EVA Police Force

〜新第三東京市警の平凡な日常の風景その二〜

 

 

空が泣いている。厚い雲に覆われ、これから来る世界の惨劇を嘆いているかのように。

 

2023年の夏は始まったばかりであった。

土砂降りの雨が佇む二人の男を容赦なく打ち付けていた。寒くは無いが、たまらなく虚しい。

気温はぐんぐん上がっていることもあり、不快指数100%といったところだ。

着ている制服が汗と湿気で肌にべったりと張り付いている。

 

「どーや、生きとるか?」

「ホント、最悪だよ」

 

新第三東京市警の入り口に立つ2人の男、それが彼らである。

「交代のやつらはまだ来んのか」

不快がたたり、いても立ってもいられなくなり、苛立ちも上昇してきた。

 

「トウジ、まだ30分位しか経ってないよ。あと2時間半はあるよ」

 

トウジはがっくりと肩を落とす。

 

「なぁケンスケ。なんでわいらこんなことせにゃならんのや」

 

肩を落としたままの原始人のようなトウジが嘆く。

 

「ボヤカナイ、ボヤカナイ」

 

まるで子供をあやす様に返す。

 

トウジは高校卒業後、妹の入院費・医療費を維持するために安定した仕事を希望し、警官の職についた。

あれから五年が経つが未だに巡査のままである。上司への暴言等により、なかなか昇進できなかった。

暴言と言ってもトウジが悪いわけではなく、未だ警察内部にある不透明な部分に苛立ってのことである。

ケンスケは高校卒業してからというもの、戦自に入るために努力をしたが、気持ちばかりが焦り筆記試験に

合格できずに4浪し、親に無理矢理警官にされてしまった。無理矢理というのは間違いかもしれない、

3浪した時に親に次で受からなかったら別の仕事にすると宣言していた。だが4浪に入ったとき、

おとなしく諦めるはずも無く子供のように駄々を捏ねたが、大の大人が未だに無職という体裁もあり両親は

無理矢理公務員試験を受けさせ、めでたく警官になれた。

 

「なーんもあらへんの〜」

「平和がなによりじゃないか」

「まぁな。でもちこーっとぐらい刺激があったほうが面白いやろ」

「警官がそんなこと言っちゃダメだよ」

「そんな、硬いこというなよ」

 

ケンスケはトウジの方へ向きなおした。

 

「あのねぇ、市民の平和を守るのがね…」

 

ケンスケの熱弁はやかましいミニパトのエンジン音によって掻き消されてしまた。

交通課の連中が一斉に警らから戻ってきたようだ。ぞくぞくとミニパトが駐車場に消えていく。

車をしまい終わり、戻ってくる交通課の面々に見覚えのある顔があった。洞木ヒカリと霧島マナだった。

ヒカリはやたらとトウジの世話を焼いてきた。トウジとしてはうっとうしい訳ではなく、どっちかというと素直になれる感じがして心地よかった。マナはヒカリと気があうようでいつも一緒にいるようだ。ヒカリとアスカは親友なのでよく一緒にいるのだがマナとアスカはナゼか馬が合わずヒカリの取り合い劇もたまに見受けられる。

ヒカリとマナは一団から抜けトウジ達のところへ歩いてきた。

 

「しっかりやってる?」

 

ヒカリはトウジの目の前で止まると覗き込むように顔を見る。

 

「あたりまえやないか。しっかりやっとるで、心配いらんがな」

 

仲つつまじい会話が繰り広げられ、マナはちょっとヒマそうだ。ヒカリがトウジに話があるからということでついて来たのだが、思ったより長話になりそうなので退屈してきた。

おもむろに空を見上げ止む気配の無い雨を見つめていると気分がだんだん落ち込んでくるような気がしてきた。そして一つの悩み事が浮上し、心の水面からその巨体があらわになってくる。

 

「ねぇ。相田君」

 

同じ様に降りしきる雨を見つめていたケンスケに話かけた。

 

「何?」

 

お互い顔は空をみつめたままだ。

 

「アタシのことどう思ってるのかな…」

 

ケンスケはマナを見る。

静かに雨を見つめる美女の姿に天女の姿をダブらせていた。

(あぁ、なんて美しいんだ。アスカも綾波もかなりレベルは高いが、アスカは乱暴だし、綾波はどこか怖い。しかし、この女性は完璧だ。

どうして僕にそんなセリフを…。?。「相田君、アタシのことどう思う?」って、つまり

僕に告白してるってことじゃないか。おおぉ神よ!やっと僕の時代が来るのですね。

あっちこっちどこ探しても、シンジシンジってどいつもこいつもシンジばっかりもてさせやがって、ストーリーの一箇所くらい僕のための話も作ってくれたっていいのに、誰もそんなことしようとしなかった。やっと、やっと僕の時代が来たんだ。この恋をきっかけに

ラブラブケンスケ&マナ様(LKM)なんて新ジャンルが確立して、廃れ始めたEVASS世界にセンセーショナルにデビューを飾り、LKMでSSのHP(ホームページ)のカウンターは壊れるがごとくカウントを開始するのだー!さぁマナ、始まりの鐘を鳴らそう。さぁ!!)

 

「…シンジ君」

 

マナが言った「アタシのことどう思ってるのかな…」の「…」の部分。わずか0.07秒の間の間に繰広げられたケンスケの妄想は0.05秒で最終防衛ラインを突破していた。その0.02秒後に続くマナの言葉は新型N2爆雷より強力だった。

 

2階の窓からその様子をモニターしていた息吹マヤ。

 

「パターン消失。目標は完全に沈黙しました」

 

その傍らで同じように2人を眺めていた人物、赤木リツコ。

 

「バカね、この設定にはあなたはそんなセリフ言う必要ないのよ。」

「そうなんですか?先輩。じゃあ先輩もマッドサイエンティストじゃないんですね」

「えぇ、違うわ。でも、一つだけ言っておきたんだけど、もともとあたしはマッドサイエンティストじゃないわ。

どこぞのバカが勝手につけただけよ。あたしの技術と知識に勝てないからって、ヒドイ話よね。」

「でも、今回は先輩の科学の知識は要らないらしいですよ。出番自体少ないらしいです」

 

リツコは驚愕の表情を出す。

 

「どういうことよそれ!あたしの出番が無いって、話が進むわけが無いじゃない」

「そんなこと言わないで下さい。私の方が絶対出番が少ないんですから」

「あの髭眼鏡オヤジに体張るなんていう昭和後期のB級アイドルみたいな真似して

やっと手に入れた役だったのに…」

「さっきレイが言ってたんです。」

「なんて」

 

 

「ばぁさんは用済みって」

 

(ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み 

ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み 

ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み 

ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み ばぁさんは用済み)

 

翌日、レイのバラバラ死体が発見され、死体は身元不明者として処理され極秘裏に回収された。

 

 

 

「冬月…資料が届いた。」

 

わざと遮光カーテンを閉めて薄暗くしている所長室。二人は悪趣味なほど巨大な机をはさんで向かい合っていた。

 

「そうか、今度はなんだ。」

 

ゲンドウは手にしていたパンフレットを広げる。

 

「「幸運の最高級仏像セット!今なら掛け軸がついて据え置きプライス!!」だ。」

 

頭を抑える冬月。

 

「そ、そうか…。この前の有田焼ハニワセットのローンは終わったのか」

「ふっ、問題ない」

「それもここに置くのか?」

「もちろんだ。なんせ幸運をまねくからな。身近に置いとかなければ意味が無い」

「招き猫十段飾りのときのようにならんといいなぁ。」

「あぁ、あれは問題だった。季節ごとに毛の生え変わりしたからな。ラジオの通信販売は

注意せんといかんな、『きゃー』のようなかわいい猫だと思ったんだが・・・」」

「猫の即身仏を使うこともなかろうに。署内で夜な夜な猫の鳴き声がしたらしいし、

今度は大丈夫なんだろうな。」

「なんせ仏像だからな、大丈夫だろう。」

「たのむぞ碇」

「あぁ、任せておけ」

 

一週間後ゲンドウ宛てに等身大の荷物が30個届いた。

 

「碇、でか過ぎないか」

「…写真しかみてないからな。」

「どうする。」

 

翌日署内各所に仏像がならんだ。

 

「いやー仏像様様やなぁケンスケ」

「まったくだね。仏様は僕たちを見捨てたりはしなかった」

「ホンマや!」

 

今、東京第三東京市警察署入り口には不動明王が二体セットでならんでいる。

 

(つづく)

 

 

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あとがき

 

とりあえず三話目です。今書いてるストーリーがちょっと長くなりそうでまだ書き終わっ

てないんです。で、とりあえずって意味で用意した三話目でした。

物語中でレイが死んでますが、大丈夫です。理由は皆さんもご存知だと思いますが

彼女は平気ですのでご安心を…、あと『きゃー』という猫のことが出ていますが

「ぼくの地球を守って」という漫画にでてくる死ぬほどかわいい猫の名前なんです。

「魔女の宅急便」の『ジジ』と争うくらいかわいいです。

それでは次の話からはメインストーリへと突入していきます。また是非読んでください。

 

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