闇の中でぼおっと浮き上がる12対の黒塗りのモノリス。

だが、それらは化石のように朽ち果てていた・・・たった一つ『NO,1』とかかれたモノリスをのぞいて。

そして、その『NO,1』とかかれたモノリスの前に一つの人の影が出来上がっている。

・・・いや、その姿は『人』とはあまりにもかけ離れていた。

『人』の原型をとどめているのはその頭部だけで、他はすべて機械化され、脊髄からは先ほどのモノリスに接続されているであろう回線が伸びている。

良く見ると、彼の唯一人間らしい部分にもごつごつとしたバイザーが装着され、同じようにモノリスに接続されている。

バイザーから発される赤い光。

そして、その光は幾つかの人の影を作り出している。

・・・一つ・・・いや二つか。

先ほどの機械化した彼と三角形を描くように揺らぐその二つの影。

そして、三角形の底辺に当たる部分の一人がゆっくりと口を開いた。


「・・・知ってのとおり、今回我らが目指すところのシナリオに大きな亀裂が生じた。」


「ったくっ!一体なんだってんだ!ガキ一人を殺りそんじるたぁ!

ネルフの犬と、良くわからねえガキなんかに!!」


最初に口を開いた男とは対照的に、ダンッと机を叩き息を荒げるもう一人の男。


「・・まあ、そう怒るな。」


「し、しかし。」


「・・ネルフの犬はともかく、原因はもう一人のあの少年だ。

先ほど入った情報によると、目標付近に生じたエネルギーと同等のものがあの少年の体内に生じていたらしい。」


バサッ。


「・・・渚カオル、同時に第一七使徒ダブリス・・・」


「・・・渚・・カオル・・・??なんだこりゃ、年齢、及び生年月日、そして過去の経歴はすべて不明・・・どういうことだ?」


「あなたは良くご存知ですね、キール議長。」


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・キール議長・・・私達は同じ志の下に集った・・いわば仲間です。」


「・・・・何が言いたい?」


威圧するようなキールの声が響いた。

機械仕掛けのその声・・

先ほどの彼はその音声の出力先を確認してわずかに肩をすくめ、答えた。


「ですから、先の碇シンジ抹殺の件で邪魔をしたとされる、この少年の正体をお教えいただきたいのです。

彼は何者で、一体どうやって我々の邪魔をしたのか・・・そして、我々の仲間となり得るのか。」


わずかな沈黙の時が過ぎた・・・そして、突然にやりと笑みを浮かべるキール。


「・・・どうやら着いたようだ・・・ミハエル大佐、ダラス軍曹・・・

ご質問は本人に直接お願いします・・・」


低く重い声が薄暗い部屋の中に響く。

そして、次の瞬間、その部屋の中に一筋の光が差し込んだ。

はっとして振り向く二人。


そして・・・


「・・・・・・待ちわびたぞ・・・ダブリス。」







澄み渡った空には


第五話

再会

 




目の前に手をかざして光をさえぎる二人。

その光の中をゆっくりと歩いてくる人物。


「・・・・・奴が・・・・・・」


「渚・・カオル・・・なるほど、まるで天の使いのような登場だな。」


天の使い・・・

カオルの紅蓮の炎を宿したように光る瞳、抜けるように白い素肌、そして銀色の髪・・・

たしかに光の中のカオルの容姿には、キールとはまた違う形で『人』とかけ離れたものがあった。


「・・・・・・・・・」


バタン・・・


重い扉がゆっくりと閉まる。

再び闇に染まる部屋の中。


「・・・やあ・・・一応久しぶり、と言っておくよ、キール。」


「・・・お前にまた会えるとはな・・・」


「それは・・・僕も同じさ。

・・・また君とこうして話せることができるなんて、夢にも思わなかったよ・・・」


にっこりと微笑むカオル。

誰をも魅了するようなその笑顔、しかし、カオルのその瞳は同時にナイフのような鋭さをも称えていた。

それを感じ取ってだろうか、ごくりと喉を鳴らすミハエル。


(・・・一体、なんだというのだ・・・この少年は・・・

・・・くっ・・あれか・・奴のあの赤い瞳・・・

・・やはり、こいつが・・碇シンジを・・・)


カオルから視線を外し、ゆっくりと隣を見るミハエル。

となりに座ったダラスも脂汗をたらし、緊張を隠せないでいた。


((・・・これが『壁』なのか・・?))


そんな中、緊張を解くようにキールが再度口を開く。


「・・・ダブリス、お前をここに呼んだ理由は言わんでもわかるな・・・」


「・・・さてね・・・」


面倒くさそうに、頭をかきながらボソリと言うカオル。


「フ・・相変わらずだな。・・・だが、これを聞けば貴様とて黙ってはいられんだろう・・」


キールがそう言って手元のボタンを押すと部屋の中に機会音が響いた。


ガチャ・・・


「・・・サード捕獲、これより始末します・・」


「ピッ・・・了解、作業終了後ただちに撤収・・・」








「なんだこりゃーーーーっ!!」


「畜生!どうなってんだ!??・・ガー、俺です、作戦は・・・」


ブウン・・・

ツー・・・ツー・・・







「・・・・・テープはここまでで終わりだ。

・・・原因は電磁波を含んだ強力なエネルギーの発生によるものらしい・・

そして、ほぼ同じ時間にそれと同等のエネルギー派が、とある灰ビルの屋上で確認されている。

・・・お前がいた場所だ。」


言葉を終えゆっくりと手を組み、息を吐くキール。


「・・残念だ・・・飼い犬に手を噛まれることになるとは・・」


その瞬間、カオルがふいに顔を上げた。


「・・・!!!」


思わず息を呑むミハエル、そしてダグラス。

カオルの手からはあの時と同じオレンジ色の光がシールド状に展開されていた。


・・・これがっ・・!!


「・・フ、言葉を返すようだけど、僕は君達の犬に成り下がった覚えは・・ない。

僕の自由は何人にも侵すことはできないと言うことをお忘れかい?」


「ATフィールド・・・それがお前の答えと言うわけか・・」


「そう・・考えてくれていい。」


「・・・・後悔することになるぞ・・・・ダブリス。」


「・・・・フン・・・」


まるでキールの言葉を無視するかのように、鼻を鳴らすとカオルは3人に背を向けた。

みると、いつのまにかATフィールドは消えている。

入って来たときと同じ調子でたんたんとドアに向かうカオル。

と、その時、キールの低い声が再度響き渡った。


「・・ダブリス・・貴様・・ネルフにつくきか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


カオルの足取りがぴたりと止まる。


「・・・彼女が・・・」


「なに?」


「彼女が・・・そう望むなら・・・」


バタン・・・・


ゆっくりと重々しい音を放つドア。

一瞬、外の光によって照らされた部屋もまた闇に溶けている。


「・・・彼女・・だと・・?何をたわけたことを・・・ふん・・・まあ、いい・・

さて・・おや、大佐、軍曹。おふた方は『あれ』を見るのは初めてでしたかな。」


キールの『あれ』と言う言葉は、カオルを指すものともフィールドを指すものとも取ることができた。

しかし、二人にとって恐怖と言う点ではそれらになんら相違はなかった。


「・・・あれがATフィールドですか・・・」


「そうです、ネルフの切り札・・そして今は我々の切り札でもある。

以前にお話しましたね・・」


「しかし・・・あれを生身の体で使える人間がいるとは・・・

キール議長、奴をこのままにしておくのは、あまりよい策とは考えられませんが。」


「・・・今すぐ、ひっとらえるべきです。・・・命令を。」


軍人でありながら、カオルを前に動けなかった自分によほど腹が立っているのか、それともいまだに続いている恐怖からなのか、ダラスの声は震えていた。

キールはそれを嘲り笑うかのように微笑を浮かべた。


「・・大佐、軍曹・・戦の中でもっとも恐れるべきものは一体何だと思いますか・・・」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


「・・・・謀反・・・・・・裏切りですよ。

四年前のあの時に、私はその恐ろしさを思い知らされた・・・

我々に今必要なのは奴ではない・・・忠実な『駒』だ・・・我々の命令通りに動く駒がな。」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


息をのむ二人。

二人の目に映ったキールの顔はゆがんでいた。

憎しみと復讐にゆがんだキールの横顔は、先ほどのカオルいや、それ以上の恐怖を二人に感じさせた。

皮肉にも彼に唯一残された『人としての形』がそうさせた・・・



・・・駒・・・そう、駒だ・・・・『私』に必要なのは・・


キールのバイザーがビジョンに向けられる。


・・・見ていろ・・・ネルフ・・・そして碇の息子・・・


to be continued



八色の姓さんの「澄み渡った空には」第5話でした〜〜!

《(偽)TLFの部屋》

アスカ「キール議長ってば、いよいよターミネーター化してきちゃったわねぇ。」
リツコ「ターミネーターっていうよりも、もはや人工知能ね。」
アスカ「行く末にはただの集積回路になっちゃったりして。」
ミサト「うぷぷっ。あり得る。製品番号キール0A21とかね。グビグビ。」
アスカ「そんでもって、梱包の箱にはアノ顔がプリントされてるの。もちろん1年間の保証書付き。」
ミサト「アハハハハハっ。グビグビ。」
リツコ「(フムフム・・・。使える案ね・・・。メモメモ。)」
ミサト「にしてもアスカってば一体いつ登場するのかしらん。気になるわねぇー。ひっく。」
リツコ「キール議長みたく、改造されてたりしてね。」
アスカ「そ、そんなワケないでしょ!」
ミサト「うんにゃ、それはまだ分からないわよん。グビグビ。」
アスカ「バッカみたい!それにこのあたしのパーフェクトボディーに改造の余地なんて無いわよ!」
リツコ「そうかしら?特に性格的な所なんかは十分に改良の余地がありそうなんだけど。」
アスカ「う、うっさいわね!余計なお世話よ!」
ミサト「そーそー。もちょっと素直になれば、シンちゃんも虜にできるのにねぇ。」
アスカ「シ、シンジは、カンケーないでしょ!」
リツコ「あら、まっ赤になっちゃって。若いっていいわね。」
ミサト「ほーーんと、若い頃は・・・。(遠い目)」


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