくん!綾波!!!!」

少年は空にむかって叫び、そして何か決意した目をし、赤い海に沈み安らかな眠りについている少女を見つめる。

 

「たとえ・・・・・・君に恨まれたってかまわない・・・・・たとえどんな代償をはらったってかまわない・・・

君を死なせやしない、この命を捨てたって絶対に!!!」

 

その瞬間、少年の体が眩い光に包まる。

(全てをやり直すために、父に、ゼーレに対抗するために、アスカを死なせないために!!

僕は過去に戻る!)

光が収まりシンジがいた場所には青く光る球体が浮かんでいた。そしてそれは天空へ

舞い上がり空の雲にさしかかると空間に消えるように消える。

 それからしばらくしてか赤い海から赤く光る球体が青い光の玉を追いかけるように空へと消えていった。

 

 

 

2015年、第三新東京都市

ネルフ作戦本部に国連軍のえらいさん達が画面をにらみつけ、軍隊が巨大な化け物に総力戦を持ちかけていた。

「目標、以前速度変わらず侵攻中!」

「目標を映像で確認、モニターに出します。」

オペレーターの日向マコトと青葉シゲルが報告する。

「なぜだ!なぜ倒せん!!」

「戦車隊は何をしている!!もっと弾幕をはらんか!!」

「航空部隊は!!・・・・」

画面に向かい叫び声のような命令を出している将校たちの少し離れた後ろのほうで

静かに画面に写っている化け物を見ている二人の男。

 

ネルフ総司令、碇ゲンドウ、副指令、冬月コウゾウの二人である。

「15年ぶりだな・・・・・」

「ああ・・間違いない使徒だ。」

慌てることなく画面を冷ややかに見つめるゲンドウ。

 

 

大型輸送機

第三新東京都市から少し離れた上空を飛ぶ大型輸送機の中、一人の白髪の髪の毛の

少年が静かに目を開ける。その目は金色に輝いていた。

「お起きになりましたか、シンジ様」

少年の前にもう年齢は60〜70代の老人が少年に話し掛ける。

「ああ、ありがとう爺・・・・・それより状況はどうなってる。」

「シンジ様がおっしゃったとおり国連軍の攻撃は使徒には無力でした。

もうすぐN2爆弾が投下されるでしょうが、たいした効果は見込めないでしょう。」

「そうか・・・・・・もうすぐだね。」

「ええ・・・・もうすぐです。もうすぐ始まります・・・・・シンジ様の始まりの時が。」

「例のものの準備はどうなってる。」

「あと、5時間ほどで完了いたします。」

「そうか・・・・・・・・」

少年と老人との会話をやめ窓から見える第三新東京都市を見つめる。

(帰ってきた・・・・・・10年も掛かったけどやっと・・・・・・・

父さん・・ゼーレ!あなた達の思い通りにはさせない!!)

 

 

ネルフ作戦本部

「やったぞ!!」

「さすがの化け物もこれにはひとたまりもあるまい!」

「碇くん、どうやら君たちの出番はなかったようだな。」

国連の将校たちが意気揚揚と画面を見ているのにたいして後ろの二人は冷ややかな目でそれを見ている。

「電磁波の影響がなくなりました。モニター入ります。」

オペレーターのマヤが画面を切り替え爆発のあった場所を映し出す。

「バ!バカな!!!!」

「あれを持ちこたえるだと・・・・・」

「わ・・我々の切り札が・・・・・・・・・・」

将校たちが呆然としているところに後ろから冷たい声が響く。

「どうやら我々の出番がきたようですな。」

「碇くん、君なら勝てるというのかね?」

「そのためのネルフです。」

「わかった君に指揮権を一任しよう。」

将校たちは自分たちの切り札が敵に効かなかったのが堪えたのか何の抵抗もせずにその場から消える。

「碇、どうする。」

「初号機と弐号機を出す。」

「レイは初号機か、零号機ではないのか?」

「零号機は凍結中だ。それにまだ実践には耐えられん。」

「(それにシンジくんがいないしな・・・・・・・)」

冬月は10年前に行方不明になった子の名を心の中で呟く。

EVAゲージ

「やーーーーっと私の出番が来たのね!」

「作戦は・・・・・・・・・」

すでにエントリープラグに入って準備をすませているチルドレン。

「とりあえず使徒は現在、自己修復中よ。この隙を利用してレイは遠距離から使徒を攻撃、

アスカは使徒がひるんだすきにソニックレイブで使徒を攻撃して。」

 

作戦本部長である葛城ミサトが作戦を立てると周りの人たちは、その準備に取り掛かっていく。

「ねぇ、ミサトーー、加持さんは〜?」

「え、加持?ああ〜あのバカならいないわよ。」

「ええ!どうして?」

「何か急用ができたとか言って行き先もいわずにどっかに行ったわよ。」

ミサとはうんざりといった顔。

アスカはその返事に

「ええ〜!!せっかく私の晴れ舞台を見せられると思ったのにぃ〜。」

っと残念な様子。

「とにかくあのバカはほっといてあんた達は作戦に集中して。」

「「了解」」

「EVA発信準備整いました。」

「EVA両機射出!!」

EVAは使徒が自己修復を行っている場所から600Mほど離れた場所に射出され2機は作戦どおりの行動に移る。

「使徒、ターゲットロック・・・・・・・・(カチ)」

 

ドララララ!!

 

初号機のパレットガンから劣化ウラン弾が放たれる。

『いまよ!アスカ!!』

「いっけぇぇぇーーーーー!!!!!」

アスカの刈る弐号機が劣化ウラン弾の煙に包まれた使徒に向かって走り出す。

「もらったぁぁ〜!!!!!!!!」

弐号機は空高く舞い上がり一気にソニックレイブを振りかざすが・・・・・・・・

「え!!」

煙幕から現れたのはウラン弾で何のダメージを受けていなかった使徒が両腕を片方は弐号機にもう片方は初号機に向けていた姿であった。

『まずい!!アスカ!レイ!!!!』

発令所からミサトの叫び声が響く。

ドゴーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!

「きゃぁぁーーーーーーーー」

「うううっっく・・・・・・・・」

EVA両機は全身爆発の炎に巻かれ大破する。

使徒は自己修復を中断し、2機のEVAにとどめを指すべく再び両腕をEVAに向ける。

「はやくEVAを撤収させて!」

「無理よ!!2機ともすでに動ける状態じゃないわ!!」

「そんな・・・!!」

ミサトは顔を青くし画面に映っている2機のEVAを見つめる。

「まずいぞ・・・・・碇・・・・」

「ああ・・・・・・・」

「シナリオでは、シンジ君を乗せるはずだった・・・・・・・・・・・」

「行方が知れない役立たずな奴を当てにしてもしかたあるまい・・・・・・・・」

「(碇・・・・・)」

 

 

 

 

“コツコツコツコツ”

薄暗い施設のなかで三人は歩いていた。

「ネルフはシンジさまのおっしゃっていた通り敗北しましたな。」

「いくらアスカが天才でもまだATフィールドをろくに張ることも

出来ないのに勝てるわけないよ。綾波は論外だしね。」

「厳しいお言葉だねシンジくん。」

「ところで、準備のほうは出来ておりますが・・・・・・」

「そうかい、それじゃぁいくとするよ。後のことはよろしく頼むよ。」

「シンジくん、アスカには会わないのかい?」

「加持さん、今のアスカにはEVAが全てです。今の僕は彼女にたいして憎悪の対象にしかならないでしょう・・・・・・」

シンジは寂しげな表情をし、目の前にある漆黒の機体に目を向ける。

薄暗い廊下を少年は一人歩き出す。自分以外は全て道具と見ている男に挑戦状を叩きつけるために・・・・・・・。

「シンジくん、どこまでも悲しい男だな・・・・・・」

「加持中佐、シンジ様のためにもセカンドをアスカさんを頼みます。」

「いわれなくてもそのつもりさ、アスカは俺にとって妹みたいなものだからな。」

二人がそういい終わると目の前の漆黒の機体が静かな駆動音を上げ飛びだっていく。

 

 

 

発令所は絶望感に包まれていた時

「使徒後方より高速で接近する物体を確認!!」

「なんですって!!!」

「モニター出します!!」

ミサトとリツコそして発令所の全員が息をのんでモニターを見る。

「碇・・・・・」

「冬月、忘れたのか使徒には通常兵器は通用しないということを。」

発令所の上にいる二人の男は突然のイレギュラーに一瞬驚きの表情をし、モニターに映っている機体を見つめる。

 そこに映っているのは漆黒の姿をした全長約40Mほどの人型をし、

凄まじいいスピードで使徒に向かっている機体が映っていた。

 

 

「二人とも派手にやられたな・・・・・・・」

シンジは暗いコクピットに写っているモニターで赤いEVAを確認する。

「アスカ・・・・・・・・・」

2機のうち赤く塗装されているEVAを見つめてシンジは優しくみつめるが、EVAの状態を見、厳しい顔つきになる。

「アスカを傷つける奴は僕が許さない!!!!!」

「所属不明機!速度を上げました!!使徒との交戦空域に入ります!!」

「なんてスピードなの・・・・・・・・とても今の技術力でつくれる物じゃないわよ。」

リツコの機体のあまりにものスピードに信じられないといった顔をする。

発令所の皆もそのあまりにもの予想外の展開にモニターを見つめている。

「所属不明機、使徒との交戦に入ります!!」

さすがの使徒も漆黒の機体の存在にきずいたのか腕を上げ漆黒の機体に攻撃を加えるようとする・・・・・・・・しかし。

「なんなのあれ・・・・・・・」

「信じられない・・使徒の攻撃を空間を曲げて弾いたのね・・・・・・・」

発令所の皆もそのあまりにもの光景に見入ってしまっている。

「碇、なんだ・・・・あれは。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

話し掛けられた男も自分のシナリオとあまりにもことなった事態に言葉がでない。

「無駄だよ、そんな攻撃じゃ・・・・・・・」

シンジは使徒の凄まじい攻撃をものともせずそのまま使徒に向かって突撃する。

そしてついに使徒の20Mほど接近したところで突然直角に上空に舞い上がり

背中にしょっていた刃がついていない槍のような武器を取り出す。

「あまり時間をかけるわけにはいかないんだ、さっさと終わらせてもらうよ。」

取り出した槍のような獲物から赤く輝く刃が出る。

そして、一気に振りかぶり使徒のATフィールドをものともせず頭から股にかけて使徒のコアもろとも使徒を真っ二つに切り裂く。

発令所の人たちは、まさに信じられない光景を映し出しているモニターを見つめ静まり返っている。

「信じられない、N2爆弾ですら凌いだ使徒のATフィールドを・・・・・・・」

ミサトは目を見開き信じたくなかった、父の敵を討つためネルフに入りそして

使徒を倒す唯一の兵器EVAを指揮する。使徒はEVAしか倒せないそう信じ

ていたものが自分の目の前で、まさに圧倒的な強さで使徒を殲滅し、事実が覆されたのだ。

「・・・・・・・・・・・」

リツコは歯軋りをしながら画面を見つめる。科学者として絶対な自信を持っていた。

しかし、自分ではあのような機体を作るのは出来ない・・・・優秀な科学者だからこそ

わかる事実。自分のプライドが音を立てて崩れる音がリツコには聞こえる。

「碇・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「委員会が黙ってないぞ・・・・・」

冬月は画面を見つめたまま、そして自分以外何も信じようとしない小心な

男は先ほどから画面を見つめたまま沈黙している。しかし顔の前で握っている手は強く握り締められ血がにじんでいた。

「所属不明機の周辺の発生している空間に歪みが増大していきます!!!」

オペレータの日向が沈黙を破る。

「マヤ!!」

リツコはハッっとしマヤに情報収集を命じ自分も観測データをひとつも拾い落とすものかとコンソールを叩き始める。

 

“キィィーーーーーーーーーーーン”

 

甲高い音を上げながら漆黒の機体は眩い光に包まれる。

「くっ空間の歪みさらに上がります!!」

「そ、相転移・・・・・・」

リツコは画面に映っているデータを見つめ信じられないといった顔をする。

そして画面に映っている機体は光を増しそして消えた。

「私たちを・・・・いえEVAを守ったの。」

ネルフ初の対使徒戦においてあまりにも衝撃的な結果であった。

 

 

「なんなのよ・・・・・・・」

アスカは電源の切れた薄暗いエントリープラグの中で体を両手で抱きしめたまま震えていた。

 あの使徒に負け私たちに止めを刺そうとしたときアスカは覚悟を決め目を閉じた。

 しかし、使徒からの攻撃はこなかった。そうっと目を開けてみると使徒は別の方向に向き直って腕についている光の槍を構えている。

 アスカにはいったい何がどうなっているのかわからなかったが、何か胸を締め付けられるような感覚に陥っていた。

“ドクン・・・ドクン・・”

(な、何かが来る・・・・)

数秒後アスカが感じた通り凄まじいスピードであの機体が出てきた。

アスカはその機体をみた瞬間、胸が激しく脈つく、

“愛しい・・・・・・・”

使徒は漆黒の機体に対して光の矢を放つ。

(危ない!!避けて!!)

アスカは心の中で叫ぶが次の瞬間、光の矢は機体に到達する前に信じられないものを目にする。

使徒において通常兵器はやくには立たないのだアスカにはあの機体が自殺行為に等しいとしか思えなかった。

 しかし、機体は使徒の攻撃をものともせず、使徒に接近して赤い刃で真っ二つにしたのだ。

 そして、漆黒の機体は使徒の残骸に目もくれず弐号機をじっと見つめていた。

 アスカは怯えた、自分の中に存在する2つのものに。

 1つは自分の存在を脅かす存在を憎む心。そしてもう一つはあの機体を見た瞬間から感じている愛しい気持ちに。

 

 

 

「おつかれさまです。シンジ様。」

「そんなことないよ、まだ機体の性能の半分も出していないしね。それよりネルフのほうはどおなっている?」

「アスカなら心配ない、EVAは大破したがパイロット両名は無事だそうだ。

それよしシンジくん、体のほうは・・・・・」

「そうか・・・・・・・よかった。」

シンジは加持の最後の言葉は聞こえていなかったのだろう。

アスカが無事で安心したのか、ホッっとする。

「ところで今回の件で僕らの存在がやつらの目についたはずだけど大丈夫かい?」

「心配ありません、国連はおろかゼーレにすらこちらの位置は感ずかれてはおりません。」

「そうか、ついにだね。」

「はい、あの愚かな男にホエ面をかかせてやりましょう!」

「俺も少なからず協力するさ。真実を君に教えてもらった借りがあるしな。」

老人はこぶしを握り締め声を荒げる。

老人は許せないのだ、10年前自分の実の子を忌わしい計画に利用するために捨てたことを。

そしてそのために目の前の少年が普通の人には考えられない状態にいることに。

 

加持は目の前の白髪の少年を目を向ける。

救ってやりたい。あまりにも過酷な運命を受けている弟のような少年を。

「そうだね・・・・・・・でも、僕等の目的はそれだけではないよ。」

「そうですな、ゼーレ・・・・・・・奴らは手強い相手ですからな。」

「たしかに、ゼーレは世界を裏で牛耳る組織だからな。」

老人、加持そしてシンジはお互い目の前にある漆黒の機体を見上げる。

 

 


 

 

 

あとがき

ああ〜、「君に恨まれても」書き換えです。

って言ってもほとんど変わってませんな(^^;;;;

まぁ、第2話からは結構大幅な変更とかしていますんで、見てください。

まぁ、どんな設定かは次の話をお読みください。(今回とは違い内容は結構変わっておりますので)


今回は作品のリメイクにあたり、3話同時投稿です。
続きの第2話をどうぞ!


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