------------------------------------------------------------------------------
結婚
Episode 05 -式場探し-
------------------------------------------------------------------------------

<第3新東京市内のレストラン>

ドイツから帰って1週間が経った。今日はアスカの両親が来日すると打ち合わせした日。
碇家に挨拶に来るのだ。

それなりの身嗜みを整え、レストランの前で待つシンジとアスカの前に現れたのは、ス
ーツ姿をビシっと決めたアスカの両親。

「長旅、ご苦労様でした。どうぞ。」

「パパもママも早く。こっちよ。」

アスカの両親をレストランの中へと招き入れ、予約しておいた席に案内する。始めてド
イツで会った時と比べると、シンジも少しは打ち解けて話せる様になっていた。

「父さん遅いなぁ。何してんだよ。」

「まだ、5分前じゃない。」

「そうだけど・・・。すみません。もう来ると思いますから。」

時計を気にしながら、先に来たアスカの両親に謝るシンジ。

「気にしなくていい。ネルフの司令をされておられるんだろう? お忙しいのは、仕方
  が・・・・・うっ。」

対面に座っていたアスカの父親の顔が、突然引き攣り青くなっていく。何ごとかと振り
返ると。

「待たせたな。シンジ。」

「うわっ! と、と、父さんっ! なんだよそれっ!!!」

そこには、黒服の諜報部員を周りにズラリと並べ、紋付き袴を着たゲンドウの姿があっ
た。

「席は何処だ。シンジ。」

「席はそこだけどっ! その格好はなんなんだよっ!」

「日本の礼服だ。」

「レストランでするって言ったのに・・・。すみません。すみません。」

泣きそうになりながら、アスカの両親に平謝りする。レストランと言えばわかると思っ
ていたのだが、ちゃんと服装も指定しておけば良かったと後悔してもしきれない。

シンジはともかく、さすがにアスカはそんなことは言えず、自分の両親の対面の椅子を
引いてゲンドウに座って貰う。

「お初にお目にかかります。惣流です。」

「うむ。」

「あ、あの・・・。ふつつかな娘ですが、これから宜しくお願いします。」

「うむ。」

父さ〜ん・・・。
『うむ』じゃないだろう。『うむ』じゃぁ。
もうちょっと愛想良くしてよぉ。

ゲンドウが椅子に座ったのを見たアスカの父親が丁寧に挨拶をするが、ゲンドウはいつ
ものポーズで睨み付けている。引いてしまう、アスカの父親。

時間になり、ウェイトレスがワゴンを押して来た。どうやらお酒を持って来た様だ。も
ちろんシンジとアスカは、今日はジュース。

「ワインとビールを御用意させて頂きました。どちらになさいますか?」

「では、わたしはワインを。母さんもそれでいいな。」
「はい。」

「畏まりました。」

赤ワインの銘柄を説明した後、アスカの両親の前に置かれたグラスに注いだウェイトレ
スは、続いてゲンドウの方へ向き直り。

「ワインとビールどちらになさいますか?」

「好きにしろ。」

「は?」

「父さん。ビールか、ワイン選ぶんだよ。」

「問題無い。」

「問題あるから言ってんだよっ!」

「うむ。」

父さーん・・・。
『うむ』じゃないだろぉぉ〜。

困った顔をするウェイトレス。その横でシンジは、何と言えば良いのか困りはてて頭を
抱え込んでしまう。そこへ、アスカが笑顔で口を挟む。

「あの、お義父さん? ワインかビール、どちらがいいですか?」

「うむ。ワインでいい。」

「ワインですね。すみません。ワインをお願いします。」

「はい。畏まりました。」

ようやく注文が取れて、引き返して行くウェイトレス。シンジはブスっとしながら、ゲ
ンドウを見上げた。

なんで、ぼくの言うことは全然聞いてくれないんだよ・・・。
アスカの言うことなら聞く癖に。

そうこうしているうちに前菜に続き、メインディッシュのステーキが運ばれて来る。シ
ンジ達にしてみれば、かなり奮発した料理だ。

「碇さんは、立派なご子息をお持ちで羨ましいです。」
「うちなんか、女の子ですから頼りなくて。」

食事の最中も、適度に会話を弾ませるアスカの両親。

「くだらん息子だ。」

ひ、ひどい・・・。
それ、謙遜じゃなくて本気だろぉ。

「アスカちゃん。式の日取りは決まった?」

「それがまだなのよ。いろいろ忙しくって。明日から探しに行くの。」

「ほほほ。この通り何をするのも遅い娘で・・・。これからご迷惑をお掛けします。」

「シンジ、なぜお前が探さん。」

「ぼくも探すよ。」

「探すなら、早くしろ。」

「わかってるよっ。」

「フッ、くだらん奴め。」

なんで、そーなるんだよっ!!!

ブスっとするシンジ。

「碇さんは娘との同居は、考えておられるんでしょうか?」

「いや。」

「そうですね。その方がお互い気楽ですし。」

ゲンドウとアスカが同居しないことを知り、アスカの両親は少しほっとしている様だ。

「シンジの寝る部屋など無い。」

「・・・・・・。」

ぼくの話なんか、何処にも出てないじゃないかっ!

こうして、無事に顔合わせも終わった。ただシンジだけは、結婚式にゲンドウを呼ぶの
がだんだんと嫌になってきていた。

<加持の家>

シンジとアスカは、ミサトと一緒に加持の家へと来ていた。そろそろ仲人を決めてしま
わないと、式の時に困る。

「加持ぃ、いい加減引き受けてあげなさいよ。」

「やっぱり、他にはいないのか?」

「かーーじーーっ。」

何度もシンジとアスカがお願いしているのに、渋りつづける加持をミサトが叱咤する。
余程面倒臭いのか、仲人が嫌なのだろう。

「ねぇ、加持さーん。加持さんしか、アタシ達にはいないのよ。」

「うーん。副司令の方が適任だと思うが?」

「駄目よ加持。副司令は。」

「いいじゃないか。結婚されてなくても。」

「副司令には、わたし達の仲人を頼んだからよ。」

「なにぃ? 葛城っ!」

加持の顔が真っ青になる。いつの間にかミサトが裏で話を進めている様なのだ。しかも、
副司令が仲人となると誤魔化しきれなくなる。

「快く引き受けて下さったわ。」

「おいおい〜。」

じりじりと追い詰められて行く加持。もうここらが年貢の納め時なのだろうが、まだ足
掻くつもりでいるらしい。

「ただ、シンちゃん達の仲人の話があるから、式は少し遅れるって話してあるわ。」

「そ、そうさ。シンジくんの仲人があるから、そんなに早く話は進まないさ。」

「じゃっ! 加持さん。ぼく達の仲人を引き受けて貰えるんですかっ?」

「おうっ、勿論じゃないか。シンジくんの頼みだ。断れるものか。」

「ありがとうございます。」

「良かったわねシンちゃん。」

「はいっ!」

「加持さーん。ありがとーー。」

アスカも笑顔で加持にお礼を言う。これで加持とミサトが仲人に付き、先送りになって
いた問題も解決した。

「あんた達、式場はまだなんでしょ?」

「早速これから見に行きます。」

「今から?」

「はい。」

「かーじー。」

「今度は、なんだ?」

「わたし達も、一緒に見に行きましょ?」

「おいおい。これから、仕事なんだが・・・。」

「あら? 今日は非番のはずでしょ?」

「いや・・・だから・・・。」

「さっさと来なさいよ。」

「・・・・・・。」

加持がシンジの方をちらりと見ると、アスカと手を取り合って幸せ一杯という感じで、
嬉しそうにしている。

シンジくん・・・。
後5年もすれば、今の俺の気持ちがわかるさ。
女は可愛いが、恐くもあるのさ・・・。

自分の尺度でシンジのことを見つつ、心で涙を流しながら出掛ける準備を整え始める加
持であった。

<ウェディングパレス第3東京>

シンジの車に乗って、4人は最初の結婚式場に訪れていた。ここは、比較的安いパック
を用意しているということで、かねてからアスカが目をつけていた所だ。

「あっ、シンジ見てっ! 花嫁さんよっ!」

「ほんとだ。」

シンジが駐車場に車を止め建物の中へ入ると、目の前を30歳前後の女性がウェディン
グドレスを着て2人の前を通り過ぎて行く。

「綺麗ねぇー。」

「へぇ、アスカもあんなドレスを着るんだ。」

「あれは、ちょっと豪華だけどね。」

「そうなの?」

「飾りとかいっぱい付いてるじゃない。きっと、レンタルだけでも2,30万くらいな
  んじゃない?」

「そんなにするの?」

「たぶんねぇ。最近、ウェディングドレスのカタログばっかり見てるから、だいたい合
  ってると思うわ。」

通り過ぎて行く花嫁さんに見とれるアスカに、ミサトが近寄って来る。

「アスカぁ? まずは、ウェディングドレス見せて貰ったらぁ?」

「うん。そうするぅ!!」

「じゃ、シンちゃんも行きましょ。」

「はい。」

やはり気に入ったウェディングドレスがあるかどうかが、式場選びの大きなポイントと
なるのだろう。アスカは目を輝かせて、ウェディングドレスを見に行く。

「わーーーー、いっぱいあるぅ。」

「ねぇ、アスカ。これなんかいいんじゃない?」

先程の花嫁さんの印象が残るシンジは、その女性が着ていた物と良く似たウェディング
ドレスを指差した。

「アンタねぇ、25万もするじゃないっ。」

「えっ? ほんとだ・・・。でも、これくらい奮発しても・・・。」

「アンタのモーニングも借りなきゃいけないのよ。バカ言ってんじゃないわよ。」

「でも・・・。」

「あ、これこれ。こんなのいいんじゃない?」

「あらぁ、いい感じじゃない。」

うだうだ言っているシンジを無視して、アスカはミサトとウェディングドレスを選び始
める。そして最初に手にしたのは、飾りは少ないものの形がかわいい純白のウェディン
グドレス。

「こっちのも、いいんじゃない?」

「あ、それもいいっ!」

今度は、ミサトが1つのドレスを指差す。こちらも純白のウェディングドレスで、値段
の割には飾り付けが多い。

「あ、これもかわいいぃっ!」

「こんなのも、アスカに似合いそうよ。」

「ねぇねぇ、ミサトぉ。こっち来てぇぇぇ。」

「赤も、栄えるわねぇ。」

「キャーーー。ミサト、ミサトぉ。これ素敵ぃ。」

男には口が挟めないモードに突入するアスカとミサト。シンジと加持は、その雰囲気の
中に入ることができず、部屋の隅に置かれているチェアに腰を下ろした。

「アスカ、あぁなると長いんですよ・・・。」

「女性は皆同じさ。長い・・・。」

「水着1つ選ぶのに、毎年3時間は水着売り場で付き合わされます。」

「どうだ、シンジくん。コーヒーでも飲みに行かないか? 奢ってやるぞ。」

「ありがとうございます。」

加持の誘いに乗り、こともあろうかウェディングドレス選びの最中にシンジは、喫茶店
に行ってしまった。

<シンジの車>

「だ、だからっ! 時間が掛かると思ったからっ!」

「アンタは、アタシのことなんて、どーでもいいんでしょーっ!!!!」

「ち、違うよっ! 加持さんが、コーヒーでもって言うからぁ。」

「人のせいにするなんて、さいっていねっ!」

あれから、シンジがコーヒーを飲み終わって帰って来ると、超お冠のアスカが角を生や
して待っていた。

その後はドレス選びどころじゃなくなり、アスカはそそくさと式場を出てしまい、今は
車の中。

「あんたが、シンジくんを誘うからいけないんでしょっ!」

「しかしなぁ。時間が掛かりそうだったじゃないか。」

「アスカは、シンジくんと選びたかったのよ。それくらいわかるでしょ。」

「悪かった。もう、勘弁してくれ。」

後部座席では加持がミサトに叱られており、運転するシンジは更にきついお叱りを受け
続けている。

「アタシのウェディングドレスが見たくないなら、はっきりそう言いなさいよっ!」

「誰もそんなこと言ってないだろう・・・。」

「見たくないとしか思えないじゃないっ! ウェディングドレス選んでる時に、コーヒ
  ーなんか飲んじゃってさっ!」

「だから、ごめんって言ってるじゃないかぁ。」

「もう、ウェディングドレスなんか着ないっ!」

そんなわけないだろうぉ。
もう、許してよぉ。
どっちみち、着ることになるんだからさぁ。

アスカがつむじを曲げると、思ってもないことでも自分が困ることならなんでも言って
くる。変に心の内がわかってしまうだけに、心配が無い分、鬱陶しくなる・・・が、そ
んなこと絶対に口には出せない。

「ねぇ、もう1度選びに行こうよぉ。今度はちゃんと一緒に見るからさ。」

「もうっ! シンジとは見なーーーいっ!」

「ぼくも、早くアスカのウェディングドレス見たいしさぁ。」

「ウソばっかりっ!」

「絶対、アスカが1番ウェディングドレス似合うんだからさ。見せてよ。」

「フンっ!」

信号待ちでちらりとアスカのことを見ると、口元が少し嬉しそうに緩んでいるが、それ
でも必死で膨れっ面をしている顔が見える。

はぁ〜。
どうしようかなぁ・・・。

あまり説得に時間を掛けると、どんどん車は走り式場から離れて行ってしまう。どうせ
もう1度選びに戻ることになるのはわかっているのだから、早めに機嫌を直して欲しい。

「とにかく、1度戻るよ?」

「勝手に戻らないでよっ! アタシ、車から出ないわよっ!」

「アスカぁ〜。」

もうぉぉ。
そんなこと、言いながらこのまま帰っても怒るくせにぃ。
いい加減、機嫌直してよぉ〜。

そんな2人を見ていた加持は、自分にも責任があるので、なんとかこのいざこざを納め
様と口を挟んで来る。

「俺も悪かったな。そうだ、今すぐ戻ったらドレス代3万奢ろうじゃないか。」

「えっ!?」

思わず振り返るアスカ。3万は大きい。

「どうだ? 戻ってみないか?」

「まぁ、加持さんが、そう言うなら仕方ないわねぇ。」

口実ができたので、アスカも機嫌を直しやすくなった様だ。

「よし。じゃ、シンジくん。戻ってくれ。」

「加持さん、すみません。」

加持のお陰でなんとかこの場も納まり、シンジは車をユーターンさせて再び式場へと戻
って行った。

                        :
                        :
                        :

勿論、今度はシンジもアスカと一緒にウェディングドレス選びをする。今度怒らせたら、
間違いなく明日迄ご機嫌取りをしなければならないだろう。

なぜ、明日迄か・・・。アスカは一晩寝ると、翌朝には怒っていることを忘れてしまう
からだ。

「これなら、高くないし可愛いよ?」

「そうでしょ? さっきアタシが見てたら、ミサトもそう言ってたわ。」

「うん。これが、第1候補だね。」

加持の3万は大きかった。3万上乗せがあると、選択の幅がかなり広がる。

「ねぇ、だいたい決まった?」

先程のこともあったので、今回のドレス選びはシンジに任せ自分の分を見ていたミサト
が近付いて来る。

「そうねぇ。これとこれとぉ、それからあっちのやつかなぁ。」

「着せて貰ったら?」

「まだ、ここに決めたってわけじゃないのに?」

「着るくらい大丈夫よ。」

「うんっ! じゃ、着てみるっ!」

そして、ミサトが式場の人と交渉し、少し着せて貰うことになった。着替えの間、シン
ジは加持とモーニングを見に行く。

「えぇ、モーニングはこちらにありますが・・・サイズが・・・。」

式場の人が、シンジの背を見て合うサイズを探すのに苦労している。どうやら、あまり
選択の余地は無い様だ。

「まぁ、男性はおまけですから、どれでもいいと思いますが・・・。」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

サイズがあまり無い言い訳か、何気なく式場の人が言った言葉に、やっぱりなと思いつ
つもシンジと加持は、なんとなくうな垂れてしまう。

「1番、安いのでいいです。」

「そうですね。男性は、誰も見ませんから。それでいいかと・・・。」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

男はおまけだと思ってたけど・・・。
そこまで言わなくてもいいじゃないか。
式場の人だろぉ?

なんとなく選ぶ気もなくなって来たが、選ばないわけにもいかないので、とにかく適当
に安いのを見て行った。

シンジのモーニング選びは、すぐに決まった。選ぶ物が限られていたこともあったが、
”おまけ”と聞いてやる気がなくなり、1番安いのでいいやとなったのだ。

「シンちゃーん。」

そこへ、ミサトの声が聞こえて来る。

「はーい。」

「ちょっと、来てごらんなさい。」

「わかりました。」

ミサトに呼ばれたので、式場の人に軽く挨拶をすると、加持と一緒にアスカの元へと移
動する。

「・・・・・・。」

「おぉ、これはこれは。」

「・・・・・・。」

「どうかな?」

「・・・・・・。」

「あの・・・、どうかな?」

「・・・・・・。」

「シンジっ! なんとか言いなさいよっ!」

「い、いいね。」

「むっ! それだけっ!?」

「あ、あの・・・。」

そこには、純白のウェディングドレスを纏い、自分の方を見て立っているアスカの姿が
あった。

足元まで真っ白な長いAラインのスカートに覆われ、レースで作られた胸から白いアス
カの顔が見える。胸の部分には花の飾りが散りばめられておりアスカのスタイルを引き
立てる。ベールにも同じ模様があしらわれ、ガーターベルトは、サムシング・ブルーの
青い物。首にはパールのネックレス。本番でネックレスは、誰かに借りるか新調したい。
いわゆる、サムシング・ニューか、サムシング・オールド、サムシング・バローという
やつだ。

「・・・・・・。」

ぼーっと、アスカを眺める。

最初、この式場へ来た時に見た花嫁さんが来ていたドレスと比べると、飾り付けも少な
くシンプルなウェディングドレス。

それでも、何百倍にも綺麗に見えてしまうのは、欲目というものだろうか。

「アスカぁ? シンちゃん、見てみなさいよ。」

「むっ?」

改めてシンジを見ると、だらしなくもぼけーっと自分のことを見詰めているシンジの顔
が、その瞳に飛び込んで来る。

「なに、ボケボケっとしてんのよっ!」

「綺麗だ・・・。」

ドカンと音を立てて、真っ赤になるアスカ。

「バ、バカ・・・。」

そんな初々しい2人を、ミサトや加持は勿論のこと、式場の人も微笑ながら見ているの
だった。

<ミサトのマンション>

あの後、幾つかのウェディングドレスや打掛も見たが、やはり最初に見たドレスが1番
印象的だった。

「本当に、あそこに決めちゃっていいの?」

「うん。いろいろして貰ったしね。どこでも似た様なもんでしょ?」

「まぁねぇ。アスカがいいならいいけど。」

「交通の便もいいしね。なんかシンジがさぁ、最初のドレスを気に入っちゃって。」

「じゃ、日取りとか予算とか決めたら、手続きに今度行きましょ。」

「うん。」

「でさぁ、シンちゃーん。ちょっと来て。」

「あ、はい。」

ウェディングドレスのカタログを見て、ぼーっとしていたシンジが呼ばれて寄って来る。
余程、アスカのウェディングドレス姿が良かったのだろう。

「なんですか?」

「これなんだけどさ。買ってきてみたんだけど。」

ミサトが出してきたのは、賃貸住宅の情報誌だった。

「そろそろ、新居も決めないといけないでしょ?」

「家かぁ・・・。」

1つ決めると、また次のことが待っている。浮かれてばかりはいられないが、遅れ遅れ
になっていた式場がようやく決まった。既に時は、10月。大学入学の頃には、2人は
結ばれていることだろう。

<学校>

翌日、シンジは担任の先生に職員室へ呼び出されていた。

「最近、いろいろな先生から、碇の成績が落ち気味だと聞いてるぞ。」

「はい・・・。」

「志望校に行けなくなったらどうする。」

「はい。」

「後少しなんだ。頑張れよ。」

近頃、結婚のことで忙しかったので、中間テストでシンジの成績はがた落ちしてしまっ
た。その上、この間行われた実力テストも100番程順位を落としてしまったのだ。

はぁ・・・。
受験生なんだよなぁ。ぼく・・・。

シンジの苦労はまだまだ続く。

To Be Continued.
作者"ターム"へのメール/小説の感想はこちら。
tarm@mail1.big.or.jp
inserted by FC2 system