澄み渡った空には

第2話

・・in the endlessrain・・

終わらない雨


 




・・・ハァ、ハァ・・・

ザッ、ザッ、ザッ・・・・


「・・・誰かいる・・・」


シンジは先ほどの建物を出てから今まで、何か不思議な違和感を覚えていた。

自分を追ってくる人影。

ドラム缶や瓦礫の陰に隠れていて姿こそ見えないが、自分を狙う何者かが近づいている。


・・・いったい、誰なんだ・・・さっきの人が言ってた僕を待っている人?

いや、そんなはずはない。もしそうだとしたら、もっと堂々と出てきてもいいはずだ。


わからない・・・なぜ自分がこんな状況下にあるのだろうか。

そう考えてみて、シンジは首を振り、考えなおした。

自分の立場が把握できないなんてことは今にはじまった事ではない。

サードインパクトの後、自分がいつのまにか独房入りしていたこと。

面会に来たミサトさんが泣きながら、ただ「ごめんなさい・・」と繰り返していたこと。

そして、今日・・・4年ぶりに外に出た瞬間、何者かにおわれている自分。

・・・僕の知らないところで何かが起きているのだろうか・・・

でも、「何か」って一体なにが・・・チュンッ!!


シンジの足元をかすめる弾道。


「いたぞ!!あそこだ!・・・ザー、現在サードの位置確認、これより処理にあたる!」


・・・処理!!??

・・殺される・・・・僕は・・・・殺される!!


シンジの脳裏には4年前のあの光景がありありと蘇っていた。


・・・悪く思うな・・・


あの時、自分のこめかみに突きつけられた重く冷たい感触。


・・・嫌だ・・・死にたくない・・・


シンジは必死で近くのドラム缶の後ろに隠れた。

こちらにじわり、じわりと近づいてくる黒い迷彩服の男。


「ガー、0987、状況は?」


「ガー、未だ捜索中、ただ近くにいると思われます、どうぞ。」


通信機で連絡をとる声が聞こえる。

だめだ、ここにいたら結局はつかまってしまう。

シンジの頭にあのときの二度と聞きたくない音が響いた。

そして、飛び散る赤い液体・・・



・・・僕は・・・死ぬのか・・・


だが、そのときシンジの心の中で何かが光った。


「あんたまだ生きてるんでしょ!!?だったらしっかり生きて、それから死になさい!!」


・・・・ミサト・・・さん。

そうだ、僕は・・


「いくんだろ・・・その子に会いに。」


・・・そう僕はアスカに謝りにいかなきゃ。


「あんたバカァ!?身にかかる火の粉を振り払うのは、あったりまえじゃない!!」


アスカ・・・そうだね。


シンジはふっと微笑を浮かべるとポケットのペンダントをぎゅっと握った。


・・・今のうちなら、相手は一人・・・・

さっき無線で連絡をとってたから、数が増えるのは時間の問題だ・・・

でも、相手はプロ。しかも銃を持ってる・・・僕の武器といったら・・


あたりを見渡すと、パイプの破片のようなものが落ちている。


手にとると手に茶色の錆がついた。

ぼろぼろの鉄パイプ、それに引き換え相手は特注の銃・・・

シンジはふうっとため息をついた。

そして、きっと相手のほうをにらんだ。


・・・逃げちゃ・・・だめだ。


低い小さな声でそう自分に言い聞かせる。

そして・・・


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


彼が昔乗っていた紫色の巨人のごとく、咆哮するシンジ。


おもわず振り返る男。

それと同時にシンジの手から鉄のパイプが飛ぶ。

空を舞う鉄の物体。





ガンッ!!


「・・・・!!」


息を呑むシンジ。


「ふん、根性だけは立派なもんだ・・・だが、俺たちはプロだ。

こんなもんにやられてたら命がいくつあっても足りやしねえ・・」


パイプは確かに男の胸にミートした。

普通なら呼吸困難に陥るほど強く。

だが、現にこの男はなにもなかったかのようにシンジの前に仁王立ちしている。


「あえて、あたる範囲が広い胸を狙ったのだろうが、俺達にはこいつがついてる。」


コンと自分の胸をたたく男。


・・・金属音・・・


「ま、そういうことさ。特殊防弾チョッキ・・これさえあればほとんどの銃弾は通用しない・・・

とまあ、このへんで説明は終わりだ。

そろそろ、お祈りの時間といこうか・・・」


「くっ!!」


シンジに向けられる黒い銃口。

頭の上でカチャリと音がする。


終わりだ・・・もう・・・


「ガー、・・・サード捕獲、これより始末します・・」


「ピッ・・・了解、作業終了後ただちに撤収・・・」


「・・・では・・・」


男の通信機でのやり取りが終わる。

だがシンジにはそれが地獄へのプレリュードに聞こえた。

髪をぬらす雨。

すべてがシンジを絶望に突き落とした。


・・・アスカ、僕は謝りにいけそうもないよ・・・

最後まで僕はかっこわるかったかな・・・











ダンッ・・




黄昏の中で低く重い音が響いた。










to be continued



八色の姓さんの「澄み渡った空には」の第2話でした!

おおお、なんだか前回に増してシリアスな展開になってまいりましたね。
特に後半の、シンジが追われる場面なんかは、なんとも緊迫感溢れるハラハラドキドキの展開!
そのスリル感を助長するようなシンジの心理描写と、それに併行する形でナレーションされる情景描写。
さらにはミサトやアスカの台詞のフラッシュバックなどなど、様々な要素をフル活用して、
場面の盛り上がりを巧みに演出なさってました。

>手にとると手に茶色の錆がついた。
相手の銃器に対して、こちらはサビた鉄パイプという、このなんともいえない頼りなさを描写することによって、
場面と読者に更なる緊張感と不安感を煽らせていますよね。いやぁー、お見事っす!

それにしても、サードインパクト後の世界、独房に入れられていたシンジの理由とは一体!?
なぜ4年経った今、加持達はなんのガードもつけずにシンジを解放したのでしょう!?
それに、ミサトの「ごめんなさい」の意味とは!?
うむむむむ、ここら辺にたくさん散りばめられた、次回以降への伏線となる謎が、とっても気になります!

つまり私が言いたいコトはですね、「第3話が早く読みたいっす!」というコトです!!!
あ、もちろん、マイペースでお願いしますね。(^^)

さてさて、シンジの生死や如何に!?次回を待ちましょう!

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