澄み渡った空には

第1話

THE DREAM IS OVER


 




・・・ドカーン、ピピピピピ、ガー・・・


「状況は!!??」


「駄目です!防衛システムの85%が破壊されました!このままでは!!」


「くっ・・・万事休す・・か。」


「4年・・・思ったより早かったわね。」


「早いなんてもんじゃないわよ・・・いったいどうやって・・・」


「やはり、あの時の紛失した機体、「彼ら」が所持していると言う噂・・・まんざらでもなかったみたいね。」


「パイロットごと・・ね。」


「どうするの?今の指揮官はあなたなのよ。」


「・・・もう、手は打ってあるわ。」


「そう・・・また、なのね・・・」


「ええ・・・そうなるわね。前とはずいぶん状況が違うけど・・・

結局あたし達は彼に頼るしかないのね・・・」











・・・ザー・・・



「雨・・・か。」


シンジはなんの変哲もないただの天候の様子を口ずさんだ。

血の様に赤く染まった空から落ちてくる透明の水滴。

いつからだろう、赤という色が空の代名詞に変わったのは・・・

サードインパクト・・・そう、ちょうどあれが終わってからだ。

僕が目を覚ましたとき最初に目にしたもの・・・それは赤い、血の様に赤い空。

四角い10センチ四方の小さな窓から僕の視界に入ってきた空。

そして、それはここ4年間続いてきた。

朝、目を開けて最初に見るのはその赤い空の色。

だが、それが唯一僕に与えられた自由。

美しくもなんともない赤い空を見ることだけが・・・

















「・・・碇シンジ・・・出ろ。」


シンジがちょうどうとうととしていたとき、不意に後ろから声がした。

声の主は見なれないサングラスをかけた黒ずくめの男だった。

面倒くさそうに起きあがりそちらに体を向けるシンジ。


「・・・・・・・・・」


男は手で合図するとシンジに背中をむけた。

開け放たれた重そうなドア、こんなことは何年振りだろう。


「・・・早くしろ・・・」


前を行く男がシンジをせかす。

仕方なく、シンジは唯一の荷物といえるペンダントを持ってその薄暗い部屋を出た。

長い廊下にカツーンカツーンと男の靴の音が響き渡る。

シンジもそれに続いた。


「・・・はい、私です。」


急に靴の音に混ざって男の声が耳に入った。

どうやら誰かに連絡をとっているようだ。

「ええ・・・はい。そうです。サードの処理、今終わりました。

後フォース、フィフスのことはよろしく。」


・・・サード?


「あの?僕はこれからどこにつれて行かれるんですか?」


「・・・・すぐにわかる、もう少しだ。」


そう言うと男はさらにスピードを上げて歩き始めた。

男の向かっていると思われる方からわずかながら光が漏れている。

どうやら裏口のようだ。


「ここから出れば迎えが待っている・・・詳しいことはそっちに聞け。」


「はい・・・あの・・・」


恥ずかしそうにもぞもぞと手を動かしているシンジ。


「なんだ?」


「あの・・・その・・・あっ!」


チャリーンと言う音が暗い廊下に響いた。

先ほどのペンダントだ。

シンジが拾おうとすると、それよりも先に男が腰を曲げた。

最初は珍しげに見ていただけだったが、男は上に備え付けられているくぼみのようなものをおした。

小さな音を立てて開くそのペンダント。

ペンダントには写真がうめこまれていた。


「これは?」


「僕の友達です・・・昔の。僕、決めてたんです。前から・・・

ここを出たら一番に会いにいこうって・・・」


「会って、どうするんだ?」


サングラスの男は始めて人間らしい問いかけをしていた。

シンジが見せた興奮した態度にわずかながら興味を示したのかもしれない。


「会って・・・謝るんです。僕は・・・そうしなきゃいけないんです。」


「そうか・・・会えるといいな・・・」


ボソリとそう言うと手に持っていたペンダントを閉じて、シンジの手に握らせた。

そしてドアノブに手をやるとその重そうな扉を開けた。

おもわず顔の前に手をやるシンジ。

いつもの小さな窓からみえる景色とは比較にならないほどのそれが、そこには広がっていた。


「さあ・・・急げ。おまえにはやることがある。」


「やること?」


「会いに行くんだろ?その子に。」


ゆっくりと男の方を見るシンジ。

そして、力強くこくりと頷いた。


「・・・ありがとうございました。」


シンジはぺこりと男に頭を下げると扉の外へとかけていった。

サングラスの男はシンジの背中が路地へと消えていくのをただ見送っていた。



「・・・めずらしくおしゃべりだったじゃないか、ジャック。」


ジャックと呼ばれた先ほどのサングラスの男は背後からかけられた声に反応した。


「ふん、お前かリョウジ・加持・・・ま、たまにはな。

それはそうと、いいのか?お前の知り合いなんだろ?」


「ああ。まあ、いいさ、シンジ君の顔を見ることが出来た・・・それにこれからまた会えるさ。」


満足げにそう言うと、内ポケットから煙草を取り出しそれをふかす加持。


「どうだ?」


カートンを揺らしながらジャックに煙草を勧める。


「いや、今日の分はもう吸っちまった・・・1日ひと箱と決めてる・・」


「こんないつ死ぬかもわからないご時世に・・・まめな奴だな・・」


からからと笑い、加持は煙をジャックに向けて吐きかけた。


「自分で決めたことは必ずやり通せ、これは、あんたが教えてくれたことだぜ。」


「・・・そんなことも言ったかな・・・」


「ま、いいさ。それはそうと・・・」


「うん?」


「俺にはわからんね。あの子が4年前にEVAで世界を我が物にしようとしたなんて・・・」


「言ったろ、真実は星の数ほど存在する。

そして、その中のどれを真実にするかはそのときそのときによって違うのさ。」


「勝てば官軍か・・・」


ふうっと寂しそうにため息をつくジャック。


「歴史なんてそんなもんさ、そしてまた新たな歴史が生まれようとしてる。

俺達はそれについていくだけさ・・・」


そう言うと加持はタバコを吐き出し足で踏みつけた。


「さて、行こうか。「やること」があるのはシンジ君だけじゃない・・」


加持の皮肉交じりの言葉にジャックが思わずにやりと笑う。

闇の中へと消えて行く二人の背中・・・

煙幕のようにタバコの香りを残しながら・・











to be continued






こんばんは!

今度こそちゃんとした連載です。

シンクロウさんの4万HIT祝いってことで。

前から考えてたねたがやっと見えてきました。

自分の今の環境がそうさせたのかもしれません。

これからがんばって行きますので、時間がある方お付き合いください!

最後に一言、FOREVER LAS!

八色の姓さんの「澄み渡った空には」の第1話でした!いやー、八色さんの新連載第2弾、拍手!(^^)
しかもまたもや気になるストーリーですねぇ。うーん、次回が気になる!

そして記念すべき第1話のストーリーですが、なんだか殺伐とした雰囲気ですねぇ。シリアス調な雰囲気が漂っています。物語中、いくつもの謎が散りばめられている所から、今回はどちらかというとプロローグ的な展開に近いでしょうか。加持も登場のようですし、シンジも解放されたようですし、いやはや、終始謎に包まれた第1話。

果たしてこの先、シンジとアスカの未来には何が待ち受けているのでしょう!?次回、乞うご期待!

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