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Destroyed by ・・・
Episode 04 -史上最大の暴走-
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<砂浜>

アスカとレイは久々の休暇を取り、4泊5日で海水浴に来ていた。セカンドインパクト
で常夏となった日本の海水浴場は、セカンドインパクト以前のハワイやグアムの様に、
アジア各国から来る観光客で年中賑わっていた。

「あーーあ、せっかくの休暇だってのにレイと2人で旅行かぁ。シンジもくればよかっ
  たのにぃぃ・・・。」

「あなたがマリネラのダイヤモンド鉱山を破壊したから、事後処理でこれなくなったの
  よ。」

「んもーーー。そんなのミサトにまかせちゃえばいいのに。」

「碇くん、かなり怒られてたみたいよ。」

「シンジも可哀相ねぇーーーー。」

「・・・・・・。」

真っ赤なビキニに身を包んだアスカと水色のワンピースのレイは、砂浜に立てたパラソ
ルの下でトロピカルドリンクを飲みながら、寝転んで話をしていた。

「ねぇレイ。あそこにいろんな国の国旗がいっぱい立ててある大きな建物は何?」

「TV局よ。今日、世界中から首脳が集まってTV中継をしながらの会議があるから国
  旗が掲げられてるんだと思うわ。」

「ふーーーん。」

アスカが翻る国旗の数々を眺めていると、サーフボードを持った2人組みの男達が近づ
いてきた。

「よぅ、お姉ちゃん達。2人だけ?」

「俺達と一緒に泳ぎにいかない?」

これで何度目だろう。真っ黒に焼けたサーファーきどりの夏男が、アスカとレイを誘っ
てくる。

「私はいいわ・・・。」

声をかけられても、いつもの調子で繭一つ動かさずそっけなく断るレイ。

「そんなこと言わないでさぁ、ちょっと向こうの岩場に、人の少ない穴場があるんだ。
  一緒に泳ぎに行こうぜ。」

「そうそう、奇麗なところだぜ。一度くらいは見てみる価値はあると思うぜ。」

夏男達はレイに断られてもなんとか2人をひっかけようと、あれこれ手を変えてひつこ
く誘ってくる。

「ウッサイ! そんなにいいとこなら、勝手にアンタ達だけで行けばいいでしょ! 邪魔
  だからどっか行きなさいよね!」

「な、なんだと! 人が下手に出てりゃいい気になりやがって!」

「ふざけたことぬかしてると痛い目にあうぞ! ちょっとこっち来い! コラッ!」

あーー、もう、ピーヒャラピーヒャラうっとうしいわねぇ。

アスカは、水着の中に隠し持っていたブラッディーカードを胸から取り出し、ひょいと
空中にほおり投げた。

シューーーー。

空を舞う1枚のカード。

スパッ! スパッ!

あっという間に男達の髪の毛は切り落とされ、風に流され飛んでいく。高速で旋回する
ブラッディーカードの円の中心で、男達は悲鳴をあげた。

「次は、どこを切ってほしいの?」

「あ・・・いえ・・・も、もう、僕たち帰りますから・・・。」

「あっそ。じゃ、さっさとどっかへ行ってちょうだい。」

「は、はいぃぃぃぃ。」

ブラッディーカードがアスカの手に戻った途端に、逃げ去る様に去っていく男達。アス
カもレイもようやく静かになったと、トロピカルドリンクから出るストローに口をつけ
た時。

ズバーーーーーーーーーーーーーーーン。

「な、何!?」

突然の出来事だった。海の彼方から現れた3体のロボットが、アスカとレイの上を飛び
去りTV局の横に着陸した。

「アスカ、まずいわ!」

「なに? あのロボット?」

1体はトリコロールの様なカラーリングの変形タイプのロボットで、手にはポジトロン
ライフルの様な大きな銃が握られている。
2体目は金色のロボットで、両肩に百と漢字で書かれていた。
最後の1体は赤と黒というカラーリングで丸い目の様なレンズが1つ頭に付いているず
んぐりしたロボットだ。

「TV局を占拠するつもりね。」

「ま、まずいじゃない!!」

「まずいわ・・・。」

「アタシ達がここにいるってわかったら、やっと取れた休暇がぁ・・・。何もこんな所
  で、事件を起こさなくてもいいのに・・・。」

「早く、携帯の電源を切った方がいいわね。」

常時携帯を義務づけられている携帯の電源にアスカとレイが手を伸ばした瞬間、コール
音が鳴り響いた。

「あちゃーーーーーー。」

「手後れね・・・。」

「アンタが、ここに行こうって決めたのよ! どーしてくれんのよ!」

「決めたのはアスカよ。」

「あーーーあ。」

観念したアスカは、しぶしぶ携帯を耳にあてる。

「もしもし・・・あなたのおかけになった電話番号は、現在使われて・・・」

『アスカ! 冗談言ってる場合じゃないよ! そっちにモビ○スーツと言われているロボ
  ットが飛んで行ったんだ。そこから見えないかな!!?』

「えーーーー!? 見えないけど? ねぇ、レイ。」

「ええ。TV局しか見えないわ。」

『・・・・・・。』

「・・・・・・。」

『その2人が見ているTV局をハイジャックした連中の流している放送を、すぐに阻止
  してほしいんだ。』

「あのーーーシンジ? アタシ達、今休暇中なんだけど?」

「私も休暇中だわ。」

『そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!! ネルフの機密事項も世界に流れてるん
  だ!!!』

「じゃーさー、今度の日曜日、シンジのおごりでデートしてくれる?」

「私も・・・。」

『今度の日曜は、カヲルくんと・・・。』

ムカッ!
ムカムカ!

「さぁって、場所を変えて休暇を楽しみましょうか。」

「そうね。」

『わ・・・わかったよ。だから、急いで行ってよ。』

「それから、こないだマリネラの失敗で減った給料を、元に戻してほしいなぁ。」

『・・・・そんなの、ぼくにはどうしようも・・・かんべんしてよ。』

「さぁって、場所を変えて休暇を楽しみましょうか。」

「べつに、どっちでもいいわ。」

『ぼくの給料も、減りっぱなしだけど・・・。しかも、日曜におごらされるけど・・・。
  いつも、アスカ達のせいで苦労してるけど・・・。そんなぼくの給料からでよければ、
  アスカの減った分を補充するよ・・・。』

「サンキュー、シンジ。」

『・・・・・・・・・・・・・・・。』

「じゃ、レイ。行くわよ。」

「ええ。」

TV局へ向かって、自称ラブリーエンジェルという2人の少女は歩き出した。その頃、
ネルフ本部にあるシンジの部屋には、どんよりとした黒い影が立ちこめていた。

<TV局>

TV局は既に数十人の兵隊に占拠されており、各国の首脳が集まる会議室では金色のモ
○○スーツに乗ってきた金髪の男が、演説を行っていた。

「セカンドインパクト、これは何だったのか!!
  隕石の落下だと言われているが、これはネルフの情報操作によるもので、真実は使徒
  の研究を南極で行っていたネルフが引き起こした物である!!」

それまで非難の声を上げていた各国の首脳達も、真実を知っているアメリカ,ドイツな
どの一部の国を覗いて、その演説に引き込まれ始めていた。

「セカンドインパクトで、地軸は曲がり地球に異変を来したのは周知の事実である。し
  かし、ネルフはその罪を償い対策を講じるどころか、使途殲滅を口実として各国に多
  額の予算を要求しつづけた!! このまま、ネルフが実権を握りつづけることは、地
  球の破滅を引き起こすのだ!! もう、地球は持たない所まで来ているのだ!!」

その時、演説を無言で傍聴していたある国の首脳が手を上げた。

「ならば、どうしろと言うのだ。ただ、非難するだけなら誰にでもできるぞ。」

また別の国の首脳が後に続く。

「おまえが、ネルフの後を継ぐとでもいうのか? おまえに、そんな力があるのか?」

再び会議室がガヤガヤと騒ぎ出すが、首脳達の前に立つ武装兵に囲まれた3人の男達の
中で、先程から演説している金髪の男が机をバンを叩き辺りを静まり返らせた。

「私は、セカンドインパクト後に起こった1年戦争の時、シャ○・アズ○○○と呼ばれ
  た男だ!!」

そのセリフを聞いた、首脳連は一気に顔の色を失う。

「赤い○○が、生きていたというのか・・・。では、残りの2人は・・・。」

どこからともなく、そんな声が聞こえる。

「俺は、ア○ロ・レ○。こっちが、カミ○ユ・ビ○○だ。共にエウ○ゴのメンバーだ。」

                        ●

セカンドインパクトの直後、世界は統率を失っていた。ゲリラやテロがあらゆる地域で
勃発した。そんな、状況の中で起ったのがヨーロッパ全土を統一しようとする、新生独
立国家ジ○○だった。

ジ○○は、ウラル山脈からトルコにかけた地域で急速に勢力を伸ばし、独立宣言を行っ
た。しかし、ロシアを始めとしてその独立を阻止しようとする。

独立戦争が始まって、わずか1ヶ月。国力の衰えたヨーロッパ各国は、ジ○○の猛攻に
後退を余儀なくされた。

そして、ジ○○の兵力がイタリア−スイス防衛ラインに迫ろうかという時、大財閥の後
継ぎであったシャ○・アズ○○○は、モビ○スーツの開発に成功。

シャ○・アズ○○○はア○ロ・レ○と共に、最初に完成したジオ○○とガ○○ムという
たった2体のモビ○スーツだけでジ○○を殲滅したのだった。

                        ●

「今後我らエウ○ゴが、世界をまとめる! 各国首脳の意見を伺いたい!!」

ズドーーーーン。

その時、会議室の固く閉ざされた扉が砕け散った。

「何、調子の良い事言ってんのよ!」

「ネルフを甘く見ないことね・・・。」

アスカとレイであった。その様子を見た武装兵達は銃口を2人に向けるが、既に遅かっ
た。ペンペンのリュックサックから飛び出したファンネルと、レイのATフィールドが、
武装兵の銃を切り刻み、兵隊を次々を吹き飛ばしていく。

「なーーーにが、エ○○ゴよ!! エスカルゴじゃあるまいし!! アンタ達のせいで、
  休暇が台無しじゃないの!!」

抵抗らしき抵抗もせず、逃げ惑う兵士達を吹き飛ばしていくATフィールド。

「さっさと解散することね。」

レイも休暇が無くなったことに腹をたてているのか、容赦無くATフィールドを展開す
る。

「ハン! この程度の武力で、ネルフに対抗しようっての? ふざけるのもいいかげんに
  しなさいよね!」

ファンネルが、シャ○,ア○ロ,カミ○ユの周りを旋回する。

「どうするの? 解散するんなら、この辺で許してあげるわ!」

しかし、シャ○は全く慌てる様子も見せずに、マイクを握った。

「見るがいい! これがネルフのやり方だ! この会議室を武力制圧した我々も悪い!
  だが、我々は誰1人として攻撃はしていない!! 銃弾1発発射していない!! ネル
  フはどうだ、ろくに話もせずに反対勢力というだけで抑圧している!! これが正義
  か!!」

アスカとレイの行動は、全世界に中継されていた。

「何、ふざけたこと言ってるのよ! 負けおしみでも言いたいわけぇ!!?」

アスカがシャ○に対して声を荒げた時、携帯電話の音が鳴る。

「もう! 何よ! 今忙しいのよ!」

『戦闘を中止しろ。』

「い・・・碇指令・・・。どういうことですか!?」

『今はまずい。ここは敵に投降しろ。』

そこで、電話は切れた。

「投降って! なんで、アタシがぁ!!」

「命令よ。」

レイは既に、ATフィールドの展開を止めていた。

「ちくしょーーーー!!」

シャ○の周りを旋回していたファンネルもアスカが制御を切断した為、ボトボトと落ち
ていく。さすがのアスカといえども、ゲンドウからの直接命令に逆らうことはできない。

「どうしてよ・・・。勝ってたのに・・・。」

アスカとレイは、その場でエウ○ゴに捕らえられた。

                        ●

<ネルフ本部>

「まずいぞ、碇。」

「ああ。加持を呼べ。」

「なんとかなるのか?」

「情報操作をさせる。平行して、エウ○ゴ壊滅の適任者を決めておけ。」

「全面戦争か?」

「戦争にはならんよ。切り札は全てこちらにある。」

「エヴァを出すのか。」

「ああ。奴等など相手にするのは時間の無駄だ。」

「世論が黙ってないぞ。」

「後でなんとでもなる。問題無い。」

                        ●

シンジはミサトに呼び出されていた。

「アスカが捕らえられたんですか!? あのアスカと綾波のペアがどうして!?」

「ちょっち、まずいことになってね。」

ミサトは、事の成り行きを説明した。そして、現在アスカとレイは、敵に捕まり監禁さ
れているということだった。

「でもレイなら、どこに監禁されても簡単に脱出できるんじゃ・・・。」

「眠らされていたら? アスカを人質にされて、脅迫されていたら? 相手もバカじゃな
  いわ。」

「・・・・・・・・・・。」

「シンジくん。相手の装備は、Zガ○○ム,百○,リッ○・○○アスというモ○○スー
  ツは3機。ATフィールドは無いけど、エヴァと違って、飛行能力があって機動性も
  遥かに高いわ。どうする?」

「行きます。」

「時間をかけちゃダメよ。時間をかければ、それだけアスカやレイが危険だわ。」

「わかってます。」

「じゃ、後の指揮。人選はまかせるわね。」

「はい。」

シンジが退室した後、笑顔だったミサトの顔がどんよりと沈み込む。

どうして、シンジくんなのよ・・・。アスカやレイのこととなったら、暴走しかねない
わ・・・。

ミサトは、頭を抱え込み胃薬を飲むと、MAGIの人選を呪うのだった。

<輸送機>

「わかったよ。シンジ君。僕は、2人の救出をすればいいんだね。」

「うん。カヲル君が救出してくれるまで、ぼくがモビ○スーツを食い止めておくから。
  でも、囚われている位置がわからないんだ。」

「大丈夫だよ。近くまで行ったら、レイの位置ならだいたいわかるからね。」

エウ○ゴの基地は、ウラル山脈の地下にある。今、シンジとカヲルは、ウラル山脈の上
空を飛ぶエヴァの輸送機の中で、最終の打ち合わせをしていた。

「そろそろ、落下地点だ。行こうか。」

「そうだね。」

シンジとカヲルは初号機に乗り込み、地上に見えるウラル山脈を目指して輸送機から落
下を始める。

ゴーーー。

初号機が落下を開始すると同時に、地上から数百発の対空ミサイルが打ち上げられた。

<エウ○ゴ本部>

「シャ○、エヴァが攻撃をしてきたぞ。」

「初号機か?」

「そうだ。」

「S2機関を搭載している初号機さえ叩けば、道は開ける。」

「早くもこの戦いの天王山か。」

初号機が攻撃を仕掛けてきたという報告を聞き、シャ○とア○ロが対策方法を検討して
いる。

「ATフィールドといえども、高速移動するモビ○スーツは、そう簡単に捕らえること
  はできんだろう。」

「だが、こちらからも攻撃できないぞ。」

「その為の人質だ。有効に活用せねばな。」

「そうだな。そろそろ、モビ○スーツを出すか。対空ミサイルだけじゃ、時間稼ぎにも
  ならないだろうからな。」

「ア○ロ・・・、カミ○ユにも声をかけておいてくれ。」

「わかってる。先に行くぞ。」

「ああ。」

<地上>

対空ミサイルを全てATフィールドで潰したシンジは、地下へと入る通路を進んでいた。

「シンジ君。レイが近いみたいだ。そろそろ降りるよ。」

エントリープラグを排出し、カヲルが初号機から降りる。その時、Zガ○○ムとリ○○
・○○アスが前方から迫ってきた。

「カヲルくん! アスカと綾波を頼んだよ!」

「わかってるよ。」

地下の基地に続く道らしき、細い人口の通路にカヲルの姿が消えて行く。

ズキューーーーーン。
ズキューーーーーン。

戦闘機タイプに変形したZガ○○ムと、身を屈めて地上を高速移動するリ○○・○○ア
スが初号機を攻撃してきた。

「くっ!」

シンジもATフィールドで応戦するが、エヴァより遥かに小さく高速移動するモ○○ス
ーツを相手にしなければならない。しかも、シンジがポジトロン・ライフルを撃つ前に、
まるでこちらの動きが先読みされているかの様に逃げるのだ。

ズキューーーーン。

ズキューーーーン。

高エネルギービームの乱射戦が果てしなく続く。シンジは、ATフィールドを展開して
敵のビームを防ぐが、敵は機動性を生かして逃げ続ける。先に気力が尽きた方が負ける
戦いだ。

「ア○ロ! カミ○ユ! 何を遊んでいる!!」

戦闘が始まって5分が経過しようかという時、地下道の奥から金色の○式と呼ばれるモ
○○スーツが現れた。

3機か・・・。これ以上は、もう持たない・・・。
カヲルくん、まだなのか・・・。

シンジの望みは、カヲルが2人を救出することであった。カヲルがアスカとレイに接触
すれば、ATフィールドを全開にできる。しかし、2人がどこにいるのかわからない現
状では下手なことができない。

「エヴァ、初号機のパイロット!! これが見えるか?」

○式のコックピットを開け中から姿を現したシャ○の手にはナイフが握られ、そのナイ
フの先端は、首に腕が巻きつけられ捕らえられているアスカの頬に当てられたいた。

「シンジぃぃぃ!!」

「アスカ!!!」

ピピピピ。

通信機の音が鳴る。

『シンジ君、レイは確保したよ。でも、アスカが見えないんだ。』

「カヲルくん・・・アスカは・・・ここにいるよ。敵のモビ○スーツの中に・・・。」

『そうだったのか。わかった。レイも目を覚ましたから、2人で今から救出に向かうよ。
  もう少し、がんばってくれないかい?』

「わかった。」

「初号機のパイロット。抵抗しなければ、この女性の命は助けよう。どうする?」

「くそっ!!」

Zガ○○ムとリ○ク・ディ○スが、初号機めがけてビー○○イフルを撃つ。

ビシッ!

ATフィールドに阻まれるビー○○イフルの閃光。

「どうしたんだ? 抵抗するならば、この女性の命は保証できないぞ。」

ナイフの先端が、アスカの頬に少し食い込む。

「アスカ!! わ、わかったから、やめてくれ!!!」

「シンジ!! アンタバカあ!? アンタがやられたら、次はアタシが殺されるに決まっ
  てるじゃない!! 何してんのよ!!」

シンジの様子を見ていたアスカが悲痛な叫びを上げるが、シンジは、ポジトロンライフ
ルを手から離すと、その場で両手を上げて抵抗の意志が無いことを示した。

「ア○ロ! カミ○ユ! 初号機さえ倒せば、あとはこっちの物だ!」

「さすがだな、シャ○! こうなることがわかってたのか?」

「当然だ。戦闘とは常に2手3手、先を読んで行う物だ。」

初号機をビー○○イフルの雨が襲う。

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

砕けていく拘束具、エヴァのあちこちから血が流れ出る。

「シンジ!!! 何やってんのよ!!! アンタが死んだら、アタシの給料を誰が補填し
  てくれんのよ!! シンジ!! 戦いなさいよ!! シンジーー!!」

アスカは、なんとかシャ○の腕から抜け出そうと暴れるが、いくら訓練されているとは
いえ、14歳の女の子と経験豊かな兵士であるシャ○の腕力の差は、圧倒的だった。

ズドーーーーン。

痛みに耐え切れず、地に足をつく初号機。ビームを体に浴びる度にシンジの悲鳴が聞こ
えてくる。

「ちきしょーーーー!! シンジ! 何してんのよ! バカ!! 戦いなさいって言ってる
  でしょ!! バカ!! バカ!! バカぁぁぁ!!」

金切り声を上げて泣き叫び、シャ○の腕の中で暴れるアスカだが、その腕はびくともせ
ず、シャ○は崩れゆく初号機を、勝利を確信した顔で見つめていた。

ズシャ。

「ぐっ・・・。」

その時、シャ○の腕から赤い血が吹き出る。

「待たせたね。」

アスカが下を見ると、カヲルとレイが、地上から浮かび上がってきていた。どうやら、
カヲルがATフィールドでシャ○の腕を攻撃した様だ。

「レイ!!!」

咄嗟に、シャ○の腕から抜け出したアスカは、○式の手の上からレイのATフィールド
目掛けて飛び降りようとした。

「させるか!!!」

シャ○が、ナイフを持っていた腕を伸ばしてアスカを捕らえようとした時。

ビシュ。

腕が届かず、ナイフがアスカの頬を一直線に切る。

白い肌から、赤い血が吹き出す。

落ちていくアスカ。

                        :
                        :
                        :

バサッ。

アスカが、レイとカヲルに抱き留められた時、アスカの頬は真っ赤に染まっていた。

「アスカ・・・・。」

シンジは、その様子をビームの雨を浴びる初号機の中から見ていた。

真っ赤に染まったアスカが、落ちていく様子を見ていた。

落ちる。

      落ちる。

              落ちる。

                      レイとカヲルのATフィールドの中に沈んでいく。

                            アスカが殺された・・・。
                            アスカが殺された・・・。
                            アスカが殺された・・・。

「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

シンクロ率、計測不能。

ATフィールド全開。

「うわっ!! シンジ君!! なんてことを!!」

「キャーーー!!」

カヲルとレイが、必至でATフィールドを展開し、自分たちとアスカを守る。

「シンジ!! 何してんのよ!! このバカシンジ!!!」

「シンジ君!! やめるんだ!!!」

「碇君!! ダメ!!」

アスカが殺されたと勘違いしたシンジは、もう誰の言葉も耳に入らなかった。
ただただ、ATフィールドだけが大きく、大きく展開され続けた。

                        ●

<ネルフ本部>

「かつてウラル山脈があった場所に新たな世界最大の湖ができ、カスピ海が繋がりまし
  た。」

「それで・・・!?」

ゲンドウの前で、事態の成り行きを説明するミサト。

「被害は最小限に押さえられた物かと・・・。」

「ウラル山脈の基地を殲滅せよとは言ったが? ウラル山脈を殲滅せよとは言った覚え
  は無い。」

「しかし、これはやむをえない事態でして。」

「もういい。明日より、葛城三尉は・・・。」

「尉?」

「降格だ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

「アフリカ中部のネルフ支部で働いてもらう。」

「ア・・・アガ・ガ・ガガガガ・・・。」

「以上だ。さがれ。」

「フンガガガ・・・ガガガ・・ガガ・・ガガ・・。」

fin.
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