ピカデリー(ハイドパーク・コーナー)
パーク・レーン・ホテル
どこから失敬してきたのか、ルームサービス用のワゴンに載せられて運び入れられた4つの木箱は、リビングの中央に鎮座している大きな木製のテーブルに置かれた。すぐに何人かがそれを囲み、程なくして木箱は開かれる。中には、これから戦争でも始めるのかと本気で疑いたくなるような重火器が満載されていた。機関銃に予備のマガジン、プラスティック爆弾に手榴弾各種、それから日本人の手では持ち切れない程に巨大なハンドガン。恐らく弾丸を収めているのであろう四角い紙の箱も隙間なく詰めこまれている。プロの装備だ。
「IMIのマグナムオートか」
「しかも.50だ。更に弾丸は、我等がThuringwethil特製のJ:AE。こいつがあれば、サイバードールでも装甲車でも相手にできる。全員分あるぞ」
嬉々とした表情でボディガードたちは武器の点検をしているが、オレは彼等が手にしている弾丸を見て目を見張った。とてつもない大きさをしている。親指よりも太くて長い銃弾――しかもあれが普通のピストルから発射されることを考えると驚異的だ。
「対サイバードール用に開発された、スリングウェシル仕様のジャケテッド・アクション・エクスプレスか。たとえ装甲を貫通できなくても、着弾時の衝撃だけで充分に仕留められる。ハンドガンじゃ最強の組み合わせよね。まさにハンドキャノンだわ」
「弾は全部ジャケテッド・ブレットを選んできた。後はイークアロイだな。ホローポイント系じゃ、また連中が襲ってきた時使えないだろう。街中を長物持って歩くわけにはいかないから、ハンドガンが主体だが」
交わされる言語は英語がベースのようなので、オレには殆ど理解できない。だが、どう考えても明日のピクニックの相談をしているようには見えない。相談というより、装弾。絶対に物騒な話に決まってる。それも、恐らく意味を理解できないことに感謝したくなる種の。
――厄介事を回避するため、佐祐理さんの別荘(正確には親父さんのらしいが)から脱出したオレたちは、ロンドン中心部に下り『パーク・レーン』と云うホテルに全員でチェック・インして寝床を確保した。位置的には、ピカデリィ・サーカスに近い。ピカデリィと云う大きな通りに面していて、その通りの向かい側にはグリーン・パークが見える。すぐ右隣にドンと構えているのは日本大使館(総領事館)。有事の際には、文字通り走って駆け込めるって寸法だ。
この
Park Lane Hotelは、高級ホテルにランキングされるそれはゴージャスな宿泊施設だ。佐祐理さんはツインで7部屋とってくれたわけだが、宿泊料はこのクラスだと普通1泊で250£(約5万円)は取られる。しかもチップも10%くらいは取られるからなぁ……。これが7部屋だから1日で35万。庶民からすれば吐血しそうな額だ。特に、口座にカードでは引き出せない単位の額しか残ってないようなオレには。
だけど、正直言って今のオレは宿泊費のことを呑気に心配していられるような心理状態にはなかった。得体の知れない連中の襲撃を受けてショックを受けていたこともあるし、天野のことが心配でもあったからだ。オレは我侭を通して、また天野と一緒の部屋を割り当ててもらったのだが、その彼女は重態だというのに香里と栞の部屋に行ってしまった。変わりに、何故かオレの部屋でボディガードたちが作戦会議を開いている。どうやらオレに話があるようなんだが――
ドアが開いて、香里に肩を借りた天野が入ってきた。オレは慌てて彼女に駆け寄り、手を貸す。天野と香里の後ろには、秋子さんと佐祐理さん、舞の姿も見えた。察するに、オレとミッシーの部屋が会議室代わりに使われることになったらしい。何時の間に決めたんだ?
「天野、どこに行ってたんだよ。寝てなきゃ駄目だろう」
抵抗する彼女を無理矢理ベッドに寝かしつけ、無茶を咎める。
「美坂さん――栞さんが軽い興奮状態にあったので、催眠暗示をかけてきたんです。私以外にはできないでしょう?」
「そりゃ栞は色々と精神的にショックを受けてたみたいだけど、オレはお前も心配なんだ。拳銃で撃たれて、治療さえしてないんだぜ? 頼むから分かってくれよ」
天野は自分の存在や傷なんかを軽視し過ぎる嫌いがある。オレはそれを美徳だなんて思えない。こいつ1番の欠点だ。自分を大切に出来ない奴を見るのは、正直つらいものがある。
「あなたに心配して貰えるほど嬉しいことはありません、相沢さん。でも、こういったケースがPTSDに繋がることは良くあるんです。適切な処置が必要だったんですよ、栞さんには。私の身体は時が経てば癒えるでしょう。でも、心の傷は――相沢さんなら分かるでしょう?」
心の傷、PTSDか。聞いたことがある。確か、
「post-traumatic stress disorders。心的外傷後ストレス精神障害のことよ」
オレの思考を完璧にトレースして、香里は言った。彼女のこういった能力は、確かにずば抜けている。相手の思考の先読みとでも言うのか、とにかく人の考えていることを読んだり予測したりする才能に極めて特化しているわけだ。彼女が一般人に「頭の回転が速い」と錯覚されるのは、この能力があればこそだろう。
「ああ、要するにトラウマの一種だろ? 事故にあったり、色んな恐怖体験をして強いストレスを受けた人間が後々にまで延々とその時のショックに苛まされるっていう」
「――私が頼んだの」部屋の一角で静かに佇んでいた秋子さんが言った。
このホテルのベッド・ルームは、驚異的に広いことで有名だ。リビングに護衛が5人、ツインベッドの周りにはオレと天野、香里、佐祐理さんと舞、そして秋子さんの6人がいるが、窮屈で仕方が無いといった雰囲気はない。
「心的外傷後ストレス性精神障害は、感受性の強い子だとちょっとしたことでも生じ得るの。湾岸戦争では戦場に送り込まれた兵士にも、これが見られるわ。私たちが経験したあの場は、まさしく戦場の様相を呈していたし、目の前で……人も亡くなったわ」
秋子さんの言葉で、武器を手入れする護衛たちの手がピタリと止まった。オレたちを助けるために、命を捨てて囮になってくれたボディガード、スコット・スピードマン氏が死んだ。奴等の銃弾で身体中を撃ち抜かれて――銃殺されたのだ。
「栞ちゃんが心配だったの」
亡くなった護衛の死体は、ホテルにオレたちを送り届けた後、他のガードたちが何処かに運んで行った。そして帰ってきた時には、代わりに武器を満載した木箱を抱えてきたわけだ。
彼等は幾度か『スリングウェシル』という組織名らしき固有名詞を口走っていた。恐らく、彼等が所属する組織のようなものだろう。もしかすると、その拠点がここロンドンの近くにあるのかもしれない。
――スリングウェシル。留守にしている鷹山さんは、この組織の何らかの用事で別行動を起こしているのかもしれない。彼女は古い知人に会うと言っていたが、あの氷と鋼の精神を持つ彼女が友達付き合いを積極的にするだろうか? オレにバースディの贈物と称してプレゼントしてくれた弾丸のアクセサリィも、昔の軍人仲間から貰ったと言っていたが執着も見せずに軽く渡してくれた。物にも人にも、あまり想いを掛けないタイプの人だ。
「――さて、じゃあ悪いがちょっと耳を貸してもらえるか」
仲間内でラルフと呼ばれていた、屈強なボディガードが口を開いた。如何にも軍人をやっていましたと言わんばかりの雰囲気と肉体を兼ね備えた男で、性格も身体と同様に骨太だ。青い目に、短く狩り込んだブロンド、そして薄い唇が特徴的だ。
出身はグロセスター州チェルテンハムと言っていたから、このUKということになる。世界最強の特殊部隊として有名な、SASのエリートだったという話で、鷹山さんが退役するときに一緒に引き抜いてきたと聞く。あの鷹山小次郎の目に止まったのだから、相当の凄腕であることは証明されているようなもんだ。事実、彼女がいない今はチームの指揮は彼が採っている節があった。
「ここにいる皆さんも、自分たちがなぜ襲われたのか、そして誰が襲ってきたのか、理由や事情には大変興味があることと思う。本来、それらを話すことは我々には禁じられていた。だが、出てきたのがサイバードールとあっては、話が変わってきたと言わざるを得ない」
彼が口にしている言語は、完璧な日本語だった。訛も殆どない。電話で話しても、彼が外国人だとは誰も勘付かないだろう。
「そこで、我々は上に相談をした」
――それがスリングウェシルか。オレは質問しかけたが、やめた。命令し慣れた声で話す彼には、途中で質問を挟むことを許さないような雰囲気がある。
「まず、我々の素性から明かしておこう。これは、倉田嬢にも明かしていない裏の顔だが、我々の真の姿でもある。ここにいる全員は、主任の鷹山小次郎を含めて『Thuringwethil』という組織に属している現役の兵士だ」
リビングとベッドルーム、集った全員が思い思いの恰好で何処かに腰を落とし、そして歪ながらも円陣を組むようにして互いに向かい合っている。そして、護衛たちから明かされる真実に神妙な面持ちで耳を傾けていた。
「このThuringwethilに関して、簡単に説明しておこう。――ヒルデガルド、頼む」
後を託されたドイツ人の女性エージェントは、了解の証明に軽く頷いて見せると徐に口を開いた。
「我々『Thuringwethil』は、ある意味で復讐者の集まりだ。ある者は家族を奪われた復讐のために、ある者は命を狙われた復讐のために、ある者は無慈悲に未来を剥奪された復讐のために。理由はそれぞれで違うが、共通しているのはある存在を憎むことで組織が成り立っているということにある」
復讐者の集い――。彼らは淡々と語ってはいるが、だからこその凄みがそこにはあった。
「復讐の対象となるのは、Engqist Foundation」
「えんくいすと・ふぁんでーしょん、ですか。お化粧じゃないですよね。財団法人の方ですか?」
ああ、そうか。Foundationと聞くと、女性はファンデーションと書いて化粧品を連想するんだな。オレの場合は、ファウンデーション(有名なSF小説のタイトル)と書いてアイザック・アシモフ(その作家)だ。多分、少数派なんだろう。因みに、佐祐理さんの言うような『財団法人』という意味があることは知らなかった。
「そうだな。日本語に直せば、エンクィスト財団となるだろう。我々Thuringwethilの使命は、このエンクィスト財団をこの世から永久に抹殺。根絶することにある」
エンクィスト財団! 勿論、その固有名詞には聞き覚えがある。弾丸のアクセサリィをプレゼントされた時、鷹山さんの口から直接出てきた名だ。
“私は、この能力のおかげで幼少の頃より実験動物として扱われてきた。エンクィスト財団直下の特殊研究施設Chocolate house。そこで私は能力者として開発され、将来的にサイキックの戦闘集団Holy Orderの兵士となるよう養成された。そこには、川澄君のような子供が何十人と飼われていたよ”
――彼女のその言葉を思い出す。あからさまな敵意を露にした、鷹山小次郎の珍しく感情的な声。確かにあの時、彼女はエンクィスト財団の名を口にしていた。
「今の君たちなら、否応無く認めざるを得まい。この世には俗に言う超能力が存在し、それを操る人間がいる。たとえば、そこにいる川澄嬢がその実例だ」
全員の視線が、舞に集中する。だが、彼女は並んでベッドに腰掛ける佐祐理さんに頭を預け、すぴすぴと安らかに眠っていた。新たな能力を開発して戦ったせいで、彼女も疲れているんだろう。起きている時には絶対に見せないあの幸せそうな微笑は、きっと動物さんに囲まれている夢を見ているに違いない。
どこまでも、憎らしいくらいにマイペースな奴だ。
「俺たちの業界じゃ、軍事的・戦闘的に能力を特化させた超能力者のことを『PSYMASTERS(サイマスターズ)』と呼んで、普通のサイキックとは区別している。我々のオピニオン・リーダーでもある鷹山小次郎も、そのサイマスターの1人だ」
「そっか、あのサイ=リフレクターですね?」
ついにオレは口を挟んだ。勿論、実物を見た時のあの衝撃は忘れていない。超至近距離からの弾丸を簡単に跳ね返す、あの光るシャボン玉。今でも網膜の奥に焼き付いている。
「ちょっと待て、なぜ君がシェフの能力のことを知っている」
オレの咄嗟の一言は、ボディガードたちに波紋を投げ掛けたらしい。そう言えば、彼らはオレと鷹山さんとの間で交わされた一連の会話の内容を知らないんだっけな。
「見せてもらったんですよ。バースディ・プレゼントに」
「見せてもらった? いつ? 君にはあれが目視できたと言うのか」
舞に集まっていた視線は、その全てが今度はオレに突き立てられている。女の子の熱い視線ならまだしも、珍獣を見るような目付きでは歓迎できたものではない。
「見せてもらったのは一昨日かな。佐祐理さんの別荘に着いてすぐ。鷹山さんの部屋で二人きりの時に――」
「二人きり?」香里とミッシーがピクリと反応する。
「相沢君、またエロガッパなこと企んでたんじゃないでしょうね?」
「嫌がる私をベッドに押し倒した挙句、体液に塗れさせ、更に求婚までしておきながら影では早速浮気ですか。そんな酷な話はないでしょう、相沢さん」
「ちょっと待て」
オレは慌てて突っ込んだ。香里の方はまだ分かるとしても、何やらミッシーの発言は事態を極めて不穏な方向に持っていきかねない破壊力を秘めていたからだ。いや、思い当たる節がないわけではないのだが。
「押し倒した? 体液ってどういうことなの、相沢君。あんたって人はまさか……」
香里は羽が生えたばかりの天使のような微笑と共に詰め寄ってくるが、同時に強力な殺気を纏ってもいる。どっちが彼女の本体なのかは、考えるまでも無い。
「はぇ〜、もしかして天野さんと祐一さんは既に……」
「待ったーっ、ちょっと待った! 佐祐理さん、それ以上言っちゃ駄目!」
オレは慌てて佐祐理さんの口を手で塞いだ。
「天野さん、一体あのエロガッパに何をされたの?」
香里は矛先を爆弾投下の張本人、天野美汐に向けた。ベッドの中で枕に寄りかかるようにしている天野は、いつもの感情表現に乏しい表情で淡々と語り出す。しかも、バカ正直に。
「そう、あれはハイゲートでのGIGが終わって、別荘に戻った時のことでした。疲労していたように見えたので、私は厚意で相沢さんに肩を貸していたのですが、部屋に着いた瞬間、彼にベッドの上に押し倒され……」
天野は意味ありげに語尾を弱めて、顔を伏せる。
「私は懇願しました。でも相沢さんは聞く耳持たず、嫌がる私の上に圧し掛かり、そして、私の身体にあの形容し難い、粘着質の生温かい体液を……」
「ほぅ」そこまで聞けば充分と、香里は天野からオレに視線を戻した。
ああ、もう、どんな誤解のされかたをしているのかヒシヒシと。
「違うんだ。いや、違わないんだが、誤解なんだ。香里が何を考えてるのか怖いくらいに分かるが、それは違う。オレの話も聞いてくれ。話せば分かる」
「問答無用! その時、天野さんの懇願を聞き入れなかった人間が、良くもまあ『オレの話も聞いてくれ』だなんて厚かましいことが言えるわね!」
聞き入れなかったんじゃない。寝てたから聞こえなかったんだ。そう反論しようとしたが、続く香里の口撃にイニシアティヴを取られた。さすが、アメリカの敏腕刑事弁護士の娘だ。
「親切で優しくしてくれた女の子の厚意につけこんで、二人きりなのをいいことに、ベッドに押し倒し! その乙女の純潔を貪り尽くした挙句、ドス黒い欲望から生み出された、粘着質の生温かい汚らしく白濁した体液を……どうしたですって? これを、強姦と、言わずに、なんと、言うのかしらぁ!?」
1音節ずつ丁寧に言葉を区切りながら、香里はその度に1歩ずつ間合いを詰めてくる。逃げなければならないのは分かっているのだが、射竦められて身体が動かない。1歩でも動けば、その瞬間狩られるのは目に見えていた。
どうでも良いんだが、白濁した体液とか勝手に捏造されてるぞ。体液は体液でも、あれは寝ぼけて垂れちまったヨダレ以外の何物でもない。ミッスィーのやつ、わざと誤解を招くような表現を使ってくれたわけだ。
「まあ、落ち着け。彼の婦女暴行罪の摘発は後でも出来る。銃殺刑に処す時は手を貸すから」
なにやら不穏なことを口走りつつ、ボディガードが香里を諌める。銃殺刑ってなんだ。
「相沢エロガッパめ、覚えてなさい。必ず断罪してやるわ」
今や怒りの暴君、狂乱の女帝と化した香里様は、ギラついた目でオレを睨みつけている。この場は一応収めるが、後でオレを徹底的に追求するつもりのようだ。これは、天野を伴って命懸けで誤解を解かないと、サイバードールが再来するより前にオレはパトラッシュの元に送りこまれることになってしまう。
「とにかく、相沢君が見たと言うように鷹山主任もまた異能者だということは理解して欲しい」
著しく方向性の歪んだ話題を、女性の護衛は強引に戻した。再び重い苦しい空気が場を支配し、そしてその傾向を更に強める話が始まる。
オレは固唾を飲みながら、自らを省みた。相沢祐一は、いつものように飄々としていることが出来ているだろうか? 仲間たちの緊張を何とか緩和させるだけの存在たり得ているだろうか? 親父ならこんな時、どんな態度でどんなことをするだろう。
「さて、この異能者――つまり、普通の人間には使えない超自然的な能力に着目し、これを軍事利用できないかと考えている連中がいる。アメリカン・コミックの悪役の設定として使い古された感のある話だが、これは現実問題だ。現実に存在する悪役。現実に君たちを殺そうとした連中。そして、現実にこれからも君たちの脅威となるであろう組織。それが、先ほど挙げた我々Thuringwethilの宿敵、Engqist Foundationだ」
「具体的にそのEngqist Foundationというのはどういう組織で、なにをやっているのですか?」
話が本格化して以来、秋子さんが初めて口を開いた。核心にズバリと触れてくる質問だ。
「Engqist Foundationは、中世の王侯貴族を発祥とする集団です。その歴史は600年を超えるとか。当時のスウェーデン王国の大貴族『エンクィスト家』の呼びかけで誕生したことから、Engqist Foundationと呼ばれるようになったのです」
「世界の権力者たちの集合体であるEngqist Foundationは、成立当初から常に世界の覇権を手中に収めることだけを目的としていました」
別の護衛が代わって口を開く。別荘でオレと同じ班にいたアメリカ人だ。
「ヤツ等の目的はただ1つ。自らの既得権益の維持と拡大です。より大きな権力を握り、より支配体勢を強めること。地球圏の覇権を掴むこと。そのために、財団は色々な研究を行ってきました。経済、軍事、外交」
「平たく言えば、世界征服を目論む悪の秘密結社ってことですか?」
オレは皮肉をたっぷり込めて訊いた。
「そうだな。そう考えるのが1番手っ取り早いだろう」
ボディガードは一瞬だけ微笑むと、すぐに真顔に戻って続けた。
「ヤツ等はあらゆる方面からあらゆる物の独占を目指し、日々研究を進めている。超能力の研究はその内の1部門に過ぎないんだが――財団は、19世紀の初頭から『Chocolate house』というオカルトや超自然的現象に関する専門の研究機関を設け、全世界から異能者としての素質を持った子供たちを集めはじめた。魔女狩りみたいなものだ」
「チョコレイト・ハウスですか。やっていることの割には、お菓子家を連想させる可愛らしい名前ですね」
空からお菓子が降ってくることを夢見るオバさん型女子高生、天野美汐は言った。
「そう云う意味で付けたようだよ。『子供たちが集う家』といった感じかな。Chocolate houseは、10歳以下の子供だけを対象として研究・育成をしているからな」
「なぜ子供限定なんですか?」オレは訊いた。
「PSI――超能力って奴は、それくらいの頃から訓練しなければ軍事利用出来る程の強さにならないからだ。オリンピック選手の育成と同じだ。世界に通用する人材を育成するには、幼少の頃から鍛え上げなければならない」
「なるほどね」
「だから財団は、『異能者狩り』で浚って来たり、異能者同士を掛け合わせて素質を持った子供たちを集めるのさ。そして彼らをモルモットとして様々な実験を繰り返す。我々のチームリーダーである鷹山小次郎も、Chocolate houseで飼われていた実験体だった」
「鷹山さんが……」
オレとボディガードを除く全員が、ハッと息を呑んだ。現実感を伴わない話だが、身近にいる人間が実際にそれに関わっていたと聞けば、嫌でもそれがリアリティを帯びてくる。結局、人間は物事を自分にとって都合の言い様にしか解釈しない人間だが、身内が絡んでくるとそうもいかなくなるのだ。
「幸いなことに、シェフは4歳の頃にコードネーム『DEATH=REBIRTH』によって救出された」
「デス=リバース?『死の生まれ変わり』と云う意味かしら」
呟く香里に、護衛の1人は頷いて見せた。
「そう。死神の化身、デス=リバース。財団が認定する能力レヴェルSSSにランクされる唯一の存在。世界の頂点に君臨し続ける、最強の
異能者の名さ。そして、Thuringwethilを結成した創始者でもある。彼女は反財団を掲げて各地にあるChocolate houseを襲撃、実験体として捕らわれていた子供たちを救い出してきた。そして救い出された子供の多くは、彼女に従い行動を共にするようになった。シェフのように」
「今も、シェフは総帥と共にある作戦に参加している。スコットランドにあるChocolate houseの襲撃計画だ。詳しい話は聞いてないが、近日中に結構されると聞いた。成功すれば、モルモットとして使われていた多くの子供たちが自由の名の元に開放される。そして、その子たちの何割かはThuringwethilのメンバーとして我々と行動を共にするようになるだろう」
ボディガードたちは、予め自分の担当分を打ち合わせていたかのように交互に口を開いては、オレたちに驚愕の真実を提供していく。ま、それらしい話は前に鷹山さんがほのめかしてたから、オレはあんまり驚かないけど。
「はぇ〜、俄かには信じられない話ですね」
佐祐理さんは、彼女の膝枕で眠る舞の黒髪を優しく撫でつけながら言った。おのれ、舞め。なんて羨ましい。オレも膝枕されたい。
「――異能者たちの社会において、現在、世界に君臨する3つの大勢力がある」
リーダーは、右手の太い指を3本立てて言った。その深みのある低音と厳かな口調は、人の注意を引きつける不思議な力を持っている。オレみたいな青二才にはまだ辿り着けない極地だ。
「まず世界最大の勢力を誇り、数万とも数十万とも言われるPSYMASTERSで構成された特殊軍隊、通称
Holy Orderを擁するEngqist Foundation」
立てた3本指の内、1本が折られて残り2本になる。彼は続けた。
「これに対抗する勢力として、我ら
Thuringwethil。――そして、財団にも我々にも属さない第3勢力、
Zodiac Brave。この3つが互いに睨みを利かせて、危うい均衡を保っているのが現状だ」
「そんなマクロな話をされても、正直、あたしたちには関係があるとは思えないわ。あたしが今知りたいのは、もっとミクロの――あたしたちに直接関連する情報です。今、あたしたちの周囲で一体何が起こっているのか。そして、これからあたしたちはどうなるのか。どうすれば良いのか」
香里は沈痛な面持ちで言った。頭上を飛び交う銃弾に怯え、泣きながら頭を抱えていた栞の姿を思い出しているのだろう。
「そうだな……。さて、何から話したものか」
チームリーダーは丸太のように太い腕を組みながら、複雑な唸り声を上げた。
「我々が君たちの祖国を訪れたのは、極東方面のChocolate houseを捜索し、これに関する様々な情報を集めるためだった。だから、倉田家に雇われボディガードとして働いていたのは、完全なカムフラージュと言って良い。日本語ではなんと言うんだったかな。擬態、か?」
「はぇ〜、そうだったんですね」
ある意味だまされていたわけなのだが、佐祐理さんは怒ったり傷付いた様子は微塵も見せず、逆に感心したような顔をしている。女神のように寛大な精神の持ち主なのか、能天気なだけなのかは非常に判断し難い。きっと、彼女は両方に当て嵌まる人間なんだろう。
「我々は日本にある、君たちの学校の理事会が財団と何らかの取引をしているという情報を掴んだ。同校の生徒であった倉田嬢の身辺警護という仕事は、その意味で非常に使えるポジションを我々に提供してくれた。業界としては格安のギャラで倉田嬢の護衛を引きうけたのはそのせいだ」
「ちょっと待って。では、あたしたちがあんな化物たちに狙われて殺されそうになったのは、貴方たちに巻きこまれたからだと言うのですか?」
香里は柳眉を吊り上げて、詰問口調で詰め寄る。
「いや、直接的な切っ掛けは君たち自身にある。今年の3月、君たちは倉田嬢の経営する宝石商から盗まれた『シリウスの瞳』に関連する事件に巻き込まれた。あれに、財団のエージェントが関わっていたのではないかという情報があるんだ」
「あの北川の偽物――!」オレは思わず叫んだ。
そうだよ、あの野郎。生徒会の連続殺人があったせいで忘れてたけど、あいつにはダイヤのイミテーションを持ってまんまと逃げられちまったんだ。
「そう。君たちの友人として振舞っていたあの男、実はEngqist Foundationから送りこまれてきたHoly Orderではないかと思われている。それも、アジア最強と歌われる『五歌仙』のメンバーかもしれないと」
「ごかせん?」
「5人の仙人という意味だ。その名の通り、5名のHoly Orderによって組織される小隊だな。楼蘭にもChocolate houseがあるという噂があるんだが、そこの出身だと言われている。極東で最も恐るべき連中だよ。――特に、その中でも最高の戦闘能力を誇るという、通称『サイファ・ザ・ロッド』と呼ばれる能力者は、シェフとも互角に渡り合える力を持つって話だからな」
「あ、じゃあ、その五歌仙と云う人を通じて……」
「そうです、倉田嬢」
丸く口を開けて驚く佐祐理さんに、護衛の1人が重々しく頷いて見せる。
「そしてその男は見た。あの時、川澄嬢は奴の前で“魔”を呼び出してしまったんだ」
「そうか、その男を通して川澄先輩という異能者の存在が、その財団とやらに伝わってしまったわけですね」
香里が首肯しながら呟く。なるほど、その虫歯になりそうな名前の組織が超能力やらオカルトやらに興味を持っているなら、魔を操る川澄舞に関心を持たない筈がない。どうせオレたちは奴等の悪事に勘付いた邪魔者なんだ。一石二鳥を狙って殺してしまうなり、或いは――
「最近になって入った情報だが、財団が川澄舞の捕獲命令を出していることが分かった。彼女の首には50万ドルの賞金が掛かっている」
「では、サイバードールというあの人たちはエンクィスト・ファンデイションと何らか関連があって、川澄さんを捕まえるために襲ってきたと?」
秋子さんが静かに問う。ボディガードたちは揃ってそれに頷いて見せた。
「なるほど。五歌仙とやらを見ちまったオレたちを殺して、そのついでに舞を浚っていく。そう云うシナリオだったわけか。……となると、あのサイババ人形どもは、財団に雇われたヒットマンってことっスか?」
オレは近くにいた女性ガードに問うた。
「その通り。サイバードールは財団と提携している、言わば専属の傭兵団の1つよ。彼らは財団が開発した新兵器のモニターを務めたり、人体実験に自らの体を提供するの。財団はそうして様々なデータを手に入れるわけね。その見返りに財団は人体改造の技術と施設、そしてお金、武器を彼らに提供する」
「エンクィスト財団の噂は聞いたことがありましたが……」
天野が口を開いた。撃たれた直後は言葉を搾り出す度に苦悶の表情を浮かべていたけど、今はそんな様子はない。
「まさか実在していたとは」
「ミッシーは聞いたことあったのか?」
「ええ。ウチの家業はそういう情報が割と集まりやすいので。そんな名の大きな組織が存在するとか、全身を改造して虐殺を繰り返している連中がいるとかいう話は、何となくですが耳に入っていました。勿論、冗談まじりのガセネタだと思っていたんですけど」
「とにかく、君たちは今非常に危険な位置にある」
それはボディガードに言われるまでもなく理解していた。勿論、オレだけではなくこの場にいる全員がだ。あんな化物たちに狙われて、本当に殺されかけた。そして実際、自分たちの代わりに囮になって死んでいった護衛の姿と死体を見た。もう、事はオレたちの手に負えるような話じゃなくなっているんだ。
「私たちは、これからも狙われる可能性があるんですね?」
秋子さんは、普段は見せないような神妙な顔つきで訊いた。その口調は、質問というよりは寧ろ確認の意味合いを強めている。秋子さんは聡明な女性だ。危機感を冷静に受け止めて、理性で考え感情で判断しようとしている。この場合、その選択はベストだ。
「正直に申し上げて、その可能性は否定できません。奴等にもメンツがある。サイバードールにせよ財団にせよ、このまま貴方たちを放置してくれるほど甘くはない」
「冗談じゃないわね……。またいつ襲われるか分からないなんて。もう絶対に、栞をあんな目には合わせられないわ」
香里は眦を吊り上げる。その目には理不尽に対する怒りと共に、恐怖の色が浮かんでいた。
「なんとか取引できないかしら、彼らと」
「君の親御さんは、弁護士だったな」
ボディガードは香里の発言に薄い苦笑を浮かべた。そして表情を引き締めて香里を見詰める。
「いい機会だ、覚えておくと良い。奴等に司法取引のような真似事は通用しない。我々が済む世界に法はないんだ。あるのは、強い奴が弱い奴を潰す権利のみ。それ以外のあらゆる義務、権利、秩序は成立し得ない。力こそが唯一にして絶対の法なんだ」
「ではどうしろと? 黙って次の襲撃を待って、黙って殺されろと言うんですか!?」
「あなたたちは、私たちが守るわ。そのためのThuringwethilだもの」
目尻に薄っすらと涙さえ浮かべて叫ぶ香里に、女性護衛は静かに答える。
「オレたちはただの人間だ。PSYMASTER――異能者のような超能力は使えない。だから、君たちの護衛の人員を増やす方向で話を進めている。上にはもう掛け合ってある。恐らく許可が下りるはずだ。そしてシェフのような異能者のエージェントで、君たちの周囲を固める。できれば、全員に最低1人の能力者を付けたい。専属ガードってやつだ」
「ちょっと待ってくれ。オレには護衛を雇える程の金なんかないぞ」
倉田家とはワケが違うんだ。親父たちも売れ出したとは言え、メジャーバンドとはやはり稼ぎの面で雲泥の差がある。親父も母さんもあくまでライヴに拘っていて、CDを出す気なんかないらしいしな。
「心配しなくて良い」アメリカ人の護衛が白い歯を見せる。
「俺たちの給料は、Thuringwethilから出てる。君たちからは1セントだって取る気はない。これからは、倉田嬢にもギャラは請求しない。改めて、Thuringwethilとして君たちと付き合うことになるだろう」
「それで、これからのヴィジョンと言うのでしょうか……具体的にどういった対策をとっていかれるおつもりなのか聞かせて下さい。それから、佐祐理たちはどうすれば良いのか」
佐祐理さんは膝の上で眠る舞に視線を落としながら言った。口調はいつもの彼女だが、その声音には疲労の色が見える。恐怖し続けるというのは、多大な気力を消費するものだ。
「佐祐理はあまり頭が良くないので、話が大きすぎて混乱しちゃいました。もう、何をどう考えていいのやら」
「君たちに今必要なのは、状況を正しく認識すること。そして、自分たちが狙われている立場にあることを自覚すること。我々との協力体勢を受け入れること。スタンド・プレイや素人の勝手な判断や行動は慎むこと。これくらいだ」
護衛たちは、より質の高いガードのためにはオレたちのような『守られる側』の協力と理解が必要不可欠だと説明した。現実を受け入れず、自分に危険があることや守られているという自覚を欠くことは、誰のためにもならない。それは結局、自分の身を滅ぼすことに繋がるだろう。
彼らのような熟練したプロフェッショナルの言葉だ。多いに説得力がある。
「君たちは、日常生活を維持してもらって良い。学校にもいけるし、友達と遊びにもいけるだろう。我々は君たちを24時間体制でガードし、財団の脅威から守る。だから、せめてそれに協力して欲しい。他の誰のためでもない、君たち自身のためにだ」
「それで、これからの予定だけど――」ヒルデガルドと呼ばれるドイツ人が言った。
「支部の話だと、とりあえず当面は君たちに危険が及ぶことはなさそうだ。さっきも少し話したが、今はThuringwethil本体がスコットランドのChocolate houseを襲撃しようとしている。現状で、UKの主だった能力者はそっちの防衛に回らざるを得ないからだ。君たちは施設の死守から考えれば、優先順位は低いわけね」
「そりゃ、ありがたいね」
当面と言わず、永遠にオレたちのことは忘れ去って欲しいもんだ。
「2日後に、この島を北上して、ウェールズに行く。古いが広い屋敷があるのよ。Thuringwethilが昔使っていたところで、今は廃屋になってるんだが、そこで君たちの護衛になる予定の能力者たちと落ち合う予定だ」
「それまでの2日間は?」香里が訊く。
「自由にして良い。ここは高いからエコノミー・ホテルにでも移って、そこを拠点にして観光でもするしたらどうかな。人気の少ない高級住宅街ならまだしも、ヤツ等はロンドンの人込みの中で襲撃してくるような性質はしていない」
「しかし、危険はありませんか? 直接姿を現さなくても、狙撃という手もありますし」
天野が指摘した。大した手当ても受けていないのに、何故か血色がどんどん良くなってきている。まさか、本当に自然治癒してきてるんじゃないだろうな。
「いや。正直なところ、そういう心配をしだしたらキリがない」
リーダーは苦笑しながら言った。
「情けない話だが、能力者の襲撃は能力者でなければ防げないんだ。シェフが居てくれれば話は別だが、俺たちだけじゃどうにもならないこともある。――たとえば異能者の中には、物を瞬間移動させたりする力を持つやつもいる。『アスポート』と呼ばれる能力だ。これで爆発物を送られてきたら1発でアウトだし、邪眼と言って視界に入れたものに幻を見せたり、即死させたりできるヤツ等もいると聞く」
「殺ろうと思えば、いつでもオレたちを殺れるってわけですか?」
「そう言えないこともないな」
否定して欲しかったが、オレの言葉はあっさりと肯定された。
「だからこそ、Engqist Foundationは世界に君臨していられるんだ。莫大な予算を注ぎ込み、世界各国にChocolate houseを設けたのは、何も酔狂からじゃない。能力者を倒せるのは能力者だけ。この法則が覆らない限り自分たちの優位が揺るがないという事実に気が付いたからだ」
「――少し、考える時間が欲しいですね」
秋子さんが、いつもと比べると若干弱々しい笑みを浮かべて言った。彼女のこういう表情を見るのは初めてだ。それだけでも、事の重大さが身に染みてくるというものだ。
「眠ってしまった名雪、それから気を失ったままのあゆちゃんや栞ちゃんにも話さなければならないし、大切なことですから皆で充分に話し合った上で今後のことを決めていかないと」
「そうですね」護衛たちは頷いた。
「じゃあ、今日のところはこのくらいにしておこう。急な話を聞かされて、皆も混乱していることだろう。ゆっくり時間を掛けて考えてみるのも良いかもしれない」
ガードリーダーのその言葉で、この場は解散となった。皆一様に重苦しい沈黙を守ったまま、各々の部屋に戻っていく。正直、1度に色々な話を聞かされたせいでオレも少し困っている。一体、何からどのように整理していけば良いのか。
人間が非日常の世界に迷い込むのに、理由はいらない。悲劇はいつだって唐突に訪れる。何の前触れも無しに、人の良さそうな顔をしてやってくる。栞が謂われなく病に倒れたように。罪の無いあゆが事故で命を失いかけたように。この世には明確な悪意というものが存在していて、それは絶えずオレたちを狙っているんだ。
そして多分、その悪意ってヤツは次の標的をオレたちに向けたのだろう。その結果がこれだ。
オレたちはもう引き返せない。無傷での勝利はあり得ない。何も失わずに生き残ることはできない。あゆは覚醒と引き換えに、7年という掛替えの無い月日を失った。栞は科学療法と抗癌剤の副作用で、一生子供を産めない身体になった。同じことだ。こっから先、修羅場を潜り抜けていくためには……何か代償のようなものが必要となってくるわけだ。
だったらオレたちは、これから先、勝つために何を失うことになるんだろう。
巻末資料
「HOLY ORDERってなにさ?」
解説を始める前に、まず色々な固有名詞とその表記について説明しておきます。
同じ固有名詞でも、英語で書かれることもあれば日本語で書かれることもあります。法則性はないのですが、英語をある程度流暢に話すことができるキャラクターのセリフでは、英語表記が使われことが多く見られるはずです。
また、キャラクター名は、本名のほかに愛称や通称など幾つかのパターンが存在することがあります。例えば相沢祐一だと、Y'sromancersの二つ名で呼ばれることがあります。これらの呼称も場合によって様々に使い分けれられることがあるので注意して下さい。
日本語表記 |
英語表記 |
意味 |
エンクィスト財団 |
Engqist Foundation |
組織名。世界三大勢力の一角 |
スリングウェシル |
Thuringwethil |
組織名。世界三大勢力の一角 |
ゾディアック・ブレイヴ |
Zodiac Brave |
組織名。世界三大勢力の一角 |
チョコレイト・ハウス |
Chocolate house |
組織名。財団の特殊研究機関 |
ホーリィ・オーダー |
Holy Order |
組織名。財団のサイマスター部隊 |
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サイマスター |
PSYMASTERS |
造語(PSI+master)。超能力者、異能者のこと |
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ルード・ホーク(荒鷹) |
Rude Hawk |
人物。強暴なタカの意。鷹山小次郎のこと |
シェフ |
chef |
人物。隊長(チーフ)のこと。フランス語で長の意。 |
ワイズロマンサー |
Y'sromancer |
人物。芳樹がI、祐一がII |
砕破 |
Psypher |
人物。欧米人はサイファーと発音 |
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超能力 |
PSI |
能力。サイ。全ての能力の総称 |
− |
PK |
能力。ピーケイ。サイコキネシスの略。念力のこと |
ウィアード・テイル |
Weird Tales |
能力。龍髭鞭と書く。頭髪を鞭のように操る |
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HOLY ORDER(ホーリィ・オーダー)とは、エンクィスト財団が誇る『異能者部隊』のことです。
超能力者、サイキック、異能者などと表現は様々ありますが、Y'sromancersシリーズの世界では、舞や砕破のように特別な力を使うことが出来る人間のことをPSYMASTERS(サイマスターズ)と呼びます。『PSIを極めた者』というような意味だと考えて下さい。
この表現は作者が勝手に作り上げた造語で、超心理学用語には存在しません。
HOLY ORDERは、財団が『C』ランク以上に認定した能力を持つサイマスターだけで構成される精鋭部隊で、1〜30人前後でチームを組み様々な任務に従事しています。財団が定めたランクは、最高がSSS、以下SS、S、AAA、AA、A、B、C、と続き、それ以下は全てが『D』ランクで括られます。また、同ランクにあっても能力の性質などによって+−の補正が付きます。
最近、SSSの上に『XYZ』が新設され、DEATH=REBIRTHが認定されました。近年、サイマスターの平均能力の上昇により色々と修正が行われた結果です。
HOLY ORDERのことは殆どが明らかにされていませんが、特に強力なチームの名は世界的に知られています。普通は数字とアルファベットを組み合わせた名前が付けられますが、大御所となると特別な名前が授けられます。良く知られるHOLY ORDER小隊としては『アルカナ・フォース』『スーパーノヴァ』『エインヘリアル』『皇聖五歌仙』『アルクトゥールス』などが挙げられます。
小隊名 |
特徴・構成員 |
アルカナ・フォース Arcana Force |
財団最強部隊。構成員17名
世界中のチョコレイト・ハウス支部から、Aランク以上の能力者を集めて組織した財団の虎の子。基本的にAランク以上のサイマスターの志願者の中から選抜される。隊員には、タロットカードの大アルカナからコードネームを与えられる。
▼構成員
00.THE FOOL(0.愚者)
01.THE MAGICIAN(1.魔術師)
02.THE HIGH PRIESTESS(2.女司祭長)
03.−
04.−
05.THE HIEROPHANT(5.法王)
06.THE LOVERS(6.恋人)
07.THE CHARIOT(7.戦車)
08.STRENGTH(8.力)
09.THE HERMIT(9.隠者)
10.THE WHEEL OF FORTUNE(10.運命の輪)
11.−
12.THE HANGED MAN(12.吊し人)
13.−
14.THE TEMPERANCE(14.節制)
15.THE DEVIL(15.悪魔)
16.THE TOWER(16.塔)
17.THE STAR(17.星)
18.THE MOON(18.月)
19.THE SUN(19.太陽)
20.THE JUDGEMENT(20.審判)
21.THE WORLD(21.世界)
03.THE EMPRESS(3.女帝)は、鷹山小次郎に交渉→失敗
04.EMPEROR(4.皇帝)は、シュトロハイム家に交渉→失敗
11.THE JUSTICE(11.正義)は、J.D.に交渉→失敗
13.THE DEATH(13.死神)は、デス=リバースに交渉→失敗
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皇聖五歌仙 |
通称「五歌仙」。その名の通り5人のサイマスターで構成される、小隊クラスではアジア最強の部隊。
隊員には、拳法の『型』に由来したコードネームが与えられる。
▼構成員
01.砕破
02.三十六手
03.頓破
04.撃砕
05.転掌
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スーパーノヴァ Super Nova |
北米を代表する部隊 |
エインヘリアル Einherjar |
北欧最強部隊 |
アルクトゥールス Arcturus |
ロシアを代表する部隊 |
脱稿:2002/06/01 06:24:47
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