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Destroyed by ・・・
Episode 01 -銀河帝国の滅亡(前編)-
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全ての使徒の殲滅。ネルフはその目的を終え、今後の組織の運営をいかなる方向に移行
すべきか、ネルフの首脳部そして、各国の首脳が集まり何度も会議が開催された。その
結果、ネルフの権限は現状のままとしつつ、民間の問題を解決する国際的な警察という
役割を与えられることとなる。

そして、その問題解決を実際に行うネルフのエージェントが選抜された。

惣流・アスカ・ラングレー
綾波 レイ

また、ネルフ本部に残り、彼女達の管理を行うマネージャが1人。

碇 シンジ

今日もまた、シンジは2人に、新たな指令を出そうとしていた。

<ネルフ本部>

「シンジ! 今回の仕事は何?」

マネージャ室に入ってきた2人の少女のうちの1人、アスカがシンジに話し掛ける。

「うん。それなんだけどさ・・・。」

「なによ。仕事なんでしょ。早く言いなさいよ。」

「仕事はいいんだけど、今回は穏便に動いてくれないかな? 民間の人達から苦情が沢
  山くるし、ミサトさんに怒られるし、父さんは口も聞いてくれないし、大変なんだ。」

両手を合わせて拝むように頼み込むシンジ。

「わかってるわよ。あれは偶然よ。そんなことより、仕事の内容教えなさいよ。」

「うん。今回は、銀河帝国とかいう、なんかよくわからない独自国家を築こうとしてい
  るラインハルト・フォン・ローエングラムという人を逮捕してほしいんだ。」

「ふーん、で、写真は?」

「これなんだけど。」

シンジは机の中の引き出しからラインハルトの写真を取り出し、アスカとレイに1枚づ
つ渡す。

「うっわーーーーーーーー! すっごい美形じゃない!!!」

目を丸くして、アスカが写真を見つめる。

「だろ。カヲルくんも美形だけど、この人もすごいよ。」

カヲルもネルフのエージェントとして、シンジの管理の元活動している。アスカとレイ
のコンビとは異なり、非常に優秀でシンジを困らせるようなことは一切無い。

「でも、私は碇くんの方がいいわ。あなたはその人の方がいいのね。」

今まで、アスカの横で黙っていたレイがボソっとアスカにつぶやいた。

「だ、だれもそんなこと言ってないじゃない! うまいこと言ってシンジを取ろうなん
  て思わないでよね!」

「あら? そんなことないわ。元々、私と碇くんは恋人同士なんだから、取るもなにも
  ないんだから。」

「なんですって! 誰と誰が恋人なのよ!」

「私と碇くん。」

「ふざけんじゃないわよ!」

仕事前に喧嘩されては、またろくなことにならないと思ったシンジは、あわてて仲裁に
入る。

「もう、喧嘩なんかしないでよ! これから仕事なんだから、仲良くしてよ。」

「碇くんがそういうなら、そうするわ。」

「じゃ、シンジ。今回の仕事がうまくいったら、今度こそはデートしてよね! 来週の
  日曜よ!」

「いや・・・その日は、カヲルくんと・・・。」

「何か言った!!!?」

「いや・・・その・・・。とにかく、早く仕事に行ってきてよ。うまく仕事ができてか
  らの話なんだから。」

「わかってるわよ!」

「じゃ、碇くん行ってくるわ。」

意気揚々と出て行く2人と、頭をかかえて始末書の準備を始めるシンジだった。

<ラインハルト曰く銀河帝国の首都オーディン>

「やけに豪勢な町並みねぇ。さすが王政国家の首都ね。」

きらびやかな町を見渡すアスカ。

「そうね。まずは王宮に行きましょ。」

「アンタバカぁ? いきなり入れるわけないじゃない! まずはこの国の状況を調べるの
  が先よ。」

「ATフィールドで吹っ飛ばせば、門くらいはすぐに壊れるわ。」

「そんなことばっかりしてるから、シンジが始末書を書くことになるのよ。」

「そうかしら? あなたが、コンピュータの操作を間違えて原子力発電所を爆破したの
  が、一番ひどいと思うけど。」

アスカのおかげで、ロシアの一区画が今だに立ち入り禁止の放射能汚染区域になってい
る。

「あれは、あーしなければ、組織が壊滅できなかったからよ! もぅ、いちいち細かい
  昔のこと、ほじくりかえすんじゃないわよ。とにかく酒場に行きましょ。」

「私達、まだ15歳よ。入れてもらえないわ。」

「女の特権を生かすのよ。化粧すれば、ごまかせるわ。」

ネルフの予算で、大量の化粧品を買い込み、化粧室に入る。

「あーー。一度ミサトの目を気にせずに、高価な化粧品を思う存分使ってみたかったの
  よねぇ。ちょっと減ったのがばれると、ミサトはうるさいんだから。30にもなると
  口うるさくなるのかしら。」

「碇くんは、化粧の濃い女は嫌いよ。」

「シンジの前ではリップくらいしか使ってないわよ。アンタも早く化けなさいよ。」

2人は、鏡を見ながら化粧を念入りにしていった。化粧をすると女は化けるというが、
元が特別に良い2人が、一般人にはとても買えない高価な化粧品を惜しげも無く使った
のだ。結果は明らかであった。

「っさ、行くわよ。」

「ええ。」

20歳前後に化けた2人は、そこいらの女優など及びもつかないほど奇麗になっていた。

<酒場>

ギーーー。

王宮の近くにある軍属達がむらがる酒場に入って行く2人。酒を飲んでいた軍属の視線
が2人に集まる。

「これはこれは、お美しいお嬢様方。ぜひ、こちらへおこしください。」

「ありがとう。そうさせてもらうわ。」

指揮官クラスの人間がアスカ達を誘う。アスカとレイは酒場の中央にゆっくりと、歩い
て行き引かれた椅子に腰を降ろした。

「わたくしは、ミッターマイヤーと申します。この男はわたくしの親友で、ロイエンタ
  ール。」

アスカ達を案内した男が、自分の名前と一緒に飲んでいた男の紹介をした。

「アタシはアスカ。惣流・アスカ・ラングレー。こっちは綾波 レイよ。よろしく。」

親切丁寧なミッターマイヤーの態度とは異なり、堂々と自己紹介するアスカ。

「ところで、アンタ。」

指揮官に向かって、いきなりアンタ呼ばわりである。

「はい、なんでしょう? 何か飲まれますか?」

「ま、飲み物はワインでいいわ、この娘は白で、アタシがロゼ。そんなことより、アン
  タかなり偉そうだけど、どのくらいの地位なの?」

「地位ですか・・・。わたくし達は、いちおう帝国元帥ですが?」

この国の者なら、誰もがひれ伏す帝国元帥の称号を持つ2人であるが、アスカとレイに
は関係無い。

「あっそ。それなら・・・・・・いったーーーーーーーーーー!!!! な、何するの
  よ!」

いきなり、レイにハイヒールのかかとで足を踏まれるアスカ。

「ちょっと来て。」

文句をぶちぶちいいながら、レイに連れられて、トイレに入る。

「なによ! 痛いじゃない!!!!」

「あなた、何を言おうとしたの?」

「ラインハルトの所に案内させようとしただけじゃない。」

「そんなことしたら、すぐに捕まるわ。」

「どーしてよ。」

「いきなり国王に会わせてほしいなんて、言ったら身元調査されるに決まってるわ。」

「うーん。それもそうね。いっそ、暗殺するしか無いかしら。」

「命令は逮捕よ。暗殺じゃないわ。」

「じゃー、どうするのよ。王宮なんて、そう簡単に入れるわけないじゃない。」

「だから、ATフィールドで・・・。」

「破壊はダメ! これ以上、変な噂が立つのはイヤよ。とにかく、怪しまれるから、戻
  りましょ。」

2人はトイレを出る。そこには、先程の元帥2人を中心に警備隊が銃を持って立ってい
た。

「な、なんなのよ、アンタ達!」

「暗殺とは何のことでしょうか?」

ミッターマイヤーが、丁寧な口調で話し掛けてくる。

まずい。このトイレ、盗聴されてたんだわ。

「やーねー、冗談よ。あ! 用事を思い出したわ。行きましょ、レイ。」

「そーね。」

酒場を出て行こうとするが、警備隊に行く手を遮られる。

「邪魔よ! そこ通しなさいよ!」

「お嬢様方、少し宮殿におこしになりませんか? 聞きたいこともありますので。」

ロイエンタールも、丁寧な口調で話し掛けてくる。

「そうさせてもらいましょ。」

「え!?」

今にも、暴れだしそうだったアスカだが、レイの言葉に動きを止める。

「その方が簡単に王宮に入れるわ。」

アスカの耳元でささやく。

「わかったわ。リムジンで送ってくれるなら、王宮に行ってあげてもいいわよ。」

暴れて逃げ出そうとするだろうと思っていた、ミッターマイヤーとロイエンタールは、
かなり驚いた様子だったが、警備隊を撤収させると、リムジンを迎えによこさせた。

<取調室>

豪華な部屋に案内されるアスカとレイ。部屋は豪華であるが、全ての扉には鍵がかけら
れていた。間違いなくカメラで監視されているだろう。

「身動きできなくなっちゃったじゃない。」

「そんなことは、いつでもなんとでもなるわ。」

「っま、それもそーね。休憩でもしましょうか。」

ソファーに腰を降ろして、出された紅茶を飲む2人。

「さすがに、宮殿の紅茶はおいしいわねぇ。」

「碇くんが入れてくれる紅茶にはかなわないわ。あなた、この紅茶が好きなら、ずっと
  ここにいれば?」

「いちいち、うるさい娘ねぇ。だれもそんなこと言ってないでしょーが!」

ガタ。

レイがちょこんと座って紅茶を飲み、アスカがふんぞり返って紅茶を飲んでいると、部
屋の扉が開き、一人の男が入ってきた。

「わたしは、オーベルシュタイン。少し聞きたいことがある。」

なにこいつ、なんか、嫌な感じねぇ。

「紅茶を飲んでるわ。後にして。」

レイは紅茶を飲んだまま、退室を願い出る。

「そうはいかない。あなた達はネルフのエージェントだ。どこまでネルフが動きだして
  いるのか、早急に調べる必要がある。」

「あら、よくわかったわね。どーやって調べたのかしら?」

アスカも紅茶を手にしたまま、ふんぞり返って答える。

「銀河帝国の情報力をなめてもらっては困る。場合によっては自白剤も使うことになる
  が、ここで答えるか、自白剤をうたれてから答えるか、どちらがいい?」

「アタシ、アンタのことが好きになれそーにないわ。これが、その答えよ!」

パッシャー。

手に持っていた紅茶を、オーベルシュタインにぶちまけるアスカ。

「ハハハハハ! 紅茶でもかけたら、水もしたたるいい男になれるかと思ったけど、や
  っぱりダメね。アハハハハハ!」

ソファーにふんぞり返ったまま、紅茶のかかったオーベルシュタインを見てケタケタ笑
う。

「わたしを侮辱するのはかまわないが、帝国を侮辱する行為は死に値する。」

パン!

オーベルシュタインが手を叩くと、警備員が20人くらいが銃を持って部屋に入ってき
た。

「あら、銃の好きな警備員ねぇ。でも、アタシを撃ったら情報が聞けなくなるわよ。」

「もう一人いる。心配には及ばない。」

オーベルシュタインが手をあげると、警備員達は銃を構える。

「アタシを撃ち殺す前に、一つ教えてくれない? ここのメインコンピュータはどこにあ
  るのかしら?」

「教える必要は無い。」

「まっ、そうでしょうね。じゃ、実力行使に出るしか無いわね。ファースト、やってい
  いわよ。」

ふんぞり返ってソファーに座っていたアスカが、すくっと立ち上がると、続いてレイも
立ち上がった。

「うりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

オーベルシュタインに飛び掛かるアスカ。突然、オーベルシュタインと組み合う形にな
った為、警備員も銃が使えず、全員が突進してくる。
しかし、全てはレイの張っているATフィールドに弾き飛ばされた。

アスカはオーベルシュタインを殴り付ける。

ドカッ! ドカッ! ドカッ! ドカッ!

「どう? アタシ達に協力する気になったかしら?」

アスカは、襟首を掴みオーベルシュタインを脅迫する。しかし、オーベルシュタインは
腰からピストルを取り出し、アスカの腹部に当てる。

「逆転のようだな。」

「アンタバカぁ? そんなものが役に立つと思ってるの?」

その瞬間に、レイのATフィールドによって、拳銃はズタズタに切り裂かれた。何が起
こったのかわからないオーベルシュタインは、いつもの冷静さを失い、冷や汗を流して
いる。

「どーせアンタは何も喋らないでしょうから、しばらくここにいてもらうわ。」

オーベルシュタインを縛り上げ、ソファーに転がす。

「さって、メインコンピュータを押さえに行くわよ!」

その時、部屋中からガスが噴出される。

「うっ」

扉の近くにいたアスカは、咄嗟に部屋から飛び出た。最後にアスカの目に映ったのは、
オーベルシュタインの横に倒れるレイの姿だった。

To Be Continued.
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