「・・・痛ててて・・・」
頬をすすりながらよろよろと歩くシンジ。
足元もおぼつかないようだ。
「っとに・・・馬鹿なんだから・・・シンジは・・・
ほら、これ使いなさいよ。」
シンジを支えるようにして隣に並ぶのはアスカ。
強気な口調とは裏腹に表情は暗く、今にも泣き出してしまいそうな表情だ。
それをシンジに悟られないように、ふんとそっぽを向く。
「ほら!早く。いつまでもたせとく気ぃ?」
頬をすするのをやめて、微笑を浮かべるシンジ。
「ありがと・・・アスカ。」
「い、いいのよ!」
ゆっくりとアスカの手に握られた白いハンカチに手をやるシンジ。
「・・・あはは。アスカの匂いがする。」
シンジが何気なく放ったその言葉にアスカの頬がみるみるうちに紅潮していく。
「ア、アンタ、何馬鹿なこと言ってんのぉ!!」
「ははは、ごめん。でも・・・ほんとに・・・そうだね・・・
僕がもうちょっと利口だったら、こんなにならなくてもよかったかもね・・・」
おもわず、シンジを見つめるアスカ。
そこには傷だらけになりながらもにっこりと微笑む、いつもどうりの彼がいた。
心の形、LASの形
〜例えば、僕が人を傷つけるとき〜
「なあ、惣流よぉ。」
アスカが振り向くと、そこにはどうでもいいクラスメートの男の一人が立っていた。
にやけた顔でこちらを見ている。
声のかけ方だけでも判断できること・・・それはいわゆる嫌なやつということだ。
・・・・フン、こんな男・・・返事をするのも時間の無駄だわ・・・・・
そう判断したアスカは男の言葉には耳もかさず帰りの仕度を続けた。
しかし、男はしつこく話し掛けてくる。
「おめえさぁ、何でそんな髪の色してんだ?目の色も普通じゃねえな。」
ふうっとため息をつくアスカ。
自分がクオーターであるということをこのクラスの中で知らない者はいない。
ようするに、こいつは自分にからみたいのだ。
アスカは今になってシンジに自分の仕事を押し付けたことを後悔していた。
・・・・やれやれ、最近はこういう馬鹿も減ってきたと思ったのに・・・・
あー、嫌だ嫌だ、シンジの奴はまだ帰ってこないし・・・
かといって逃げるのもしゃくだし・・・
面倒くさいが、自分の火の粉になりそうな男の顔くらい見ておくのも良いだろう。
そうおもって、男の顔をしげしげと眺めるアスカ。
どこにでもいそうな、ちょっと顔のいい男だ。
大勢でつるんで、その中心で笑っていそうなシンジとはまるで正反対のタイプ。
他人の性格をどうこう言う気はなかったが、アスカは、この男に見え隠れするマザコン風の笑いがひどく気に入らなかった。
「なあ、聞いてんのかよ。」
そうこの笑い方だ。
口元をゆがませフフンと笑うこのしぐさ。
あたかも自分がえらく、アスカは格下だとでもいいたげなこの表情。
いい加減この無意味な時間にいらいらしてきたアスカは、仕方なく口を開ことにした。
「ねえ、アンタ、アタシに何の用なの?
もうみんなとっくに帰ったわよ。アンタは帰らなくていいの?」
本当はこいつのほっぺたでもひっぱだいてやりたかったが、理由もなくそれでは、いくら気に要らない奴でも可愛そうだ。
できる限り穏便に振舞ってやる。
だが、男は何が気に入らなかったのか知らないが、急にいらいらしはじめた。
「うるさいな!俺は早く帰ってそんなに勉強する必要なんてないんだよ!」
答えにならない返事だったが、アスカはそれを聞いてすべてを理解した。
そして、さりげなく相手の胸のネームプレートに目をやる。
『学勉(まなびつとむ)』・・・やはりそうだった。
前回のテストで三位だった男。
もちろん、一位はアスカ。
そして、二位はシンジだ。
「何怒ってんのアンタ?それに、だれも、勉強のことなんて言ってないじゃない。」
「なにぃ!それは、なにか?遠まわしに、一位になった自分を自慢しているのか?
それとも、三位の俺を侮辱しているのか!??碇にまでまけたこの俺を!!」
男はさきほどよりも怒りをあらわにして声を張り上げている。
・・・・ふう、とんでもない奴に目をつけられたものだわ・・・まさに病気ね・・・
やれやれと肩をすくめるアスカ。
「あのさあ、いまさらテストのことどうこういったって仕方ないじゃなんじゃない?
アンタ男でしょ、くだらないことでうじうじしてないでくれない?」
「くっ、くだらないだとぉ!!俺にとってテストは生きがいだ!
俺は今まで常に一番をとりつづけてきた!これからもそうするつもりだった・・・だが・・・惣流!
お前が学校に来るようになってからは、いつでも二番・・・ましてや今回なんて・・・・
張り出される順位表を見る生徒達がいつも、『また学君、惣流さんに負けちゃったわね、あれ碇君にも・・』などと黄色い声をあげ、家では親に怒られ・・・・・
わかるかぁ、お前らにこの俺の苦しみが!!」
アスカは「そんなもん、分かる訳無いじゃない」と即答するつもりだったが、ふと思うものがあり、踏みとどまった。
テストにしか自分の価値を見出せない人間。
EVAに乗ることがすべてだった昔の自分。
そのテストにすら見放された人間。
EVAに乗れなくなった自分。
・・・・なんか、こいつ、昔のあたしみたい・・・
「なあ!黙ってないで、何とかいえよ!!」
いつのまにか男は半狂乱になり、その目はぎらぎらと怪しく光っていた。
「・・・・・わかるわよ・・・・あたしだって・・・・」
うつむき加減で、ボソリというアスカ。
別にこいつを慰める気はなかったが、こいつのいう言葉にすくなからず昔のEVAだけで生きてきた自分を思い出していたのかもしれない。
だが、さらに逆上する目の前の男。
「なにぃ!!わかるだとぉ!!てめえなんかにわかるわけねぇだろ!!
天才という二文字で常に勝ち上がり、努力なんかしたこともねぇんだろ!!
碇もそうさ!あいつの親父なんかすげえとこにいるんだってな!
そうさ!まともにやったってかなうわけねえんだよな!」
・・・・パンッ
いつのまにかアスカは目の前の男の頬を打っていた。
いままで、男の話をなんとなく聞き流してきたアスカだったが、今回ばかりは許せなかった。
自分のそしてシンジの血を吐くような努力を、これっぽっちも見ようとしない目の前のこの男を許すわけにはいかなかった。
「あんた!あたし達がどれだけ苦しんで、どれだけ頑張ったか知らないのよ!
シンジは命の選択権すら与えられなかった。
それでも、必死にEVAに乗りつづけた・・・・アンタには一生かかってもわかんないわ!
天才?そんなわけないじゃない!どれほど天才だったらよかったって思ったことか!
小さいころから必死に努力して・・・大学でも周りになめられないようにって、さらに自分を磨いて、アンタこそあたしのことなんてぜったにわかんないわ!」
感極まったせいか、いつのまにかアスカは泣いていた。
自分の人生をテストなどというくだらないものと天秤にかけられ、ただひたすらに悔しかった。
「・・・フン。そうかよ・・・だがな、やっぱりお前と俺は違うよ・・・」
男は先ほどとはうって変わって今度は、ゆっくりと声を低くしていった。
アスカは涙もふかず、顔を上げ、きっと男をにらんだ。
・・・だが、そこには妖しい笑みを浮かべた先ほどとは別人のような顔をした人物がたっていた。
「・・・惣流・・・
お前の親父さん・・・特別なんだってなぁ・・・
雑誌なんかではたまに目にするけど・・・まさか実物がこんなに近くにいたなんて・・・
まさに灯台下暮らしてやつだぜ。」
・・・こいつ・・・
アスカは目の前の男が、何を言わんとしているかを瞬間的に察した。
「・・・・へっ!頭も顔も良い・・・当然だよなぁ!
いわゆるエリート様の娘だ。
ま、その代わり、お前みたいな奴が世の中にはごろごろいるってわけだ。
精子バンクかぁ・・・・やれやれ、世の中も便利になったもんだぜ・・・」
「・・・やめて・・・」
「アメリカじゃ普通なんだったっけなあ?
・・・フン、まあ、島国根性の強い日本じゃどうだか・・・
今はうまくやってるみてぇだけど・・・さて・・・一気に友達減るんじゃねえかあ?ハッハッハッハッハ!」
勝ち誇ったように笑う男の声が教室に響きわたった。
悔しさでアスカの目から涙がこぼれ落ちた。
・・・・・・こんな奴に・・・・こんな奴なんかに・・・・
「けっ!さっきまでの強気な態度はどうしたんだよ!おい!」
興奮しきった男はアスカに接近しそのまま胸ぐらをつかみ、さらにがなりたてた。
「学年一番の惣流さんよぉお!!「やめろぉ!!」
ドアの空く音を掻き消すほどの大きな声が教室にこだました。
開け放たれたドアの方を向く二人。
「・・・・シンジ・・・・」
「フン、碇か。」
はき捨てるように言うと、男はアスカから手を離した。
無言でアスカのほうに駆け寄るシンジ。
シンジの目にとまる乱れたアスカの制服、そして、彼女の頬を伝う涙・・・
・・・・アスカ・・・・
シンジは何も言わずにアスカを抱きしめた。
自分の腕の中で、めったに泣かないアスカが肩をゆすって泣いていた。
「おいおい、勘弁してくれよ・・・悲劇のお姫様をヒーローが助けに来たってわけかあ?
さしずめ、この俺は悪者・・・フン、やってらんねえぜ!」
そう言い捨てると、カバンを肩からぶら下げ二人に背を向ける男。
だが、シンジの声がその男を止めた。
「待て。」
「・・・シンジ?」
恐ろしく静かで迫力のある声だった。
アスカですら聞いたことのない声だった。
そして、アスカはシンジの胸の鼓動が次第に高鳴っていくのを感じた。
「・・・アスカに・・・・何をした?」
「あん?・・・別にぃ、ひまだったからおしゃべりしてただけさ。」
茶化すようにへらへらと答える男。
シンジはふりかえろうともしないで、アスカを抱きとめたまま、再度口を開いた。
「もう一度聞く・・・アスカに・・・・何をした。」
「・・・な、なんども言わすんじゃねえよ、だから、二人で・・・ボグッ!!
次の瞬間、男の言葉はシンジの鉄拳によって半強制的にさえぎられた。
今まで、人を殴るということを一切しなかったシンジ。
シンジの拳を受けた人間はせいぜいトウジくらいなものだ。
だが、あのときと今とでは状況が明らかに違った、そして、シンジの目も・・・
「絶対に許さない!!よくもアスカを!!アスカを!!」
男ともみ合いになりながらも、だたひたすらに相手を殴りつけるシンジ。
もちろん、シンジも無傷であるはずがなかった。
それもそのはず、シンジは格闘技をやっているわけでもないし、ケンカなんてこともほとんどしたことがなかったのだから。
シンジの拳があたれば、相手の拳も自分の頬を打つ。
それを数分間繰り返した。見る見るうちにはれ上がる二人の顔。
そして、シンジがもう一度拳を振り上げようとしたその瞬間・・・
「もうやめてよ!!シンジ!!お願い!お願い・・・・・だから・・・・・・・」
響き渡るアスカの声。
その瞬間、シンジは我に返ったように腕を下ろし、彼女の方を見た。
・・・涙・・・
・・・・・僕はなにを・・・・・
ゆっくりと男から離れるシンジ。
男もなにも言わずにたちあがり、腕を押さえながら教室を出ていった。
・・・・・教室の中に唯一響くアスカのすすり泣く声。
「・・・アスカ・・・その・・・・・・・・・・・・・ごめん。
あの、つい・・・かっとなっちゃって・・・・・
気がついたら、あいつのこと殴ってて・・・止まらなくて・・・・
あいつのこと許せなくて・・・それで・・・・
ホントに・・・・・・・ごめん。・・・・だから、その・・・泣かないで・・・・泣かないでほしい・・・」
ありったけの謝罪の言葉を羅列するシンジ。
先ほどの夜叉のような顔とはうってかわって、眉をヘの字にして今にも泣きそうな顔をしている。
そんなシンジを涙で濡れた目で直視するアスカ。
いいわけがましく、もごもごと口を動かすシンジ。
「あの・・・僕は・・・」
「よかった・・・」
「え?」
「・・・いつものシンジだ・・・」
安心したようにそう言うと、アスカは涙の顔で精一杯の笑顔を作って見せた。
「・・・・アスカ・・・・」
シンジはもう一度自分の胸に抱き寄せた。
そして、上を向きながらもう一度アスカにいった。
「・・・・・ごめん・・・・・」
そう言うとアスカの栗毛色の髪の毛にそっと触れた。
胸に何かわからないものが込み上げてくる。
シンジは思わずもう一度上を向いた。
そうしなければ、涙をこらえられそうになかった。
シンジがアスカにより密着ようとしたその瞬間・・・
「お〜い!まだ誰か残ってるのかあ?」
廊下に響く声。
「・・・アスカ・・・先生だよ・・・」
なにもいわず頷くアスカ。
・・・・駄目だ・・・・
シンジはアスカのぐしょぐしょの顔を見てそう判断した。
めったに泣かない彼女のこんな姿を見たら、相手がいくら先生でもなにかと面倒なことになる。
シンジは少し周りを見渡すとアスカを近くの椅子に座らせ、自分は黒板の側に近寄り、黒板消しを手に取る。
「・・・シンジ?」
鼻の詰まったような声で怪訝そうにシンジを見つめるアスカ。
「大丈夫・・・僕がうまくやるから。
運よく僕達は週番なんだし・・・ね。」
シンジがいい終えると同時に、見まわりの先生らしき人物が僕達のいる教室の前で足を止めた。
「・・・ん?なんだ、シンジ君とアスカか。」
「・・・かっ、加持先生!!」
予想外の人物の登場の面食らうシンジ。
だがあえて、そちらのほうは向かない。
もし顔を向ければ、自分のはれ上がった顔をさらけ出すことになる。
特に左側の頬は決して見せてはならなかった。
不幸中の幸いといおうか、偶然加持はシンジの右側面しか確認できない位置にいる。
ドクドクと秒刻みで高鳴っていく心臓。
・・・まずいよ、よりにもよって加持先生だなんて・・・
「ふむ、たいへんだな週番ってのも。」
「そ、そうなんですよね、日誌書いたり、机直したり、ゴミ捨てしたり、黒板消したり・・
はっはっは・・・・・・・・ははは。」
「???」
思わずため息を付くアスカ。
・・・・ったくシンジ・・・しゃべりすぎなのよ・・・・
前に、とある本屋で立ち読みした雑誌のコラムを思い出すアスカ。
『後ろめたい男はよく喋る』
・・・やれやれ・・・
それに、相手があの加持先生じゃあ・・・
予想道理、加持は腕組みをしたまま、まるで観察するかのようにシンジを上から下まで眺めている。
相変わらず、シンジはせっせと黒板の手入れの『ふり』を続けている。
加持はなにもいわず少しそれを見ていたが、突然にやりと微笑んだかと思うと、自分のネクタイピンを落とした。
・・・カン・・・
金属の音が教室に響く。
「おっと、いかん、すまないシンジ君ちょっととってくれないか?」
「あ、はい。」
加持の狙い道理、反射的に腰をかがめて床に落ちたネクタイピンを拾うシンジ。
ピンには「KAJI」というネームが施されていた。
「はい、加持先生。素敵なピンですね。」
「ありがとう、シンジ君。だが、君のその拳の傷も、男としてはなかなか素敵な勲章だと思うよ。」
思わずはっとするシンジ。
対象的ににっこりと微笑む加持。
「俺をだまそうなんて十年早いぞ、シンジ君。
さて、どうしたんだその拳の傷は・・・ん?頬もか。」
右頬に手を当てるシンジ。
はれ上がり熱を持っているせいかそこだけ熱い。
「ほら、どうしたんだ?」
「あの・・・・ちょっと、転んじゃって・・・ほらあの、ゴミ箱もってたら階段でその・・・」
「そうか。」
「は、はい。」
「・・・・さっきな。ちょうどここにくる前に、君と同じような怪我した子とあってさ。
ああ、たしか彼は、右頬がはれてたっけな?
彼も転んだって言ってたよ。
今日はやけに階段がすべるんだなあ・・」
加持の言葉に愕然とするシンジ。
・・・駄目だ・・・この先生に嘘をついたところで・・・どうすれば・・・
「加持先生!!」
ちょうどその時アスカがこちらに駆け寄ってきた。
「うん?なんだい、アスカ。」
「アスカだめだよ!!」
「だって、このままじゃ、シンジ馬鹿みたいじゃない!!
ほんとなら、そんな怪我しなくてすんだのに!!」
「いいんだよ!僕は!!」
「まあ待て待て。」
加持に静止され押し黙る二人。
「・・・・二人でケンカしててもしかたない・・・・どう言うわけなのか俺に話してくれないか。」
◇
「・・・なるほど。それで、殴り合ったってわけか・・・
まあ、大方予想はついていたけどね。」
微笑みながら僕の左頬を指差す加持先生。
「・・・許せなかったんです、アスカをそんな風に言う奴が・・・」
「そうか・・・・ま、男が人を殴って良いときというのはそういうときさ。
自分にかかる火の粉を払うとき、そして、好きな女を守るとき・・・
俺は男として言えば、シンジ君はえらいと思う。
だが、いち教師としていえば、もっと別の方法があったはず・・・とまあ、こんなことは今さらいってもしかたないな。
どれ・・・アスカ、ちょっと顔を見せてごらん。」
一瞬不思議そうな表情をしたが、ゆっくりと頷き加持に顔を寄せるアスカ。
加持はアスカの顎にそっと手を添えしげしげと彼女の顔を眺めた。
「あの?」
アスカが口を開くと、加持はそっとその手を離した。
そして今度はシンジに向き直る。
そして、にんまりと男臭い笑いを浮かべた。
「シンジ君、合格だ。」
「え・・?なにがですか?」
加持の唐突な言葉におもわず何がなんだかわからないというような表情をしているシンジ。
「おいおい、シンジ君。
君はアスカを守るために自分の拳を傷つけてまで、彼を殴ったんだろ?」
「・・・はい・・・そうですけど・・・」
「だったら、その自分が使命を果たすことができたのかどうか、それが一番重要なことじゃないのかい?」
はっとして、アスカの顔を見るシンジ。
「大丈夫さ、言ったろ合格だって。
制服のボタンが取れちまったみたいだが、ま、そんなのはまた付ければいいだけさ。
もし彼女の顔に傷でもついててみろ、君は一生かけてでも、償わなければならないんだぞ。
・・・・ま、とにかくご苦労様。」
そういうとシンジの頭をくしゃくしゃとかきまわす加持。
「それにしても・・・今回の事件・・・
俺は教師としてはなく、ネルフ諜報部として謝らなければならないな。
極秘情報の駄々漏れだ・・・明日にでも調べてみるよ。」
「はい・・・よろしくお願いします。」
「さて、この建物の中では俺は一応教師だからな。
君達の下校指導にあたらなくちゃならん。
とういわけで・・・・オホン・・・・
遅くなるからそろそろ帰りなさい、もちろん、碇はアスカ君を送っていくように。」
そう言うといつものにんまりとした顔をする加持。
おもわずクスッと笑いを漏らすアスカ。
「フフ・・・加持さんがそんなこというなんて!なんかへんだわ!」
「俺もさ、まだお偉いさんの情報かぎまわって方がいいよ。
っと、いけね、ほら、早く帰りなさい。」
「「はい、わかりました。さよなら加持先生。」」
シンジもアスカもにっこりと微笑みながら、生徒らしく挨拶をした。
「じゃあな。」
背を向ける加持。
シンジとアスカも加持の背中を見ると、自分たちも加持に背中を向け階段の方へと去っていった。
窓からさしこむ夕日の光が三人の影を映し出していた。
・
・
・
「・・・・おかしいよなあ、あのときはぜんぜん痛くも何ともなかったんだけど・・・
階段降りたあたりからさ、なんかずきずきし始めてさ・・・」
アスカに借りたハンカチを頬に当てながらブツブツと愚痴をたれるシンジ。
「そういうもんよ。・・・・それにしても、なんかホントに痛そうね。
ゾンビみたいよ、シンジ。」
事実シンジの眼ははれ上がった頬に押しつぶされるようになって、シンジの顔はなんともいびつなかたちなっていた。
「ははは、ひどいなアスカ。
でも、ホントに加持さんの言うといおり、アスカの顔が何でもなくてよかったよ。」
「ふ〜ん、そうねえ・・・」
どこか曖昧な返事を返すアスカ。
不思議におもって立ち止まるシンジ。
「・・・・アスカ?」
アスカは立ち止まったシンジを置いて、路上にしかれたタイルの上を一枚とばしでけんけんをしていた。
そして、シンジとの間が3mくらい開くと、勢いよく振り向いた。
栗毛色の髪がぴょんとゆれる。
「ねえ。シンジ。」
「ん?」
「あの時さ、もしも、あたしが怪我しちゃってたらシンジはどうしてくれたのかなって思ってね!」
「え?どうって・・・」
「もう!鈍いんだから!・・・・・だから・・・・・
アタシのこと・・・もらってくれたのかどうかってこと・・・」
アスカが最後の言葉を言うと同時にちょうど、近くにいたハトの群れが一斉に飛び立った。
そして、アスカとシンジの間を勢いよく駆ける。
「え?アスカ・・・」
「そういうことよ!・・・・アンタの返事聞かせなさいよ・・・・」
顔を真っ赤に染め上げているアスカ。
もちろんそれは夕日のせいだけではない。
「・・・あの、アスカ・・・・・・最後のほうよく聞こえなかったんだけど・・・・
その、もう一回言って・・・パチンッ!!
シンジが言葉を終える前に彼のの右頬を再度鋭い痛みが襲った。
思わず涙目になるシンジ。
「ア、アスカ!!なにすんだよ、そこさっきの・・・イテテテ・・・」
「もう!アンタみたいな馬鹿!見たことないわ!
何がもう一回よ、もうアタシ帰る!」
「アスカ?、え、なんで?なに怒ってんの?」
「ふん!自分の胸に聞いてみなさいよっ!!
ロマンも何もあったもんじゃないわ!!」
「え?まってよ、アスカ・・・・・・・・ねえ、あすかってば!!」
「うっさいわねえ、ついて来ないでよ!!」
・
・
・
to be continued
どうも八色の姓です、お付き合いいただきありがとうございました。
今回はホントに予想以上に長くなってしまいましたね。
実はこのねた、マガジンに掲載されているGTOを読んでいて思いついたんです。
たしか、単行本ではアスカは精子バンクで生まれたんだったなあ、っておもいながらね。
テーマはLOVELOVEのLASの中にシリアスをってことだったんですが・・・
どうでしょう、成功でしょうか?こればっかりは僕が評価しても自己満足にしかなりませんから、お読み下さった皆さんが感想を下さるととても嬉しいです。
そうそう、ちなみに、最後の「to be continued」なんですが、これが何を意味するかなんて聞くだけ野暮ですよね。・・・・そういうことです♪
なんか無理ありますかねえ・・・・
では、今回はこの辺で。
・・・・・・最後に一言、LASよ永遠なれ(笑)
八色の姓さんの「心の形、LASの形 〜例えば、僕が人を傷つけるとき〜」でした〜〜!(^^)
今回はシリアス要素を入れたLASという、八色さん初の試みの作品なワケですね。オリキャラ学君に心の傷口を広げられてしまったアスカ。「イテテ」な展開もありましたが(^^;)、そこに現れるは我らがヒーロー、スーパーシンジ君。読者のうっぷんを晴らすが如く、大活躍してくれました(^^)。その後の加持の対応ぶりも渋くてカッコイイ!加持って、なんだかシンジの良き兄貴って感じですよね(^^)。いつもブラブラしてそうな加持のこういう一面っていうのは、とても説得力が感じられます。それにしても、学君、恐ろしいくらいの極悪キャラでしたね(^^;)。
そしてラスト直前。
>アスカが最後の言葉を言うと同時にちょうど、近くにいたハトの群れが一斉に飛び立った。
くぅぅーー!なんとも巧い演出ですね!(^^)その場の光景が目に浮かぶようです。
そしてそして、一騒動あったけど、このまま良い雰囲気で終わるのかなぁ・・・と、思いきや!シンジに言葉を聞き逃されてアスカが激怒!しかも、頬もひっぱたかれて・・・(^^;)。でも、それだけ、シンジへの想いが強いという事なのでしょうね。
果たして、この後どういった展開を見せるのか!?こりゃもう続編を期待するしかないでしょう!
ご覧になった皆様も、是非とも是非とも、八色の姓さんにご感想を送りましょう!たった一言の感想が、このような素晴らしい名作を生み出す大きな力になるのです。皆様、なにとぞ、ご感想をよろしくお願いします!w(_
_)w
私達に名作を提供して下さった、八色の姓さんへのご感想はこちらか、掲示板へ!
是非ともお願いします!m(_ _)m