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パラレル
Episode 03 -絶体絶命-
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<シンジの家>

今日もアスカは、朝からシンジを起こしにやって来ていた。今日は休日なので、シンジ
と一緒に遊びに出掛けるつもりで、少しおめかし。

「シンジーーーーーっ!」

部屋に入ると、シンジはいつもの様にぐっすりと寝ていた。今日はネルフへ行くことも
ない様だ。万事順調である。

「こらぁぁぁっ! 起きろーーーーっ!」

「うーん・・・。もうちょっと寝かせてよぉ。」

「もう8時よっ! いつまで寝てるのよっ!」

「昨日、遅かったんだよぉ。」

「よーしっ! そういう態度に出るんなら、アタシも一緒に寝ちゃうんだから。」

そう言いながら、シンジの布団に潜り込むアスカ。

「わぁぁ、何してんだよ。」

「おじさんやおばさんが入って来たら、悲鳴上げてやるぅぅっ!」

「わ、わかったよっ! 起きるよっ。起きればいいんだろ。」

「へへーん。素直で宜しい。」

「もう・・・無茶苦茶だよ。」

「さぁ、さっさと着替えんのよっ。今日はお出掛けなんだからねっ。」

「駄目だよ。今日は昼からユニゾンの訓練があるんだ。」

「へ? ユニゾン?」

「それに、使徒が来てるのに、お出掛けなんてできないよ。」

「えっ? 使徒って、昨日撃退したんじゃなかったの?」

ヤシマ作戦以降、アスカは使徒が来ても決して変身しようとはしなかった。敵が大した
ことがなかったせいもあるが、なによりミサトになった自分に対するシンジの態度が怖
かった。

「ミサトさんがいたら、きっとやっつけれたんだろうけど・・・。失敗しちゃったんだ。」

「失敗って?」

「今は進行が止まってるけど、1週間後には再度進行を始めるって・・・。イスラフェ
  ルって言う使徒なんだ。」

「ふーん。で、ミサトさんって?」

「あっ。その・・・アスカには関係ないよ。もごもご。」

「ムッ!」

昔からシンジは、必ず自分が好きになったお姉さんのことはアスカに極力隠そうとする。
もう疑う余地はない。

「で、今日から訓練するわけ?」

「そうなんだ。だから・・・その。エヴァのパイロットがもう1人、うちに来るから・・・。
  アスカは、家に帰っててくれないかな?」

「どうしてよ。」

「あの・・・うちでやるんだ。」

「あっそ。なら、アタシも見てるわ。」

「だから、そのもう1人チルドレンが来るからさ。」

「ふーん。どんな子?」

「あ・・・その・・・。」

ニヤリと笑うアスカ。今まで同じチルドレンに同じ歳の女の子がいるなどと、シンジは
一言も言わなかったのだ。今更言い辛いのだろう。

「いいじゃん。その、お・と・こ・の子にアタシも挨拶しなくっちゃ。」

「いや・・・・だから・・・。その・・・。」

ここぞとばかりに、おもいっきりシンジを苛めてしまうアスカ。もうシンジはしどろも
どろだ。

「挨拶したら、帰るから邪魔しないわよ。」

「いや・・・だから・・・。その・・・。」

フンっ!
アタシに隠してた罰よーーーーだっ!
べーーーーーーーだっ!だっ!

「ねぇ、どんな子なのよ。その、お・と・こ・の子は。」

「それが・・・その・・・女の・・・子・・・なんだ。隣の学校の・・・。」

「えーーーーーーーーーーーーーーっ!
  うっそぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!
  そーーんな話、ぜーーーーーーーーーーーーんぜん
  聞いてないけどなーーーーーーーーーーーーーっ!」

あからさまに、思いっきり大袈裟に驚いて、極端にショックを受けた顔をするアスカ。

「だ、だから・・・その。ショートカットだから、最初、男の子かと思ってたんだ。」

じと〜〜っとシンジの顔をジト目で睨むアスカ。そんな言い訳があってたまるものか。

「あっ・・・いや・・・だから・・・その・・・。」

「ふーん。つまりその娘と仲良くしたいから、アタシみたいな女がいつまでもいちゃダ
  メだって言いたいわけね。」

「そんなこと言ってないだろっ!」

「ひっ、ひどーーーーい。わーーーーん。」

その場に崩れて、涙も出てない目に両手を当て、大げさに泣き真似をする。

「そ、そんなこと言ってないじゃないかっ!」

「もういいわよっ! シンジのバカぁぁぁっ!」

アスカはそのままシンジの部屋を飛び出して、自分の家へと帰って行く。その後、シン
ジは部屋の中で唖然と、立ち尽くすのだった。

<アスカの家>

「バーカ。いい薬よっ!」

家に戻って来たアスカは、自分の部屋の机の上でシャープペンシルを弄びながら、いろ
いろ考え事をしてた。

あのレイって娘はいいのよ。
さほど心配ないわ。

元来シンジは同級生を好きになったことがない。しかも、”綾波”と名字で呼んでいる。
まず心配はない。

問題は、マヤよねぇ。
まさに、シンジのタイプっ。
しかも、あの女までショタっぽい・・・。
危険だわっ!

今までシンジが好きになった若い女の先生は、当然小学生の教え子相手に本気になどな
ろうはずもない。しかし、あのマヤだけは危険くさいと、アスカの女のカンが告げる。

かといって、アタシが行くとねぇ。
もっと危険なのよねぇ。

アスカは胸にぶら下がる銀色の十字のペンダントを持ち上げ、目の前でぶらぶらさせな
がら悩み続ける。

あの時、アタシに向けたシンジの表情。
マヤとは比べ物にならないわ。
あーーもぅぅっ! あの”お姉さん好き”にも困ったもんだわっ!
もう、絶対にミサトになんかなってやるもんですかっ!

そんなこんなで、アスカがうだうだと考えていると、隣のシンジの家から音楽が流れて
きた。どうやらユニゾンの訓練というものが始まったらしい。

あのバカっ!
アタシが泣いて帰ったってのに、謝りにも来ないでっ!
所詮、幼馴染は幼馴染かぁ。

その間もひっきりなしに音楽が聞こえてくるので、どうしても隣の様子が気になって落
ち着かない。

ちょっとだけ、様子見に行こうかな。
邪魔しなきゃいいわよね。

我慢しきれなくなったアスカが、部屋を出て玄関に立った時、ポストに郵便物らしき物
が入っていた。

「あら? こんな時間に・・・?」

取り出してみると、ただのノートを雑に千切った紙で、そこにはシンジの汚い字が書か
れていた。

”ごめん”

たった一言。こういう所を見ると、父親に似てる所もあると思う時がある。

「ふぅ・・・。」

直接、言いに来なさいってのよっ!
まぁ、アイツにしちゃ、これでも上出来か。
しゃーない。許してやるか。

少し機嫌を直したアスカは、使徒が来ているので外出もできず、シンジも訓練で遊んで
くれないので、その日は読書をして時間を潰したのだった。

<シェルター>

イスラフェル撃退から数十日経ったある日。また使徒が来たということで、シンジはネ
ルフへ向かいアスカはシェルターへ避難していた。

また使徒かぁ。
最近勝利続きみたいだから、大丈夫でしょうけど・・・。
シンジ・・・無事でいてね。

シェルターの中でひたすらシンジの無事を祈り続けるアスカ。その時、突然アスカの携
帯電話が鳴った。

「はい・・・。」

『アスカ。』

沈んだシンジの声である。途端に不安になったアスカは、人目も気にせず冷や汗を掻い
て大声を出した。

「どうしたのよっ! 何かあったのっ!」

『今回の出撃・・・遺書を書けって言われた。絶体絶命だって・・・。』

「えっ!?」

『もしかしたら、お別れかもしれないけど・・・。』

「ちょっと待ちなさいよっ!」

『最後にアスカの声が聞きたくて・・・。』

「待ちなさいって言ってるでしょっ! どういうことよっ!」

『巨大な使徒がこっちに向かってるんだ。サハクィエルって言うんだ。第3新東京市ま
  で来る前に、輸送機から直接迎撃するって。生存確率0%って言われた。』

「なんですってーーーーっ!!!! 誰がそんな命令出したのよっ!!!!」

『リツコさんって言う作戦部長の人だよ。こないだ突然現れたミサトさんて人を探した
  らしいんだけど、諜報部員でも見つからないって・・・。』

当たり前よ。
いないんだもん。

『ごめん。もう行かなくちゃ・・・。』

「ちょっとっ! 待ってっ!!!」

プチっ。

「シンジっ!? シンジっ!! シンジーーーーっ!!!!!」

出撃体制に入らされたのだろう。携帯電話は切れてしまう。

シンジっ!
待ってなさいっ!

アスカはキッと目を吊り上げ立ち上がると、シェルターの入り口に向かって走り出す。

「何してんだっ! 使徒が来てるんだぞっ!」

シェルターの入り口を開け始めたので、他の避難していた人から苦情が出る。

「やかましいっ!」

バーーン。

シェルターの扉を勢い良く蹴り開けたアスカは、誰もいなくなった第3新東京市を、ネ
ルフへ向かって全力で走る。

シンジを殺させてたまるかっ!
助けてみせるんだからっ!
絶体絶命なんてあってたまるもんですかっ!

無人と化した第3新東京市を駆け抜けるアスカ。公園の向こうにネルフ本部の姿が見え
て来る。

公園の花畑をネルフ本部目掛けて駆け抜けて行く。

「行くわよっ! アスカっ!」

首から掛けられている銀色の十字架のペンダントを取ると、ポムッという音をたててミ
ンキーステッキに形を変えた。

「ピピルマピピルマプリリンパっ!」

花が舞い上がる。

「パパレホパパレホドリミンパっ!」

走るアスカの背が伸びる。

髪が紺にも見える黒髪に染まっていく。

ミサトは花を舞わせながら公園をネルフ本部へ走り抜けて行った。

<発令所>

丁度その頃、輸送機に搭載されたシンジとレイが、発進の準備をしているところだった。

「シンジくん。いいわね。出撃するわよ。」

『はい。』

輸送機のエンジンに火が入る。そして、いよいよ発進という時。

カシューーーっ!

発令所の扉のエアが抜けると共に、葛城ミサトの姿が現れた。

「出撃を停止しなさいっ!」

周りのインジケータを確認しながら、カツカツと発令所の中を中央に歩いて来る。

「あなたはっ!」

リツコを始めとして、驚きの声を上げる上げるネルフスタッフ達。

「出撃を直ぐ止めさせなさいっ! 急いでっ!」

ミサトの言葉を聞いたゲンドウは、いつもの体勢でサングラスを光らせ重い口を開く。

「他に方法があるのか。」

「あるわっ。使徒をここまで誘き寄せるわっ!」

「そんなことしたら、ここ目掛けて落下してくるじゃないっ!」

リツコが口を挟む。

「向こうから来てくれるのに、こっちから行く必要なんかないわっ。」

「馬鹿な・・・。」

「今の馬鹿げた作戦よりずっとマシよっ!」

自分の提案を馬鹿げたとまで言われて、唇を噛むリツコ。

「じゃぁ、どうするつもりっ!? よりベターな方法があるわけ?」

「あるわっ! わたしには、絶対絶命なんてあり得ないっ!」

「聞こうじゃない。」

「手でっ!」

手の平を開いて見せ、それをぎゅっと握る。

「受け止めんのよっ!」

「なっ、なに馬鹿なことをっ!」

しかし、その作戦案をマギに入力したマヤから声が上がる。

「勝算、0.00001%ですっ! ゼロじゃなくなりましたっ!」

「それじゃ、ゼロも同じよっ。」

最初の出会いといい、加持のことといい、更に今のこともありリツコはミサトのことを、
良く思っていなかった。

「エヴァの配置によっては、さらに確率が変動します。」

「まぁいいわ。で、エヴァを何処に配置するつもり?」

「ここと、ここよっ!」

「根拠は?」

「オンナの。カン。」

「なっ! なに馬鹿なことをっ!」

しかし、リツコの言葉を遮る様にゲンドウが口を開く。

「やりたまえ。」

「はっ!」

「これで勝てたら奇跡だわ。」

「奇跡ってのは、起こしてこそ、始めて価値が出るものよ。」

こうして、ヤシマ作戦に次ぐ葛城ミサトの2つ目の奇跡が幕を開けようとしていた。

<初号機エントリープラグ>

「初号機,零号機。ケージに戻りしました。」

「回線開いて。」

通信回線を開くと、一旦出撃の準備を受けたにも関わらず、またケージに戻され何が起
こっているのかわからず、不安な顔をしているシンジの姿があった。

「シンジくん?」

『あっ! ミサトさんっ!』

通信回線を開きミサトがシンジに呼び掛けると、シンジは急に笑顔を取り戻し明るい声
を出してきた。

もうっ!
名前で呼ぶのやめなさいよねっ!
だいたい、その嬉しそうな声は何なのよっ!

「作戦を変更するわっ!」

その後、ミサトはシンジとレイに新しい作戦の内容を説明する。

「どっかの馬鹿が立てた、生還確率0%の馬鹿げた馬鹿な馬鹿っぽい作戦じゃないわ。
  わたしを信じて。」

『はいっ!』

その横でリツコが額に青筋を浮かべているが、無視して話を進めるミサト。

「終わったら、ご飯食べに連れてってあげるから、がんばってね。」

『えっ! ミサトさんとですかっ! 嬉しいなぁっ!』

し、しまったぁぁぁぁっ!
つい、余計なこと言っちゃった・・・。
あーーーっ! 今のなしーーー。
ってわけにいかないわよねぇ・・・。
とほほほ・・・。

「それはそうと、伊吹さんっ。」

「はい?」

「作戦に支障が出るから、今後シンジくんに近寄らない様にしなさい。」

「はぁ・・・。???」

意味不明な指示はともかく、こうしてサハクィエルを手で受け止めるという途方も無い
作戦が始まった。

「使徒確認っ!」

日向からの報告が入る。

「MAGIが距離1万までは誘導します。その後は、各自の判断で行動して。では、作
  戦開始。」

「はいっ!」

使徒落下開始。

視線をカウンタに向けながら、マイクに向かって口を近づけるミサト。

シンジっ!
大丈夫。がんばって・・・。

カウンターがカウントダウンしていく。5,4,3,2,1,0!

「スタートっ!」

シンジとレイが肉眼で確認しながら、使徒の落下地点へと全力疾走して行く。特にシン
ジのエヴァが極端に速い。

モニタには、必死でエヴァを駆るシンジとレイのエントリープラグ内の姿が映し出され
る。ミサトの視線は、初号機のエントリープラグに釘付け。

キャーーーー。
シンジぃ! かっこいいっ!
この映像欲しいなぁ・・・。
あっと・・・そんなこと言ってる場合じゃないわ。

土砂崩れを起こしかけていた顔を、改めて引き締めなおし計器類に目を向ける。しかし、
ここまで来てはもう自分には何をすることができず、ただシンジ達の見守るだけ。

『ATフィールド全開っ!!!!』

シンジの叫び声が通信回線から聞こえてくる。

サハクィエル接触。

地面にめり込む初号機。

『ATフィールド全開っ!!!!』

少し遅れてレイの声。

『綾波っ! 今だっ!』

シンジが開けた使徒のATフィールドの隙間から、レイがプログナイフでコアを直撃。

ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

作戦終了。

使徒殲滅。

損害。初号機の小破のみ。

パイロット無傷無事帰還。

一時全てを諦めていたネルフ職員は、一斉にミサトへ賞賛の拍手を送る。

そんな中、ミサトの頭の中は全然違うことを考えていた。

もうシンジったらぁ。
『ATフィールド全開っ!』って、格好いいんだからぁん。
あそこの映像、後で貰おっと。

<休憩室>

作戦終了後、ミサトが休憩室で大好きなミルクセーキを飲んでいると、この間会った加
持が近寄って来た。

「やぁ、また会ったね。」

「また、彼女に怒られるわよん。」

「そうかな。俺は君の方が魅力的だけどな。」

相変わらず軽い男ねぇ。

「残念でした。わたし、軽い男に興味無いの。」

「そうかな? 本気でそう言ってるとも思えないが・・・。」

そう言いながら、ミサトに加持が詰め寄っている所へ、休憩室の外をリツコが通り掛か
った。

「コホン。」

技とらしく堰払いするミサト。その音に気づいたリツコが振り返る。

「加持くんっ!」

「あっ! リっちゃん。これは・・・。」

「ちょっと、用事があるわ。来て頂戴。」

「あっ、だからだな。イテテテテテ。」

今日も耳を引っぱられて連れて行かれる加持を見ながら、ミサトは再び腰を降ろして大
好きなミルクセーキを飲むのだった。

<ラーメン屋>

その日の夜。ミサトはシンジとレイと一緒にラーメン屋へと来ていた。レイのリクエス
トである。

「わぁ、ミサトさんと一緒にご飯が食べれるなんて、嬉しいなぁ。」

しっかりとミサトの横に座って嬉しそうに喋りながらご飯を食べるシンジ。ミサトはそ
んな様子を複雑な心境で見ていた。

アタシとご飯食べてる時もそんな顔しなさいよねっ!
まったく、倍以上も歳の離れたこんな女の何処がいいわけ?
いい加減、そのお姉さん好きなんとかなんないのかしらっ?

「ミサトさんって、何処に住んでるんですか?」

「コンフォート17マンションよ。」

「えっ? あはは、それはぼくのマンションですよ。」

「フフフ。そうね。ところで、そこにアスカちゃんって可愛い娘いるでしょ?」

「え? アスカのこと知ってるんですか?」

「だって、可愛いって有名だから。」

「そうかなぁ。」

ムッカーーーーーーーーッ!
明日おしおきぃーーっ! 絶対おしおきーーっ!

「シンジくん見る目ないわね。とっても可愛い娘よ?」

「そんなことないですよ。ミサトさんの方がずっと美人ですよ。」

アタシには、美人なんてひとっことも言ったことない癖にっ!
明日、アタシのことを10000回『可愛い』って言わせてやるっ!

「アスカちゃんにはかなわないけどなぁ。」

「あぁ、あんなの駄目ですよ。」

コロスっ!

「あれ?」

その時、シンジがミサトの胸を見て不思議そうな顔をした。

何処見てんのよっ!
やらしいわねっ!
そんなに見たいんなら、アタシのを見せてあげるわよっ!

「その・・・ペンダント。」

「えっ?」

「アスカも同じのを・・・。」

「えっ? あ、あぁ、似た奴じゃないかしら? 最近クロスのペンダント流行ってるから。」

「そうかなぁ。そっくりだけど・・。」

「ははは。あっ、もう食べ終わった? レイもいいわね?」

「はい。」

コイツ・・・。
鈍感な癖に、たまに変なとこで敏感なのよね。

レイにも確認し、財布を持って立ち上がるミサト。これ以上怪しまれるとやっかいだ。

「おうきに、2400円です。」

「はい。」

うぅぅぅ。
アタシのこずかいが・・・。
なんで、アタシがおごんのよ。
明日、シンジにパフェ10個おごらせてやるぅぅっ!

その後、シンジとレイを電車に乗せたミサトは、少し時間をずらして駅のホームへと入
って行った。

「ん?」

その時、駅のホームに設置された鏡に黒服の男達の姿がちらっと映る。

ネルフの諜報部員。
加持って男の仕業ね。
まったく・・・。

ミサトはそのまま何気無く女性用トイレへと入って行く。案の定、男達はトイレの入り
口を見張っている様だ。

タッタッタッタッタ。

それから数秒して、そのトイレから飛び出していくアスカ。男達は、まだトイレの方を
監視し続けている。

「アタシに絶体絶命なんてあり得ないって言ったでしょっ!」

あっかんべーをしながら、勝ち誇った様にホームへ上がって行くアスカ。

「ばーーーーか。」


















<アスカの家>

「こんな夜遅くまで何処行ってたのっ! そこに座りなさいっ!」

「はーい。」

「『はい』ですっ!」

「はいっ!」



アスカ絶体絶命。



To Be Continued.
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