「NEXT DAY」
written by ベファナ

 

 





「ほら!バカシンジ。さっさと行くわよ。」

入り口の所で鞄をかかえ、
惣流・アスカ・ラングレーはイライラしながら同居人である碇シンジを待っていた。

「あ、うん。もうちょっと待って。」

アスカから見て、玄関から入って右に曲がった所にある台所から
そう言うシンジの声が聞こえてきた。

「ったく、アンタと一緒に遅刻するなんで絶対イヤだからね。」

「そんなら先に行けばいいじゃないか。」

「私がこっから学校へ行く道を知らないの知ってるくせに。ほら早く!。」

そう、アスカは・・ここ葛城邸へ引っ越してきてからまだ一度も学校へと通っていない
それはアスカが葛城邸から学校への道順をまだ知らないことを示していた。


「わかったよ。うるさいなぁアスカは。」

シンジはそう言いながらいそいそと玄関へと姿を現した・・が、

「なんですってぇ!。」

バコッ!


怒り爆発のアスカの一投・・

シンジの顔には玄関に用意してあったシンジの運動靴が突き刺さっていた。








ユニゾン特訓により使徒「イスラフェル」を殲滅した
碇シンジと、惣流・アスカ・ラングレー

二人は使徒殲滅後も、
経費削減の命令により、一緒のマンションに住むことを余儀なくされていた。
なんでも、これ以上マンションを借りるお金はネルフにはないとか・・


今日は二人がユニゾン特訓に入る前から数えて久しぶりの登校する日となっていた。










「「はぁはぁはぁはぁはぁ。」」

ユニゾン特訓の成果のせいなのか、二人は仲良く息切れしながら
その日学校へと無事たどり着いた。


「をぉ!シンジやないか、久しぶりやな。」


シンジ達が教室に入ってからの第一声は親友である鈴原トウジ
のものであった。

「特訓は終わったんか?。」

「一応ね。」

トウジの質問に、そう答えるシンジ。

「シンジもまったく災難やったな。四六時中あんな女と一緒で。」

トウジはアスカには聞こえないような小さな声でシンジの
耳元へそう囁いた。

「あ、いや・・その・・。」

思わず返答に困るシンジ。

「ま、これでシンジも晴れて自由の身というわけやな。」

そう言いながら陽気にシンジの背中を叩くトウジ。
シンジはそんなトウジにまだアスカと同居し続けていることを
言い出せないでいた。




と、その頃シンジ達から見て斜め前の場所では

久しぶりに現れた2−Aのアイドルこと、惣流・アスカ・ラングレーの
登場に教室中が涌いていた。

「アスカ、ずいぶん久しぶりじゃない。」

「ホント、私たち心配したんだから。」

「碇君と一緒に教室に入ってきたのけど、碇君と何かあったの?。」

「一体何やってたのよ。」

アスカは文字通りクラスメイトによってもみくちゃにされていた。


トウジとシンジ。それと相田ケンスケはそれを遠巻きに見つめていた。


しばらくして教室に老教師が現れ、クラスメイト達は各々が席へと戻り、
騒ぎは小休止した。










授業中


すでに大学をでているアスカは半ば呆然と老教師の授業を聞いていた。

そんなアスカのノートパソコンへ授業中にも関わらず
ピッと音を立て、コンタクトが届いた。


不意にアスカが振り向くと、
アスカの後ろの方にいる生徒が二人、アスカへ向けて手を振った。

どうやら送信者はあの二人らしい。


アスカはそう思いながら、このまま授業を聞いても暇だったので
とりあえず、その文へと視線を向けた。


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ねぇねぇ
休んでいる間、碇君と同居してたって聞いたんだけどホント?

Y/N

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(これはイエスかノーかで答えろってことかしら?)

アスカはそう思いながら文面を読んでいた。


(一応・・同居はしてたからイエスよね。)


ポチッ


アスカはそう思うと何の躊躇もなく「Y」を押した。

この後、起こる騒ぎも考えずに・・・・






「「「「えええええええええ。」」」」

それは碇シンジが初めてエヴァンゲリオンのパイロットであることを
明かした時よりも遙かに大きな絶叫となり、学校中を駆けめぐった。

ガタッ
					ガタッ

ガタッ
			ガタッ


その会話を盗み見していた
事情を知っているトウジとケンスケ以外の
そのクラスメイトは全員勢い良く椅子を鳴らしながら席を立った。

そして、男子はシンジを、女子はアスカを取り囲んだ。



「シンジ貴様!。」

「な、何?。」

すごみを効かせるクラスメートの言葉、

シンジだけ、アスカと他のクラスメイトとの会話を見てなかったので、
シンジは怯えた顔で自分を取り囲んだクラスメイト達を見つめていた。




「どうだった?。」


「へ?。」

突然シンジへ向かって凄みを効かせていたクラスメート達の顔が柔和になる。

あまりにも突然の事に当惑するシンジ。

そんなシンジへの追求は止むことはなかった。

「バカ!惣流さんと一緒の家に住んだんだろ?どうだったって聞いてるんだ。」

「え・・とだから何が?。」

「ホント碇って御子ちゃまだなぁ。男の女が一つ屋根の下で暮らしたって言ったら、
アレしかないだろ。」


「アレって・・・・・?。」
			・・・・
クラスメートに言われ突然そのことに思い当たったシンジ。

とたんにシンジの顔は真っ赤になった。


「ま、まさか・・碇、お前惣流さんと一緒に住んでて何もなかったのか?。」

驚きに打ち震えるクラスメートA。


「な、何もなかったというか・・その・・。」


この時、シンジは一つ過ちを犯した。

素直に何もなかったと、言っておけばよかったのである。



「な、!何!やっぱり何かあったのか!?。」

「あ、いや・・その・・。」

その瞬間、シンジを囲むクラスメートの輪はより一層小さくなった。


「はっきり言え!碇!。」

「お前男だろ!。」

「早く吐けば楽に慣れるぞ碇。」

口々にシンジを攻めるクラスメート達

「あ、いや・・・・その・・だから・。」

その攻めにシンジの防御も少しずつゆるんでいった。




そして・・


「碇!がんばれ!。」

「さっさと吐いちまえ!。」

「言うんだ碇!。」

クラスメートの執拗な攻めの前に、
碇シンジの精神力は限界へと達してしまった・・・・

「わ、わかったよ言うよ。」

とたんに静まりかえる男子クラスメート達。




その頃、女子のクラスメートはと言うと、アスカの席の周りに集まり、
やはり男子クラスメートと同様の事をアスカに問いかけていた。

「ねぇねぇ、やっぱり碇君って家でも優しかった?。」

「夜寝る時って別々に寝てたの?それとも・・。」

「ホントに碇君と何もなかったの?。」

「そんな事言って、ホントは何かあったんじゃない?。」


しかし、アスカは「何もないわよ。」の一点張り


と、その時



「「「「「なんだとぉおおおおおおおおお!!!!!。」」」」」

やはり、学校中に響くような大声をシンジの所のクラスメートがあげた。



「マジか!碇!。」

「くぅ!やっぱりお前も男やな!。」

打ち震える男子生徒達はそう言いながら仕切にシンジの背中を叩く、

だが、シンジはまだ何かを言いたげに必死に口を開こうとしていた。



「ねぇねぇ。どうしたの?。」

そんなとき、女子のクラスメートが一人男子の会話へと入り込んできた。



「おう!それがな・・・・・。」












「わ、わかったよ言うよ。」

シンジは覚悟を決め、そう言った。


シンジの言葉を待ち遠しく待つ、クラスメート達が
皆、一斉に「ゴクッ」と唾を飲み込む音が辺りに響く・・。

「ぼ、僕は・・アスカと・・・。」

期待に溢れる視線がシンジへと突き刺さる。



「き・・・・。」


「「「「「き?。」」」」」


「き・・・・き・・・キス・・し・・。」


シンジがそこまで言ったときだった。



「「「「「なんだとぉおおおおおおおおお!!!!!。」」」」」

と、男子クラスメートが大声をあげたのは・・


お陰で「キスしようと思ったけど途中でやめたんだ。」
というシンジの言葉は途中で終えざるを得なくなってしまった。

どっちにしろ問題ではあったが(^^;













「「「「「なんですってぇええええええ!!!!!。」」」」」

男子生徒から事の顛末を聞いた女生徒は先ほどの男子生徒同様絶叫し・・



「アスカ!。」

すぐさま、アスカの机の前へとかじり付くように迫った。


「な、何よ。」

男子生徒が何を言ったのか知らないアスカはその女生徒の行動に
驚きながらもそう言った。


そして・・

「アナタ碇君とキスしたってホント?。」

「へ?。」


アスカは硬直した。

が、

(な、何を言ってるの?)

すぐさま大学出の明晰な頭脳が回転を始める。

(私と・・誰がキスをしたって?)



(私とシンジが・・・・キ・・・ス?)





(キス?)




「バカシンジィイイ!!!!!!!。」


ガタッッッ


突然アスカはシンジの名を呼びながら勢い良く席を立った。


そして、一路シンジの元へと向かうと

シンジの襟首を鷲掴みにし・・

「ちょ、ちょっとアンタ何言ってんのよ!。
わ、私とあ、あ、あ、アンタがキスしたですって!?。」

顔を真っ赤にしながら一気にまくし立てるアスカ。

シンジはその形相を前に何も言えなくなってしまっていた。

「な、何でたらめ言ってるのよ!。」


「でも、シンジの奴がはっきり言ってたぜ。」

そこへクラスメートBがアスカへと声をかけた。

人の記憶というのは時に曖昧になるものなのである。




「ちょ、ちょっと!シンジ!。何とか言いなさいよ!。」


そう言いながら勢い良くシンジの胸ぐらを揺するアスカ。

だが、シンジはすでに放心状態で口をぱくぱくさせるだけ・・


「ほら!シンジ!ちゃんと言いなさいよ!
アンタが勝手に隣に寝てた私の唇を奪おうとしてただけだって!。」


「「「「「!。」」」」」

アスカの言葉にクラスに再び衝撃が走った。

「あ・・。」

この時アスカは自分が墓穴を掘ってしまったことに気づいたのだった。


「「「なんでっすってぇええええええ!!!!!一緒に寝てたぁああああ!!!!。」」」


一緒に寝てたとは言ってないのだが、今のアスカの言葉では
そうとられても不思議ではなかった。


「あ、いや・・その・・違うのよ。」


シンジの胸ぐらを掴みながらクラスメートの視線を一身にうけるアスカ。



「一緒に寝てたって・・・やっぱり一緒の布団でよね。」

「ねぇねぇ、一緒の布団で何やってたの?。」

「やっぱり・・あれ?いやーん。」

「碇・・羨ましすぎるぜ。」

「男なら涙を流して喜ぶべき状況だね。」




見事にキズグチを広げてしまったアスカ。



その後もアスカがどんな言い訳をしようとも誤解は解けることは無く・・・

	二人はそれから2−A公認(本人非公認)のカップルとなってしまった。















「その・・アスカ。ゴメンね。」

「何が?。」

その日の帰り道、シンジはふと一緒に家路へとつくアスカへと話しかけた。

「僕が口を滑らせなければ・・。」

「別にいいわよ。言いたい奴には言わしておけばいいじゃない。
私たちホントに何もなかったんだから。」

「そ、そうだよね。」

「でも、アンタと恋人同士って思われるのはしゃくよねぇ。」

「そ、そうかな?。」

「なんですって?。」

思わずそう言ったシンジへ、アスカの視線が突き刺さる。

「アンタごときが私に釣り合うとでも思ってるわけ?。」

「ごときはないだろごときは。」

「ふんっ、悔しかったら。私を振り向かせるような男になってみなさいよ。」

「な、なってやるさ、今に見てろ。」

「へ〜、それは見物ね。こえからじっくりとシンジの成長する姿を
見せて貰うわ。せいぜい私の足を引っ張らないようにね。」

「そっちこそ、僕の足を引っ張らないようにね。」

「なんですってぇええ!!!。シンジごときが生意気いうんじゃないわよ!。」


そう言ってシンジへと鞄で殴りかかるアスカ。

シンジはそれを身体を捻ることで紙一重で避けると、そのまま走り出した。


「ちょっ、待ちなさい!。」

「や〜だよ。」

「くっ、バカシンジのくせに。」

アスカはそう言うと、シンジを追って走り出した。





そうして・・二人の「NEXT DAY」は過ぎていった・・・・






御意見・御感想はこちらまで


初めまして ベファナと申します。 ときどき様々な所へ投稿をしているケチな奴です(爆) 「NEXT DAY」、場面はイスラフェルを倒した後をモチーフに書いています。 ど〜しようもない理由で同居を続ける事になってしまったアスカ様とシンジ君のドタバタ(^^; しかもオチが見つからず多少強引な展開に(^^;汗 それに構わず、読んで下さった方々、本当にありがとうございました。 そして、シンクロウさん。 これからもどうか宜しくお願いいたします。 ではまた〜

 ベファナさんの「NEXT DAY」でした〜〜!(^^)なんと、遂に、あのベファナさんからのSSを頂いてしまいました!うおおお、感謝感激!!!

 そしてそして、期待の内容。いやぁ、すっごく面白かったです!一緒に暮らしていたって聞いたクラスメイト達の、せっぱ詰まった想像の暴走具合が大笑いでしたね(笑)。シンジがキスと言いかけただけで、ドンドンと絡まっていく混乱模様が最高に愉快でした(^^)。しかも、誤解を解こうとしたアスカまでもが、ついつい口を滑らせてしまってもう大変!どう転んでも、話題をイヤーンな方向へと導いていくクラスメイト達に、結局は公認(?)カップルと認められてしまいました。
 そして抵抗空しく、お互いの関係を誤解されてしまった2人。しかし、なんだかんだ言いながらも、アスカはまんざらでも無い様子で、「ふんっ、悔しかったら。私を振り向かせるような男になってみなさいよ。」、なぁーんて憎まれ口。素直になれないアスカ本来の魅力が炸裂してますよね。表層的には意地っ張りでも、心裏的ではシンジを惹き付けようとモーションをかけているのが、とっても良く分かります。
 それに加え、シンジもシンジで、「な、なってやるさ、今に見てろ。」と、大胆宣言!表面上は相変わらずの2人ですが、結局は、自然とお互いを想い合っているんですね。ラストでは、笑顔で追いかけるアスカと、笑顔で逃げるシンジの微笑ましい姿が目に浮かぶようです(^^)。

 ベファナさん、この度は本当に素晴らしい作品をご投稿して下さり、ありがとうございました!まさかベファナさんからご投稿頂けるとは夢にも思わず、幸せ一杯であります(^^)。
 ご覧になった皆様も、是非とも是非とも、ベファナさんにご感想を送りましょう!たった一言の感想が、このような素晴らしい名作を生み出す、大きな力になるのです。皆様、なにとぞ、ご感想をよろしくお願いします!w(_ _)w

 私達に名作を提供して下さった、ベファナさんへのご感想はこちら掲示板へ!
是非ともお願いします!m(_ _)m

 《ベファナさんのホームページ:「雪の降る街」 http://www.din.or.jp/~shi-ma》

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