------------------------------------------------------------------------------
The Last War
Episode 05 -集合-
------------------------------------------------------------------------------

<アメリカ大陸上空>

レーダーに引っかからない様に大西洋上を低空飛行でしばらく飛んでいると、海の向こ
うにアメリカ大陸が見えてきた。

「そろそろマンハッタンよ。ここからが正念場だから、しっかり掴まっておきなさい。」

「うんっ。」

いくらステルスとは言えども、イーグルがアメリカ大陸に差し掛かると、前方から数発
の迎撃ミサイルが撃ち出された。

「おいでなすったわねっ!」

急上昇してそのミサイルを交わすが、また別の迎撃ミサイルがイーグル目掛けて発射さ
れる。アスカは、急下降,旋回と巧みにかわし続ける。

「ちっ!」

しかし、無限にあるとも言える迎撃ミサイルが次から次へと撃ち出されてくるのだ。と
うとうたまりかねて、ミサイルを発射し撃ち落す。

「なめんじゃないわよっ!!!」

ズドドドドドドドドド。

迎撃ミサイルは木っ端微塵に吹き飛び、その煙幕の中を海に向かって下降して行くアス
カ。ゼーレ本部は目の前まで迫る。

「ハンっ。ざっとこんなもんよっ!」

「アスカ? また来たんだけど?」

撃ち落されたミサイルの煙幕の向こうから、また新たな迎撃ミサイルがイーグル目掛け
て飛び上がってきた。

「もう、持ち玉が無いじゃないのよっ!! イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」

ギリギリの所で直撃を回避したものの、ウイングが吹き飛びアスカのイーグルはニュー
ヨークの海へと不時着していった。

<ゼーレ本部>

シンジは独房で愕然としていた。

「何考えてるんだよっ!! 助けに来て掴まってりゃ世話ないじゃないかっ!」

「久しぶりに会ったってのに、なによその言いぐさぁっ! 相変わらずバカシンジの癖
  に生意気ねっ!」

「はぁ・・・。そうかもしれないよ・・・。アスカなんかに期待してたぼくは、本当に
  バカだ。はーぁ。」

「んまぁ、それどういう意味よっ!」

「だって、そうじゃないかっ! でも、綾波がきっとネオネルフに参加してくれるよ。
  最後の望みは綾波だよ・・・。」

「このアタシを、みくびらないで貰いたいわねっ! 今頃、レイがこっちに向かってる
  はずよっ。」

「えっ? 綾波が?」

「当然よっ! このアタシが、何の策も無しに捕まるとでも思ってたの? ホント、バカ
  なんだから。」

<海の中>

その頃レイは、ATフィールドをシャボン玉のように展開し、その中に空気を一杯溜め
ながら、海の奥底を進んでいた。

もう少しで陸だわ。
ATフィールドも、もう限界。
急がないと・・・。

不時着する瞬間、アスカはレイにこの知恵を授けて海の中へ叩き落したのだ。レイが乗
っていたことなど知らないゼーレの兵士は、アスカだけを連行することになった。

「はぁはぁはぁ・・・。なんとか岸まで耐えたわ。はぁはぁはぁ・・・。」

長時間ATフィールドを展開しすぎた疲労から、レイは肩で息をしながらアスカが酒場
で入手した地図を片手に下水管の中へと入って行く。

ゼーレ本部の下まで行くのはいいけど・・・。
どうやってゼーレの中に進入しようかしら?
こんなパジャマ姿の女の子がうろうろしてたら、一発で目立っちゃうわよねぇ。

進入の方法を試行錯誤しながら、レイは地図に従ってゼーレ本部へと下水管の中を進ん
で行った。

                        :
                        :
                        :

そんなっ!
ど、どうしよう・・・。

地図の通りに行けば、ここを真っ直ぐ進むと目の前がゼーレ本部の真下である。しかし、
そこには何重にも張り巡らされた鉄の柵が行く手を遮っていた。

ATフィールドで・・・。

ATフィールドでその柵を切断しようとしたが、先程限界まで使ってしまった為、少し
赤く光っただけで切断するほどの威力が出ない。

体力の回復をここで待とうかしら。
うーん・・・。

地図をじっと眺めながら、今後の行動を考える。あまり時間を遅らせると、アスカの身
が危なくなる。

ここを上がれば、ゼーレ本部の丁度前辺りだわ。

一度外の様子を見てから行動を決め様と、レイは下水道の梯子を登りマンホールの蓋か
ら、目だけをちょろりと出した。

入り口には見張りは1人だけなのね。
あの兵士の制服を奪うことができたら・・・。

意外と警備兵は少なかった。兵士の制服さえ奪い取ることができれば、進入は容易い。
レイは、どうすればあの兵士を誘き寄せることができるか、マンホールの下で考えた。

ボッ!

突然、顔を真っ赤にするレイ。しかし、他にアイデアが思い浮かばなかったので、その
作戦を実行することに決意した。

「ん?」

ゼーレ本部の入り口で見張りをしていた兵士は、幻でも見ているのだろうかと目をゴシ
ゴシと擦る。

「なんだ?」

再び目を凝らして前方を見るが、どう見ても女性の綺麗な素足がにょきりとマンホール
から出ているように見える。

「お誘いか?」

その兵士は、思わず煩悩に刈られてマンホールまで近づき、ニヤニヤしながら中を覗き
込むと、髪の青い絶世の美女が自分に向かって微笑み掛けていた。

「うわっ!!!」

しかし、その絶世の美女の手には、自分に向けて構えられているレーザーガンが握られ
ていたのだ。兵士は咄嗟に銃を構え様とするが、間に合わなかった。

「あの世で後悔するのねっ!」

レイは、アスカが酒場で言っていた言葉を真似ねて決め台詞を叫ぶと、レーザーガンを
眉間に撃ち込んだ。

ドサッ!

「ごめんなさいね。でも、わたしも甘いこと言ってる場合じゃないから・・・。」

レイは、その兵士を急いでマンホールの中へ招き入れ、パジャマからゼーレの兵士の制
服に着替えた。

まずいわねぇ。
この服、かなり大きいわ。

ヘルメットを深くかぶったレイは、少しびくびくしながらも先程まで兵士が立っていた
所へ戻って行く。ズボンの裾と袖を内側に折り込んで着ているので、少しおかしい。

「おいっ!」

ギクッ!

どうやって中へ入ろうかと考えながら立っていると、背後から誰かが声を掛けてきた。
レイは、冷や汗を掻きつつも、声を低くして何気無さを装い答える。

「な、なんだ・・・。」

「見張りの、交代時間だぞ。」

ほっ・・・ばれたんじゃないのね。

「そ、そうだったな。すまんすまん。」

レイは、少しでも早くこの場から逃れようと、小走りにゼーレ本部へと入って行こうと
した。

「お前っ! ちょっと待てっ!」

ギックーーーーーっ!!

「軍服のサイズが、合ってないんじゃないか? カヲル様は、そういう所には厳しいか
  ら、採寸し直しとけよっ!」

「あ、あぁ。わかってる。」

ほっ・・・。
驚かさないでよ・・・。

その兵士に手を一振りした後、レイはヘルメットを深く被ってゼーレ本部の中へと入っ
て行った。

<独房>

独房の中で4年振りの再開を果たしたシンジとアスカだったが、状況が状況なだけに、
2人とも無言でこれからのことを考えていた。

たぶんこれが、最後の脱出のチャンスだろう・・・。
でもここで、チルドレンが3人ともやられてしまったら、おしまいだ。
いざという時は、誰か1人だけでも脱出させないと。
ヨーロッパが日本みたいなことに・・・。

ネオネルフ本部の秘密基地があるヨーロッパを、故郷日本の様にしてはならないと、シ
ンジは堅く決意していた。

まだ、弐号機と零号機のコアはネオネルフの手にあるはずだ。
ぼくが脱出するより、アスカやレイを脱出させなければ・・・。

そう思いながら、シンジが目の前に座っているアスカに視線を運ぶと、綺麗な爪を噛ん
で部屋の隅一点を見ていた。アスカもアスカで何か考えているようだ。

予想はしてたけど、綺麗になったなぁ。
ぼくなんかと違って、君こそが表舞台に立つべき人間なのかもしれないね・・・。

脱出方法について考えていたアスカは、そんなシンジの視線を感じて顔を上げる。

「なによ?」

「これからのこと。考えてたんだ。」

「もうすぐレイが来るはずよ。アンタは余計なこと考えないで、黙って付いてきたらい
  いのよ。」

「そうだね。でも、どうしてアスカはぼくを助けにきたの?」

「依頼されたからよ。」

「依頼?」

「そうよ。シンジ救出の依頼をレイが持ってきたの。」

「今何やってるの?」

「傭兵よ。ほとんど、フランスの外人部隊にいるけどね。」

「そうなんだ。なんだか、アスカに似合わないや。」

「そうかしら?」

「だって、アスカだったらもっと派手なことしてそうだったから。」

「アンタバカぁ? そんなことしたら、一発でゼーレに捕まっちゃうじゃないっ!」

「今、こうして捕まってるじゃないか。」

「うぅぅぅぅ・・・・。こ、これは、作戦の一環だからいいのよっ!」

「そうだね。」

「むぅぅぅー。バカシンジの癖に、アンタも言うようになったわね。」

「ははは・・・そうかな?」

「そうよっ。なんか、昔とどこか印象が違うわ。どこかはわからないけど。」

狭い独房の中で、共有した時間が過ぎて行く。それは、4年という長い時間の空白を少
しづつ埋めていっていた。

<コンピュータールーム>

ビシューーーーーン! ビシューーーーーン!

レイのレーザーガンの閃光が、コンピュータールームの中を横切る。

ズガガガガガガガガ。

応戦するコンピュータールームのゼーレの職員達。

まったくもうっ! こんなに早くばれちゃうとは思わなかったわ。

軍服を着ていれば大丈夫だろうと、本部内の地図を引き出しにコンピュータールームへ
入ったが、運悪くそこは関係者以外立ち入り禁止となっており、ばれてしまった。

ビシューーーーーン! ビシューーーーーン!

ズガガガガガガガガ。

そして、レイとゼーレの職員は、そのまま銃撃戦へと突入して行ったのだ。

あと2人。
ATフィールドをここで使ったら、後がもたない。
レーザーガンで応戦しなくちゃ・・・。

ATフィールドを使うことができないレイは、不慣れな銃を操って敵を倒して行く。ド
イツでアスカの特訓を受けたのが、ここで役にたった。

ビシューーーーーン! ビシューーーーーン!

ズガガガガガガガガ。

お互い大きなコンピューターに身を隠して撃ち合っているので、なかなか決着がつかな
い。その時、1人の職員が非常ボタン目掛けてレイの前を走った。

ダメっ!

思わずレイは、コンピューターの影から走り出して、その兵士に飛び掛かる。そのまさか
の行動に驚いた職員は、所かまわずマシンガンを乱射した。

ズガガガガガガガガ。

「うわーーーっ!」

血を噴いて倒れるもう1人の職員。これで残ったのは、レイが押さえつけている職員1
人となった。

「あの世で後悔するのねっ!」

躊躇せず最後の兵士をレーザーガンで射抜くレイ。余程気に入ったらしく、いつの間に
かアスカの言葉がレイの決め台詞になってしまった様だ。
どうもレイは、いろいろな面でアスカの影響を多大に受けているらしい。少しづつ似て
きている。

急いで、MAPを引き出さないとっ!

レイは誰もいなくなった部屋で、コンピューターを操作する。

「もうっ! これ全然わかんないっ!」

PCくらいしかいじったことのないレイは、使い方がわからないながらも、地図とおぼ
しき項目を次から次ぎへと手当たり次第に検索していく。

「あ、あったわっ! 印刷はっ!?」

ドンドンドンっ!

その時、コンピュータールームの外から誰かが扉を叩く音がした。

「さっきの物音はなんだっ!! 開けろっ!!」

どうやら、先程の銃撃戦の音が、近くの兵士に聞えてしまった様だ。

もうっ! なんで、こんな時にっ!

どう対応しようかと迷うレイだったが、とりあえず返事をしてみることにした。

「なんでもない。大丈夫だ。」

「ん? おまえ女か? なぜ女がこんな所にいるっ!? 開けろっ!」

もうっ!
なんでばれちゃうのよぉっ!

印刷している時間はもう無いので、独房の位置だけをしっかり目に焼き付けて、逆に配
置されている扉から逃げることにした。

ん? どうして開かないのよ!?

扉を開けようと、ボタンを押すが反応が無い。どうやら先ほどの銃撃戦で壊れてしまっ
た様だ。

「おいっ! 突入するぞっ!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

背後では銃を撃って、扉を破壊しようとしている兵士達の音が聞こえてくる。

「開いてよっ!! お願いだからっ!! 開いてっ!!」

ビシューン! ビシューン! ビシューン!

レイも、むやみやたらとレーザーガンを扉に向かって乱射する。

カシュー。

丁度、兵士が踏み込もうとした瞬間、レイの前の扉が床上30センチ程開いた。

「あっ! 開いたわっ!」

床を這う様に、急いでその扉を潜り抜けるレイ。

「奴だっ! 捕まえろっ!」

コンピュータールームの惨状を見て、将校らしき人物は一瞬驚いたが、目の前で逃亡し
ようとしているレイに気付き追撃を命じた。

なんとかくぐり抜けれたわっ!
こういう時、スリムなレイちゃんは得よねぇ。

ふと後ろを見ると大きな男の兵士が、無理矢理体を扉の隙間に捻じ込ませて潜り抜けよ
うともがいていた。

「もういいから、閉まってよねっ!」

このままでは、兵士が出てきてしまうので、扉を閉めてから逃げ様と、レイは扉を閉め
るボタンにレーザーガンを撃ち込んだ。

カシュー。

レイを追撃しようと、狭い扉の隙間を這い出していた兵士の上で邪魔をしていた扉は、
その瞬間全開になる。

「いやぁぁぁっ! なんで、開いちゃうのよぉぉぉーーっ!!!」

扉が全開になったので、雪崩のように追撃してくる兵士達。レイは、冷や汗を掻きなが
ら、一目散に独房へ向かって逃げて行った。

<独房>

「ん? 誰かが来る音がするわ。」

「綾波が来てくれたのかな?」

「時間的に考えて、その可能性も高いわね。」

シンジとアスカが耳を澄まして、独房へ近づいて来る足音を聞いていると、すぐ目の前
で止まった。

ガチャガチャ。カシューーーーー。

「碇くんっ! アスカっ! 助けに着たわよっ!」

「変装してきたのねっ! アンタもなかなかやるじゃないっ!」

「久しぶりだね、綾波。」

「いいから、早く逃げるわよっ!」

レイに急かされて、独房から抜け出すアスカとシンジ。

「アンタも、ちょっとはやるじゃない。見直しちゃったわっ!」

レイの功績を褒め称えるアスカだったが、レイはそんなことにはお構いなしに、とにか
くシンジとアスカを急かす。

「いいから、早くっ!」

「わかってるわよ。そんなに急かさないでよねっ!」

ドドドドドドドドドドドドド。

その時、レイの後ろの廊下から20人くらいの兵士が銃を持って追い掛けて来た。

「き、来ちゃったじゃないっ! 急いでっ!」

「な、な、な、なによあれーーーーーーーっ!! あんなもんまで連れて来るんじゃな
  いわよーーーーっ!!!」

「わーーーーーーーーっっ!! 綾波、なんてことしてくれるんだよっ!!」

血相を変えて廊下をジグザグに全力で逃げて行くチルドレン達。その後ろから、追い掛
けてくる兵士の銃弾が雨霰の様に飛んでくる。

「キャーーーーーっ!!!」

冷や汗を掻きながら、逃げ惑うレイ。

「なんてことしてくれんのよーーーーっ!! このバカバカバカっ!!!!」

レイに文句を叫びながら、走り続けるアスカ。

「綾波・・・ひどいよぉーー。」

ぶちぶちと愚痴を言いながらも、とにかく逃げるシンジ。




状況は最悪。

絶対絶命。

通常の人間なら、諦めるだろう。




しかし、ここにいるのは・・・。

幾多の困難を乗り越えて、世界を救ったシンジ,アスカ,レイであった。
誰もが諦めるであろう状況を、奇跡を起こして乗り越えてきた3人なのだ。




                チルドレン、今ここに、全員集合!!




To Be Continued.
作者"ターム"へのメール/小説の感想はこちら。
tarm@mail1.big.or.jp
inserted by FC2 system