「ユイとレイ − 魂の形」

Junchoon


 

流れ込んでくる、熱い想い。 感情の爆発。 誰? これは私。 もう一人の、

私。 レイ。 私を写し取った娘。 押し潰されてきしむ、魂の悲鳴。

 

使徒。 レイを侵食して。 私に、私の中のシンジにその目を向ける、獰猛な

存在。 そして。

 

レイ。 あの娘は、消滅を望んだ。 シンジを護るため。 使徒とともに。

やっぱり、あの娘は私。 望みは、同じ。 肉体の消滅とともに、引き裂かれ

る魂。 散っていく。 一番大きな塊が、新たな肉体に宿る。 もう一人の、

レイ。 たくさんの、魂を持たないレイのひとつに。 でも。 それではまだ

レイじゃない。 散ってしまった、レイの魂。 集めなければ。 できるはず。

あの娘は私。 私なら、できる。 シンジを護ったあの娘。 今度は、私が助

ける番。

 

大きな破片は大丈夫。 まだ形が残ってる。 でも。 小さい破片は駄目。

形を失って。 元のレイには戻らない。 それなら私を写しましょう。 同じ

形の、二つの魂。 最初はきっと戸惑うでしょう。 自分の中の、もう一人の

自分に。 でも、きっとうまくいく。 溶け合えるはず。 私の形を写しても、

あれはあの娘の魂だもの。 私の形を下敷きに、自分の形を取り戻すはず。

 

でも問題。 どうやって、あの娘に返そう。 私からは、送れない。 今のあ

の娘には。 あの娘は私に気づかない。 いえ、気づけない。 来てもらわな

いと、私の中に。 あの娘の方から来てくれないと、何もできない、私。

 

私の中に、来るのはシンジ。 だったらこの子に頼みましょう。 レイをここ

へと。 でもきっと、あの子は忘れる。 そうでないと、汚染を残す。 でも。

気持ちだけは忘れないで。 私はレイを救いたい。

 

そして。 私のところにレイは来た。 エントリープラグ。 Evaを司る、

魂の座。 インターフェース。 人とEvaを繋ぐもの。 全ては揃った。

 

心配そうなシンジ。 大丈夫、心配しないで。 私はただ、落とし物を返すだ

け。 レイの、大事な落とし物。 あの娘があの娘である部分。 そして。

あの娘に写した私の形。 きっとあの娘の役に立つ。

 

そして、シンクロ。 私へと、送り込まれるパルス。 そのフィードバックに

乗せて。 私は少しずつ、魂を送り込む。 あの人に、オペレーターにも気付

かれぬよう、少し、また少しと。 そして、あの娘は心を開く。 やっと超え

た、境界線。 ここからは、急がなければ。 Evaのパルスが届く前に、全

てを送り込まないと。はやるEvaを抑える私。 Evaのパルスに見せかけ

て、あの娘の魂を送り込む。 気付かれたら終わり。 きっと、2度とチャン

スはない。 急ぐ。 お願い、早く終わって。

 

実験終了。 トラブルはない、でも、シンクロ率は駄目。 Evaパイロット

としては復帰できる、でも、初号機は駄目。 それが結論。 でも、その間に

全て終わった。 あの娘に還った、あの娘の魂。 もう、かなり溶け合ってる。

おんなじ形は伊達じゃない。 心配そうに駆け寄るシンジ。 そのシンジに。

レイは、ゆっくり微笑みかける。 心のままに。 もう大丈夫ね。 分かった

でしょう、心の伝え方。 もう誰にも、人形なんて言わせない。 たとえどん

な生まれ方をしても、あなたは人間。 もう一人の、私。 でも、私とは、微

妙に違う、ただひとりの存在。 これからは、自分を大切にしてね...代りな

ど、いないのだから。

 

 



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