Liebe Melodie (恋の旋律)

01:I hate you ! (大嫌いよ、あんたなんかっ…)



序曲:繰り返される日々が、終わる瞬間!


8月の中旬…直射日光の照り付ける暑い日差しの中を、明日香とひかりは歩いている。
第壱高等学校は夏期休暇に入っていたのだが、彼女らは学校に用事が在ったので、登校している途中だった。
「ねぇ 明日香?」
「ん…なにっ?」
ひかりの一歩前を歩いていた明日香は、背中から掛けられた親友の声に、振り返った。
視線の先では、済まなそうなひかりが、手の平で何かを隠すようにして立っている、面倒事を頼む時のひかりの癖。
もじもじと差し出してきた便箋を受け取り。
「…まさか、ひかりにそんな趣味が在ったなんて、あたしと付き合いたいの?」
うっ 明日香ってば……
「そんな趣味、私だってないわよぉ…それ、姉さん伝手で断れなかったの。」
明日香の言葉に、真っ赤になったひかりが言訳がましく、そう言った。
明日香は受け取った便箋を千切り。
片手一杯になった紙切れを頭上高く掲げて、ばら撒いた。
紙切れが陽光を反射し、キラキラと輝きを見せる。

それを見詰めたひかりは明日香に訪ねた。
「明日香…誰か好きな人っているの?」
「…突然、なによっ。」
「うん…いつも貰った手紙を破いてるでしょ、ちょっと付き合ってみても良いんじゃないのかなって…
何も生涯付き合って下さい。 って、書いてある訳じゃないんだしさっ。」
「それって初な少年を、この美貌で騙せって訳ね。
あっ、そんな……でも、美しさって罪なのね。」
真顔で言う明日香を黙って見詰め。
ねぇ…どうして誤魔化すの?
あっ……でも、まさかね。
それとも、まだ彼の事が好きなの、明日香?
ひかりは親友の胸の内を知りたいな っと想い、明日香の心を見詰めた。

「じゃね…帰りも待ってる?」
「あっ、ごめん。 今日は冬児と約束が在るから、先に帰るね。」
「そう? それじゃ、あたしは部活に行くからね。」
「うん。」
体育館の方へ走り出す明日香を見詰め、彼女が視界から消えると、ひかりもグランド目指して歩き始めた。



OP :恋の三重奏(トライアングル)

夕暮れの校庭(グランド)で、佇む貴方(あなた)を、ただ見ていたの ♪
だって私では代わりに成れないから、でも気づいて欲しいの、私のこの想い ♪
貴方(あなた)が他の娘(こ)を見ていると、心(ハ−ト)が軋(きし)むから〜 ♪
でも信じてる ♪
この気持ちに、貴方が応えてくれる事を〜 ♪

I LOVE YOU ♪
友達じゃ切なすぎるよっ 私 ♪
だから、好きだよ って囁いて欲しいの、ずっと貴方を想っていたいから…。 ♪



第壱曲:ただいまっ!



「ここで、良いんですか?」
後部座席の扉を開けると、車の運転をしていた女性が尋ねた。
「…うん。 それと手続きは出来たのかな?」
「勿論です…明日からでも行けます。」
…明日からって言われてもね。
夏期休暇中だしっ…
少年は女性の言葉に頷き、車の扉を閉めた。
「今日は事務所に戻ってくださいね。」
背後の校舎へ振り向き、歩き始めたところで掛かった声に、少年は手を振って応えた。
取り敢えずグランド目指して、歩いていた少年は、見覚えの在る少女の姿を見付け、声を掛けた。
「洞木さん?」
フェンスの向うで彼女が振り返る。

…誰かな?
見覚えが在るんだけどなぁ…
真っ黒の生地に銀糸でEDEN っと刺繍されたTシャツを纏って、サングラスを掛けた少年が微笑を浮かべている。
春に吹き込む、風のように爽やかな笑顔だった。

「何や…ひかりに用事が在るんか?」
フェンスを挟んで、反対側に立つ少年を睨み、冬児は言った。
「嫌、昔馴染みなんだけど…忘れられちゃったみたいだね。」
…誤解されちゃったかな。
「何を、好い加減な……」
言葉を続けようとしたが、ひかりにユニフォ−ムを引っ張られたので、中断した。
「何や?」
「待って、本当に見覚えが在るの…」
「おまえ、本当に知り合いやったら、グラサン外して、名乗りぃやっ!」
その言葉に苦笑を浮かべた少年が、サングラスを外し、Tシャツに引っかけると名乗った。

「神司、碇神司…小学校まで一緒だったんだけど、覚えてる?」
そう言って、神司はひかりを見詰めた。
神司の言葉を噛み締めるようにしていたひかりが、歓喜の表情で声を上げる。
「シンジ…あっ、碇君ね。 愛チャン っと同じマンションに住んでいた…そうでしょ。」
うん っと頷き。
「久しぶりだね…明日香も元気してる?」
「明日香は人一倍元気よっ…でも、遊びに来たの?」
「あっ、戻って来たんだ。」
「そうなんだ…明日香なら体育館に行ってるから、行ってみると良いよっ。
それから…お帰りなさいっ 碇君。」
「ただいま。 僕は明日香の処へ挨拶に行ってくるから…そっちの彼もよろしくね。」
そう呟き、グラサンを掛けてから、体育館の在る方へ歩き出した。


CM(入る前):『リ−ベ メロディ、恋の旋律を貴方の為に……』
制服姿の明日香が、微笑みながら言う。

CM

CM(終わった後):『リ−ベ メロディ、貴方の為に奏でる心の調べ…』
Tシャツと、膝までで切ってあるジ−ンズを纏った麗が、甘えた猫なで声で囁く。


演劇部は秋季公演に向けての練習中、むやみに開けないでね。 っと書かれたプレ−トが張り出されていた。
明日香、ここって言ってたよな…
演劇部だったのか、てっきり運動系の部活かと思ってたけど……
神司は体育館の扉を開けた。

通路を歩いていると、舞台へでる前に立て板が見えた。
へぇ〜眠れる森の美女っか、まともな演劇部なんだな……。

「そして…月日が過ぎ、この国に一人の王子がやってきました。」
舞台の入口から神司が覗き込むと、舞台の上の放送室から、ナレ−ションの声が響いてきた。
終劇が近いみたいだな、王子が現れる場面かっ……。
…宝塚なのか?
舞台袖から現れた王子役の少女を見詰めて、神司はそう思った。
少女が舞台中央まで歩いていき、正面へ振り返ると、スポットライトが当てられた。
「ここか茨に囲まれた不思議な城 っというのは……。」
赤い髪を結い上げ、鍔の広い帽子を被った青い瞳の美少女が呟き、観客席の上を見上げている。
あっ、明日香だよな、あれ……
赤毛の美少女なんて、珍しいもんね。
納得した神司は劇が終わるのを、入口で待っていた。


ED:静かで明るい音楽と共に、神司たちの姿が交差していき、最後に全員が中央に集まって終わる。

次回予告


みんなとの再開を喜ぶ僕と裏腹に、明日香の言葉は厳しかった。
僕は何か嫌われる事をしてたのだろうか?
次回の放送は、『第弐曲:5年ぶりの再開』です、必ず見てよっ。




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