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コンフォート17
Episode 02 -あ〜ん-
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<コンフォート17マンション>

「これはねっ! 決して崩れることのないジェリコの壁っ! その壁をちょっとでも越え
  たら殺すわよっ!」

ピシャッ!

学校から家へ帰った途端、アスカはそう言い放ち勝手に決めた自分の部屋の襖を閉めて
入って行った。

頼まれたって入るもんかっ!
勝手に婚約者にしたのは誰だよっ!

不機嫌極まりないという顔でシンジも自分の部屋へ入り、カバンを下ろし制服から私服
に着替え始める。

だいたい、ここぼくの家じゃないか。
このまま、居着くつもりじゃないだろうなぁ。

まだ服などをきちんとタンスにしまっていないので、バッグからTシャツなどを出し整
理しながら着替える。

はぁ、お腹すいたなぁ。

ガラっ!

突然開くシンジの部屋の扉。

「ちょとっ! 冷蔵庫になにもないじゃ・・・キャーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

「わーーーーーーーーーーーーっ!」

「なんてかっこしてんのよっ! このヘンタイっ!」

ズガンっ!

「ふげっ!」

部屋の外にあった電話機がシンジに直撃。パンツ1枚でその場に崩れ落ちる。

ビシャッ!

閉ざされるシンジの部屋の襖。

「なっ! なんなんだよっ! あれはーーーーーーーーーーーーっ!!!」

電話機が直撃した頭をさすりながら立ち上がり、いそいそと手近にあった服とズボンを
着て部屋から出て行く。

「なにするんだよっ!」

「アンタが変なもん見せるからでしょっ!」

「勝手に部屋を開ける方が悪いんじゃないかっ!」

「女の子がいるんだから、身嗜みには気をつけろって言ってんのよっ!」

「むちゃくちゃだよっ! 自分の部屋は開けるなって言ったくせにっ!」

「なにがむちゃくちゃよっ! 食べ物が無いって言いに行っただけでしょうがっ!」

どちらかというと温和なシンジだが、いい加減頭にくる。

なんなんだよっ!
わけわかんないよっ!!
ムカつくなぁぁぁぁぁっ!!!!

「アスカの食べるものなんか、ぼくが知ってるわけないだろっ! 勝手にしてよっ!」

「ぬわんですってーーーーっ! あーそーですかっ! わかったわよっ! 買って来るわ
  よっ! そのかわり、アタシが買ったもん食べんじゃないわよっ!」

「だれが、アスカの買ったもんなんんか。」

ムカムカムカムカ!

アスカの目が釣りあがる。

「触りもすんじゃないわよっ! このブァカっ!!!!!」

バッチーーーーーーン!

「いっ、いったーーーーーーーーーーーっ!!!」

「フンっ!」

ビンタを一発かまし、ポシェット片手に家から出て行くアスカ。どうやら、何か食料を
買いに行ったようだ。

なんで叩かれなきゃいけないんだよっ!
ちくしょーーーっ!
誰がアスカのものになんか、触るもんかっ!

叩かれた頬を摩りながら冷蔵庫を開けてみると、確かに何も無い。間違ってもアスカの
買ってきたものになど手をつけたくない・・・となると、自分も何か買いにいかなけれ
ばいけないだろう。

仕方ないなぁ。
なんか買ってこようかな。

シンジも財布をポケットに突っ込むと、買い物に出掛けて行った。

買い物中。

チャーハンの材料購入。

帰宅。

「くぉーのバカシンジっ! 家の鍵閉めて出掛けんじゃないわよっ!!!」

玄関の前でスーパーで貰えるビニール袋を引っさげ、アスカが仁王立ちしていた。

「家出るんだから、鍵くらいしめるだろっ!」

「アタシが入れないじゃないのっ!」

「そんなの知らないよっ! 自分が持っていかないのがいけないんじゃないかっ!」

「ぬわんですってーーーっ!」

「もうっ。どいてよっ。入るんだからっ。」

アスカを押しのけ、家の中へ入って行く。その後から不機嫌全開といった感じでアスカ
も入ってくる。

「なにしてるんだよっ! 今からぼくがチャーハン作るんだから、どいてよっ。」

「アタシが先に使ったのよっ! 邪魔しないでよねっ!」

今度はキッチンの争奪戦である。シンジがモタモタしている間に、アスカが買って来た
スパゲッティーを作り始めたのだ。

「居候のくせに、勝手なことするなよなぁっ!」

「アンタが居候でしょうがっ!」

「なんでそーなるんだよっ! どいてよっ!」

アスカを押しのけようとする。

「さわんないでよっ! エッチっ!」

「そんなのきたいないよっ!」

「アタシが使い終わったら、使わせてあげるから、おとなしくしてなさいよねっ!」

「ぼくの家だろーーーーっ!」

「ウルサーーーーイっ! 男のくせにウダウダ言うんじゃないっ!」

「なんだってーーーーっ!」

ピンポーン。

険悪なムード真っ只中の2人の耳に、家のチャイムが鳴る音が聞こえてきた。

「誰だろう。」

「アンタ、出てきなさいよ。新聞かなんかでしょ。」

「なんでぼくが。」

「手が離せないんだから仕方ないでしょーがっ!」

ったくっ!
なんなんだよっ!

とは言っても、いつまでも玄関で人を待たせておくわけにもいかず、シブシブ出て行く
ことになる。

「はい。どちら様でしょうか?」

「あの、洞木ですけど? 2−Aの委員長の・・・。」

「あ、はい。」

扉を開けるとそこには、今日学校で見たクラスの委員長である洞木という少女が立って
いた。

「あの、先生が教科書を届けて欲しいって。碇君も惣流さんも早くに帰っちゃったから、
  頼まれちゃって。」

「ありがとう。」

ヒカリから教科書を受け取る。

「惣流さんは?」

「今、ご飯作ってるよ。」

「そうなの? いいなぁ。碇君と惣流さんって、婚約してるんですものねぇ。憧れるわ。」

「そんな・・・大したことじゃないよ。」

そこに、クラスメートの娘が来たということで、愛想笑いを浮かべながらアスカも玄関
へ出てきた。

「アタシのも持ってきてくれたの?」

「うん。先生に頼まれて。」

「ありがと。」

「惣流さん? わたし、料理とか作るの好きなんだけど、惣流さんがどんな料理作って
  るのか見てもいいかしら?」

「げっ!」
「えっ!」

おもむろにうろたえるアスカとシンジ。

「2人のお邪魔はしないから、ちょっとだけ。だめ?」

「い、いいわよ。」

断る理由が見当たらない。

「やっぱり、料理って愛情だと思うのよ。好きな人の為に、どんな料理を作ってるのか
  見たいじゃない?」

「は・・・ははは・・・はははははははは。」

苦笑いを浮かべることしかできないアスカ。だが、追い出すわけにもいかず、そのまま
ヒカリを招き入れることになってしまう。

「へぇ、ここが碇君と惣流さんの家なのねぇ。いいなぁ、こういうの。」

「そ、そうかしら? ははははは。」

「何作ってるの?」

「え・・・あ、あのね。シ、シンジが、そ、その・・・。チャーハンとスパゲッティー
  食べたいって言うから・・・その・・・そうよねっ! シンジっ!」

「う、うん。そ、そうなんだ。アスカが作ってくれてたとこなんだ。ね、ねっ。」

「そ、そうなのよぉ。ヒカリも食べる?」

「いいのっ!? うんっ、一度惣流さんの愛妻料理も食べてみたいわ。」

「ア、アスカっ!」

焦るシンジ。

しまったーーーーーーーーーっ!

口は災いの元。後悔先に立たずのアスカ。

「おじゃま? 碇君?」

「い、いいよ。ね、ね、アスカ・・・はははははは。」

「も、もちろんよ。い、いっしょに、いっしょに食べましょ。はははははははは。」

こうして、ヒカリを加えコンフォート17マンションでの夕食会が始まった。

「シ、シンジ? チャーハンの材料出してくれるかしら?」

「い、いいよ。」

自分の買って来たスーパーの袋から、チャーハンの材料を取り出し、アスカが料理する
キッチンの横に並べていく。

「ふーん。いつも2人でご飯作ってるの?」

「そ、そうよ。そうに決まってるじゃない。ねぇ、シンジぃ。」

「もちろんだよ。ねぇ、アスカぁ。」

半ば顔を引き攣らせながら、笑顔を浮かべ互いを見つめ合うシンジとアスカ。そんな2
人を羨ましげにダイニングテーブルから眺めるヒカリ。

「あ、あのさ。シンジ、いつもみたいにネギを切っておいてくれないかしら?」

「わかったよ。いつもみたいに、ネギを切るよ。」

ネギを切り始める。その横でスパゲッティーを料理しながら、チャーハンの準備まです
ることになってしまったアスカは、小声で呟いた。

「調子にのってアタシに触んじゃないわよっ!」

「フン。誰がっ!」

そんな影の2人のやり取りなど露知らず、愛する2人の料理姿をヒカリが終始じっと見
ている。

トントントン。

ネギをシンジが刻み始めた時、アスカがスパゲッティーを湯から引き上げようとした。
が、ヒカリの視線があまりにも気になった為か、麺を跳ね上げ熱湯を飛ばしてしまう。

「あ、あつっ!」

湯が包丁を持っていた指にかかり、声を上げるシンジ。しまったという顔をするアスカ。
その後ろでヒカリが立ち上がった。

「あ、惣流さん。大変。」

「大丈夫、大丈夫よ。ちょっと待ってね、シンジ。」

「う、うん。」

アスカは自分の部屋からバンソウコウを持ってくると、火傷したシンジの指を手にして
ふーふーと息をかける。

「はーい。シンジ。いつもみたいに、アタシが手当てしてあげるわよ。」

「ありがとう。いつも、アスカは優しいねぇ。」

言っている本人達は、あまりのわざとらしい自分のセリフに鳥肌が立ちそうになるが、
ヒカリはうっとりと眺め続けていた。

いよいよ夕食となった。

「はーい。シンジぃ、あーん。」

「あーん。はむ。いつも、アスカのご飯は美味しいね。じゃ、次はアスカだね。あーん。」

「あーん。あーん、シンジぃ、お口はこっちよぉ。」

「ごめんごめん。口の周りについちゃったね。拭いてあげるから、こっちむいて。」

「んーーーー。」

そんな2人の夕食時のやりとりを、顔を真っ赤にして直視できなくなってくるヒカリ。
一方アスカとシンジは・・・。

ぬ、ぬわんで、アタシがこんな奴にっ!
アンタも調子に乗って、口あけてんじゃないわよっ!

「はーーい、シンジぃ、次はご飯よぉ。あーん。」

「うん。あーん。はむ。」

なにが、あーんだよっ!
ここまで誰がしろって言ったよっ!
いくら婚約者でも人前でこんなことするはずないじゃないかっ!

だが、始めてしまったものは仕方が無く、止める切っ掛けが掴めない。2人は顔を真っ
赤にするヒカリの前で、食べさせあいっこを延々と続ける。

「お茶飲む? アスカぁ?」

「うん、飲ませてぇ。」

「はい。こぼさないように注意するんだよぉ。」

麦茶の入ったコップを口元に近づけると、アスカもそれに応じてシンジにお茶を飲ませ
て貰う。正直、2人とも頭の中ではげっそりしている。

「うーん、シンジぃ。美味しい。」

「じゃぁ、今度はアスカが飲ませてぇ。」

「もう、シンジったらぁ。」

今度はアスカがシンジのお茶を飲ませてあげる番だ。そうこうしている間に、ようやく
みんなの食事も食べ終わった。

「じゃ、じゃぁ、わたしそろそろ帰るわね。」

食事が始まってから、俯いてしまい無言状態だったヒカリがなんとかかんとか言葉を切
り出した。

「そ、そう? また、いつでも遊びにきてね。」

「う、うん。ありがとう。これからもよろしくね。」

「ねぇ、せっかくだしさ、ヒカリって呼んでいいかな? アタシもアスカでいいし。」

「もちろんよ。」

「じゃ、また明日ねぇ、ヒカリ。」
「気をつけて、洞木さん。」

お互いの手は仲良く繋いで、ヒカリに別れの挨拶をするシンジとアスカ。

「うん。アスカもあんまり、碇君に甘えすぎないでね。」

「むっ・・・。」

「じゃぁねぇ。」

「むむむむむ・・・。」

ヒカリが玄関で手を振る。

同じく、対面して笑顔で手を振るシンジとアスカ。

バタム。

扉が閉ざされる。

「いつまで手っ! 握ってんのよっ! このエッチっ!」

仲良く繋いでいた手を振り解く。

「アスカが握ってきたんだろっ!」

「今日は、アタシが料理したんだから、アンタが片付けしなさいよねっ!」

「自分の食べたものくらい、自分で片付けろよなぁ。」

「アンタの晩御飯作ったの誰だと思ってんのよっ! いいことっ! アンタが後片付けす
  んのよっ!」

「もーっ! わかったよっ!」

「ま、アンタと料理作ったり並んでご飯なんか食べるの、今日くらいでしょーけどねっ!
  フンっ!」

「ぼくだってっ!」

ズカズカと不機嫌そうに、部屋に入って行くアスカ。シンジは、確かに料理はほとんど
アスカが作ったこともあり、後片付けをすることになる。

お湯かけられるし散々だよっ!
もう2度とアスカとなんか料理するもんかっ!
ま、どーせもうないだろうけど。

てきぱきと後片付けを終え、自分の部屋へ入って行く。突然のヒカリの訪問により、今
日はかなり疲れた。こういう日は早く寝るに限る。

そして・・・翌日となった。

「マズイわよね・・・。」

「マズイなぁ。」

朝、弁当箱をキッチンに置き、別々に用意した弁当の材料を前に腕組みする2人。さす
がに婚約者同士が全然違う料理の弁当を持っていくのは不自然である。

「しょーがないわっ! 当番制にしましょっ!」

「ぼくもそれでいいよ。」

「料理は交代で毎日作ることっ! でもいいっ! あくまで共同生活の為だから、相手が
  作ったものを食べなくても、作ったものが不味くても文句はいわないことっ!」

「当然だよ。」

「契約成立ねっ! あっ、そうそう。アタシ、スパゲッティー,チャーハン,カレーく
  らいの料理しか作れないから。よろしくぅ。」

「なんだってーーーっ!」

「じゃ、昨日はアタシが晩御飯作ったんだから、今日はアンタの当番よっ!」

その言葉を聞き、ある程度料理ができるシンジは、どうも騙されたような気がして仕方
がなかった。とはいえ、朝は時間がないので、弁当を急ぎ作ることにする。

ま、いいや。
その方が食費も浮くし。
父さん・・・たまに生活費入れ忘れるもんなぁ。

てきぱきと2つの弁当をこしらえ、学校の用意を整える。いよいよ学校生活2日目に突
入することになった。

<学校>

昼休み。

2人は同じ弁当箱を開けて互いの席で食べ始めようとしていたが、そこにクラスメート
の女の子達が集まってきた。

「ねぇねぇ。昨日、ヒカリに見せたみたいなの、わたし達もみたーーい。」

「え・・・。」

一瞬にして、その女の子の言っていることを理解し、顔を青くするアスカ。ふと視線を
向けると、ヒカリが手の平を顔の前で合わせてメンゴのポーズをしている。

しゃ、喋ったのーーーーーーーーっ!???
どーすんのよっ!!!!

あたふたと周りを見渡すと、期待に胸を膨らました女の子達が視線を自分に集中させて
いる。

さ、最悪だわ・・・。
もうっ!

「シンジぃぃっ!」

「どうしたの?」

「あ、あの・・・その・・・。」

「なんだよ。」

「いつもみたいに、食べさせてほしーなぁ。」

「ブッ!!!」

噴出すシンジ。しかし、まわりを見ると自分にも期待の視線が集中しているのがわかり、
今の状況を把握せざるをえない。

「で、でも、学校では。ね。」

必死で抵抗を試みるシンジ。が、女の子達も食い下がってくる。

「ねぇ、1度だけでいいから。」
「ヒカリにだけ見せてずるーい。」
「どーせ、家ではいつもやってるんでしょー。」
「あったりまえでしょ。碇君と惣流さんは婚約者同士なんだしぃ。」

マシンガンのごとく、女の子達が言葉を浴びせ掛けてくる。

なんで、こーなるんだよーっ!

にっちもさっちもいかなくなり、シンジは自分の席から弁当箱を持ってくるとアスカの
対面に座り、端でコロッケを掴んだ。

「わたし達に遠慮しないで、横に座っていいわよ。」
「そうよそうよ。本当は、寄り添いたいくせにぃ。」

そんな冷かしの言葉を言いながら、シンジの椅子をアスカの横へズルズルとひっぱって
いく。

「うっ。」

密着する肌と肌。恥ずかしくてたまらないシンジは、ボソボソとアスカに小声で文句を
言い放つ。

「どーするんだよっ! これっ!」

「知らないわよっ! アンタっ! 男ならなんとかなさいよっ!」

「なんともできないじゃないかっ!」

「ほらっ! 早くしないと怪しまれるわよっ!」

「もーーーっ!」

どうやら、観念するしかないようだ。シンジはアスカと身を寄り添いながら、弁当から
おかずを摘む。

「はい、お口あけてぇ。」

「あーん。いやぁん。シンジぃ。おいしい。じゃ、今度アタシねぇ。」

「あーん。もぐもぐ。」

はぁ。
ぼく何やってんだよ。

その時、ガタリと椅子を立つ男子生徒の姿があった。

「おまえらっ! ええかげんにせーやっ!」

黒いジャージ姿のその少年は、ギロリとシンジとアスカを睨みつける。

「ワイは、お前らみたいな色キチが大っ嫌いんやっ! ほないなことは、外でやって
  くれやっ!」

「なんですってーーーっ! 誰が色キチよっ!!!」

「どう見たってほーやないかっ!」

「もういっぺん言ってみなさいよっ! もういっぺんっ!」

最初に反応したのはアスカ。だが、シンジは内心ほっとしたというのが、正直な思いだ
った。

「アスカ。ぼく達が悪かったんだよ。学校でやっぱりこんなことしちゃいけないよ。」

「アンタっ!」

今度は、シンジを睨みつけてくるが、そっと耳元でアスカに呟く。

「これで、もうこんなことしなくてすむじゃないか。」

「・・・・・・そ、それはそうだけど。」

「ごめん。あ、あの・・・鈴原くんだっけ。ぼく達が調子に乗ってたよ。謝るよ。」

トウジも素直に謝られては、性格的にそれ以上シツコク言うタイプではなかった。

「わかりゃーええんや。わかりゃー。」

「うん。気をつけるよ。」

助かったぁぁ。
こんなこと毎日させられたら、どうしようかと思ったよ。

シンジがほっと胸を撫で下ろしていると、その横から眼鏡をかけた少年が近づいて来る。

「こいつ、碇のことが羨ましいんだよ。」

「誰が羨ましいんじゃっ!」

「だって、碇くらいだろ? あんな可愛い彼女がいるのってさ。」

「ワイは、彼女なんかいらんわい。」

「まぁ、そういうなって。俺、相田ケンスケ。彼女とご飯食べれなくなっちゃたしさ、
  一緒に食べないか?」

「うん。いいけど。」

「トウジもいいよな。碇を彼女から引き離して、1人で弁当食べさせたりしないだろ?」

「べつにワイは引き離したわけや・・・。」

「いいじゃないか。碇の話も聞きたいしさ。嫌なのか?」

「嫌っちゅーわけや。オーっ! かまへんわいっ!」

その後、シンジはケンスケからいろいろと婚約生活のことを聞かれることになったが、
勿論答えられるはずもなく、必死ではぐらかし続けた。

ただ1つわかったことは、あんなことをいいつつも、いつしかトウジという少年が1番
興味深そうに、身を乗り出し目の色を変えて自分達のことを聞いていた事実だった。

To Be Continued.
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