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マイ ライフ
Episode 01 -天才志願者-
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作者注:アスカは天才少女ですが、ネルフには無関係の人生を歩んできた一般市民です。
        また、エヴァは既に量産化されておりチルドレンは世界各国幾人もいます。
        よって、使徒も沢山来ます。
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<ドイツの大学>

父も母も有名な学者であり、小さい頃から英才教育を受けてきたアスカは、学校をスキ
ップで上がり続け、わずか14歳で大学4年まで上り詰めていた。

そして卒業も主席で卒業が決まった頃・・・。

「おいっ、あいつだぜ。天才少女って。」

「あー、知ってる。英才教育を受けて育ったんだってな。」

「そんなに早く大学卒業して、どうするんだろうな。」

アスカが学食で昼食を食べていると、いつもの妬み混じりのひそひそ話があちこちから
聞こえてくる。

あーー、もういいかげんうんざりだわ・・・。
パパやママに言われたから、大学に来てるだけなのに。
うっとうしいわねぇ。

いちいち相手にしていてはきりが無いので、無視しながら昼食を食べる。エリートと呼
ばれるのにも、いいかげんうんざりだ。

「惣流さん? ここいいかのぉ?」

「ええ。」

大学の年老いた教授が昼食をトレイに乗せて近寄ってきた。教授の中でも、特別にアス
カの才能を見出し、目を掛けている人物だ。

「卒業もほぼ決まりじゃの。」

「そうらしいわね。」

「わしが見込んだだけのことはあるのぉ。卒業してどうするね。」

「学者になることを、父や母は望んでるわ。」

「そうか。それは立派なことじゃのぉ。」

ハンっ! なにが立派よっ!
別にそんなもん、なりたくもないわっ!

「それじゃ、アタシはこれでっ。」

「そうか。じゃ、また明日にの。」

成績優秀じゃなかったら、アタシのことなんか目にも掛けない癖にっ!
ヘドが出るわっ!

アスカは、自分の食べた物をトレイに乗せると、さっさと食堂を出て行った。

<アスカの家>

今日は父親の帰りも早く、家族3人揃った家族だんらんの食事が始まっていた。父親も
母親も自慢の娘と一緒にディナーを楽しんでいる。

「アスカちゃん? もうすぐ卒業ね。おめでとう。」

「ありがとうママ。」

「さすがは、アスカだ。偉いぞ。」

「ありがとうパパ。」

「アスカちゃんは、自慢の娘ですものねぇ。」

「そうだとも、こんなに優秀になるとはパパですら驚いているよ。ハハハハハ。」

ハンッ!
好きで大学なんか行ったんじゃないわよっ!
まだ、あの頃は小さかったから、パパやママが喜ぶならって思ってたけど。
いいかげんうんざりだわっ!

「ねぇ、パパ?」

「なんだい? アスカ?」

「あのね・・・。」

「ん?」

「もし、アタシが優秀な娘じゃなくても、パパはアタシのこと好き?」

「そりゃぁ、もちろんだよ。パパの娘なんだから。」

「じゃぁ、大学止めてもいいかしら?」

「な、なにを言いだすんだ? おかしな娘だなぁ。」

「止めたいのよ。お願い。」

「おいおい、何の冗談だ?」

「本当に止めたいのっ! 退学届ももう書いたわっ!」

「アスカっ! ふざけるのもいいかげんにしなさいっ!」

「そうよ。アスカちゃん。もうすぐ卒業じゃない。せっかくここまできたんだから。」

「そう・・・。」

「そうだよ。アスカ。もうちょっとがんばるんだ。パパも職場では鼻高々なんだからね。」

フンッ。所詮この程度なんだわっ!

アスカは、食事を適当に終わらせると、自分の部屋へと入る。その部屋には、高価な専
門書籍が並び、いかにもエリートを思わせる雰囲気が漂っている。

もう嫌っ!
別にやりたいことも無いのに、ただ勉強だけする毎日っ!
やりたいことすら見つけられない毎日っ!

ふと、机の上を見ると、研究目的で旅行に行くことになっていた日本への航空チケット
とパスポートが見えた。

来週の予定だったけど・・・。
ちょっと旅行気分で行っちゃおっかな。
気晴しくらいにはなるかもね。

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そして、アスカは予定を繰り上げて日本へと旅行へ行くことにした。

<第3新東京空港>

研究目的ということで、父親も母親も反対することなく、アスカは日本へと降り立った。
ネルフ本部があることで有名な日本だが、山に囲まれた小さな都市に少しがっかりする。

ここが、日本かぁ。ま、島国だからこんなもんかもね。
ネルフ本部ってどこにあるんだろう?
ま、いいわ。
しばらく時間の余裕もあるから、見物でもしよっかな。

空港から電車に乗ったアスカは、第3新東京市の中心部まで移動する。日本語も問題無
く話せるので特に不自由はなかった。

<繁華街>

さすがは、世界に誇る第3新東京市ねぇ。
中心部はドイツより活気ある感じねぇ。

始めて来る日本の街を、うろうろと歩き回り観光気分で見物して回るアスカ。今日は、
この近くのホテルにでも泊まって明日から京都,奈良など有名な観光名所へ行く予定。

あっ! UFOキャッチャーあるじゃない。
日本の戦利品をゲットしてやるかっ!

ドイツでも時間潰しにゲームセンターへ行くと、UFOキャッチャーに目が無かったア
スカである。

よしっ! 行けっ!

ガタン。

なんで落ちるのよーーーっ!
壊れてんじゃないの? これーーーっ!!

得意なUFOキャッチャーなのだが、バネが弱いのか何度やっても商品が取れない。頭
にきたアスカは、100円をどんどんつぎ込んでいった。

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<喫茶店>

ゲームセンターでしばらく遊んでいたアスカだったが、お腹も減ってきたので近くの喫
茶店でスパゲティーを食べる。

まったくぅ・・・。
2000円もつぎ込んでこれだけぇ?

UFOキャッチャーでの唯一の戦利品である猿の人形を、喫茶店のテーブルに置いて、
熱くなってつぎ込みすぎたことを後悔。

ん?

ふと、アスカが喫茶店の窓から外を見ると、向かいのビルの電子広告板にネルフの広告
が映し出されていた。

チルドレン募集?
へー。ネルフも人材不足してるのかしらねぇ。
なんか、エヴァとかいうのに乗るのよねぇ。
あんまり、興味ないなぁ。

「おまちどうさま。」

フォークでスパゲティーを弄びながら食べていると、注文しておいたチョコレートパフ
ェが運ばれてきた。

これよこれっ!
やっぱり、これがなくちゃねぇ。

スパゲティーなどそっちのけで、チョコレートパフェにかぶりつく。まさに、至福の時
という感じである。

「ちょっとっ! なによこれっ!」

「なにと言われましても・・・。」

アスカが座っていた席の少し向こうから、何か揉めている声が聞こえてきた。振り向く
と美人の女性と店員が揉めている。

「ぜっんぜん冷えてないじゃないのっ! 冷えてないビールなんて飲めないわよっ!」

「いや・・・その、申し訳ありません。」

「出しなおしてきてよっ!」

「はい・・・。」

どこにでもいるのよねぇ。
なんだかんだと難癖つける奴って。
だいたい、昼からビールなんか飲むなんて、大した奴じゃないわねぇ。

アスカはそれ以上興味無しと言う感じで、今最も興味があるチョコレートパフェに集中
するのだった。

<ホテル>

一通り街を見物したアスカは、16時になったので泊まる所を確保しようと近くにあっ
たシティーホテルへのチェックインをしていた。

「惣流様でいらっしゃいますね。」

「ええ。」

「では、こちらにもサインを。」

「はいはい。」

「では、ホテルの説明を致します。お食事は・・・。」

かったるそうに説明を聞くアスカ。ホテルなどいくつも泊まっているのだから、いちい
ち説明など聞かなくても、だいたいのことはわかる。

「それから、もし非常事態宣言が発令されましたら、シェルターは・・・。」

そんな説明を適当に聞き流して、アスカは部屋のキーを受け取ると自分の部屋へと入っ
て行った。

へー、結構いい部屋じゃない。
あーーっ! 疲れたぁ。

ベッドにどさっと横になってTVを付けてみるが、いまいち興味を引く様な番組はやっ
ていない。

さてと、荷物も置いたことだし、ぶらぶら散歩でも行ってみよっかな。

アスカはパスポートや金品など貴重品だけセカンドバッグに入れて、再び街へと出て行
った。

<繁華街>

どこに行こうかなぁ・・・。

ウーーーーーーーーーーーーーーーっ!

その時、警報が街全体に鳴り響く。それと同時に地面の中へビルは沈み、周りを歩いて
いた人々は潮が引く様に消えて行った。

なに?
なにが起こったの?

ウーーーーーーーーーーーーーーーっ!

けたたましく鳴り続けるサイレンの中、アスカはおろおろしながらぽつりと街の中に残
される。

あっ、非常事態宣言がどうとか、なんとか。
しまったーーーっ! ちゃんと聞いてなかったわ。

必死で走りながらシェルターを探し回るが、どこにもそんな物は見当たらない。シェル
ターがそんなすぐに見える場所にあるわけがない。

どうしよーーっ! もしかして、使徒ってのが来てるのっ!?
と、とにかく、物陰にでも隠れなくちゃっ!!

アスカは、急いで地下鉄の階段へと駆け込んで外を見る。

ゴーーーーーーーーーー。

何か物音がしたので、上を見上げると巨大な生き物がアスカの上空を飛んで行く所だっ
た。シャムシェル来襲である。

「ひーーっ!!」

あまりの恐さにろくに声も出ずガチガチと振るえるアスカ。

グオーーーーーーン。

反対側で大きな物音がした。兵装ビルが地下から突き出てきたのである。

なにあれ?
ビル? え? 何か出てくるの?

グォーーーーン。

そして、リフトオフされる零号機。

あ、あれが・・・エヴァンゲリオン・・・。
す、すごい・・・。

いつの間にか、アスカは恐怖の震えは止まり零号機に目を奪われていた。

ドガーーーーーーンっ!!

ぶつかり合う零号機とシャムシェル。激しい戦闘が始まる。

ゴクッ。

拳を握り締め、その戦闘を無我夢中で眺めるアスカ。

戦闘してる・・・。
戦ってる・・・。
人類の為・・・。

ドガーーーーーーンっ!!
ドガーーーーーーンっ!!

ATフィールドを中和しつつ、プログナイフで攻撃を続ける零号機。

か、かっこいい・・・。

アスカの心に、産まれて始めて感じる燃え滾る感情が芽生えた瞬間であった。

<ネルフ本部>

次の日、アスカはネルフ本部へと来ていた。

「あなたがチルドレン志願の娘ね。」

「はいっ!」

「うーん、アメリカ国籍なのね。」

「ダメでしょうか・・・。」

「ご両親のご許可は?」

「とってありますっ!」

「普通は、アメリカ支部で志願して貰う物なのよ。ちょっと、聞いてみるわね。」

突然現れたアスカの応対をしたマヤは、国籍がアメリカだったので対処に困り、ミサト
に連絡することにした。

「葛城一尉。チルドレン志願の娘が来ているんですが、アメリカ国籍なんです。いかが
  しましょうか?」

『おぉ! 人手不足で困ってたのよっ! 国籍なんてどうでもいいわ。とりあえずテスト
  してみて頂戴っ!』

「は、はい・・・。」

そこで通信は終わった。

「大丈夫なのかしら?」

「どうなんですか?」

「ま、まずはテストからね。」

「はいっ! ありがとうございますっ!」

「じゃ、手続きは向こうでやってきてね。未成年だからご両親のご許可もいるから。後
  はテスト次第ね。」

「え・・・。」

「どうしたの?」

「いえ。なんでもありません。」

「今まで、何人も志願者がきたけど、みんなテストで落ちてるのよぉ。がんばってね。」

「はいっ!」

マヤはそれだけ言い残すと、自分の職場へと帰って行った。

まずいわねぇ・・・パパにもママにも何も言ってないわよ。
いいわ。勝手に筆跡を真似てサインしちゃえっ!

<司令室>

昨日は身体検査などで1日潰れてしまい、今日がチルドレンの資格テストである。アス
カはどきどきわくわくで、ネルフ本部へとやってきた。

「わたしが作戦部長の葛城ミサトよん。よろしくねん。」

ゲッ! あの飲んだくれ・・・。

先日の喫茶店で文句を言ってたのが、まさかネルフの作戦部長だったとは夢にも思わな
かったアスカは、少し引いてしまう。

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく。」

「私、綾波レイ。」

「ワイは、鈴原トウジやっ!」

「わたし、霧島マナ。よろしくね。」

「俺は、相田ケンスケだ。よろしく。」

「わたし、洞木ヒカリよ。仲良くしましょ。」

「この子達が、うちの専属パイロットよ。あと2人チルドレンがいるけど、今ちょっと
  松代に行ってるから、また今度紹介するわ。」

「この前の戦闘で、エヴァンゲリオンに乗ってたのは誰なんですか?」

「あの時は、1体しか使徒が来なかったから、レイ1人で出てたわ。」

「じゃ、あなたが・・・。」

目を輝かせて、レイを見つめるアスカ。

「ええ。」

「えーーーーっ! ア、アタシ。アナタの戦闘を見て、ファンになっちゃたんですぅっ!!
  よろしくぅぅぅっ!」

「ファン?」

「そうなんです! キャーーーーっ! まさか、すぐにあのエヴァンゲリオンのパイロッ
  トに会えるなんて、夢の様だわぁぁぁっ!」

「そう。」

思わずレイの手を両手で握って、体中で喜びを表現するアスカ。逆にレイは、こんなこ
とをされたのは始めてなので、恥ずかしくて仕方がない。

「どんな厳つい奴が乗ってるのかと思ってたけど、まさかこんな可愛い人だったなんて
  ぇーーー。あーー、もう感激ぃぃぃぃぃ。」

「そ、そう・・・。」

「もう、そのクールな瞳が、かーーっこいーーですねぇ。。仲良くしてくださーーいっ!」

「え、ええ・・・。」

「アスカ? その前に、チルドレンになれるかどうかテストしてからね。」

あまりにもはしゃぎまくるアスカを前に、たじたじになっていたミサトだったが、冷や
汗を掻きつつアスカをテストルームへ導く。

「ア、アタシ頑張りますから、見てて下さいねっ!」

「え、ええ・・・。」

レイもたじたじになりながら、アスカの実験を見守ることになり、ハーモニクステスト
が開始された。

<エントリープラグ>

テスト生用のプラグスーツを着たアスカが、エントリープラグに入ると、LCLが一気
に流れ込んでくる。

『きゃーーーーっ! 水がーーーーっ!!』

「肺まで吸い込みなさいっ! 説明受けたでしょっ!」

『ごぼごぼごぼ・・・。なんだかきもちわるーーーい。』

「がまんなさいっ! じゃ、ハーモニクステスト開始するわよっ!」

『あのぉ・・・。』

「何?」

『レイさんいます?』

「いるわよ。」

『がんばりますから、見ていてくださいねっ!』

「ええ、見てるわ。」

アスカと話をしていると、照れくさくて顔が真っ赤になってくる。

「じゃ、アスカっ! いくわよっ! がんばりなさいっ!」

『はいっ!』

「シンクロスタートっ!」

通常、ここで数%でも上がればチルドレンの候補生として認められるのだが、ほとんど
の志願者は0%のままぴくりとも動かないのだ。

「ミ、ミサトっ!」

「どうしたの?」

リツコが驚いた表情で、ミサトを呼びつけた。

「これ、見てっ!」

「う、うそぉぉぉぉっ!」

アスカがシンクロを開始した途端、跳ね上げるシンクログラフ。

「いきなりのシンクロで25%????? 何かの間違いじゃないの?」

「いいえ、計器は正常よ。この娘・・・使えるわ。」

「これが、本当ならすごいわね・・・。レイに迫る勢いじゃない。」

チルドレンで、とある特別な2人を除いてレイのシンクロ率40%前後は、他のチルド
レンと倍以上の差を開けて高い。つまり、アスカはレイに次ぐシンクロ率を一発で叩き
出したことになる。

「この娘、他の支部に渡しちゃ駄目よ。今から、手を打ってっ! ミサトっ!」

「わかってるわよ。これで、チルドレン上位Best4は、うちが獲得ねっ!」

「アスカ? 聞こえる?」

『はい? テストはどうなの?』

「合格よっ! OKっ!」

『やったーーーーーっ!!! あ、あのレイさんいます?』

「ええ、いるわ。」

『あとで、サイン貰いに行ってもいいですか?』

「え、ええ・・・。」

もう、レイは恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だった。

<松代>

「どうだい? 初号機は?」

「量産機とは全然違うよ。400%までは出せそうだよ。」

「僕の四号機も、いい感じだよ。」

その頃、理論値を超えたシンクロ率を誇るエースパイロットと、シンクロ率を自由に操
れるパイロットが、新型エヴァンゲリオンのテストを行っていた。

全チルドレンが束になっても勝てないだろうと恐れられる、2強チルドレンである。

「これが終わったら、銭湯に行かないかい?」

「いいね。」

To Be Continued.
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