時刻は6時半、今日も今日とて碇シンジは目を覚まし朝の準備をはじめる。

眠りから覚めたシンジは、まずリビングの雨戸を開ける。

同居人を起こさないように雨戸をゆっくり、あまり音が立たないように…

 

ここで赤い髪の眠り姫を起こしてしまうと、その日は一日中彼女が不機嫌になってしまう。

そんな怒った彼女に振りまわされるのも決して嫌いではないのだが…

 

 

シンジは「う〜ん」とのびをして、開け放たれた窓から朝の澄みきった空気を胸に吸い込んだ。

肺を満たす新鮮な空気に、眠気が一気に晴れていく。

耳に届いて来るのは遠くから聞こえる鳥のさえずりのみ

それがよけいにこれから訪れる喧騒を予感させるようで、口元に微かに苦笑が浮かぶ。

 

昨日の夜から下ごしらえしておいた材料を使って手早くお弁当の用意をすると、今度は朝食の準備にとりかかる。

アスカの為にスクランブルエッグとカリカリに焼いたベーコンを、ミサトの為に焼き魚と納豆を、それぞれ用意する。

その為にシンジの朝食はいつも和洋混淆のものになってしまうのであるが…

 

ひとしきり食事の準備を終えると、今度はその脚でお風呂に湯を張り始める。

ここで時計を見ると7時15分、アスカを起こす時間である。

まずは部屋の襖を数回軽くノック、だがここでアスカが起きた事は皆無である。

反応が無いのを確認して、襖を開けて中に入るシンジ。

なぜか起こしてしまわない様にと静かに襖を開けてしまうのは、いかにもシンジらしい…

 

そこに眠る少女は吸いこまれそうなほどの綺麗な寝顔を浮かべている。

飽く事無く見つめていたいとも思うシンジだが、この忙しい朝にはそれもかなわずしぶしぶとアスカを起こしにかかった。

「……」

いつものように

「……!?」

声を

「…………!!!?」

かけて…

 

 

 

 

 

 

「伝わる思い」(前編)

Written by LAS大将

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントなんて事してくれるのよ!」

憤懣やる方無しといった様子でパンにかじりつくアスカ。

「チョットなんとか言いなさいよ!」

その矛先はシンジに向けられている。

 

「まぁまぁアスカ、そんな事言ったってシンちゃんは今しゃべれないからしょうがないじゃない」

そんなアスカを軽く諌める様に合いの手を入れるミサト、只今焼き魚の小骨と格闘中。

 

「……」

二人を見つめるシンジ、両の頬は真っ赤に染まっているが、決して照れているわけではない。

 

 

真相はこうだ

 

ベッドで眠っているアスカに声をかけて起こそうとしたシンジ、

だがどういう訳か「アスカ、朝だよ」という声が出てこない。

どうやっても口から声を発することが出来ない。

ありきたりに言うと、しゃべれなくなっていたのだ。

シンジはあせった、アスカの起床時間はすでに5分ほど過ぎている。

以前、起こす時間が遅れてアスカに酷い目に遭ったことを思い出す。

それでシンジは仕方なしにアスカを手でゆすって起こそうとしたのであるが、それがアスカにはシンジが自分に無言で迫っている様に見えてしまい…

 

というわけである。

 

 

「まぁいいわ、別に口がきけなくなったからって死ぬわけじゃないし。でも今度また今朝みたいに変な事したらタダじゃおかないわよ!」

「……」

シンジは、じゃあ明日からはどうやって起こせばいいんだよ、と言いたいのだが口からはなんの言葉も発する事は出来ない。

「何よその目…何か言いたい事があるんじゃないの!」

そうまくし立ててくるアスカに、あわててシンジは首をふるふると振って答えた。

 

「ところであんた達、そろそろ学校行く時間じゃないの?」

掛け時計を見ながらポツリと呟くミサト

「は?ちょ、ちょっと!そういう事はもっと早く言いなさいよ〜」

それを聞いたシンジとアスカは、慌てて準備をしにそれぞれの部屋に掛けこんだ。

そして数十秒後、

「いってきま〜す」

という声と共に二人は玄関を飛び出していった。

聞こえてきたのはアスカの声だけであったが…

 

「それにしてもシンジ君、ちょっち心配ね」

ミサトは携帯を手に取り、手馴れた手つきで番号を打ちこんだ。

「もしもし、リツコ……」

 

 

 

 

 

 

 

ここは2−Aの教室

二人はなんとか間に合った様だ。

 

「それでシンジが急に口きけなくなっちゃったのよ」

「ふ〜ん、一体どうしたのかしら。別に見た目は調子が悪いようには見えないけど」

そう言ってシンジの方を見やるアスカとヒカリ。

シンジはここまで走ってきたせいで、机に突っ伏せて息を整えている。

「まぁ碇君がそんなだと何かと苦労するかもしれないから、今日はいろいろと面倒見てあげてね、アスカ」

「な、何でこのアタシがバカシンジの面倒を見てあげなきゃなんないのよ!」

「ダメかしら?だったら後は綾波さんくらいしか頼める人がいないんだけど…」

ヒカリは、机に座って文庫本を読んでいるレイに目を向ける。

「ファ、ファーストなんかにシンジを任せたらもっと大変な事になっちゃうわよ!

しょうがないから……アタシがバカシンジの面倒を見てあげるわっ!」

ヒカリはうっすら頬を赤く染めながらそう言うアスカを満足そうに見ると、

「そう、じゃあそういう事でお願いね!」

と言って日誌を取りに教室を出ていった。

 

 

しかし、前もって先生にその事を言っておけば、しゃべれないといってシンジがとりたてて苦労する事もなく、その日の授業は無事終わってしまった。

 

「バカシンジ!授業も終わったんだしさっさと帰るわよ」

シンジの面倒を見る気になっていたアスカは、肩透かしを食ってしまったという不機嫌さを隠さずにそう言ってシンジの手を引っ張っていく。

 

「はぁ、センセも大変やなぁ」

「ああ、でも惣流の奴もあんなに分かりやすい行動してるのにな」

「ホント、アスカも素直になればいいのに…」

ようよう離れ行く二人に、彼らの親友達は共通の思いを抱いていた。

 

 

 

ずんずん前を歩くアスカ、そしてそれに引きずられるようなシンジ、

ふとアスカの脚が止まる。

どうやらアスカの携帯に電話がかかってきた様だ。

 

「もしもしアスカ?そこにシンジ君いるかしら」

「リツコ?シンジならここにいるわよ!でもなんでアタシにかけてくるのよ、シンジの携帯にかければいいじゃない」

「シンジ君しゃべれなくなってるんでしょ、だから電話しても意味がないからあなたに電話したのよ」

要点だけを理路整然としゃべってくるリツコに、落ち着きかけてきたアスカの心は再びエキサイトしてくる。

「それでシンジにどういう用事なのよ!」

「今からシンジ君を連れてこっちに来てくれないかしら。ミサトにシンジ君を見てもらうように頼まれたのよ、ネルフとしてもパイロットの状態は把握しておかなければならないのだし」

それを聞いたアスカは傍らで不安そうに待っているシンジを見つめる。

一瞬『なんでアタシが!』と思ったアスカだが、別に一人で帰ってもすることが無いので、

「分かった、今からそっちに連れていくわ」

と言って電話を切った。

そしてシンジに、今からネルフに見てもらいに行くことになった、と伝えると二人はネルフに向かった。

 

 

 

 

 

 

「これは喉頭蓋エントラップメントね」

 

シンジを一通り検診した後リツコはそう呟いた。

「こうとう…なに?」

アスカは訳のわからないといった表情でそう聞き返す、シンジも同様である。

「喉頭蓋エントラップメント、まぁ簡単に言えば声帯が痙攣して硬直してしまう障害ね。

別に健康上何ら問題のあるものではないし、まぁ1週間から2週間もたてば普通に声が出せる様になるわ」

「そう、別に死ぬとかそういう事は無いし、長くても二週間で治るのね!シンジ、アンタなんか聞きたいことある?」

アスカはシンジに目を向ける。

「……」

シンジはふるふると首を振っている。

「そう、じゃあ今日はこれで帰るわね。シンジ、ほら行くわよ!」

アスカはそう言ってシンジの腕を引っ張って診療室を後にした。

 

 

 

 

ネルフの施設の外に出ると、辺りはすでに暗くなっていた。

 

「はぁ、もうこんな暗くなっちゃったじゃない…」

薄闇のかかった空を見上げながら、アスカは誰に言うでもなくそう呟いた。

シンジも申し訳なさそうな表情でアスカの顔をチラリと見た後、同じように空を見上げている。

「大した事なくてよかったわね。まぁ2週間なんてあっという間に経つわよ!」

自然な笑顔でそう呟くアスカ。

シンジはそんなアスカを嬉しく思って微笑を返した。

 

 

 

「……!?」

と、しばらくの間空を見上げながらゆっくりと歩いていた二人であったが、突然シンジがアスカの手を引っ張って急ぎ足で歩き始めた。

「なっ!ちょ、ちょっとアンタっ!」

アスカは不意に手を握られた驚きで言葉にならない呟きをこぼしながら、力強くグイグイと引っ張るシンジに引きずられる様に歩いていった。

 

しばらくして落ち着いてきたアスカは、聞きたかったことをシンジに問い掛ける。

「ところでアンタなんでこんなに急いでいるの?それ以前にどこに向かっているのよ?」

いつのまにかその脚は、シンジの歩調に合わせて急ぎ足になっていた。

「……。…。…。」

シンジは何かを伝えたそうに色々な動きをするのだが、アスカには全く伝わらない。

額にはうっすらと汗が滲み出す。

そんな必死なシンジを見ているうちに、アスカの顔には微笑が浮かんでくる。

「ふふ、まぁ別に無理に言わないでいいわ。アンタの行くとこに付き合ってあげるわよ。

…ところでいつまでアタシの手を握っているつもりかしらぁ」

滑稽に見えるシンジに思わず笑いを漏らしながらアスカはそう返した。

シンジは慌てて掴んでいたアスカの手を離すと、再び前を向いて一際早足で歩き出す。

「あ、ちょっとシンジ待ちなさいよ」

アスカも慌ててシンジを追って歩き出した。

 

 

5分後、二人は商店街の中を歩いていた。

もし人気の無い所に連れていかれたらどうしようかと心の隅で考えていたアスカは、ホッと一安心。

そして目の前に現れるスーパー「しんくろ」

ここに来てアスカはやっとシンジの真意を理解した。

「そっか、あんた夕食の買い物に行きたかったのね。そうならそうと……ってしゃべれないのよね、アンタ」

「……」

シンジもうっすらと苦笑いを浮かべている。

 

シンジは入り口においてあるかごを取ると、慣れた手つきで商品を手にとって吟味した後かごに入れていく。

『ふ〜ん、アイツいつもこんな丁寧に材料選んでたんだ』

知らないシンジの一面を垣間見たアスカはちょっぴり嬉しさを感じながら、一歩後ろから真剣に食材を選んでいくシンジとかごに入っていく食材を見ていた。

 

「シンジ、それよりこっちのやつのほうが安いんじゃないの」

その時シンジがかごに入れたパックは、今までのような”お買い得品”ではなかった。

それを見たアスカはその半分の値段のものをシンジに見せる。

「……」

だがそれを見たシンジは手で『これでいいんだ』というジェスチャーをすると、次の生鮮売場に向かって行ってしまった。

「なによなによ!人がせっかく手伝ってあげようとしてるのに…」

アスカはそう呟くと、手に取ったパックを元に戻してシンジの向かった方に歩いて行った。

 

レジのおばさんに訝しがられながらもなんとか会計を済ました二人はようやく家路へつく。

もちろんアスカは手ぶらであり、シンジは両手に3つの袋を持っている。

 

 

 

 

そして二人は、やっとコンフォート17へ到着する。

 

「はぁ、今日一日アンタに付きっきりって感じだったわ!」

アスカはうんざりといった感じを強調してそう呟く。

かたやシンジは両手にスーパーの袋を持って息を弾ませていた。

『一個くらい持ってあげてもよかったかな…』

そんなシンジを見てアスカは、ちょっとかわいそうだったかと反省するのだった。

 

「はぁ、疲れた!」

胸の中にわき上がった思いを紛らわす様にあえてそう口に出して、制服のままリビングのソファーに飛びこむアスカ。

そのままキッチンを見ると、制服の上にエプロンを着けたシンジが夕食の準備を始めていた。

そんなシンジを5分ほど見つめていたアスカは、胸に感じた痛みを振り払う様にキッチンのシンジに話しかける。

「シンジ〜、今日の夕飯なに〜?」

……

だが返事は返ってこない

『そっか、今のシンジは…』

シンジの状態を思い出したアスカは納得すると、そろそろとキッチンに向かい歩き出す。

キッチンのシンジは、野菜炒め用の野菜を切っているところだった。

トントントンと小気味よい音と共に適当な大きさに切り分けられていく野菜達を見ながら、アスカはシンジの料理の巧さを再確認していた。

 

 

淡々と作業を進めるシンジを飽く事無く見つめていたアスカだったが、しばらくしてその意識が一つのものに引き付けられた。

『あっ、あのパックは!』

シンジが手に取ったのは、さっきスーパーでアスカの勧めたものを断って買った割高なやつであった。

シンジはパックから取り出したそれをボゥルにあけ、卵やらいろんなものを加えるとこね出した。

うっすらと汗を浮かべながらひたすらこねるシンジを見ながら、アスカは『料理って大変なのね、やっぱり』と漠然と思っていた。

そんなアスカにかまわず作業を続けるシンジ、フライパンに薄く油をひいて熱を入れると、先程までこねていたものを手のひらで伸ばしてフライパンの上で焼き出した。

料理を知らないアスカでもここまでくれば分かる。

『そっか、あれはハンバーグを作ってたんだ…って、えっ?』

そう、先ほどの割高なものは、ハンバーグの材料だったのだ。

そしてアスカは、あの時のシンジの表情を思い出した。

アスカが勧めたものを申し訳なさそうに断ったあの表情を…

 

 

『いつもおいしいシンジのハンバーグ、アタシの大好物。

シンジはハンバーグを作るのが特別に得意なんだと思ってた。

だから特別おいしいんだと思ってた』

 

 

「あ、アタシあっちのテーブルで待ってるわね!」

いろんな思いが溢れて、アスカはその場を逃げる様に立ち去ってしまう。

「……」

そんなアスカをシンジは訝しげに見やりながらも、焼き加減をみるためにその意識を再びフライパンに戻すのだった。

 

 

 

 

テーブルの上に並ぶ料理の数々

いつも帰りの遅い保護者の分は別にされている為、その量は二人分である。

アスカは早速、目の前にある大好物のハンバーグを口に運ぶ。

『おいしい…』

そのハンバーグは”いつも通り”においしかった。

すなわちそれは、アスカが今日見たシンジの行動が以前からいつも行われていたという事の証明。

口の中いっぱいに広がるハンバーグのおいしさ

それと同時にアスカの中に、安いパックを申し訳なさげに断るシンジの姿や汗を滲ませながら混ぜたものをこねるシンジの姿が思い浮かぶ。

そして、口の中のハンバーグを飲み込んだアスカの口から、いつもは恥ずかしくて言えない言葉が出た。

 

「おいしい、シンジのハンバーグ…」

 

自然にそう呟いてしまった自分に気付き、アスカは向かいに座るシンジの方を見つめる。

今日一日シンジと過ごして、アスカは会話の時にシンジの表情を見つめる様になっていた。

そこに浮かぶのは見ているこちらまで嬉しくなってくるような、アスカの言葉に純粋な喜びを感じている笑顔だった。

 

『自分が少し素直になるだけで、シンジのこんな顔を見る事が出来たのね…』

そんなシンジを見てアスカは、今まで素直になれず「まぁまぁね!」としか言えなかった自分を恨めしくも思うのだった。

それからのアスカは今までの分を取り戻すかのように、料理を口に運ぶたびに「おいしい!おいしい!」と連呼しては、シンジの反応を楽しんだ。

食卓を囲む二人にはいつにも増して、楽しげな笑顔が満ち満ちていた。

 

そして瞬く間になくなってしまう料理達

アスカはシンジとの楽しい時間の終焉を告げるその光景に一抹の寂しさを感じていた。

満たされた胃袋が発する満腹感とは裏腹に、アスカの心は「もっとシンジと”お話”したい」という空腹感に満たされていくのだった。

 

先程とはうって変わって、静寂が食卓を包む。 

ふと気付くとアスカはシンジと目が合っていた。

アスカは自然とシンジを見つめてしまっていた自分に慌てて視線をそらすと、恥ずかしまぎれに「お、お風呂に入って来るわ!」と言うと足早に食卓を後にしてしまった。

そんなアスカを見つめるシンジには、寂しげな様子が見て取れた。

 

 

 

 

ぶくぶくぶく

 

湯船に口まで浸かりながらぶくぶくと泡を吐き出す。

アスカがお風呂で何か考え事をする時の癖である。

湯船に張られたお湯の温度は少々高かったが、以前のようにシンジに怒鳴り込む気にはならなかった。

 

思い返すのはシンジの表情、今日一日でシンジが見せてくれた数え切れないほどの…

 

その笑顔

困った顔

はにかみ顔

 

それらを思い浮かべるたびにアスカの胸の中は、温かい気持ちで満たされていく。

そんなアスカから溢れ出した思いは、一人の少年の名前の形をとって少女の口から零れ落ちる。

 

「シンジ…」

 

あまり広いとはいえないバスルームにこだまするその名前。

少女の心の中の少年は、綺麗な微笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

「シンジ、お風呂空いたわよ〜」

その姿はバスタオルを巻いただけのものである。

『アタシのこんな姿を見たらアイツどういう反応するのかな』

アスカのバスタオル姿にはそのような魂胆があった。

それは精神的な余裕が生まれた証しともいえるだろう。

 

だがそんな余裕も数瞬の後に破綻してしまう。

 

 

 

 

 

「あら、アスカ。またそんなカッコでシンちゃんを誘惑してんの?」

 

テーブルでは、アスカの入浴中に帰って来たのだろう、ミサトが遅めの夕食を食べていた。

そのミサトの隣りでは同様に青い髪の少女が、部屋に入ってきたアスカに気を払う事もなく、肉の食べられない彼女のために作られた野菜炒めを黙々と食べていた。

シンジは自分の料理を美味しそうに食べる二人を、向かいから頬杖をついて嬉しそうに見ていたが、アスカのバスタオル姿に顔を紅くして俯いてしまった。

 

それはよくある食卓での一風景

けれどアスカには、そうは感じられなかった。

 

 

 

ミサトとレイに向けられるシンジの笑顔を

そしてミサトの口に運ばれているハンバーグを見て

自分のいないその食卓がとても自然なものに感じられて

何よりシンジとの先程の時間を否定されたようで…

 

 

 

アスカは無言のままくるりと向きを変え、自分の部屋へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「あら、アスカったらどうしたのかしら」

ミサトは予想と違うアスカの反応に、意外という表情も隠さずそう呟いた。

「……。」

だが、レイと口のきけないシンジといっしょでは、食卓にむなしい静けさが漂うだけであった。

 

 

 

 

 

 

「まったく…バカみたい…」

 

ただ月の光だけが照らす薄暗い部屋の中で、アスカは誰に言うでもなくそう呟く。

今日一日見てきたシンジの笑顔が他人に向けられていることに

そして、自分のために作られたと思っていたハンバーグをミサトが食べているのを見て

アスカは悲しみを伴った嫉妬をはっきりと感じた。

そして好意的に捉えていた今までのシンジの行動が、全て自分の”勘違い”だったのではないのかという考えに囚われ始める。

 

『ねぇ、なんとか言ってよシンジ』

 

 

だが少女の心の中の少年は、何も言ってはくれなかった。

 

 

 

 

 

(後編へ続く)


駄文でゴメンナサイです

後編では頑張るので、なにとぞご容赦の程をお願いしますm(__)m

 

ちなみに作中に出てきた「喉頭蓋エントラップメント」という病名は実在しますが、人間がかかる病気ではありません。(まぁ響きが良いので)

またその症状もシンジ君の様にしゃべれなくなってしまうものではありません。(当たり前ですね(苦笑))

 

それでは失礼します(こそこそ)


LAS大将さんの「伝わる思い」(前編)でした〜〜!

ミサト「喉頭蓋エントラップメント・・・。シンちゃん災難ねぇ。」
リツコ「でもそのおかげで得るものもあったわね。少し距離が縮まったというか。」
ミサト「日頃シンちゃんがどれだけ家事に苦労してるか、少しは分かったかしらぁ?」
アスカ「あんたに言われたかないわよっ。」
ミサト「な、なははは。まぁまぁ。」
リツコ「でもアスカも少しは角が丸くなって良かったわね。
ミサト「そうそう!ちょっち素直になるだけで、大好きなシンちゃんの笑顔が見れる!素直は
    三文の得ってことがまさに今回証明されたわね。」
アスカ「お、乙女心はロジックじゃないの!」
リツコ「ちょっと、人の台詞パクらないでくれる?」
ミサト「それに、あの嫉妬っぷりといったらもう。」
リツコ「恋するが故のジェラシーね。」
アスカ「ぐぅ・・・。(まっ赤)」
ミサト「ホレホレ、なんとか言ってみなさいってぇぇぇ。(ニヤニヤ)」
アスカ「うっ!げほっ!げほっ!しまった!喉頭蓋エントラップメントが!」
ミサト「ちょっと!はぐらかそうったってダメよ!」
アスカ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
リツコ「ちょっとアスカ?」
アスカ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ミサト「お話したい空腹感とやらも説明なさい!」
アスカ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ミサト「・・・ちっ!うまく逃れたわね。せっかくの酒のつまみだったのに・・・。」

是非LAS大将さんに感想を送りましょう!(もしくは掲示板へ!)
たった一言の感想が、名作を生み出す大きな力になります。


inserted by FC2 system