「でも旅は続く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キスをしたまま、、2人は小さく呟きながら会話をする、、

「また、、、、明日になったら、、遭えるかなぁ、、」

「きっとね、、、」

唇を離した二人が、小さな笑顔を浮かべながら話す、、

アスカはシンジの流れる血を、薬指で拭う、、

「少しだけでいいから、、遭おうね、、、2人だけでさぁ、、、」

「うん、、約束するよ、、、ゆっくり、アスカと話したいんだ、、、」

シンジは銃の中に最後の弾丸が残っている事を確認する、

「その時には狂人になってるかも、、、」

「今は、、、狂人じゃないの?」

「うん、、、、、でも、もう時間の問題だよ、、」

「、、、、、、、そう、、」

涙を拭くシンジ、アスカもシンジの涙を拭ってあげる、

「以外と冷静なんだけど、、、、でも、もう耐えられないよ、、」

「今まで発狂しなかった方が不思議よ、、」

「そうかな、、、でも、今度遭う時は、、、」

「狂人のままで構わないわよ、、、アタシ、そんなシンジも好きだから、、、」

笑いながら泣く、、そんな事が可能なんだとアスカは改めて知った、、

「どうして、、、、どうして、、こんな世界になっちゃったんだろうね、、」

「解らない、、、僕にも何が悪いのか、、、」

「きっと、、明日が何処かに存在していて、、、またシンジと遭えるわよね、、」

「うん、、本当の気持ちが蘇ったから、、、、大丈夫だよ、、」

そして、銃口をアスカの額に当てる、

「、、、、信じてる、、シンジ、」

「ありがとう、、アスカ、、」

「ねぇ、、、」

「なに?」

「やっと、、、、人間に戻れるのね、、」

「うん、、やっと人間に戻れるんだよ、、」

嬉しそうに2人は笑う、、

だが自嘲的でもあり、自虐的でもあり、狂笑的でもある、

そんな笑いだった、、

「でも、、、、、、、嬉しくない、」

「、、、、、、、、、、、僕もだよ、」

「不思議ね、、、」

「うん、、、」

「じゃぁ、、、またね、シンジ、」

「うん、、また、、、、、明日ね、アスカ、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

引きがねをゆっくりと引く、

心の奥にある、暗い闇の部分から、何かが一気に流れ出でるのを感じながら、、、

アスカの額に弾丸が吸い込まれるのを呆然と見ながら、

シンジはその溢れ出た何かに、体が占有されて行くのを感じていた、、

そして、、、、

シンジはアスカを射殺した、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溢れ出る闇は、シンジを包む、その闇が世界を覆って行く、

アスカの遺体も、闇も、過去も未来も、真実も嘘も、

神も悪魔も、天国も、地獄も、、

全てが融解して、流れ始める、、、

シンジは自分の脳が、体が融解し液体化していくのを感じる、

だが、同時に融解した世界が体に流れ込むのも感じる、

全世界が小さな、黒い球体に吸収され、、その球体がシンジと同化していく、、

その感覚は不快でもあり、快感でもあり、、

始まりでもあり、、終わりでもあった、、

そんな感覚と溶け出す世界に、、

狂人としてシンジは存在していた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、、、」

「箱舟の中よ、、、、」

「綾波、、、」

シンジは交互に訪れる闇と光の世界に浮いていた、、

冷たい、凶暴な瞳だが、何故かとても綺麗で純粋な、、

そう、、まるで死ぬ瞬間の野生の動物の様な瞳だった、、

「僕は発狂したの?」

「そうね、、、世間で言われてる精神異常ってわけじゃないけど、、、」

「そう、、」

体に無限を感じていた、、

自分が有限で輪郭を持っているにも拘らず、

全てが無限に感じる、

地球も人間も自分も、、精神も物体も、、、概念も実存も、、、

全てが存在し、、、同時に無でもあった、、

「色即是空、、、、、そんな感じかもしれない、」

「でも、、僕は狂人なんだろ、」

「えぇ、碇君は狂人よ、、肉親殺し、隣人殺し、、愛人殺し、、

更に世界中の人間を感情を持たずに殺し続けた、、

そして、愛情を持たずに、一時の欲望を満たす為だけに女性を抱き続けた、、

碇君は、立派な狂人よ、、」

「そう、、、嬉しいね、、」

「でも、、とても純粋な狂人なのよ、、

発狂したお陰で、どんな神様も、どんな悪魔も、どんな慣習も、

どんな偏見も、どんな差別も、、、碇君を拘束する事なく、

国からも、宗教からも、人種からも、世間的地位からも解放された、

欲望の原始型だけが存在している、、純粋な狂人なのよ、、」

「解脱したって事?」

詰まらなそうに、無表情のままのシンジだが、、

瞳だけはギラギラしていた、、

「そうね、、、解脱って言葉が一番合ってるかも、、」

「それで、、こんな無限と有限が混沌としてる世界で、、僕になんの用なの?」

「全ての概念、想念、実存、実証から解放された、欲望の原始型だけを持った、

素敵な狂人、、、、今、碇君はその心で、この箱舟の行き先を左右できるの、、」

「この箱舟に詰った、、人類の未来って事?」

「そう、、あの石は単なる箱舟なの、、

本来のエヴァンゲリオンは通常に起動していれば、

所謂“神の救済日”をもたらす、弥勒菩薩の様な存在になったの、、

それを、無理に覚醒させた結果、救済ではなく、絶滅の道だけが残ったの、、

でも、、起動しなかった際、箱舟として人類を未来へも過去へも、宇宙の果てでも、、

箱舟ごと、狂人の意思で全ての光明の道を選択できる様、

昔エヴァと生活していた生命体は“別の道”を用意していたの、、、、」

「別の道?生命体?」

「そう、、、生物の欲望の原始型をだけで構成されてる生命体、

つまり、遺伝子を未来へ繋げる為にだけ存在していた生命体、、

原始地球の原始海の中で発生した、小さな、、小さな、全ての生命の原始、、

その原始はすでにエヴァンゲリオンの存在を知っていた、、」

「そんな知能を持たない生物が?冗談だろ、」

「知能なんて関係ないわ、、本能こそ、全てなのよ、、、

その本能がエヴァンゲリオンという、何時の日にか、世界を救済する物体を認識していた、

そんな日がいずれ訪れ、何時の日かエヴァンゲリオンという物体が起動することも、、

でも、、同時に進化した生命体がエヴァンゲリオンを正常に起動させられなかった時の為、絶滅後、新たな世界に回帰する事も、退化することも、現世を継続させる事も可能にできる様に、、救済されはしなくても、未来を己の生命力で切り開く事ができる様、すべての生命を原始型に戻し、箱舟に乗せられる様に、この石を作ったの、、、」

「じゃぁ、、僕の体に宿っていた特別な細胞こそエヴァンゲリオンであって、、」

「そう、、追い掛けていた石は、単なる箱舟なのよ、、、」

シンジは暗闇と光が交互に閉じた瞼の上を走り抜けるのを、

ただ、漠然と感じていたい、、それだけだった、、

「ふ〜ん、、、でも、もうどうでも良い事だよ、僕には、、」

「そんな事はないわ、、あなたがこの箱舟の行き先を決めるのよ、」

「かあさん、、、、」

さっきまで話していたレイと思われる幻影は、今度は母のユイへと変わっていた、

「何を望むの?」

優しそうに包み込む光と闇がシンジに問い掛ける、

「何も、、、望まないよ、、、、興味ないんだ、、人類の未来も、、

結局復活させても欲望を燃え上がらせるだけの人間なんて、、

回帰させても、同じ歴史を繰り返すだけの人間なんて、、

絶滅が運命だった生物は、単純に消滅するだけでいいんだよ、、」

シンジは面倒くさそうに答える、

「そう、、、でも、貴方には、最後に交した約束が残ってるでしょ、、」

「、、、、、、、、、、、、」

「本当に、愛していたんでしょ、、、、その子との約束を破ってはだめよ、、」

ユイは何も示唆しない、、

だが、最後に交した小さな約束だけ、シンジに思い出させる、、、

「、、、、、、、、うん、、そうだね、、」

閉じていた瞳をゆっくりと開くシンジ、、

綾波 レイ、碇 ユイの幻影は同時に消えて行く、、

いや、元々存在していなかったのかも、、

そして、、シンジはその無の終わりを望んだ、、、

たった一つの約束だけ残し、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まいったわね、、、」

アスカは荒野にいた、、

バイクを止め、薪を燃やし、暖をとっていた、、、

薪が音をたてて火を生み続ける、

その音と炎の色が、焼けにインチキ臭く思えた、、

「まったく、、、あの馬鹿シンジが、、」

革のツナギを着たアスカは、古びたコーヒーカップで暖めたスープを流し込む、

吐く息が白く空気を染めるのを見ながら、自分がまだ生きてる事を実感する、、

アスカが目覚めると、、そこは、、

地球、、、かどうか解らないが、青い空と星空が存在する星にいた、

だが、この星が地球か、アスカが存在してる場所が何処か、、

まったく解らなかった、、、

都市もなく、街もなく、国もない、、、

あるのは果てしない荒野のみ、

バイクで疾走するアスカの存在だけだった、、

「アタシ以外の人間、、、、誰もいないじゃない、、、」

苦笑しながら、アスカは満天の星空を見上げる、

そして、アスカは胸から首輪を外して見つめる、、、

その首輪についてる小さな石、、

アスカは、その石が何故かシンジに思えた、、

「でも、、、シンジ、、

あんた、何も望まなかったんだよね、、

純粋な狂人として、人類の未来も、、過去への回帰も、、

くだらない神様も、素敵な悪魔も、、、何も望まなかったんだよね、、

唯一、望んだのは、、、

アタシを殺す前に、交した一つの約束を果たす事だけ、、

もう一度、遭おうって、、、

きっと訪れる明日、もう一度遭おうって事だけ、

それだけを、、望むなんて、、、

まったく、、あんたらしいわよ、、シンジ、、」

語り掛ける石は何の反応も無い、、

だが、アスカは目覚めた時に、自分が握り締めていたこの石が、

シンジと何か関係があると信じていた、

「きっと、、この石を持っていれば、、

この星が無くなっても、、この宇宙が消滅しても、、

きっとシンジに遭えるよね、、、、、

ね、、シンジ、、」

 

 

薪が燃え尽き、、

光が消える、、

だが、アスカは以前の世界では経験した事のない、、

信じられない程の星空に照らされる、、

決して人工的な輝きではない、本来の宇宙の神秘の美を持った空を見上げる、

だが、アスカは生まれて始めて見る偽りの無い、満天の星空に何故か違和感を感じていた、、

「プラネタリュウムみたいね、、この空、、、」

 

冷たい空気が、アスカの口に解け込んだ、、

そして、そのプラネタリュウムを見ながら、

その石に軽いキスを交わしながら、、

一人の少女は眠りについた、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

All Over

 

 

後書き、

今日は、Rudyという多少狂った生物です、

この度は僕が創造した稚拙な世界「Planetarium」を最後まで読んで頂き、

心から感謝します。そして、こんな暗く、稚拙な世界を掲載し続けてくれた

DARUさんにも、心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 

この作品を書こうと思った切掛けは、人間は欲望から解放されるのか、

欲望から解放された人間は聖人なのか、それとも狂人なのか、

そんな答えが出ない疑問がこの作品の始まりでした。

単純に狂気を描いたり、明るい未来を描いたりぜず、

答えの出ない世界で終わらせたのも、そんな理由からです、、

自分でも実に暗い話しだと思い、辟易気味になってた時期もありますが、

多くの方から頂いた感想のメールのお陰でなんとか完成させる事ができました。

実に表現不足で読み難い物語で、中々主題が伝わらなかったのでは、、

今、深く反省しておりますが、もし読まれた方の心に少しでも残る様でしたら、

それだけで非常に嬉しく思います。

それでは、また新たな世界を描きたいと思ってます。

最後に改めて最後まで読んでいただいた方、感想のメールを頂いた方、

そして連載していただいたDARUさんに、心から感謝します、

 

 

Rudy



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