レイは悩んでいた、、、、

修学旅行初日、最初の夜から一人でロビーで寝るか、

それとも危険地帯と解っていても部屋に戻るべきか、

訳の解らない理由で求愛する部屋に戻るか、、

(はぁ、、、、ミサトのとこにでも、、、)

そう思った瞬間、酒乱で暴れまわるミサトとまったくそれを意に介さない

カオルの姿が目に浮かび、早々と諦める。

(絶対今の時間、ミサト暴れてるか、大イビキをかいて寝てるかだな、、、)

仕方が無く、レイは夜中までロビーで寝て、明け方部屋に帰る事にした、

「はぁ〜、、、、、、」

ため息をつきながらレイはロビーのソファーに横になった。

古びた旅館だが、午前零時過ぎでもエアコンが効いている為、

さほど寒さを感じずに過ごせる。

(まったく、、、初日からこれじゃぁ、、、先が思いやられるなぁ、、)

レイは緑色の非常口灯のグリーンに染まった天上を見上げた、

(、、、、、、、はぁ、、でもアスカも碇君も酷いよなぁ、、

アタシが困っていても、助けようとしないもんなぁ、、

寧ろ、笑って楽しんでるなんて、、、、まったく酷いやつらだよ、)

マナの事も、睦野と大樹の事も他人が口を挟む事ではないはずなのに、

レイは自分を見捨てたと思い、勝手にシンジとアスカに怒りをぶつける、

(まったく、、、明日二人には仕返ししてやる、、、くくく、、、

でも、、大樹君達はまぁいいとしても、、、マナの方はなんだかヤバイなぁ、、

本当に襲われそうだもんなぁ、、アスカがいたから良かったけど、二人っきり

になったら唇どころか、体まで奪われそうな勢いだもんなぁ、、、)

天上を見上げながら、呆然と天上を見上げながらレイは就寝につこうとしていた、、

その時、

「こんな所で寝たら、本当に風邪ひくよ、」

その声と共に毛布が一枚レイの体に掛けられた、

「あれ、、、碇君、、、」

天上を見上げるレイの視界にシンジが入る、

「、、、、、、、、、、、気配消して近ずいたでしょ、」

「はは、、でも気がつかないなんて、レイ、多少気が緩んでたでしょ、」

ムッとしたレイとは対象的にシンジは笑いながらソファーに座る、

毛布を体に巻きつけながら、レイは上半身を起こす、

「アスカが捜してたよ、」

「そう、、、」

「もうマナは寝たから、安心して帰ってこいって、」

「どうして、アスカは来ないのよ、」

「レイはある程度訓練を受けてるから、有事の際には多少対応できる。

でも、マナは一人っきりにすると危険だからね、、、、、」

「マナは今でも危険範囲内の人物なの?」

「僕とアスカの幼馴染だからね、、、、敵も当然チェック済みだろう、」

「そう、、、、、、」

レイはテーブルに置いていた缶コーヒーに口をつける、

静かだ、、、

レイの喉を通るコーヒーの音すら聞こえそうだ、

数分前までは修学旅行特有の騒がしさが廊下まで響いていたのだが、

今は、空気が肌と擦れる音すら聞こえる、、

「なんだか、静かだね、、、」

「さっき、リツコさんが見まわりしてたからね、、、、

“静かに寝ないと明日特別授業をやる”って云って脅かしたらしいよ、、」

「“特別授業”って、、、、男子なんか喜ぶんじゃないの、

結構マゾッ気あるやつ多いじゃない、リツコに責められたいなんて叫ぶやつもいるし、」

「あぁ、、、、その程度の授業ならいいんだけど、、、、噂じゃ、、、

リツコさんの特別授業の後、1週間はまともな暮らしできないらしいよ、」

「はぁ、、、、、ネルフの影の拷問部長って噂は本当なのね。まったく年増の

ババァはやる事が陰険だから、若いエキスでも吸って喜んで、、、、、って、、、、」

レイの言葉が唐突に止まる、

笑ったままの表情は瞬時に凍りつき、一滴の汗が額から頬を伝わる、

そして、その視線の先には暗闇に立つ、一人の女性を見つめていた、

「リ、、、リツコ、、、、」

「あら、シンジ君、レイ、、、早く寝なさいよ、、ふふふ

レイは特にね、、、、明日は大変な一日になるしね、、ふふふふ、、楽しみね、、」

そう云い残し、不気味な笑みを浮かべたままリツコは闇へと消えて行った、、

「あぁ〜あ、、、僕は知らないよ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、碇君、知ってたでしょ、、」

「さぁ、何の事?」

「リツコが徘徊してるって、、、知ってたんでしょ、」

「さぁ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、呪ってやる、」

レイは泣きそうな顔をしながら、シンジを睨みつけた、

 

 

 

 

 

Nothing like the Moon

episode 5

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、、、」

レイは笑うシンジに不満を漏らしていた、

「まぁ、リツコさんの拷問なら訓練で何度も受けてるから、大丈夫だよ、」

シンジは他人事として笑いながら話す、

そのシンジの笑みに多少ムッとしながらレイは反発する、

「碇君って好きね、その“大丈夫”って言葉、」

「そう?」

「うん、、、、当事者じゃないんだから、適当に使わないでよ、」

「はは、、でも、他人に“大丈夫”って言われるとなんだか安心しない?」

「別に、、アタシは自分が納得しないと安心できないわよ、」

「そう、、そうか、、、、レイは強いんだね、」

「どうして?」

「僕は駄目だ、、、自分で納得しても何も信用できない。自分で大丈夫だと思っても、

不安で仕方がない、、寧ろ他人に保証されたほうが安心できるよ、、」

シンジは自嘲的に笑う、

レイにはその笑いが何故か嫌な物に見えた、

「どうしてよ、他人の言葉なんか意味ないじゃない、」

「うん、、、そう思ってた、、以前はね、、」

「以前は?」

「うん、、、でも、あの連中と戦う様になってから、、、自分で考えたり、

自分の意志を表にして行動することが無意味に思えて、、、

あ、レイ、一本貰っていいかなぁ?持ってるでしょ?」

レイはそう言うシンジに、無言でポケットからタバコを取り出し、

一本差し出す。そして、ジッポでシンジが咥えたタバコに火をつける、

「ふぅ〜、、、、」

煙をはきながらシンジは大きく息をつく、

「いつからだろう、、、、自分の考えや意志が本当は何か既存の価値観内

のコピーであったり、刷り込まれた物であったり、自分に都合の良い

世界観だったりしてて、、、、どうしても自分の純粋な意志が解らなくってね、、」

「それと、あの連中を戦う事とどう関係があるのよ、」

「レイ、、、あの連中、僕達が通常の概念や倫理観を持って見たら異常者だろ、

気色の悪い行動、神経を逆撫でする行為、背徳こそ美徳だとする様な行為、、

どうみても僕達からしてみれば、異常者だ、、、、」

「まぁね、、同じ種族だとは思いたくないわよね、、」

「でも、同じ生物なんだよ。レイ、、、僕も、君も同じ人間なんだよ、、」

煙の向こう側に見えるシンジの顔は、薄笑いを浮かべている、

レイを多少見下した様な笑い顔は、苛立ちすら感じさせる、

「なによ!アタシがあの異常なセックスに耽っている連中と同じだっていうの!」

「いや、、、同種族だといってるんだよ、、変え様のない事実としてね、」

苛立つレイには、シンジが話したい事がいまいち理解できないでいる、

「、、、、、、、、、何が言いたいのよ、」

「レイ、、、、ある昔話をしよう、、、昔々、、ある国での話しさ、、、、、、

その国では神様の存在を誰一人として疑わなかった、、

奴隷も、商人も、農民も、貴族も、王族も、、、誰一人として神様の存在

を疑わず、信仰していた。ところが、或時、神様の使いが現れて、国中の

人間を前にしてこう言ったんだ、、

“我偉大なる神を信じる者達よ、、、迷える者達へ光を授ける、、

願いを申し出よ、、一人につき、一つだけかなえよう、、、“

その瞬間、国中の人間が口々に叫びはじめた。奴隷は自由を求めて、

商人は商売繁盛を求め、農民は豊作を求め、貴族は自分達の栄華繁栄を求め、

叫んだんだ。当然、王様も国の繁栄を願った、、、

だが、その国の小さな王女は何も求めはしなかったんだ。

そして、最後の一人となった幼い王女に神の使いが尋ねるんだ、

“どうして何も望まないのかね、”とね、

すると王女はこう言ったんだ、

“願い事は叶っても、その先にさらに願い事が生まれる、

どんなに幸せになりたいと思っても、更にその先が生まれる、

どんなに欲望を満たしても、更なる欲望が生まれる、、

奴隷は自由になっても、商人は金を儲けても、農民が豊作でも、

貴族が栄華を誇っても、王国が平和でも、、、人間の願い事は尽きない、

欲望が存在する限り、アタシの国は未来永劫の安らぎは訪れない、、

だから、、アタシは望む、、、

誰も、何も望まない世界を、、、誰もが種の保存行為以外は行わない世界を、

アタシは望みます、、、、、、、、最後の望みになる事を祈って、、、“

幼い王女はそう叫んだそうだ、、、」

シンジの話しにレイは引きずり込まれていた、

暗闇の中、グリーンの非常口灯だけが輝く中、不思議な物語を話すシンジを

レイは身動き一つせずに、固まって聞いていた、、、、

「それで、、、、、、、」

「神の使いはその王女の願いを聞き入れた、、、

その瞬間からその国の人間は文化を捨て、文明を破棄し、言葉も

思想も捨てた。ただ、セックスして穀物を食べ、寝るだけの生活

へと戻っていた、、、、そして、その様子を見ていた神の使いは、

嬉しそうにその光景を見ていた王女に向かって言ったんだ、、

“この国には神はもういない、、神を信仰する者もいない、、、

よって、この国は神の道を外れた国とし、世界から封印する、、“

そう叫んだ神の使いは天高く舞い上がり、空を割り、消えて行った、

そして、その瞬間から、その国は歴史から封印され、世界から隔離された

存在になったそうだ、、、、、、、、、、

そして、今も何処かに、、その国は存在してるとね、、、、」

話し終えたシンジは笑ってはいない、、

だが、何処か切なげな笑みを浮かべている、、

レイもさすがにシンジが話した昔話の意味が解ってきたらしく、

神妙な趣でタバコを消すシンジを見つめていた、、

「そんな連中に、、、アタシ達勝てるの?」

「さぁ、、でも方法はあるそうだ、」

「どんな?」

「今は、まだ明確に僕も知らない。でも、今南極に異常な電波障害が起っている、

その電波障害は空中の素粒子と共鳴し、一種の異空間を創り始めているそうだ、、」

「まさか、、それって、、」

「その異空間がある程度の大きさに達すると、地球の機軸が反転し、S極とN極が

反転する。その結果、全ての生物が信じられない体験をするそうだ、、、」

「信じられない体験って?」

「その瞬間に生じる、特殊な電磁波が地球を覆い、脳のある部分を破壊してくれる

そうだ。脳だけじゃない、、所謂原子を振動させ、原子内の電子を破壊するわけだから、

物体の存在も全て破壊するそうだ、、、

中性子爆弾が地球上全てに落ちる、そんな感じらしいよ、、、」

「、、、、、、、、、、、、そんな、、、」

シンジは淡々とそんな話しをする、

もし現実にそんな世界になった時は、世界中が混乱し、地球はどうなるのか、、

人間はどうなるのだろう、、、、

レイにはその時の光景が地獄の様に見えた、、

「まぁ、まだ異空間がその域に達するまでに時間はある、、

それまでに、解決方法を明確な路線に変えれれば、勝てるさ、、」

「、、、、、、気楽ね、」

「いやぁ、、気楽に考えないと、生きる事が嫌になるよ、、僕は、

正直、真剣に悩んだ時期もあった、でも、そんな現象に僕の意志や感情

を挟んで、真剣に議論したところで答えはでないよ、、」

「どうして?」

「レイ、、、今のお伽話しを聞いてた?

その国は確かに今の文明や文化、思想は持っていないかもしれない、

でも、今の軍事力や思想や、主義、主張も持っていない国なんだ、、

ただ、生命に必要な行為だけを持ち、自然と共に過ごしている国なんだ、

そんな国が悪いなんて、、、誰が言えるの?」

「それは、、、」

「確かに、今の誰が定めたのか知らないけど、戒律や倫理には反してる

世界かもしれないけど、、そんな世界が悪くて僕達の今の世界が正しいなんて、

誰が言えるの、、、、、、、」

 

 

 

 

 

「もっと言えば、アタシ達に勝つ事に意味なんてないのよ、」

突然ロビーに女性の声が響いた、

シンジも、レイも瞬時に身構え、その声の方を見る、

その声の主はレイ達の制服を着た女性、見覚えのある容姿

見覚えのある、聞き覚えのあるその女性は、、、

「越智、、、里美、、、、、、」

レイは小さく呟いた、

「はぁ〜い、綾波さん、碇君、元気だった?」

相変わらずの声のトーンがレイを苛立たせる、

ところが、声のトーンと瞳の色は同じだが、容姿は記憶と違っている、

越智の容姿は、レイもシンジも良く知るある女性の姿であった、

「、、、、、、、あんた、、」

「どう、この容姿は、綾波さん前のアタシの外見、余り好きそうな感じ

じゃなかったから、変えてみたんだけれど、、、どう?」

前回出遭った時のボンデージファッションとは違い、

越智は九条というレイと多少拘りを持っている女性の容姿に変化していた、

だが、容姿が違う事よりも、レイを絶句させているのは、

血だらけの制服、口の周りに残った血の跡、肉食獣の様な姿だった。

脚は素足で靴下も履いていないが、血飛沫の跡は明確に残っている、、

そして、両手は真っ赤に染まり、爪には肉片が食い込んでいた、、

「どう、って、、、、、、あんた、まさか、」

「そう、食べちゃったの、九条 ゆきちゃんだっけ?」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、食べた?」

「そうよ、口で肉を噛み切って、血を飲んで、骨をしゃぶって、

臓器を飲み込んで、、、所謂食べたって表現で間違いないと思うけどなぁ、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

レイは何故かこの女と会話をするとき、言葉を失う、、

余りにもレイには心を閉めつける様な現象が襲うからだ、

越智の言葉や、行動が常にレイの脊髄を痙攣させる、

そして、黒板を爪で引掻くような感触が支配する、、

どうしても、好きになれない、、、、

だが、その気色悪い感触にレイはある感覚を抱いている、

潜在的なその感覚は、今の段階では明確にはできないでるのだが、、

明かに何らかの感覚を抱いている。

「九条を食べたって、、、どういう事よ、」

懼れの色を浮かべながらレイはなんとか言葉を生み出す、

「あら、今言ったじゃない、つまり貴方達の世界の言葉で表現すれば、

カニバリズムって事よ、、、、、アタシにとっては単なる食事だけどね、」

平気で唇を歪めながら、瞳を見開き、下品な笑みを浮かべて話す越智に

レイの神経は一気に逆撫でされ、背中に無数のウジが沸いた様な感覚が

吐き気を促す、、、

「あんた、、、、、、まさか、、殺したって事?」

「まさか、殺したっていうのは貴方達の世界での表現で、アタシは家畜

を食べただけよ。貴方達が豚や牛を飼育して食べてるのと同じ様にね、」

「同じなわけないじゃない!同じ人間を食べるなんて、、、、」

「あら、どうして?綾波さんの世界でも牛や豚、鶏、羊、馬を食べるでしょ、

哀しそうな瞳をした子羊を高級品としてね、、、、、、

生まれて間も無い子牛の肉を引き千切って食べるでしょ、、

死んで行く家畜には哀れみを抱かないのに、人間には抱くの?」

「当然でしょ!アンタ、当り前のこと聞かないでよ!アタシは人間なのよ!

その人間が、人間を食べるなんて、、尋常な行為じゃないわ!

あんた、絶対に狂ってるわよ!そんな価値観の世界、絶対に許さない!」

興奮気味に叫ぶレイとは反対に、越智の毒蛇の様な笑みは不気味さを増す、

「ふ〜ん、、、綾波さんが許す、許さないなんて関係ないのよ、

アタシ達は食べたいから食べるだけよ、、本能のままにね、、、」

「本能なわけないじゃない!」

「本能よ、自分が生きる為に敵を排除するっていう本能よ、、、」

「敵を排除する、、、、、、?」

「そうよ、、この九条って女はね、アスカちゃんや、綾波さんに危害を加え様

としてたの。おまけにシンジ君が迷惑してるにも拘らず付き纏って、、

だから、アタシにとっては敵なのよ、、、だから排除したの、、

まぁ、ついでに腹も満たせたから満足、満足、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、意味が解らないわよ、、」

レイは爬虫類の様な瞳の九条の容姿を纏った越智を睨みつける、

 

 

「つまり、越智さんは、僕達を仲間だと思ってるんだよ、、、、レイ、」

今まで黙って聞いていたシンジが答える、

「はぁ、、、、なに、それ?」

「越智さんの世界に同化できる人間は僕達の世界にもいる、、

そして別世界の住人になれる資格が、僕やアスカ、レイにもあるって事さ、」

「し、、資格って、、」

「僕達10代の人間は既存の価値観に毒されていない人間が多いんだよ、

中には既存の概念に浸かり過ぎて、腐ったような女子高生とかいるけど、

まだまだ違う世界に羽ばたける人間は大勢いるんだよ、、、、」

「そう、その中でも、貴方達3人は特別に招待したいわ、」

越智はシンジを嬉しそうに見る、

だが、シンジは今まで見たことの無い様な狂笑を浮かべて、

怒りと憎しみを全面に出しながら笑う、

「ふふ、、そうだね、、、、、、

でも駄目だよ、、、、、

僕がその世界を破壊するから、、、、、」

シンジはゆっくりとソファーから立ち上がる、

そして、シャツの内側からカッターナイフの様な物を取り出す、

「あら、、シンジ君、また無意味なことをするの?」

「無意味でも、意味がある事でもどっちでも構わないさ、

君が誰だろうと、どんな肌の色をしてようが、キチガイだろうが、

僕達の世界が間違ってようが、君達が神の国だろうが、、、、

僕はそんな事に意味を持たないよ、、、、

志向性も、思惟も、思想も主張も全て僕は無意味にしてみせる、

善も、悪も、真理も、全てね、、、、

残念だけど、、、僕を言葉でプロテクトは出来ないよ、」

「そう、、じゃぁ、行為でプロテクトしなくちゃね、」

「あぁ、、」

その瞬間、シンジのカッターナイフから刃の部分が一気に飛び出す、

越智も大蛇の様な牙を剥き出しにし、金色に光る瞳でシンジに飛びかかる、

そして、次の瞬間、、、

二人はレイの視界から消えた、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミサトの部屋の前で、一人の少女が入り口のドアに立っていた、

Tシャツに単パン姿の少女は、静かに音を立てずにドアを開いた、

そして、暗闇に染まっている部屋を息を殺して侵入していく、

「くくく、、シンジ達の部屋にいないとなると、葛城先生の部屋しか

ないわよね、、、、レイったら、そう簡単に逃げれないわよ、、、」

小さく呟く少女、霧島 マナは忍び脚で部屋に入っていく、

だが、、、その部屋には無数のビールの缶と皿からこぼれたスナック、

そして、浴衣の前を全開にしてイビキをかいて無防備に眠っている

不気味な生物だけが布団の上に存在していた、

「、、、、、、、、、、、、、、、なに、これ、まさか葛城先生?」

マナは暗闇に慣れた瞳で確認しようとする、

だが、その瞬間、、

「月が赤く染まり始めた、、危険かもね、」

「え、、、」

マナは窓際にある椅子に瞳を移す、

椅子の後ろ側、背もたれの部分が部屋側を向き、

椅子の正面は窓を向いている、

そして知らぬ間に月明かりが紅く窓側を染めている、

紅い月の光、、、、、

その中に浮かぶ椅子に座っていた少年にマナは始めて気がつく、

「だ、、誰?」

「ベートーベンの“月光”はどんな色を生み出したんだろう、

人類至上最も美しい月光と賛美された戦慄に近い美、、、

その美こそ、言葉で他人を殺す生物を浄化してくれる、、

そんな気がしないかい、、、、霧島 マナさん、」

椅子からゆっくり立ち上がり、

後ろを振り向いたカオルは全裸の、生まれたままの姿でゆっくり振り向いた、

「あ、、、あなた、、、」

「そう、僕が夢の中で君を抱いてる物だよ、、

つまり、君の思考の産物だよ、、、、、、マナちゃん、」

 

 

 

カオルの全裸が紅い月明かりに染まる、

だが、マナにはそれが血の通わない生物という印象を与えた、、、、

 

第十九話へ続く



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