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ジェネレーション
Episode 01 -ぼくは神様?-
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<通学路>

いつもなら、クラスメートのトウジやケンスケと一緒に下校する通学路を、今日シンジ
は一人寂しく歩いていた。

みんなでゲームセンターに行こうと思ってたのになぁ。
仕方ないか。

トウジはできたばかりの彼女であるヒカリと買い物。ケンスケは自衛隊のセレモニーの
見物である。

他に仲の良い友達もいないしなぁ。

長年この街で暮すシンジだったが、トウジとケンスケ以外に友達と言える友達もできず
にいたので、2人に用事があるといつも1人になってしまう。

また、帰ってゲームでもしようかなぁ。

少し孤独感を感じながら家へ向かって歩いていたシンジは、ある交差点に差し掛かった
時、その歩みを止め青く点滅する信号の下で何かを考え始めた。

そういや、最近行ってなかったな。
どうなってるんだろう・・・。

唐突に何の因果も無く、頭に浮かんだのは小学校の頃によく寄り道していた河原の風景。
他にすることも無かったので、少し遠回りになるが寄って帰ることにした。

こういう所はあまり変わらないんだな。
小学校の頃と同じだ。

数年前のことだが、幼い頃遊んだ場所ということで、妙に懐かしく感じられる。シンジ
はその頃のことを思い出しながら、じっと河原を見ていた。

よく、あそこでトウジ達と泥遊びして帰って、母さんに怒られたっけ。

2,3年前の小学校時代を懐かしみながら、土手を川辺へ向かって駆け下りて行った。
昔遊んだ土管などもそのままだ。

あの土管、まだあるんだ。
土管だから、いつまでも どかん なんちゃって・・・ははは・・・。

つまらないことを1人で考え、1人で受けながら、その土管に小走りで近寄って行くシ
ンジ。

よくここに隠れたりしたっけ。
でも、すぐに見つかっちゃうんだよなぁ。

「ん?」

小学校低学年の頃、よく隠れんぼに使った土管の中を覗き込んでみると、なにやら青白
い光の玉の様なものが光っている。

「なんだ? あれ?」

なぜか、その光に対して吸い込まれる様な興味を持ったシンジは、ゆっくりと手を伸ば
していく。

「よいしょっ。」

地面にずっしりと立ててある土管の中へ身を乗り出して手を伸ばしてみるが、あと少し
のところでその光の玉には届かない。

「もう少しなのにな・・・。」

なぜ、その光にこれほど興味を持ったのかわからない。ただただ、むしょうにその玉に
触れてみたくて仕方無いのだ。

「うーーーん。」

しかし、いくらがんばっても届かないので、制服が汚れるのが気になったが、シンジは
土管の中に入ってみることにした。

「どっこらしょ。」

土管に入り、光の玉を触ってみようとしたが、どうやら物質ではなく触ることはできな
いらしい。光が宙にぽぉっと浮いているといった感じである。

「なんだろう? 人魂かなぁ?」

しばらく光の玉を見いたが、なんだかよくわからず、そろそろ見ていることにも飽きて
きたので、土管を出て家へ帰ろうとした時。




                        ピカッ!!!!!!!!!!!!




「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

突然その光の玉が、土管の中一面に広がる大きな光の空間へと変化し、シンジの身体を
包み込んだ。

「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

そして、シンジはどこかへ落ちていくような浮遊間を感じつつ、光の中へと吸い込まれ
て行った。

「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

                        :
                        :
                        :

<お屋敷>

ドサッ!!!

「むぎゅっ!」

ようやく光の世界から解放されたシンジは、真っ暗な重力を感じる空間の中へ落下した。
自分の身体の下に感じる柔らかい物が、「むぎゅっ」という音を出した気がする。

なんだろう?

視界が効かないので手探りで足元を探ってみると、とにかく柔らかくて暖かい感触が手
の平に伝わってくる。

ドッカーーーーーーーーーーーーーーーン。

「★+◎※∀●☆〆∞▼★+◎※∀●☆〆∞▼!!!!」

しかし次の瞬間、目の前に星が飛び散ったかと思うと、シンジの体は何かに思いっきり
殴り飛ばされていた。

「い、いったーーーっ!」

壁に頭をぶつけたシンジが目をパチパチと開けると、暗い部屋の中で蝋燭を持ってこち
らを睨んでいる少女が目の前に立っていた。

「わっ!!」

その少女を見たシンジは咄嗟に後ずさりしながら、身を堅くしてしまう。こともあろう
か、その少女は日本刀をシンジに向けて構えているのだ。

「ちょ、ちょっとーーーっ!」

「ハンッ! このアタシの部屋に忍び込むとは、いい度胸ねっ! どこの手の間者かしら
  ぁ!?」

「か、かんじゃ? ぼくは、病気なんかしてないよーっ! だから、そんなの振り回さな
  いでよーっ!」

「アンタバカぁ? 誰がその患者の話してんのよっ!」

「ちょ、ちょっとぉっ! 近寄らないでよっ! ぼくは何も悪いことしてないよぉっ!」

「人の屋敷に忍び込んでおいて、よく言うわねっ! さっさと、白状しなさいっ!」

その浴衣らしき物を着た少女は、じりじりと近づき日本刀をシンジの喉元に近づける。
恐怖のあまり、脂汗をだらだらと流すシンジ。

「だから、気が付いたらここに落ちてたんだってばっ!」

「そんな、見え透いた言い訳が通じるとでも思ってるの!?」

「本当だよーーーっ!」

「だいたい、ここは何処なのさっ! 君は誰なんだよっ!」

「ここは、尾張に決まってるでしょっ! アタシは、信長様に仕える武将アスカよっ!
  異国の武将なんて、珍しいから聞いたことくらいはあるでしょっ!」

「お、お、尾張ーーっ!? 終わりだ・・・じゃなくて・・・。信長様!? どうなって
  るんだっ????」

素っ頓狂な声を張り上げて、辺りをぐるぐると見回すシンジ。確かにテレビなどで良く
見る武家屋敷に見える。

ま、まさか、タイムスリップってやつ?
嘘だぁぁぁぁーーーっ!

「じょ、冗談だよね。ね。そんなの、冗談だよね。」

「冗談言ってるのは、アンタでしょうがっ! さっさと白状しないと、さらし首よっ!」

ぐいっと、日本刀の切っ先をシンジの喉元に押しやって、今にもぶった切らんばかりの
勢いで迫るアスカ。

「ちょ、ちょっと待って・・・だから、ぼくは、そ、その・・・未来から来たんだよ・
  ・・たぶん。」

「何わけのわかんないこと言ってんのよっ! 未来って何処の国よっ!」

「だ、だから、今の人達の子供の孫の、ずっと先の子孫が済む世界だよ。」

必死で言い訳するシンジだったが、その説明は更にアスカの神経を逆撫でしてしまった
様だ。

「ア、ア、アンタ・・・アタシをバカにしてるわけぇぇぇえええっ!」

「へっ?????」

「そんなわけのわかんないこと言って、言い逃れが通じるとでも思ってんのっ!?」

「ちがうよっ! きっと、君の子供のずっと子孫もっ・・・」

「な、なんですってーーーーっ! アタシは、生娘よっ! ざけたこと言ってんじゃない
  わよっ!」

「だ、だから、そうじゃなくて・・・。」

「即刻さらし首にしてくれるわっ!」

「わぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ! 助けてーーーーーーーーーーーっ!」

馬鹿にされていると思ったアスカは、目を吊り上げると、日本刀をブンッ!と大きく振
り被った。

「わーーーーーーーーーーーーーーっ!」

あたふたと、アスカが振りまわす日本刀に切っ先から逃げ惑うシンジ。命が掛かってい
るので、必死である。

ブンっ!

「ちょ、ちょっとっ! あ、あぶないっ!」

「観念しなさいっ!!!」

ブンっ!

「わーーーーーーーっ! やめてよーーーっ! 助けてーーーーっ!」

いくら逃げても、狭い部屋の中なのですぐに追い込まれてしまう。このままでは、殺さ
れると思ったシンジは、必死で打開策を考えた。

「じゃ、じゃぁ、これ見てよっ! これ見たらわかるからっ!」

「問答無用っ!」

「どうせ、ぼくは逃げれないんだから、ちょっと見てくれてもいいじゃないかっ!」

「わかったわよっ! じゃ、さっさと見せてみなさいよっ!」

シンジは、尻餅を付いたままの状態でずずずずっと後退りすると、カバンからいつも学
校で使っているノートPCを取り出して電源を入れた。

「なによっ! その箱っ!? 変な真似をしたら、ぶった切るわよっ!」

なにやら怪しげな箱が出てきたので、日本刀を振りかざして警戒するアスカ。いざとな
ったら、いつでも一刀両断できる構えである。

「だから、これを見たらぼくが未来から来たってのがわかるよ。きっと・・・。」

シンジは藁にもすがる気持ちで、歴史の教材にある戦国時代のイメージ動画をウインド
ウを開いて再生してみる。

『ヒヒーーーーーン』
『おーーーーーーっ! やーーーーーーっ! やーーーやーーーっ!!』

丁度映し出されたのは、NHKが作成している歴史教材の映像で、戦国時代の騎馬戦の
模様であった。

「!!!!!!!」

驚いたのはアスカである。目をまん丸にして、その動画を食い入る様に見つめる。

「ひ、ひ、人や、馬が・・・こんな箱の中に・・・。」

しばらくその動画を両目を見開いて見つめていたアスカだったが、はっと我に返るとギ
ョっとしてシンジの方に向き直った。確かにシンジは、アスカが見たこともない服装を
している。

「ア、アンタ・・・もしかして・・・。」

わなわなと指を振るわせながら、シンジに迫るアスカ。

「だから、未来から来たんだって。信じてくれた?」

「も、もしかして、アンタ・・・いえ、あなた様は、神様では・・・。」

「はぁ?」

「こ、これは、失礼しましたぁぁぁぁ。なにとぞ、お許しをっ! イエス様ぁぁ!
  デウス様ぁぁ! ははぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー。」

アスカは、片時も離さず胸にぶら下げている十字架を両手で持つと、シンジの前にひざ
まずいて、崇め奉り始めた。

「ちょ、ちょっとっ!」

日本刀の次は十字架かよぉ・・・。
なんなんだよぉ、この娘はぁ。

「もう、やめてよ。ぼくは神様なんかじゃないって。」

「なっ!」

シンジの言葉を聞いて、ガバッと顔を上げるアスカ。その視線には、先程と同じ様な殺
意に似た光が含まれている。

「わかってくれたかな?」

「ということは、アンタ悪魔ねっ! そうよっ! 悪魔だわっ! 人々を、この箱に閉じ
  込める悪魔ねっ!」

ビシッとシンジのことを指差すと、再び日本刀を持とうとするアスカ。

「ち、ちがーーーうっ! もう・・・神様でいいよ・・・。」

「や、やっぱり神様っ! 神様なんですねっ! ははぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー。」

アスカは日本刀を置くと、またしても十字架を両手で握りしめシンジの前にひざまづき
ながら、崇め奉り始めた。

・・・・・・・・・・・。
もう、なんでもいいよ・・・。
疲れたよ・・・。

「ははぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー。」

何度も何度もシンジの前に手をついて崇め奉るアスカを、シンジは困った顔で苦笑いを
浮かべながら見下ろしていた。

「たはははは・・・。」

もう自分が何であろうとどうでもいいから、ひとまず安全な神様ということにしておく
ことにした。また、明日にでも落ち着いたら説明すればいいだろうと・・・。

その横では、歴史の資料動画が流れ続けていた。

To Be Continued.
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