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Destroyed by ・・・
Episode 02 -銀河帝国の滅亡(後編)-
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「ファースト!!」

しかし、部屋にはガスが噴出され、助けに行くと自分も道連れである。

「くっ!」

とにかくこの場は逃げるアスカ。サイレンが宮殿に鳴り響く。

大丈夫。敵の高級指揮官もいるわ。毒ガスじゃないはずよ。

窓をつきやぶり、2階から飛び降りるアスカ。そこには番犬を従えた兵士が幾人も待ち
構えていた。

最悪の状況ね。

犬に追われながら、草木を乗り越え逃走する。敵もプロだが、アスカもネルフで訓練を
受けている。そう簡単には捕まらない。

もう、走りにくいわね。スカートなんて着てくるんじゃなかったわ。

必死でドーベルマンからの追撃から逃れていたが、前からも兵士が向ってくる音が聞こ
えてきた。

万事休すか・・・。

その時、足元から声が聞こえる。

「こっちへ!」

足元のマンホールが空き、手招きしている手が見える。どうせ、今以上に事態が悪くな
ることはありえないので、迷わず声のする方へ飛び込む。

ドス。

「痛ったーーー!!」

勢いよく呼び込んだ為、下水間に尻餅をついてしまうアスカ。
手招きしていた女の子が、マンホールの蓋を閉め、アスカの横に飛び降りる

「アンタ誰?」

「まずは、逃げましょう。」

「わかったわ。」

女の子に連れられ、下水道の中を走り抜けるアスカ。到着した所はゴミゴミとした古い
レンガ作りのマンションだった。そこには、1人の30歳くらいの男を中心に、幾人か
の人間が集まっている。

「アンタ達何者?」

「惣流・アスカ・ラングレーさんですね。わたしはヤン・ウェンリーと言うレジスタン
  スの指揮している者です。目的は違っても、今の利害は一致していると思って、この
  カーテローゼに迎えに行ってもらったんだが、迷惑だったかな?」

中央に座っていた30歳前後の男が自己紹介をした。

「アンタが、ヤン・ウェンリー。資料は見たけど。ふーん。さえないわね。」

「フハハハハハハ。でも、お嬢さんこのヤン・ウェンリーは、頭脳にかけては信頼して
  もらえると思うがね。」

ヤンの横に立っている筋肉質の男が、話し掛ける。

「アンタは?」

「これは失礼。わたしはシェーンコップ。ローゼンリッターの隊長ですな。」

「へー、アンタがローゼンリッターの隊長ねぇ。ま、どーでもいいわ。で、アタシが何
  をすれば、何をしてくれるの?」

なんらかの要求があるから、自分を助けたはずなので、アスカはGive and Takeの内容
を、ヤンウェンリーに問い掛ける。

「いや、特にあなたは何もしてくれなくてもかまわない。ただ、わたし達レジスタンス
  にとって、こんな機会はそうそう無いのでね。全面的に協力させて貰いたい。」

「わかったわ。で、作戦はあるのかしら?」

「ある。このローゼンリッターがあなたを逮捕したということで、宮殿まで連れ込む。
  そのままラインハルト・フォン・ローエングラムの所へ乗り込むというわけだが。」

「ダメね。」

「なにかまずいかな?」

「相手はラインハルトよ。宮殿までは入れるでしょうけど。そう簡単に中枢部までは入
  り込めないわ。」

「じゃ、どうしたらいいと?」

「基本的な作戦はOKよ。ただ、ラインハルトのところに乗り込むんじゃ無く、アタシ
  を中枢コンピュータルームへ連れて行ってほしいの。それと相棒のファ・・いえ、綾
  波レイを別部隊が助けてくれれば、あとは問題無いわ。」

「その相棒の方はどこにいるのかわかるのかい?」

「わからないわ。ただ、ガスでやられて意識が無くなっていることだけは確かね。」

「わかった。君を信じよう。相棒の方はまかせてくれ。よし、敵はまだ混乱している。
  今がチャンスだ。すぐに作戦にとりかかろう。アスカさんのアシスタントとして、こ
  のカーテローゼを連れて行くといい。」

アスカとローゼンリッターの部隊は、急いで準備をすると、再び宮殿に戻った。

<宮殿>

宮殿の警備兵の滑降をして、アスカを連行したローゼンリッターが宮殿の門にさしかか
る。

「ネルフのスパイを捕らえました!」

「よし、よくやった。取調室に連れて行け。」

「は!」

アスカは手錠をかけられたまま、シェーンコップに連行されて宮殿の中に入って行った。
宮殿に入ると、32人から構成されるローゼンリッターの部隊は2つにわかれ、片方は
レイの救出に向い、シェーンコップの部隊は中枢コンピュータへと向った。

「ここまではうまくいったわね。」

「ここからが正念場だよ。」

軽く会話する2人。

「おい! ちょっと待て! そいつをどこへ連行するんだ!」

中枢コンピューターに近づくと、警戒が厳しくなってきた。

「ミュラー大将閣下の御命令で、ネルフの情報をこいつに引き出させろとの事でありま
  す。」

「そんな報告は受けてないぞ! 軍籍証明を見せろ!」

「それどころではありません。早急に調べなければ、ネルフの大部隊が向っているらし
  いのです。ここを阻止すれば軍法会議ですぞ!」

「うっ。わかった。通れ。」

ひとまず、第一関門は突破したが、すぐにまた、次の警備兵にひっかかる。中枢コンピ
ューターまでは3つのゲートがあり、ここが最後のゲートだ。

「なぜ、逮捕者をコンピュータルームに入れるのだ!」

再び、同じ理由を説明するシェーンコップ。しかし、今度は軍籍証明など問わず、直接
ミュラーに通信で連絡しようとする警備兵。

ドガッ。

ミュラーになど連絡されれば警戒態勢を取られる為、即座に通信機器を壊すと、警備兵
に殴り掛かるローゼンリッター。

「反逆か!!」

警備兵もすぐに応戦する。

「敵襲だよ。」

シェーンコップも、アスカの手錠を外すと、白兵戦に参加した。

「後はまかせたわ!」

ここを通過すると、中枢コンピューターは目の前である。敵の攻撃をかわしつつ、コン
ピュータールームに転がり込むアスカ。カーテローゼもアスカに続く。警備兵の追撃は
ローゼンリッターが阻止している。

「よし、ここまでくれば、あとはファーストと連絡を取るだけね。」

アスカはコンピューターの操作を始める、その横でアスカのアシスタントを勤めるカー
テローゼ。

カタカタカタ。

まずは宮殿の全容を調べる。元々天才的な頭脳を持つアスカがリツコに訓練されたのだ。
かなりのスピードである。しかし、カーテローゼもそれに追従してくる。

「アンタもなかなかやるわね。」

カーテローゼの操作の速さに驚くアスカ。

「ええ、同盟軍ではトップクラスのエンジニアだから。まさか、アタシより速い人を、
  この目で見れるとは思わなかったわ。」

このカーテローゼもプライドが高いのであろう、アスカの速さは認めるものの、素直に
負けは認めない。

「アンタとは仲良くできそうだわ。政権を奪い返したら、また遊びにきてもいいかしら?」

キーボードを操作する手は休めること無く、カーテローゼに話し掛けるアスカ。

「ええ、その時は彼氏を紹介するわ。見た目はたより無いけど、しんはしっかりした人
  よ。」

カーテローゼも手を休めず、軽くアスカと言葉を交わす。

「なんか、アタシ達、境遇が似てるわね。」

「そうなの?」

「ええ、アタシの好きな人もそんな感じだから。」

「また、連れてきなさいよね。」

「わかったわ。そろそろ、本番よ。」

「OK!」

いよいよ、コンピュータを使用して宮殿への攻撃をしかける。2人は再会の約束をした
後は、無言でキーボードを叩きだした。

そのころ、ガスにやられ、独房に倒れていたレイを別働隊のローゼンリッターが見つけ
ていた。

「この娘が、綾波レイか。この娘に何ができるというんだ?」

半信半疑ながらも、ガスの中和剤を注射するローゼンリッター。薬が効いてきた頃合い
を見計らって、レイを起こす。

「あなた達は誰?」

「アスカさんというネルフのエージェントに言われて、あなたを助けにきたレジスタン
  スです。」

「そう。」

「これが、通信機器です。アスカさんが中央コンピュータを占拠していれば、連絡が取
  れるはずです。」

ヘッドホンステレオのような小型の通信機器を、レイに手渡すローゼンリッターの隊員。

「わかったわ。」

通信機器を受け取りのスイッチを入れる。

「聞こえる?」

『遅いじゃない!!! こっちはもう万全よ! 早くやっちゃいましょ!』

「目標はどこ?」

『今、アンタ地下でしょ! 3階まで登って!』

「わかったわ。」

アスカはコンピュータを駆使して、宮殿中の防御壁や武器を操り、警備兵の攻撃を食い
止めていた。

「もう! なんで、こんなに敵が多いのよ! キーボードを打つ指が痙攣しそうじゃない!
  ファースト!! 早く目標を捕らえなさいよ!! 腱鞘炎になったらどーしてくれるの
  よ!!」

モニタに映し出される宮殿の情報を、目で処理し、ものすごいスピードでキーボードを
打ち付けるアスカ。

『今、階段を歩いてるわ。もうちょっと待って。』

「アンタバカぁ!? 歩いてんじゃないわよ! 走りなさいよ!!!」

キーボードをバシバシ叩きながら、叫ぶアスカ。

コンピューターと格闘しているアスカとは、対照的にレイはトコトコと階段を歩いて登
っていた。あまりの緊張感のなさに、後ろに続くローゼンリッターは唖然としてついて
行く。

「走るようにあの人がやかましく言ってるから、少し走るわ。」

ローゼンリッターに一言報告すると、レイは走り出す。しかし、どう見ても全力疾走で
はなく、適当に走っているという感じだ。その緊張感の無い女の子に続く、筋肉質の大
男達。

アスカが防御壁を張り巡らしていたので、2階までは楽にこれたが、3階に向う階段の
前には大量の兵士が固まっていた。その指揮を、酒場で合った帝国の双璧ミッターマイ
ヤー元帥とロイエンタール元帥が取っている。

「よく、ここまでこれたな。」

ロイエンタールが銃口を向けて、レイに話し掛ける。

「あなた用済みよ。」

「これは手厳しい。しかし、この劣勢をどうするつもりかな?」

目の前に立ちふさがる100人以上の警備兵に、ローゼンリッターが隠し持っていた棍
棒を振りかざして突進しようとするのを、レイが止める。

「下がってて。」

「なにをのんきなことを!!!」

ローゼンリッター部隊も、このままではやられることくらいはわかっているので、せめ
て先制攻撃をかけたかったのだ。
たとえこちらが白兵戦のエキスパートであるローゼンリッターとはいえ、数が違いすぎ
る。通常なら、とてもかなうとは思えないが、それを相手にするのはレイだった。

「さよなら。」

ATフィールドを展開した瞬間。レイの前に立ちふさがっていた警備兵が全て消え去っ
た。

「急ぐわ。遅くなるとあの人がウルサイから。」

トコトコと歩き出すレイ。何が起こったのかわからないローゼンリッターはその場に立
ち尽くす。

ドーーーーーーーン。

その瞬間。目の前で爆発がおき、あちこちに火柱が上がる。

『ファースト!! アンタが遅いからしくじったじゃない! もうすぐこの宮殿自爆する
  わよ! コンピュータもシャットダウンしちゃたから、アタシもそっちに向うわ!』

「あなた・・・またなの?」

『うるさい!』

アスカは、コンピュータールームが2度と使用できないように爆弾をしかける。

「カーテローゼ。もういいから、撤退して。後はアタシ達の仕事だから。」

「わかったわ。死ぬんじゃないわよ!」

「お互いにね! また会いましょ。」

握手を交わした後、アスカとカーテローゼはお互いの赤い髪をなびかせて、逆の方向へ
と走り去る。

そのころレイはトコトコと、3階に向っていた。3階には長い廊下があり、その端に、
アスカより赤い毛の青年と、ゴージャスな金髪の青年が歩いているのが見える。

「ラインハルト様、早く脱出を。」

「そう慌てるな。すぐにはこの宮殿は潰れんさ。」

目的のラインハルトとその側近のキルヒアイスである。その向こうには黒いロケットの
ような形をした飛行物体が見える。それで脱出を図ろうとしているのだろう。

「目標を発見したわ。」

初めてレイがまともに走る。

「ATフィールドは強力すぎるわ。どうしたらいいのかしら。」

逮捕という命令なので、下手に傷をつけてはいけないと思い、レイはATフィールドの
展開をやめる。
飛行物体の前で対峙するラインハルトとレイ。

「この飛行機はN2爆雷搭載のステルスでしてね。レーダーにはひっかかりません。あ
  なた方の追撃もここまででしたね。」

キルヒアイスの話からすると、ネルフにN2爆雷攻撃をするようだ。

「残念だが、ここまでだ。今回の報いをネルフには体をもって味わってもらうだろう。」

キルヒアイスに続き、ラインハルトも乗り込もうとするが、横からアスカが飛び掛かる。

「させるかーーーーーーーーーー!!!!」

ラインハルトもろとも、廊下に倒れ込むアスカ。

ラインハルトも抵抗するが、アスカに組み付かれ、ネルフ特性のワイヤレス手錠をかけ
られる。

「ラインハルト様!」

発進の準備をしていたキルヒアイスが、飛び出してくる。

「あなたはいらないわ。」

レイのATフィールドによって壁に叩き付けられたキルヒアイスは気を失う。

「さ、主犯はつかまえたわよ! 撤退するわ!」

ローゼンリッターにラインハルトを担がせ、宮殿から撤退する2人。

「爆発まで、あと5分も無いわ! 急ぐわよ!」

走り出すアスカだが、レイはとことこ歩いている。

「アンタ何してるのよ! 爆発するわよ!」

「かまわないわ。」

「アンタはよくても、ATフィールドの展開が遅れてラインハルトに怪我でもさせたら、
  シンジに嫌われるわよ!」

「え!」

その言葉に、あわててレイも走り出す。

<宮殿の外>

ドカーーーーン。ドカーーーーン。

ローゼンリッターの用意したトラックに乗りながら、爆発する宮殿を見るアスカとレイ。

「ま、今回は、あまり失敗しなかったわね。」

「あれ何?」

宮殿の上にはラインハルが乗るはずだった、無人のロケット型飛行機が上陸していた。

「無人で飛んでるわ。あれこそ無用の長物ね。」

「N2爆雷積んでるんじゃないの?」

「ゲ!!!」

「ステルスだから、どこの国も発見できないわよ。」

「ゲゲ!!」

それから数分後、太平洋の真ん中の一つの小さな島国が跡形も無く消え去った。

<ネルフ本部>

「アスカ、レイ・・・確かに任務は完璧だったんだけどね。1つ国が滅んだよ・・・。
  また、ミサトさんにこってりしぼられたじゃないか・・・。」

シンジが、アスカとレイにブチブチと文句を言っている。

「ロケットの発進を阻止しろって、言わなかったじゃない!」

「そりゃそーだけどさ。いくらなんでも、N2爆雷を10個も搭載したステルス爆撃機
  を無人で飛ばさなくてもいいじゃないか。」

「命令は守ったわ。」

「そーなんだけどね、綾波。ぼくの苦労も考えてよ。また、父さんに『帰れ』って言わ
  れるよ・・・・トホホホホホ・・・。」

嘆き悲しむシンジ。

「どうして、MAGIはアスカと綾波を選抜するんだろう。ぼくの苦労も考えずに、は
  ぁ。」

「そりゃー、アタシ達が優秀だからでしょ。」

「はぁ。次回の仕事からパートナーを一人増やすから、今度こそちゃんとやってよ。」

「そんなことより、デートはどーするのよ!」

「後始末でそれどころじゃないよ!!!! エヴァのパイロットやってるころの方が、
  よっぽど楽だったよ!!!! はぁ・・・。」

「ひっどーーーい! 約束やぶるのね!!!」

プリプリ怒り出すアスカ。

「碇くんは、あなたとはデートしたくないのよ。」

「アンタは黙ってなさい!!!」

「次にちゃんと仕事したら、デート考えるよ。後始末に忙しいから、先に帰ってくれな
  いかな?」

もう、アスカとレイの顔も見なずに、精神安定剤を飲むシンジだった。

To Be Continued.
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