【新世界エヴァンゲリオン】

 

 

<葛城家リビング>

 

「あーあ、暇ねぇ〜」

ソファにもたれてミサトが言った。次の瞬間、2対の視線に貫かれる。

「さぼってんじゃないわよ!!」

「暇なんだったら僕達に押しつけないで下さい!」

アスカとシンジが文句を付ける。

「ごみんごみん」

ミサトは両手を合わせて謝った。

「クエ?」

横になったペンペンが何事かと鳴く。

3人のノートパソコンの画面には2年生の英語のテスト答案がずらりと表示されていた。

数学など答えがはっきりしている科目と違い英語は多少ニュアンスに違いがあっても意味は合っている場合がある。そしてそこまで評価する高度なコンピュータが学校にあるわけもない。というわけで結局は教師が一つ一つ答案をチェックすることになる。

「だいたい去年までは一人でやっていたんでしょう?」

シンジが当然の疑問を口にする。

「うーん、それはそうなんだけどさ。この街も復興して移住したり帰ってきた人が増えたでしょ?生徒数も軒並み増加中ってわけなのよね〜」

「だからって生徒に答案の採点をさせる教師がどこにいるのよ!」

アスカの言うことは至極もっともである。

だがミサトに言わせれば、『そこらの教師なんかよりよっぽど英語に堪能な人材が二人もいるのよ?使わなきゃ損でしょ』とのこと。

結局、二人はいくつかの交換条件により採点を手伝っている。手伝っていると言えば聞こえがいいがほとんどミサトは何もしていない。ビールを飲んでないだけましである。

ちなみに2018年初頭。

年明け試験の真っ最中。

一般の学生なら悲鳴を上げている時期である。昼間もトウジをはじめ一同が教えを請いにやってきていた。

「試験勉強?私たちがなんでそんなものするわけ?」

「普段の授業をきちんと受けていれば大丈夫だよ」

二人の言葉を聞いて暴れたくなる一同であった。

 

…ま、それでも平和ってことだよね。

シンジは答案にチェックを入れながら考えていた。

着々と臨戦態勢を整えつつあったネルフだったが、予想に反して敵の攻勢もなく拍子抜けしていた。

「修理がおっつかないのか、時期をはずして奇襲をかけてくるのか、どっちにしてもさっさと片を付けておきたかったわね」

平時シフトに変更したときミサトが言った。

「そうね。でも、おかげで七号機を直す時間が稼げるかも知れないわ」

「俺達の仕事が長引くのは嫌だねえ」

結局、警戒を怠らず日々を過ごすこととなったわけだ。

アスカ達のように何も知らない者達は平和を謳歌していたがゲンドウ以下の面々は素直には喜べなかった。

 

 

 

【第拾四話 日々これ平穏】

 

 

<2−A教室>

 

「…生徒会役員?」

「…ですか?」

アスカとシンジが確認した。

試験明け初日。彼らの元を訪れたのは3年生の現生徒会長だった。

「そうだ。二人に生徒会の推薦候補として選挙に出てもらいたい」

しっかり者と評判の生徒会長は眼鏡を持ち上げるとそう言った。

「なんでアタシ達なの?」

アスカが当然の疑問を口にする。予期された質問だったので回答も淀みない。

「まず第一に3年生には大学受験が控えている。受験勉強をしながら生徒会活動を行うのは難しい。自然、生徒会活動を行うのは学力に余裕のある者が多くなる」

確かにシンジとアスカに受験勉強の必要はまったくない。

「次に生徒会の推薦は他に立候補者がいない場合に当選してもらうことを考慮して行うものだ。だからまず全校生徒にそれなりの知名度と人気がなければならない」

これも満たしている。はっきり言って二人のことを知らない生徒はいないだろう。人気の方もいまだにうなぎのぼりである。

「そしてしっかりとした計画、決断能力。各種実務能力等々も必要とされる」

いずれにしても二人に勝る者はいないだろう。高校の生徒会にはもったいない人材である。

「というわけで後は二人の意志次第なんだが?」

一方的な話ではあったものの二人に対しあくまで対等に、かつ理論的にも整合のとれた話し方であったため二人は好感を持った。

が、それはそれ。二人はなによりもまずエヴァのパイロットである。

「…せっかくのお話ですが僕たちは別方面で時間を制約されることが多々あります」

シンジが話を切りだした。だが、相手も引き下がらない。

「多少の事は僕も噂に聞いているよ。だけど、二人にお願いしたいのは生徒会長と副会長だ。補佐する人間は十分にいるよ」

「ふーん。さすがにアタシ達に頼むだけあってぬかりは無いようね?」

アスカが言った。口調は偉そうだが少し感心しているのである。相変わらずシンジ以外には素直でない。

「どうするシンジ?」

「そうだね。ここまで言ってくれてるのに断るのもなんだし、一応ミサトさんに聞いてみようか?」

「ああそれなら…」

会長はポケットから折り畳んだ紙を取り出すと二人の目の前で開いた。

『ぜんっぜんOKよんっ!頑張ってね(はぁと)』

ご丁寧にキスマークまでついている。

生徒会長も困惑気味だ。どうやら目の前で作成したと思われる。

「あんの女は〜!」

ぐっと拳を握りしめるアスカ。

「ミサトさんらしいや」

シンジも苦笑する。

「で、どうだろう?引き受けてくれるかな?」

「いいよね、アスカ?」

「シンジがいいならいいわよ」

アスカに確認するとシンジはうなずく。

「わかりました。僕たちでよければ引き受けさせてもらいます」

会長の顔がぱっと明るくなる。

「ありがとう。そういってもらえると助かるよ。ところで実はもう一つお願いがあるんだが」

「何です?」

「どっちを会長にしてどっちを副会長にするか生徒会でもめてね。君たちで決めてくれないかい?」

申し訳なさそうに頭を下げる会長。こっちの方が難題らしい。

「どっちって…」

「言われてもねぇ…」

シンジとアスカは顔を見合わせた。

 

 

<2−A ロングホームルーム>

 

「…というわけで生徒会役員の立候補者を募る予定だったんだけど、先に決まっちゃったわけ」

ミサトがクラスに言った。

「もちろん、他に立候補したい人がいてもOKよ。洞木さんなんかどう?」

「え、わ、私は…」

慌てるヒカリ。

「ミサト先生。やっぱり委員長はクラス委員じゃないといかんですわ」

『うーん、その通りだ』

トウジの言葉に妙に納得するクラス一同。

「けだし名言ね」

「鈴原にしてはいいこと言うじゃない」

ミサトとアスカにほめられまんざらでもない顔のトウジ。

ヒカリも心持ちうれしそうである。

「それじゃ、鈴原君と渚君も一緒にどう?」

ミサトは別の案を出す。

「あかんあかん。わしには無理ですわ」

「ま、冷静な分析だな」

「ケンスケ、少しはフォローしょうとか思わんか?」

「事実だろ」

「そらそうや」

笑う二人とそれを笑うクラスメート。

マナは隣のカヲルに矛先を向けた。

「カヲルはどうなのよ?」

「二人の邪魔をするのは野暮というものだよ」

微笑むカヲル。代わりに手を挙げると予想外の発言をする。

「書記に山岸さんを推薦するというのはどうでしょうか?」

「あら悪くないわね。生徒会長と副会長をよく知ってるしフォローもしやすいわね」

「そうね。マユミもしっかりしてるから二人が忙しくても何とか切り盛りできるかも」

「あのミサトさん。僕たちまだ当選したってわけじゃ…」

「何言ってるのよシンジ。このアタシとシンジが立候補するのよ。能力、容姿、性格。

 どれをとってもパーフェクトなアタシ達に勝てる奴なんかいないわ!

 ま、選挙はあくまで建前ね」

断言するアスカにクラスが沸き上がりやんややんやと歓声が上がる。

「まあまあそれはそれとして、どう山岸さんやってみる?」

急に静まり返る教室。

「えっ?えっ?」

注目され慌てるマユミ。

「わ、私でなくてもマナさんとか…」

「あたしにはネルフに入るための勉強があるの。それこそ大学受験の比じゃないわ」

ひそひそ話す二人。

「でも、二人の足を引っ張るんじゃ…」

「アタシ達の本業を知ってるでしょ」

「山岸さんがやってくれると助かるよ」

追いつめられるマユミ。

「いいんじゃないか?やってみたら」

ケンスケがそう言うとシンジ達もうなずく。

「わ、わかりました。やってみます」

「おっしゃあ!!」

「きゃっ!」

いきなりミサトが叫んだため驚くマユミ。

「これで生徒会は私たち2−Aが牛耳ったわ!!」

『おーっ!!』

来年には2−Aでなくなっていることをあえて無視して盛り上がる一同。

「このうえは勝利を完璧にするために選挙運動よ!!」

「その件に関しては僕にお任せを」

ケンスケの眼鏡が光る。

「シンジくんとアスカの当選は揺るぎ無いわ!

 だからみんなで山岸さんを応援するのよ!!」

『おーっ!!』

「あの、そ、そこまでしていただかなくても」

「甘いわ山岸さん。これは戦争なのよ!」

「せ、せんそう、ですか?」

「戦うからには勝つ!!」

…ミサトさんもたまってるんだなぁ

シンジは保護者の心中を察して苦笑した。

 

 

ケンスケが指揮を執る宣伝工作部隊は尋常ではなかった。

3人それぞれ及び全員の写真入りポスターを学内の掲示板に貼りまくり3人を映したビデオディスクを回覧した。

しかも全て自費である。

だが、誰も感謝しようとはしなかった。

なぜなら、

「…こちら2−A後援会事務局。

 …ああポスターも映像ディスクもうちで管理している。

 …そうだ、ポスターは1枚500円。ディスクは1枚千円だ。

 …高い?

 …別にいいんだぞ。他に扱っているところはないんだからな

 …わかればいい。ポスター、ディスクとも4種類だ。

 …ああ、ブツは選挙の後、引き渡す

 (プツッ)

 …く、くくくくく」

というわけである。

無論、賄賂工作はぬかりなくシンジのポスターは碇家の食卓にさえ飾られていた。

予約だけでもとんでもない額になっている。総売り上げはすごいことになるだろう。

笑いの止まらないケンスケだった。

一方のシンジとアスカといえば、

「…こっちがラグビー部でこっちがサッカー部」

「これは美術部でこっちは茶道部…うちにも茶道部なんてあったんだね」

二人の机は各部、愛好会、同好会からの贈り物で溢れていた。

通常の選挙と違い二人には当確印が3つ程、しかも花丸がついている。

そのため予算優遇、部活動への昇格などを願って賄賂攻勢が始まっていた。

もっとも主に運動部系がアスカ、文化部系がシンジと分かれており、その構成人員を考えると単に二人に会うのが目当てという気もしないでもない。

とはいえ野球部全員がアスカのまわりでわいわい騒ぎ、華道部全員がシンジのまわりできゃあきゃあ騒ぐといった様な事態が日々続くのでさすがの二人も参っていた、

「二人が恋人宣言しちゃったからなかなか近づけなかった分だけ反動が来てるんじゃないかしら?」

ヒカリが語る。

「せやな。惣流ににらまれるのが怖くてシンジに近寄れん奴らとかにはまたとない口実やろ」

トウジも語る。

「マユミはどうなの?」

マナがもう一人の当事者に尋ねた。

「ええ、こっちは全然。代わりに真剣に部活動について考えている人とかがいらっしゃって話していかれるんだけどとってもためになるわ」

「最後に勝つのはどの部か、だね。今回の選挙はみんな学ぶことが多いんじゃないかな?」

相変わらずカヲルは淡々としている。

「それで渚君は私を推薦したの?」

「さあね」

カヲルはいつものように微笑むだけだ。

「それにしてもあの二人にプレゼント攻勢なんてお金の無駄ね」

「アスカの場合逆に反感を買うわね、あれは。だいたいシンジ以外の男にプレゼントされても喜ぶわけ無いじゃない」

「おまけにシンジにプレゼントしとる女共は惣流ににらまれるって寸法や」

「碇君はどうなの?」

「シンジはたぶん全員に公平にって考えるでしょ」

「そうね。じゃアスカににらまれた分だけきくのね」

「じゃ、最後にものを言うのはなんや?」

「それは、ね」

カヲルがマユミを見る。一同の視線がマユミに集中する。

「な、なんでしょうかみなさん?」

思わずノートで顔をかばうマユミだった。

 

 

<碇家食卓>

 

月に最低一度とシンジが自分で決めている碇家での夕食及び宿泊。

リツコが肉じゃがの入った小鉢を置きながら聞いた。

「それで結局どっちが会長でどっちが副会長になったの?」

「………」

アスカはどうやら耳に入っていないらしい。

今日はミサトがネルフに泊まり込みなので、だったらとシンジがアスカを連れてきたのだ。最初は渋っていたアスカだったのだが、シンジに家に誘われた(このあたり意味深)と悟り喜んでついてきた。しかし、

「………」

上座で居住まいを正しているゲンドウがたとえようもない重圧感を生み出しアスカは緊張のあまり何も出来ずにいた。

余談だがシンジが碇家に泊まるときには必ず家にいる。

「アスカが会長で僕が副会長です」

アスカの代わりにシンジが答えた。

「…何?」

ゲンドウが重々しい声で言った。

思わずびくっとするアスカ。

アスカの膝の上のレイが何事かとアスカの顔を見る。

ちなみにレイはこの前ミサトの家で世話になってからアスカに懐いている。

「どういうことだシンジ?」

アスカは自分が会長になるということを糾弾されているように感じて気が気でない。

「質問の意味が良く分からないけど。

 会長はみんなを引っ張っていく元気な人じゃないといけないだろう?みんなに活を入れたり、いろんな人と活発に議論したり、時には喧嘩したりね。元気なアスカにぴったりだろ?

 逆に副会長は会長とみんなの間を取り持ったり、苦情を聞いてあげたり会長を補佐してうまくみんなをまとめていく役割だから、穏和な性格の僕の方がいいって」

「言う通りね。誰が言ったの?」

席に着くリツコ。

「委員長、じゃなかった洞木さん。後はカヲル君も」

「人を見る目は確かな様ね」

「ほんとだね。そういうことなんだけどなにか問題ある父さん?」

「問題ない。好きにしろ」

「うん」

うなずきあう父と子。

「じゃ、食べましょう」

リツコの合図で一同手を合わせる。

「アスカ?」

「え、ああ。ごめん」

アスカも慌てて手を合わせる。

「ゲンドウさん?」

「ああわかっている」

ゲンドウも手を合わせる。

『いただきます』

 

 

「レイと一緒に入って大変じゃなかった?」

「ああ、慣れてるから大丈夫よ」

髪を整えながらアスカが答えた。

リツコはレイの髪を乾かしている。

結局今日は泊まっていくことになった。

アスカも食事が終わる頃には自分を取り戻していた。

もっともゲンドウがときたま見せるシンジやリツコとの会話には驚く他無かったが…

…ま、ネルフの総司令って言ってもシンジの父親には違いないもんね

さすがに自分の義理の父になるとまではまだ考えつかない。

「………」

ゲンドウが居間に入ってきた。

「…シンジは?」

「今、お風呂に入ったところですよ」

「…そうか」

少し考え込むゲンドウ。

何事かと見るリツコとアスカ。

不意にゲンドウが顔をあげる。

「惣流君。少し話があるのだが書斎まで来てくれないかね」

アスカは耳を疑った。

碇司令が自分に話がある?しかも命令じゃなく頼んでいる?

助けを求めるようにリツコを見る。

「大丈夫よアスカ。何も取って食いやしないから」

こともなげに笑われる。ゲンドウは無言だ。

…わざわざシンジのいないときに書斎って事はシンジに関係する内密の話って事ね。

「わかりました」

アスカが承諾するとゲンドウはうなずき居間を出た。

 

 

 

NEON WORLD EVANGELION

Episode14: Lets go together! 

 

 

「父さんが、アスカと、ですか?」

シンジも耳を疑った。

リツコはレイを寝かしつけている。

「ええ、そうよ。アスカが心配?」

「そんなこと無いですけど、ちょっと意外だったんで」

シンジは正直に言った。

「そうね。あの人はシンジくんとレイは気に掛けていたけどアスカに関しては無関心だったわね。あの人にとってアスカは単にエヴァのパイロットに過ぎなかったから」

「そうですね。アスカにとっても単にネルフの総司令というだったでしょうし」

「そこに何か変化が現れたと言う事よ」

「何かって何です?」

「さぁ?少なくとも鍵はシンジくんね」

リツコは悪戯っぽく笑った。

 

 

「まずは君に謝らなければならない」

ゲンドウはそう切り出した。

「謝る?」

今日は本当に次々と驚かされる日だ。

「最終的に決断したのはシンジとはいえ第一支部への出向を提案したのは私だ。そのために君とシンジにつらい思いをさせた」

「い、いえ。もうすんだことです」

聞き慣れない口調に思わず丁寧に答えるアスカ。

…これがあの外道な命令を出す総司令?

「そしてもう一つ謝らなければならない。今から私は君の将来を決めるかも知れない話をする」

「私の…将来ですか?」

…何を言う気よ、この親父。

「そうだ。この話を聞けば君は自動的にいくつかの選択肢から選択をせざるを得ない。

 それを避けるにはこれ以上話を聞かないことだが、もう君の好奇心は止められまい。

 結果、君は選択することになる。そこへ追い込んでしまうことを謝りたい」

そういってゲンドウは頭を下げた。

「ちょ、ちょっとやめて下さい!」

誰に言っても信じてくれないだろう、アタシに碇司令が頭を下げたなんて。

「大事なお話だというのは十分わかりました。とにかくおうかがいします」

「そうか、では話そう…これはシンジの将来の話だ」

この前加持に聞いが教えてもらえなかった話と察する。

「シンジのことだからまだ君に話していないだろう。それは先程述べた理由に寄るものだと理解してやってくれ」

「わかっています。シンジのことなら」

「そうか」

そういってゲンドウは口元をゆるめた。

…え、今、碇司令笑った?嘘!?

「さて今言った件だが、シンジをアメリカに送った理由はいくつかある。まずは政治的なもの。次に初号機と引き離す事によりフォースインパクトが起こる危険性をしばらくおさえること」

「フォースインパクトが起きるの!?」

思わず叫ぶアスカ。

「ああ、シンジと初号機があれば起こすことは可能だ。だからネルフが完全な防備を取り戻すまでシンジをここに置いておくのは危険だったのだ」

「でも、シンジがさらわれでもしたら…」

「シンジには加持君をつけておいた。そして最初の話に関わってくるのだが…シンジには自分で自分の身を守れるよう鍛えさせた」

「………」

「実際、シンジに対する襲撃は20件を越えている。うち半数はシンジ自身が撃退した」

「!?」

「そして加持君とシンジが率いる部隊は既に10を越えるゼーレ関係の組織を潰している」

「あのシンジが…」

…まさかそこまで

愕然となるアスカ。

それを見てゲンドウが寂しそうに言った。

「シンジの手を血に染めさせたのはこの私だ。恨むなら私を恨んでくれ」

アスカはしばらく考え込んだ後首を左右に振った。

「でもそのおかげでシンジは無事に帰ってきてくれたんです」

「…そうか」

 

「では、本題に入る」

「はい」

アスカも姿勢を正し身構えた。

「単刀直入に言おう。シンジには私の後を継いでもらう」

「!?」

「すなわちネルフの総司令となりネルフを指揮するということだ」

…シンジが、あのシンジがネルフの総司令!?

「ゆえにシンジにはありとあらゆる教育を受けさせた。短期間であったがまずまずの成果をあげている。私が退く頃には十分につとまる様になっていることだろう」

「それで…」

…ネルフの総司令。そんなの確かに生半可なことじゃつとまらないわね

「これはネルフ内部でも最高機密に属する」

一時、総司令としての顔を取り戻しゲンドウが言った。

「了解しました」

アスカもパイロットとして答える。

「…さて、君にこんな話をしたのは一つ頼みがあるからだ」

「頼み?」

「…シンジが好きかね?」

ゲンドウは唐突に言った。

「え!?」

驚くアスカを手で制しゲンドウは続ける。

「ああすまない。君の気持ちは周知の事実だが確認しておきたかったのでね。

 …人を愛するというのは素晴らしいことだ。

 私も妻を愛していればこそここまでやってこれた…」

アスカは何も答えなかった。

これはゲンドウの独白だ。

妻というのはつまり…

「シンジは総司令の責務を果たすだろう。人の幸せが自分の幸せだと言ってな」

「………」

「だが、あいつは自分の幸せを忘れがちだ。時には自分のことを優先させるということを思い出させてくれる人物があいつの側にいてくれれば私も安心できる」

…つまり、私にシンジの側にいてくれないかってことね。

遠回しだがシンジを本当に愛しているのだとわかり初めてゲンドウに対するわだかまりが消えていくアスカ。

…シンジと一緒で不器用なのね。当たり前か親子だし

アスカは息を吸い込む。

「私はシンジが好きです…いえ、少なくとも自分では愛しているつもりです」

ゲンドウが視線をアスカに戻す。

そのままお互いの視線をぶつけ合う二人。

「私はシンジにずっとそばにいてもらいたいと思っています。だからシンジがネルフの総司令になるというなら私もネルフに残るまでです。あいつの幸せなんて知らないけど私は私の幸せを捨てるつもりはありませんから」

アスカのこれまた遠回しの言葉にゲンドウは…今度こそ本当に微笑んだ。

 

「…長いですね」

「…そうね、さすがに少し心配になってきたわ」

お茶を飲んでいたシンジとリツコも少しそわそわしてきた。

二人が消えてから既に30分以上経過している。

 

「ありがとう惣流君」

「お礼なんていりません。私は私のために決めたんです。それにお話を聞かせてもらってこっちこそ感謝しています」

「そうか」

ゲンドウは眼鏡を持ち上げると表情を改めた。

「君の処遇はエヴァのパイロットのままだ。それが全てに優先することに変わりはない。だが君の能力ならすぐにも作戦部、技術部のいずれかに入れるだろう。現状で何か希望はあるか?」

「いえ、今のところは」

「では、君の面倒はこれまで同様葛城君にお願いしよう」

「作戦部へ、ということですね」

「あくまで仮のことだ。もっとも、いずれ前線指揮官として従事してもらうことになるかもしれんがな」

「わかりました」

「ごくろうだった。さがっていい」

「はっ」

アスカは敬礼すると書斎を出て行こうとした。

「…最後に一つ宿題を与えておこう」

「え?」

「…今のシンジにはネルフの作戦部長は勤まらない。現在ネルフの作戦部長を任せられるのは私が知る限り葛城一佐だけだ」

「どういう…」

「よく考えることだ」

そう言ってニヤリと笑うゲンドウは皆の知るネルフの総司令の顔をしていた。

結局わけがわからないまま出ていくアスカ。

バタン

書斎のドアが閉じる。

ゲンドウは眼鏡を外すとデスクの上に置いた。

「…シンジ。いい娘と巡り会ったな」

 

 

居間の前でぐっと拳を握るアスカ。

「よし」

扉をあけ中に入る。

「さあシンジ寝よ寝よ」

「あらアスカ。遅かったわね」

「何の話だったの?」

興味津々な二人。

「ふふふ、気になる?」

「「うん(ええ)」」

「ヒ・ミ・ツ」

…少しはお返ししてやらないとね。

「…あらそう。ま、いいわ。じゃ、ごゆっくり」

そういうとリツコはあっさりと居間を出て行った。

もちろんこれからゲンドウを尋問するつもりである。

「アスカ?」

「さぁレイ、こんな奴は放って置いて寝ましょうね」

そういってリツコが敷いた布団にレイと一緒に潜り込む。

「ふにゃむにゃ」

半分寝ているレイは無意識にアスカにすり寄る。

「はやく電気消してよね」

シンジは追求を諦めた。

…まぁ、怒ったり泣いたりしてるわけじゃないし、いいか。

シンジは電気を消すと自分も布団に潜り込んだ。

「…シンジ」

アスカが呼ぶ。

「何だい?」

シンジは顔をアスカの方に向けた。

「…ずっと…一緒にいられたらいいね」

そういうとアスカは布団を頭までかぶった。

「………そうだね」

シンジは答えると目を閉じた。

 

 

「こんな横暴な生徒会を許していいのかー!!」

「アスカせんぱーい頑張ってー!!」

「碇くーんファイト!!」

「みんな!俺に熱い一票をくれ!!」

「どうかよろしくお願いしまーす!」

…などなど生徒会選挙は荒れに荒れた。

人気だけの奴らに任せておけるかと正当派(?)立候補者の対抗馬が現れ、また、あの二人がいるならば一緒にと生徒会役員の席を奪い合う者も現れ、立候補者数は過去最高を記録した。一件を画策したと思われる現会長は最後に大仕事ができると喜んでいた。

 

そして、迎えた選挙当日、候補者の演説会。

「これが演説の順番表です」

そういって現副会長が順番表を渡して回った。

「質問いいですか?」

シンジが手を挙げた。

「なんでしょう?」

「この順番を決めたのはやっぱり会長ですか?」

「ええ、そうです」

…やっぱり。シンジは現会長を『高校生にしては食えない人物』と評価していた。

演説の順番もラスト3人がアスカ、マユミ、シンジだ。

最後にアスカとシンジがいればみんな気合いが入るだろうと言う魂胆だろう。

「山岸さん、気分はどう?」

「き、きんちょうしてます」

見るからにガチガチのマユミ。

「アスカは?」

「ばっかね〜。こんなおもしろいイベントそうはないわよ」

そういって手元の原稿を確認している。そこに書かれたデータの内容を思い出し苦笑するシンジ。

…まったくアスカも意地が悪いな

そう思いつつマユミを元気づける。

「山岸さん。アスカの演説をよく聞くといいよ。たぶん肩の力がすっと抜けるはずだから」

「わ、わかりました」

「ほんとにマユミって昔のシンジみたいに気が弱いわねえ。女は強気よ!」

ぐっと拳をにぎってマユミに突きつけるアスカ。

 

 

<惣流アスカラングレーの場合>

 

「このたび生徒会長に立候補させていただきました惣流アスカラングレーです。どうか宜しく御願い致します」

アスカの第一声は当たり前の礼儀正しい挨拶だった。

背筋をピンと伸ばし真面目な顔で言ったものであるからわいわい騒いでいた生徒達も思わず居住まいを正す。

「立候補に当たり思うところをいくつかお話しさせていただきたいと思います。よろしければお聞き下さい」

まだ続くアスカの挨拶。いつもとのギャップに落ち着けない生徒達。だが、このわずかな間にアスカのファンが更に増加したのは疑いようがない。

「こちらの資料をご覧下さい」

演壇背後のスクリーンに何かの表が投影される。

題名は、『惣流、碇両名立候補決定後の両名への贈答品一覧(金額は市場価格を参照)』。

講堂内がざわざわと騒ぎ出す。

その表にはどの部がどちらにどの程度の金額の物を送ったのかが克明に記されていた。

事情を知らない生徒達や教師陣から疑問の声が上がる。

「さあ!あんたたち目を見開いてよっくご覧なさい!!」

バンッとアスカは演壇を叩いた。

左手は腰に当て顔は挑戦的な表情を浮かべる。惣流アスカラングレー本来のポーズだ。

「見れば分かる通りこれは明らかに賄賂工作よ!それも私とシンジが当選するだろうなんていう他愛ない噂に踊らされた馬鹿共のね!」

アスカの辞書には容赦とか手加減とか言った文字は存在しない。

「個人が個人に贈り物をすることに文句を言う筋合いはないわ。だけど、これを持ってきたとき言った言葉は『どうかウチの部をよろしく』…どう考えても違うわよねぇ?明らかに各部からアタシ達への贈り物、ということはどう考えても生徒会が大事な予算の中から割り当てた補助金から出ているとしか考えられないわね」

そうだ、そうだという声が上がる。

逆に賄賂を送った部員達は小さくなる。

「少ない予算で頑張っている部は他にたくさんいるわ。これだけお金が余ってるならそっちに回しても問題ないわよねぇ」

にやりと笑うアスカ。

その悪魔のような笑みに贈答派は悲鳴を上げその他の部は歓声を上げた。

「同好会・愛好会も同じよ。アタシたちにプレゼントする金があるなら補助なんていらないでしょ!文句があるならいつでも来なさい!もらった物もナマ物以外は全部保管してあるからいつでも返してあげるわ!

 このアタシが会長になった暁にはこの手の不正は一切見逃さないわ。予算に限らず何か言いたいことがあるならしっかり筋が通った説明をするか、それを上回る誠意熱意を見せなさい!それが嫌だってんなら私を落選させればいいわ、アタシは別に生徒会長に未練はないもの。でもやるからには徹底的にやるわ!覚悟しなさい!」

そこで、スクリーンを消し、姿勢を正し表情を改める。

「私の話は以上です。どうもご静聴ありがとうございました」

ぺこりと頭をさげるとしずしずと演壇を去った。

しばし静寂に包まれる講堂。

だが、それも長くは続かなかった。

拍手の波と大歓声が生徒達の間から上がる。

静粛を呼びかける声もあったが耳にはいることはなかった。

肝心のアスカはというと、

パチパチパチ

「アスカらしくていい演説だったよ」

とシンジからお褒めの言葉を頂き照れていた。

 

 

<山岸マユミの場合>

 

マユミが出れる様になるまでには少々時間がかかった。

マユミ自身もアスカの演説に感動して拍手していたためである。

アスカに背中を押されて我に返る。

講堂もようやく静まる。

「山岸さんがんばって」

「ありがとう碇君」

「ちょっと私には励ましの言葉なんて無かったわよ?」

「アスカは大丈夫だってわかってたからね」

「…なんかごまかされた気がするわね」

いつもながらのほほえましいやりとりにマユミは心が和んだ。

…よし、いくわよマユミ。

アスカの真似をしてぐっと拳を握ると演壇に向かって歩き出した。

「初めまして2−Aの山岸マユミと申します。このたび書記に立候補させて頂きました」

アスカの余韻が残っているのか生徒達もおとなしく聞いている。

「私には会長のような、特に先程の惣流さんの様にみなさんを引っ張っていく力はありません。副会長としてみなさんをとりまとめていく力もありません。ですが、書記として生徒会の実務をこなす能力はあると自負しています。うぬぼれかも知れませんが会長、副会長の補佐をして生徒会を立派に切り盛りしていきたいと考えています。生徒会をどうこうしたいという願望や学校をこう変えたいという理想は私にはまだありません。ですが、生徒会の仕事をしていく上で私に何かしたいことが出来たときは自分の力の限りそれに向かって行きたいと思っています。

 私にはみなさんにお願いする実績はありません。ですが、もし私にわずかばかりでも期待して頂ける方がいらっしゃいましたらどうかよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました」

短いが自分の言いたいことを言えたマユミはすっきりした気分で頭を下げた。

2−Aの陣地でケンスケが拍手を始めた。

それを横目にカヲルとトウジが手を持ち上げ、ヒカリとマナもそれにならう。

彼らに触発されて拍手が起きる。

アスカの時とは違う静かな拍手が講堂を満たしていった。

 

 

<碇シンジの場合>

 

「…みなさんこんにちは碇シンジです。この度、副会長に立候補させていただきました。

 お疲れかと思いますがもう少しお付き合い下さい」

シンジはそういって微笑んだ。

「お疲れの訳ないじゃない。あんな気合いの入った演説の後じゃみんな目も頭もしっかり冴えてるわよ」

ミサトが呟く。

「それにしても絶妙な順番ですね」

誰が考えたのかとマヤは思った。

アスカの演説で気合いを入れることによりマユミの演説を落ち着いて真摯に聞かせ最後にシンジで締める。アスカの前の候補者の事など頭から綺麗に消えているだろう。

「うふふ、そうでしょそうでしょ♪」

「………」

マヤはこの一件の真の黒幕を悟った。

 

「…僕は昔できることをできもしないと決めつけ何もしない後ろ向きな人間でした。ですが今は出来ることをやらないで後悔したくはないと思っています。ですから副会長の仕事も僕に出来るならやり遂げたいと思っています。同時にみなさんにも自分に出来ることをやる、と考えてもらえたらと思っています」

 

「なんか彼深刻そうな顔してたからさ。ちょっち相談に乗ってあげたのよ」

「彼って…生徒会長の?」

「そ。なんか生徒会の今後とかについて悩んでたみたいだから活を入れてあげたのよ。

 ま、役員人事はちょっとしたおまけね」

「…これが、ちょっとしたおまけ、ですか…」

 

「いくつかの事情から僕…僕と先程の惣流さんは生徒会に満足に時間をさけるかどうかわかりません。ですから他のみなさんに頼ることになると思います。こんな僕たちが役員になる事には問題があるのかも知れません。ですが、今一度みなさんに思い出してもらいたいことがあります。生徒会はみんなで作るものだということです。役員は単にお世話をさせていただくにすぎません。勝手かも知れませんが僕はそう考えさせていただき出来る範囲で生徒会の仕事をしたいと思っています。僕は最初に自分に出来ることをすると言いました。それは無理をすることではありません。ですが、自分で勝手に枠をはめて出来ないと決めつけることでもありません。これからの生徒会ではみなさん自身が自分にどれだけの事が出来るのかみなさんが見つけられるようお手伝いをしていきたいと思っています」

シンジはそこで口を閉じると一つ息を吐いた。

「ご静聴どうもありがとうございました。」

深々と礼をする。

講堂は沈黙している。

シンジが演壇を離れると歩み去るその背中に拍手が届いた。

シンジの姿が消えても拍手は続いていた。

 

 

明けて翌日。投票開封結果。

生徒会長…当選者、惣流アスカラングレー。得票率80%。各部を敵に回したため少なからず票が落ちたもののそれらの部内でも裏切り者が続出したため結局圧倒的大差で勝利。

副会長 …当選者、碇シンジ。得票率90%。同じく圧倒的大差で当選。同時に全校女子生徒をほぼ完全に制圧。

書記長 …当選者、山岸マユミ。得票率52%。シビアな戦いとなったが、やはりアスカの後の演説が効いた。賄賂無し部の支持が大きい。

以下略。

 

 

その後。

「碇先輩おはようございます!」

「あ、おはよう」

「あ!会長おはようございます!」

「おはよー」

「会長、副会長おはようございまーす!」

「「おはよう」」

エンドレスリピート。

 

 

「「ふーっ」」

教室にはいると二人は息を吐いた。

「慣れるまでは少しかかりそうだね」

「さすがにこれは予想外だったわ」

 

ただでさえ有名人だった彼らは完全に全校生徒の頭に記憶された。

一般の生徒が会長や副会長にあいさつするのは普通のことである。それがたとえ建前であったとしても。一応ある種の公人となった手前、無視無視といかなくなったアスカは折れた。少なくともシンジと一緒にいれば変な虫もつかないだろうし、いつもシンジと一緒にいるのにも理由が出来た。

…べつにもともと理由を必要とはしてなかったが。

 

 肝心の生徒会の方だが、実務はマユミがいるので遜色無く進んでいる。マユミの出す書類を確認するだけでいい。

 その一方、来年度の予算案会議は荒れに荒れてアスカを爆発させた。収拾がつかなくなって会議は途中でお開きとなった。その後もなんとか生徒会長のご機嫌をとろうとする部長達だったが遠目にもアスカが怒っているとわかるとびびって近寄ることさえ出来ない。この時ほど副会長の存在に感謝したことはないと後に彼らは語る。部長達から個別に話を聞いて折衷案を作成したシンジはそれをアスカに提出した。アスカは見もせずに承認。

「シンジが作成した以上、公平でかつ効率的な完璧な案なのは分かり切ってるわ。もし、私が反対しても説得する材料はそろえてあるはずよ」とのこと。

実際、マユミの手に負えかねる事務作業や折衝は全てシンジが滞り無く行っていた。

シンジを信頼しているアスカは任せっきりである。やがて他の役員は会長の存在価値を疑うようになる。

しかし、3学期の終わりに行われた卒業式を取り仕切ったのはアスカだった。進行、演出、演説すべてをそつなくこなし卒業生と在校生、教師達の心に深く記憶される卒業式とした。

「発想の転換、大胆さ、みんなを率いるだけのパワー。なんでアスカが会長かわかったでしょう?」

と彼らの敬愛する副会長はのたまった。彼らはただただ頷くだけだった。

かくて、新生徒会役員のもと彼らは高校生活最後の年を迎えることとなる。

 

 

 

チルドレンのお部屋 −その14−

 

トウジ「なんちゅうか平和やな〜」

シンジ「そうだね」

アスカ「ま、これもシンジのおかげよね」

シンジ「そんなことないよ」

アスカ「少なくともシンジがネルフの総司令になったらシンジのおかげでしょ?」

シンジ「そ、そうなのかな」(少し照れる)

レイ 「碇くんが総司令…碇司令?…碇司令の息子が碇くんで碇くんのお父さんが碇司令…碇くんが司令になったら碇司令は碇司令でなくなって碇司令に碇くんが…」

(無限ループに入る)

シンジ「あ、綾波!?」

アスカ「こらレイ!なに混乱してんのよ!シンジはシンジでしょ。あんたは、えーと…そうよ!お兄ちゃんて呼べばいいのよ!碇司令はお父さん!わかった!?」

レイ 「…碇司令はお父さん。…碇くんはお兄ちゃん。…そう、わかったわ」

   (いつもの無表情に戻る)

アスカ「まったく世話の焼ける奴ね」

シンジ「ありがとうアスカ」

トウジ「そういや、今日は渚がおらんな?」

アスカ「あんな奴ロンギヌスの槍で月面に縫いつけときゃいいのよ」

シンジ「昆虫採集じゃないんだから…」

アスカ「駄目よシンジ。主人公はあたしたちだけど今回出番が少なかった分あいつやマナの出番が増える恐れがあるわ」

シンジ「別にいいじゃないか」

トウジ「センセはわかっとらんな。ま、原作から主人公やけん仕方ないけど、脇役は出番を奪い合うもんなんや」

シンジ「そうなの?でも原作じゃカヲル君がまともに出たのは一話だけだよ?」

トウジ「かわりに一話でさんざん目立っていきよったろが。たった一話でわいらと同格やろ?委員長やケンスケなんかより上やもしれん」

シンジ「そ、そういえば」

アスカ「だいたいシンジにベタベタというのが許せないわ!レイ、今度来たら構わないからATフィールドでまっぷたつにしてやりなさい!」

レイ 「命令ならそうするわ」

アスカ「じゃ、命令よ」

レイ 「了解」

シンジ「あ、綾波?」(あなたからの命令は聞かないわ、じゃないの〜?)

 

 

 

つづく

 

予告

 

シンジ達は高校3年生になっていた

それぞれの歩む道を選択すべき時

シンジの誕生日パーティーを機会に

彼らはそれぞれの選択を話し合う

ミサトは教師として一人の大人として

彼らの思いに耳を傾けるのだった

 

次回、新世界エヴァンゲリオン

第拾伍話 時、来たりなば

さぁて次回もサービスしちゃうわよん!

 




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