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The Last War
Episode 07 - 乾杯 -
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ゼーレから脱出した3人を乗せた戦闘機は、大西洋上空を飛行していた。

「シンジ、何処へ向かえばいいの?」

「ネオネルフ本部。スイスへ行ってくれるかな?」

「ネオネルフ本部ってスイスにあったんだ。」

「ジオフロントに近い物を建造してね。第3新東京市にあった物に比べたら、かなり小
  さいけど。」

「へぇ、地下にあるんだ。」

アスカは進路をスイスへ向けると、始めて見るネオネルフ本部目指してゼーレの戦闘機
の速度を上げていった。

<ゼーレ本部>

カヲルは、マントを翻して薄ら笑みを浮かべながら格納庫を出ると、ゼーレ本部の中枢
へと続く廊下を歩いていた。

「カヲル様、追撃のステルス機が発進致しました。」

「そうか。ネルフ本部の位置がわかり次第教えてくれないかい? ぼくはその前にちょ
  っと用事があるんだ。」

「はっ!」

「ハハハハハハハっ!」

ネオネルフ本部の位置を調べる為に、シンジ達の追尾命令を出したカヲルは、廊下が伸
びる先に見える暗い部屋へと入って行く。

「チルドレンを逃がしたそうだな?」

カヲルが部屋に入ると、その暗い部屋の奥に座る白髪の老人が声を掛けてくる。今、カ
ヲルの力を操り世界を支配している頂点の人物、キールである。

「はっ! ですが、ただ今追尾しておりますので、直ぐにネオネルフ本部の位置がわかる
  かと。」

「そうか・・・。抜かりは無い様だな。」

「はい。世界が手に入る時が、目の前まで来ています。」

「くっくっく。利用できるものは最大限に利用する。それが生き残る道だ。」

それまで頭を垂れていたカヲルは、ニヤリと笑みを浮かべてキールを見上げる。キール
の姿は、日が経つごとに衰えを感じさせていた。

「ええ。わかってますとも。」

ジリジリとキールに迫って行くカヲル。その笑みにキールは、旋律を覚えた。

「しかし、利用価値の無いものは・・・。」

「カ、カヲルっ!」

迫るカヲルの笑顔に、キールは恐怖して椅子から転げ落ちる。既に立つ事ができない体
なので、床を這って逃げ様とする。

「利用価値の無いものは・・・。」

「産みの親に手をかけるつもりかっ! おまえはっ!」

「フフフフフ・・・。」

ズシャッッ!!!!!

部屋全体が赤い光で染め上がる。

「ハハハハハハハハハハっ!」

暗い部屋に、カヲルの高笑いの声が響き渡った時、ドアをノックする音が聞こえた。

コンコン。

「なんだい? 入っていいよ。」

「はっ!」

カヲルの許可を聞き、部屋に入ってくる参謀。

「こ、これは・・・。」

「どうかしたのかい?」

「い、いえ・・・。」

キールの死体を見て冷や汗を掻く参謀だったが、すぐにカヲルに敬礼する。

「なんだい?」

「はっ! ネオネルフ本部の位置がわかりましたっ!」

「そうかい。それじゃ、ATフィールド発生装置の準備をしてくれるかい?」

「はっ!」

「目標はネオネルフ本部に。最大出力でね。」

「はっ!」

「ククククク。ハハハハハハハハハハっ!!!」

キールの死体と共に参謀を部屋に残したカヲルは、全ては自分の思いのままにと言わん
ばかりの笑いを上げて出て行くのだった。

<ネオネルフ本部>

アスカが操る戦闘機は、ネオネルフ本部の地下ドックに収納され、3人は歓喜の声で迎
え入れられた。

「シンジ様っ! よくご無事でっ!」
「シンジ様、ばんざーーいっ!」
「アスカ様に、レイ様までおいで下さるとは・・・。うぅっ。うっうっ・・・。」

コックピットから降りる3人に、状況報告する者,感激に打ちひしがれる者,万歳で迎
える者と様々であったが、皆喜びを体中で表現していた。

「ありがとうっ! みんな!」

「シンジ様っ! エヴァ戦闘機の準備が完了しておりますっ!」

「とうとう、完成したんだねっ! これでゼーレに対抗できるよっ!」

ウーーーーウーーーーウーーーー!

その時、基地内に警報が鳴り響いた。参謀が急いで状況を調査させた所、アルプス上空
を飛び去って行くゼーレの戦闘機が発見されたということだった。

「シンジ様っ! 大変ですっ! 敵に発見されましたっ!」

「しまったっ! 後をつけられてたんだ。時間が無いっ! すぐに出撃の準備をっ!」

「「「「オーーーーッ!!!」」」」

シンジが帰還したこともあり、勢いの増したネオネルフのメンバーは、活気付いて出撃
の準備を行う。その人の群れの間から、赤と青のエヴァ戦闘機が見え隠れしていた。

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                        :
                        :

「アスカ? 行くの?」

約束を果たし終えたアスカは、エヴァ戦闘機弐号機に自分の荷物を詰め込んでいた。賞
金と、この作戦で壊れたイーグルに代わるエヴァ戦闘機を貰ったので、不満は無い。

「もちろんよ。ここまでがアタシの仕事よ。」

「これから、戦闘なんだよ?」

シンジが説得しようとするが、アスカは次から次へと荷物を詰め込んでいき、いつでも
発進できる態勢だ。

「なによ。素直にアタシが好きだから、残って欲しいって言えないわけ?」

「ち、違うよっ! これから大事な決戦だから・・・ぼくは・・・。」

「はいはい。無理しなくたっていいのよ。アンタはアタシのことを昔っから好きだった
  もんねぇ。」

「今はそんなこと言ってる時じゃないだろっ!」

「アンタこそ素直になったら? それとも、他に好きな人でもできたの? 青い髪のかわ
  いい娘とか?」

「何言ってんだよっ!」

「そのじれったい性格だけは、昔と変わらないわねぇ。」

「ほっといてよ。」

「いいこと? アンタはアタシのことが好きなの? わかった?」

腰に手を当てて得意のポーズでシンジを指差すアスカ。

「どうして、今、そんなこと言うんだよっ!」

「フンっ。素直にならなかったことを、後で後悔すればいいわ。じゃ、アタシは行くか
  らっ!」

「ちょ、ちょっとっ!」

シンジが止めるのも聞かず、エヴァ戦闘機弐号機のコックピットに乗り込んだアスカは、
エンジンに火を灯す。

「Good Luck!」

そして、微笑みながら人差し指と中指で敬礼したアスカは、ネオネルフ本部基地を飛び
立って行った。出撃の準備をしていたレイは、飛び去る赤いエヴァ戦闘機に気付く。

「碇くんっ! アスカがっ!」

「いいんだ・・・。」

「いいって、これから大事な時だってのにっ!」

「人にはそれぞれの生き方があるんだよ。」

「そんな・・・。アスカならきっと参加してくれると思ってたのに・・・。」

「いいんだ。」

「いい人だって思い始めてたのに、見損なったわ。」

「そんなこと言うもんじゃないよ。それより、ぼく達は出撃の準備をしようよ。」

「ええ・・・。わたし1人でもがんばるからっ!」

「頼んだよ。綾波。」

ネオネルフに残った唯一のコアを搭載したレイのエヴァ戦闘機初号機を中心に、決戦の
準備は1秒を争って急がれていた。

<ネオネルフ司令室>

シンジの前に集まる兵士達。その中には、真っ白なプラグスーツに身を包んだレイの姿
もある。その姿を見たシンジは、自分達の為に散った2人のレイを思い出す。

「敵は、既にATフィールド発生装置を完成させている。今が最後のチャンスだ。みん
  なっ! 後少しっ! がんばって欲しいっ!」

「「「「オーーーーッ!!!」」」」

シンジに歓声で答えるネオネルフの兵士達。

「ATフィールド発生装置に近づくには、装置が発生するATフィールドを中和しなけ
  ればいけない。」

ちらりと、レイを見るシンジ。

「綾波が敵の中心に達するまで、みんなは護衛を頼む。よしっ! 出撃だっ!」

「「「「オーーーーッ!!!」」」」

ネオネルフの最後にして最大の作戦が開始された。元々シンジがエヴァ戦闘機に乗る予
定だったが、コアを奪われた為、レイの補佐として指令室に残ることになった。

<ゼーレ本部>

ゼーレでは、修復されたATフィールド発生装置が、スイスのネオネルフ本部を目標に
発射準備が進められていた。

「エネルギーの充填が開始されました。」

「後30分で、世界はぼくにひざまづくことになるんだ。ハハハハハハッ!」

カヲルが、眼下のATフィールド発生装置を見下ろして高笑いを響かせた時、ゼーレ本
部に警報が鳴り響く。ネオネルフの本格的な襲撃の始まりである。

<アメリカ上空>

レイ達に襲いかかるゼーレの迎撃ミサイルに、ネオネルフの特攻隊は苦戦していた。

ドドーーンっ!

仲間の戦闘機が迎撃ミサイルからレイを守ろうとするが、あまりの数のミサイルに次か
ら次へと撃墜されていく。

「ATフィールド全開っ!!」

何度も仲間の周りを旋回しながら、仲間達を助けようとATフィールドで防戦するレイ。

『綾波っ!! 迎撃ミサイルなんかにかまわず、前進するんだっ!!』

ネオネルフのシンジから、レイに通信が入る。レイのシンクロは30分から45分くら
いが限界である。ここでATフィールドを使っては、最後の決戦までもたない。

「でもっ!! みんながっ!!」

『綾波は進むんだっ!! それが、綾波の役目だっ!!』

躊躇するレイに、シンジが叫ぶ。ここでの犠牲を我慢しなければ、最後のチャンスを逃
し世界はゼーレの手に落ちる。

『我々は、後から追いますっ! レイ様は、行って下さいっ!』

仲間のパイロットから、レイを急かす通信が入る。皆、命を捨ててでも、ゼーレ打倒を
夢みている。

「わかったっ!! 行くわっ!!」

『ご無事で・・・ジジジジジ』

「あっ!!!」

今、レイに通信を入れていたパイロットの乗る戦闘機が、レイの真横で迎撃ミサイルを
受け木っ端微塵に破壊される。

「くぅぅぅぅぅぅっ!!」

レイは歯を食いしばり涙を飛び散らせて、ゼーレ本部の奥にあるATフィールド発生装
置目指し直進する。

「許さないっ! みんなの意思、わたしがきっとっ!!」

まだ撃墜されていない何機かの戦闘機を伴って、大西洋からアメリカ大陸へと全力で飛
ぶレイ。しかし、次々と迫る迎撃ミサイルの雨に、どんどん仲間は減らされていく。

<ゼーレ本部>

「レイ・・・今邪魔をされると困るんだ・・・。」

司令室に座っていたカヲルは、部下の将軍を呼びつけ耳元で囁いた。

「ぼくも出撃するよ。相手が悪い。」

「カヲル様が、直々にでございますか?」

「そういうことだね。」

「しかし、反乱軍の編隊は既に9割を殲滅しておりますが?」

「最後の1機が問題なんだよ。早く用意をしてくれないかい?」

「はっ!」

カヲルは自分の乗る戦闘機を用意させると、シンクロを開始し出撃態勢に入った。

<ATフィールド発生装置上空>

レイを先頭とするネオネルフの編隊は、ATフィールド発生装置のすぐ手前まで来てい
た。しかし、それは既に編隊と呼べるものではなく、レイを含めわずか3機。

「綾波レイ。ここまでだよ。」

あと少しという所で、迫り来る銀色の戦闘機。その速度は異常に速い。

『レイ様っ! 敵戦闘機が出てきましたっ! ここは我々がっ! 先へ行って下さいっ!」

「わかったわっ! でもっ! 絶対、死なないでねっ!」

レイは、後ろを振り返らず前に広がる真っ赤な光の中へATフィールドの中和態勢を取
りつつ突進する。

「悪いね。君達を相手にしている暇はないんだよ。」

カヲルと応戦する為に残った2機の戦闘機は、時間を稼ぐ為にドッグファイトに持ち込
もうとカヲルに迫ったが、行く手に突然8角形の光の壁が出現する。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」

ズガーーーーーンっ!
ズガーーーーーンっ!

それと同時に、ATフィールドに激突した戦闘機は木っ端微塵に爆発。

「はっ!」

その閃光を後ろに感じたレイが振り返ると、吹き飛ぶ戦闘機の破片が宙を舞っていた。

「みんな・・・。くっ!」

しかし、レイはそれ以上振り返ろうとはせず、赤い光の中へと突入する。それと同時に
ATフィールドの中和に神経を注ぐレイ。

「見えたっ!」

目前に迫るATフィールド発生装置。レイはそれをロックオンすると、ロンギヌスの槍
の発射タイミングを狙う。

「1度で決めないと・・・もう・・・。」

ここまでシンクロしてきた為、限界が近づいていることが自分でわかっていた。

「そうはさせないよ。」

しかし、真後から猛追撃してきたカヲルが、レイの戦闘機目掛けて、ロンギヌスの槍を
発射する。

ズドーーーーーンっ!

「きゃーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

カオルの発射したロンギヌスの槍は尾翼に命中。体制を崩しながら、ATフィールド発
生装置の上を飛び去るレイ。

「くっ!」

体制は崩したものの、戦闘機の被害は少なかった。レイは、カヲルから逃れ大きく旋回
して次の攻撃を回避する。

「こんな所でっ!」

レイは歯を食いしばってがんばっていたが、カヲルから逃げている間に限界時間を大き
く超えてしまっていた。

ミシッ!

少し気を抜くと、ATフィールドの中和が甘くなり戦闘機が悲鳴をあげる。

「くぅぅぅぅっ!!」

必死でATフィールドを中和し続けるが、再度の迎撃まで持ちこたえられそうに無い。

レイ・・・。
がんばるのよ・・・レイ。

ゼーレから脱出する時に聞こえた声が、レイを励ます。

「くっ!! まだ・・・まだいけるっ!」

後ろから再びカヲルが追撃してくる。ドッグファイトをしている時間が無い。レイは、
カヲルを無視して、一直線にATフィールド発生装置へと向かう。

「綾波レイ。甘かったね。」

しかし、カヲルの方がレイの速度よりわずかに速く、2体の戦闘機の距離はすぐに縮ま
ってしまった。

「駄目っ! あと少しなのにっ! 追いつかれるっ!」

ロックオンまであと数秒。しかし、カヲルが先にレイの戦闘機をロクオンしてきた。

「ごめんなさい、碇くん・・・。」

シンジに詫びるレイ。

「ごめんなさい、みんな・・・。」

ここまできたのだが、もうレイにはどうすることもできなかった。

「もう・・・ここまでなのね・・・。」

みんなの期待に答えられず、申し訳ないという思いだけが心を支配する。

「ごめんなさい・・・。」

レイは死を覚悟して目を閉じた。

ズガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

強烈な爆発がATフィールド発生装置の上空で起こった。

「アンタバカぁっ!!!」

「えっ!?」

「こんな所でモタモタしてんじゃないわよっ!!!」

レイの真後ろで、カヲルの戦闘機が火を吹きながら落下していく。その直上から、垂直
降下してきた真紅のエヴァ戦闘機が、レイの真横を飛び去って行く。

「アスカっ!!」

「さっさと終わらせて帰るわよっ!!!」

「うんっ!!」

迫り来るATフィールド発生装置をロックオンするレイ。

「いくわっ!」

発射されるロンギヌスの槍。

ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっ!

今まさに、スイスめがけて発射されようとしていたATフィールド発生装置は、その膨
大なエネルギーとコアの爆発により、強大なエネルギーを放出しつつ粉々に砕け散る。

「キャーーーーーーーーーー!!!!!」

これまでの戦闘で殆どの力を使い切っていたレイは、完璧なATフィールドが作れず、
そのエネルギーに耐えきれなくなり飛ばされて行く。

「もう・・・耐えられない・・・。でも・・・わたし、やったのね・・・。」

どんどん薄くなっていくレイのATフィールド。悲鳴を発するエヴァ戦闘機初号機の中
で、レイはやるべきことをやり遂げた満足感で笑顔を浮かべていた。

「ATフィールド全開っ!!!!!」

レイのATフィールドが完全に消えるかという瞬間、その周りを再び強力なATフィー
ルドが包み込んだ。

「アンタバカぁ? 最後まで諦めんじゃ無いわよっ!」

「アスカっ!!」

「まったくっ! 特攻隊なんて、今更流行らないわよっ! これだから、片道しか考えな
  いバカの作戦にはついていけないのよねぇ。」

レイの乗るエヴァ戦闘機にぴったりと付いて、飛行する真紅のエヴァ戦闘機。

「さっさと帰るわよっ!」

「うんっ!」

レイは、アスカの強力なATフィールドに包まれながら、爆風の中スイスへ向かって飛
び去って行った。

                        ●

並んで帰ってきた青と赤のエヴァ戦闘機は、歓声に包まれる。そんな中、コックピット
から降りてくるレイとアスカを迎えるシンジ。

「よくやってくれたよ、綾波。ありがとう、アスカ。」

「アンタ達だけじゃ、あぶなっかしくて見てらんないのよねぇ。」

「アスカが来てくれなかったら、わたし・・・みんなとの約束も守れずに死んでいたわ。」

「この貸しは、いずれ返してくれたらいいわ。ちゃんと形のあるものでねっ!」

「フフフ。アスカらしいわね。」

                        :
                        :
                        :

その夜、戦勝パーティーが開かれ、表彰されるレイとアスカ。ネオネルフのメンバーは、
そんな2人に拍手を送る。

「アスカ、いままでありがとう。」

「アンタと会ってから、酷い目ばかりに合ったわよ。」

「でも、世界が平和になって良かったじゃない。」

「ま、悪い気はしないわね。」

パーティー会場でワイングラスを傾けながら、アスカとレイは出会ってから今までのこ
とを話していた。

「ねぇ、アスカ。ここに残ってくれるんでしょ?」

「それは・・・。」

「え?」

「ちょっと、ごめん。」

アスカはレイから離れると、少し向こうでいろいろな人と話をしているシンジの元へと
歩いて行った。

「シンジ?」

「あっ、アスカ。」

「ちょっと、いいかしら?」

「うん。」

呼ばれたシンジは、今まで話をしていたネオネルフの首脳にお辞儀をして、アスカが招
く人の少ない場所へと付いて行った。

「アタシ、ここ出るわ。」

「え? どうしてさ?」

「アンタ、レイのこと好きでしょ?」

「え?」

「好きなんでしょ?」

「まぁ、そりゃ好きだけど。」

「アンタ達のこと邪魔したくないのよ。」

「プッ・・・くくく・・・。」

「なんで笑うのよっ!」

「綾波のことは好きだよ。」

「なら・・・。」

「妹としてね。」

「え?」

「ぼくと綾波は、血が繋がってるんだ。妹みたいなものだよ。」

「な、なんですってーっ!」

「ぼくが、愛してるのはやっぱり、アスカだけだよ。」

「もうっ!」

そういいながら、平和な世界の中でアスカを片手で抱きしめるシンジ。アスカもそんな
シンジの腕の中へと持たれ掛かる。

「アスカ? 残ってくれるわよね。」

アスカを抱きしめる反対側に、レイが寄ってきた。

「アンタっ! シンジと血が繋がってるなんて、言ってなかったじゃないのっ!」

「あら? そうだったかしらっ? 忘れてたわ。」

「アンタねぇっ!」

「ちょっとぉ。やめてよ。2人とも。戦争はもういいよ。」

そんな2人を交互に見つめるシンジ。アスカもレイも、プッと笑いを浮かべる。

「乾杯しようか?」

「そうねっ! シ〜ンジっ!」

「うんっ! 碇くんっ!」

3人は、ワイングラスを手にすると、高らかに手を上げる。

チーン。

透き通った音が、響きわたった。

昔、チルドレンと呼ばれた3人は、新たなる世界の中心となって、そのグラスと共に心
を1つにする。


そして、願いと感謝を込めて・・・。






                         「アタシ達の平和にっ!」
                         「わたし達の自由にっ!」
           「ぼく達を巡り合わせてくれた、旧ネルフのみんなにっ!」






       「「「 かんぱーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!」」」






fin.
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