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作者注:この小説は、700万HIT記念アンケートによりキャラの配役を決め、スト
        ーリー展開もアンケートにより決定しております。作中の所々に、アンケート
        結果が記されているのは、アンケート結果を示しています。
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西遊記物語
Episode 01 -プロローグ-
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<赤い世界>

エヴァシリーズとの決戦。その戦いが残したものは、真っ赤に染まった世界と1人の少
年だけだった。

「ん・・・。」

あれからどのくらい経ったのだろう。地面に倒れ意識を失っていた少年、碇シンジは少
し息を漏らし目を開ける。

「あれ? なんだ、ここ? エヴァシリーズと戦ってて・・・ぼくどうしたんだろう?」

ぐるりと周りを見渡すが、見渡す限り何も無い赤い世界。辺りを当ても無く歩いてみる
が人の気配すらしない。

青空のなくなった空を見上げ、シンジは世界の真ん中で1人立ち尽くす。

サードインパクト・・・起こっちゃったんだ。
誰もいなくなっちゃったのかな。

使徒との戦いで作られたクレーターに水が溜まりできた湖に、両手を浸し水を掬って口
に含む。

「ふぅー。」

うーん。
どうしようかな・・・。

腕を組んで、これからどうすればいいか考えてみるが、何もいいアイデアは浮かんでき
そうにない。

考えてもわかんないものはわかんないや。
学校もないし、のんびりしよう。

煩いことを言う人が誰もいなくなったこの世界で、シンジはとりあえず気の済むまで昼
寝をし、後のことは起きてから考えることにしたのだった。

ぐぅぅぅぅ。

<天界>

エヴァシリーズとの戦いが起こるよりずっと前に天上界へ召された2人目の綾波レイが、
ラーメンを食べていた。

3人目は無へと還ってしまったのね。
天国へ来なかったなんて・・・。
こんなに美味しいラーメンのある所って、知らなかったのね。

ズルズルズル。

レイは人間界にいた頃の健気で献身的な行いが、聖母の再来だと天国で評価され、今で
は釈迦の位を貰い毎日美味しいラーメンを食べれる立場にいた。

もっと早く天国へ来れば良かったわ。
コンビニのインスタントラーメン・・・とても不味かったもの。

とにかくラーメンにこだわりのあるレイは、生麺タイプのインスタントラーメンを買っ
てはいたが、それでも天国のラーメンとは雲泥の差だ。

「美味しい・・・とても美味しい。」

ズルズルズル。

今の天界での生活。それはレイにとってなによりも大切なものであった。人間界で大切
にしていた絆など、このラーメンの味に比べればどうということはない。

「釈迦牟尼尊者、かわりはないか。」

ゴグリっ。

「あ、大神様。」

突然大神様が現れた。思わずラーメンを喉に詰まらせたレイは、胸をドンドン叩きなが
らびっくりして赤い目を見開き、ぺこぺことお辞儀をする。

まさにこの大神様こそが、自分に今のラーメン食べ放題ができる釈迦の位をくれた、天
界で1番偉い神。

「はい。人間界のことはしっかり管理しています。」

ラーメンばかり食べていて、人間界の監視をサボっていたレイだったが、そんなことを
言っては今の位を剥奪される恐れがあるので、適当なことを言ってこの場を言い繕う。

「そうか。釈迦牟尼尊者に任せておけば安心だと思うが、最近死者の数が急増しておる
  らしい。調べておくのだぞ。」

「はい。」

「ではな。」

大神様はそれだけ伝えると、天上界の最も上層部に位置する最上級の神が住まう場所へ
と帰って行った。

死者・・・死んだ人。
そう、増えてるのね。
このラーメンを食べ終わったら、見に行ってみましょう。

なにより優先事項は、冷めないうちにラーメンを食べてしまうこと。レイはラーメンの
残りに舌鼓を打ちながら、ズルズルとすするのだった。




同時刻・・・閻魔大王の前には、2人の死んでしまった女性が姿を現していた。

「ウラウラウラーーーーーーーーーーーーっ! 酒持ってこんかーーーーーーっ!!!」

「この針の山・・・ウランの宝庫だわ。これだけあれば、地獄を吹き飛ばす程の兵器が、
  ククククク。」

あの世にエビチュが無いことを知り、ヤケ酒を飲んだあげく大暴れしているミサトと、
次から次へ怪し気な兵器を作ったり、亡者を実験台にしているリツコの2人であった。

「閻魔大王様っ! 手がつけられませんっ!」

「なにをしておる。情け無いのう。」

「しかしっ! あの暴れようは尋常ではありませんっ!」

「やむをえん。ワシが直々に出向こう。」

死んだ人間ごときに何を手を焼いているのかと、半ば部下に呆れながらその女性達が大
暴れしているという部屋へ、閻魔大王は足を運ぶ。ここは天国へ行くか地獄を行くか、
審判を受ける死者の待合室。

「静まれいっ! ワシは閻魔大王じゃっ!」

待合室の扉を開けると同時に、世界を飲み込むような大きな口を開け、怒号を発する閻
魔大王。

「おらおらっ! わたしの特製カレーよぉぉっ! 食えーーーーーっ!!!」

その瞬間、大きく開けた口に流し込まれたのは、作ったばかりのミサト特製カレーだっ
た。

「ぐはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

有無を言わさず、部屋に入るや否や、吐血する閻魔大王。

「ぐえぇぇぇぇっ! なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

地獄のものとは思えないその強烈な異臭と味と嫌悪感に、さすがの閻魔大王も背中から
ぶっ倒れてしまう。

「できたわっ! これぞ究極兵器っ! ”地獄の沙汰も金次第”よっ!」

リツコが何か作れば必ず大爆発を起こしているので、得意気に新兵器を見せるリツコの
周りから鬼どもが大慌てで逃げて行く。

「聞いて驚きなさい。この機械は金を次々生み出す、錬金術の機械よ!」

「「「ぬぬぬ。」」」

逃げ出した鬼達だったが、錬金術の機械と知り、また恐々近寄ってくる。どこの世界で
も金には魅力があるようだ。

「さぁ、試運転よ! ポチっ。」

ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

次の瞬間、鬼どもは全てぶっとび、針の山も、血の池も、釜茹での釜も、全て無へと還
ってしまっていた。

「フッ。おろかね。こういうこともあろうかと、私はATフィールド発生装置の中にい
  たのよ。ククククク。」

自分の発明を信用していないのだろうか。リツコはしっかりと安全な場所で隠れていた
ようだ。

「おらおらおらっ! 酒はどこにあるのよーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

「プルトニュームを見つけたわっ!!! こんなにいっぱいっ!」

「おおっ! 地獄の三丁目産ウォッカにテキーラがあるじゃないのよーーーっ!」

「あなた達っ! 実験台になりなさいっ!」

このままでは全てを壊されてしまう。閻魔大王はミサトのカレーの衝撃で、血反吐を吐
きながら最後の手段に出た。

「黄泉路を逆行させろっ! 人間界に追い返せっ!」

「大王っ! そんなことをしたら、どこに影響が出るかわかりませんっ!」

「かまわん! やれっ!」

黄泉路とは人間界から死後の世界へ繋がる一方通行の道である。それを逆行させるとい
うことは前例が無く、この2人に留まらずどれだけの死者に影響がでるか、またどんな
影響がでるか見当が付かない。

「オラオラっ! 大王っ! 新しいカレーができたわよーーっ! 食えーーーーーーっ!」

大きな口を開けて命令している大王の口に、カレーを流し込む酔っ払いミサト。その横
ではリツコが次から次へ、亡者を実験台になにやら怪しげなことをしている。

「ゴワーーーーーーーーーーーッ!!!」

恐怖のカレーを口に叩き込まれ、再び血反吐を吐く閻魔大王。

「さっさと送り返さぬかっ!!!!!」

「は、はいっ!!!!!」

こうして、黄泉路は急激に逆回転を始め、最近急増していた死者の多くが、人間界へと
舞い戻って行くことになった。このことが、後にどんな影響を人間界へ及ぼすかは、今
の時点では誰もわからない。

一方天界では。

アタシ・・・死んじゃったんだ。

1人の青い瞳の少女が、雲の上から青い空を眺めていた。人間界に別れを告げ、死後の
世界に立つその可憐な少女。その口元には・・・。

ニヤリ。

ここ、天国よね。
ってことは、アタシはAngel?
Angelって超能力みたいなの持ってたわよねぇ。

「フフフっ。」

その力を極めて、天界を乗っ取ってやるのよーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
アタシが、天界のナーーンバ ワーーーーンっ!

惣流・アスカ・ラングレーここにあり。

人間であろうが、Angelであろうが、彼女の望みもプライドも高いのである。

そして、アタシの作った天界にシンジを呼んで結婚するのぉ。

『アスカ・・・ここはぼく達の愛の楽園だね。』
『そうよぉっ! シンジの為に作ったのぉっ!』
『アスカぁ、好きだよぉっ!』
『アタシも、大好きよぉっ!』

おっと・・・妄想してる場合じゃないわ。
そうと決まれば早速、術の使い方を覚えなくちゃ
愛の園を作るのよっ!

思い立ったが即行動が彼女のポリシーである。なにか面白い術の使い方が書かれた書物
でも何処かにないものかと、てくてくと歩き出す。

むっ!?

しばらく歩いたところで、ふとなにやら近衛兵が厳重に守りを固めている、怪し気な小
さな小屋を見つけた。

怪しいわね。
あそこに何かあるに違いないわ。
あーんな兵士、アタシの色気で。ちょろいもんよ。

「ちょっとーーーっ、アンタ達ぃぃ?」

「なんだ貴様。」
「ここは下級天使が来る場所ではない。」

下級・・・。

ピシっ!

アスカのコメカミに#マークが浮かび当たる。

「ダレに向かって口きいてるわけーーーーーーーーーーーーっ!!!!?」

ドゲシッ! ドカッ! ゲシッ! ドカッ! ドッカーーーーーーーーーーーーーーンッ!

フッ。色気で落ちたわ。
美しさって・・・罪。

屍となった兵士達の上をズカズカと歩き小屋へ向かう。目的を果たす為には、最短距離
を通るのが最も効率的だ。

小屋の扉には取っ手がついており、どうやら引き戸のようだ。その戸に手を掛け早速開
けようとした時、まるで自動ドアのように勝手にスーーッとスライドして行った。

「なんじゃ、騒々しい。」

「む?」

どうやら小屋の外での騒ぎを聞きつけ、中の住人が出てきたらしい。アスカの前に小屋
から出ていた老人が、あたりの惨状を見回す。

「お主がやったのか?」

「えっ? さぁ。」

「フフフ。誤魔化そうというのか? ワシは天界に住む須菩提禅師という仙人じゃ。お
  主の嘘などお見通しじゃ。」

むっ!
誤魔化しきれそうにないわね。

「アンタバカーっ!? アタシは、『さぁ。』って言っただけでしょうがっ! 嘘吐き呼
  ばわりするなんて名誉毀損だわっ!」

「いや・・・。いま誤魔化そうとしておったではないか。」

「証拠は何処にあるのよっ!!!」

「『さぁ。』と言って誤魔化そうとしたのが証拠じゃ。」

「アンタは『お主がやったのか?』としか言わなかったわっ! アタシは、扉を開けた
  のがアタシかって聞かれたと思って、『さぁ。』って言っただけよっ!」

「そんな馬鹿な・・・。」

「アンタのセリフには、主語がないのよっ! わかるわけないでしょっ! それで仙人な
  んて、よく言ってられるわねっ!」

「い、いや・・・。」

アスカのめちゃくちゃな屁理屈に押され始める、最上級の仙人である須菩提禅師。敵が
怯んだこのチャンスを逃してなるものかと、更にアスカのわけのわからない理屈は続く。

「アンタは、アタシの名誉を汚したのよっ! 仙人失格ねっ!」

「そ、そんな・・・。」

「みんなに言い触らしてやるわっ! アンタの名誉もここまでよっ!」

「た、頼む。やめてくれ。」

「それが嫌なら、アタシに仙人の術を教えるのよっ! わかったぁぁぁぁぁっ!?」

「はい・・・。」

こうしてアスカは、最上級の仙人を脅迫しながら仙術の訓練を始めたのだが、もともと
天才と言われた彼女である。まるで真綿が水を吸うかのごとく、次々と難易度の高い術
を会得していった。




また別の場所では・・・。

同じように天界に召された少女が、その地位を築きつつあった。

「姉御っ! 本当に仕掛けるんですかっ?」

「当ったり前でしょっ。このマナちゃんが、大天使長になるのよっ!」

「しかし、ミカエル大天使長を相手にするとなると・・・大水軍程度の戦力では。」

「なに? 燃やされたいわけ?」

ボワンッ!

マナの手に業火が灯る。それを見た配下の水軍達は、顔を青くして恐れおののく。

サードインパクトに巻き込まれて死んだマナは、ミサトやリツコよりも先に閻魔大王の
前に呼び出され、そこで天界行きの切符を貰った。

行き先が天国だと知り、喜んだマナは早速天界行きの鈍行列車に乗りに行くのだが、ふ
と閻魔大王の横に置かれている”地獄の業火の術集”という本に目が止まった。

この世は力よっ!

人間界にいる時にそれを学んだマナは、お得意のスパイ技の1つ、”スリ”を働いてそ
の本を盗み天国へ来たのだ。

「準備が整いました。姉御っ!」

「決戦の時よっ!! いざ、出陣っ!!!」

そのサタンが執筆した”地獄の業火の術集”を会得したマナは、その技を使い次々と火
に弱い水軍を部下にし勢力を強めた。

そして今では天蓮元帥と名乗り、西洋の天使である大天使長ミカエルと一大決戦をおっ
ぱじめようとしていたのだ。

「さっさと歩かなくちゃ駄目でしょ。」

「我々は、水軍なので雲の上の行軍は慣れておりませんで。」

「燃やされたいみたいね。」

「歩きますっ! 死ぬ気で歩きますっ!」

天上界の大水軍の行軍は続く。その時、傍らに立っていた小さな小屋から物凄い勢いで
金色の雲に乗った赤い髪の少女が空高く舞い上がるのが見えた。

ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

マッハ10くらいのスピードであっという間に消えて行く少女の姿。ソニックブームが
雲を揺らす。

今のは何?
なんだか、見たことのあるコだったような気がするけど・・・。
気のせいね。今は戦のことを考えなくちゃ。

天界にはいろいろな能力を持った者がいるので、あまり気にしないことにし、マナは更
に行軍を続けるのだった。




さて、その飛び立った金色の雲の上には、赤い髪を靡かせ長い棒を持つ少女、アスカの
姿があった。

「ワハハハハハハハハハッ! アイツの術はみーんな覚えたわっ! これで天界はアタシ
  のモノよっ!!!」

しばらく須菩提禅師から術の使い方を聞き出していたアスカだったが、もう得るものは
無いと判断し、最後に仙人が大事にしていた如意金箍棒を餞別に奪い取り卒業したのだ。

よーしっ!
大神様をぶったおして、アタシが天界を牛耳るわよっ!

などと不埒なことを考えながら金斗雲に乗って飛行していると、眼下の雲の上に大軍が
動いているのが目に止まった。

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作者注:正確には”金斗雲”の”金”は誤字のようですが、漢字が特殊なのでこの字を
        使います。
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「あれって・・・西洋の天使のミカエルじゃ?」

その物々しい雰囲気に、なんだか興味を引かれたアスカは雲の上に降り立つと、変化の
術で兵士に化けて一緒に行軍をする。

「ねぇねぇ。今から何処行くの?」

「今さら何言ってやがんでぇっ!」

アンタら・・・西洋の天使でしょ。
なんで、べらんめぇ調なのよ。

「マナとか言う人間上がりの天使が、炎撒き散らして戦争仕掛けて来たんじゃねぇか。」

「マ、マ、マナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!?」

ぶっとぶアスカ。マナという名前の人間など死ぬ程いるだろうが、炎を撒き散らしてそ
んなことをしそうなのは、あのマナしか思いつかない。

「おうともよ。偉そうに”天蓮元帥”なんて、偉そうな名前名乗りやがってよぉっ。」

「むっ!!!」

この時アスカは、大変なことに気がついた。これから大神様に殴り込みを掛けようとし
ていたのだが、その前に気付いて良かったというべきか。

「じゃ、じゃぁ、アタシ。持ち場に帰るわね。」

そう言い残し、人込みに紛れまた金斗雲で空高く舞い上がる。とにかくこれは一大事で
ある。

アタシに称号がないっ!!?

殴り込みを掛けた時、ただ名前を言うのであまりにも芸がない。なんでもいいから、マ
ナの”天蓮元帥”に負けない称号が欲しい。

早速アスカは、天使達の役職が記録されているホストコンピュータにアクセスすべく、
近くの役所へ駆け込んで行ったのだった。

カタカタカタ。

役場の役人をぶったおしたアスカは、手近なPCでホストコンピュータにアクセスを開
始する。未だに天界は10BaseTなので遅くて仕方がないが、まずは今の自分の名
前を探すことに専念する。

えーと・・・アスカ、アスカっと。
あったっ!

”下級天使 惣流・アスカ・ラングレー”

ブチっ!

コメカミに#マークが浮かび上がる。有無を言わさず、即座に”下級天使”の所にカー
ソルを合わせDELキー4連打。消えた。

なんか、役職で偉そうなのはっと。

だが、ドイツ生まれのアスカには、難しい漢字ばっかり並んでいる東洋の神様の役職は、
なにがなんだかさっぱりわからない。

えーん。わかんないよぉ。
どれでもいいけど、マナより下は嫌だしぃ。

ちらちらと役職を見ていると、なんだか勲章がいっぱい付いている役職に目が止まった。
だが、その役職の定員は1名となっており、既に”ターム”というわけのわからない人
物の名前が入っている。

アンタは、下級天使に格下げよっ!

思い立つが早いか、アスカはタームという人物に付いていた役職を”下級天使”に書き
換え、逆に彼の役職を自分に付ける。

この時こそ、

                        斉天大聖 惣流・アスカ・ラングレー

が誕生した瞬間であった。

ちなみに余談になるが、役職を奪われたタームという人物は、失業し路頭に迷った挙句、
食べる物も食べられなくなったとか。彼がその後どうなったかを知るものはいない。

<人間界>

人間界はまだ真っ赤な世界のままだった。その世界の中で、1人心地よさそうに眠って
いた少年が、目を覚ます。

「ふぁぁぁぁぁぁ。」

よく寝たなぁ。
なんだか、お腹減ったな。

何か食べたくなったシンジが、ふと周りを見渡すとそこには以前に加持が植えていたス
イカの畑が目に入った。

あっ。スイカだ。
加持さん、ありがとう。

早速、見つけたスイカを割り食べ始める。ちょっと冷えてないのが残念だが、さすがは
加持が手塩に掛けて育てたスイカだけのことはあり、とっても甘い。

うーん。これからどうしようかな。
まぁいいや。スイカを食べてから考えよう。

シンジは幸せそうな顔で、お腹がいっぱいになるまで、加持の美味しいスイカを食べる
のだった。

<天界>

いよいよ斉天大聖という称号も手に入れたアスカは、天界の最上部に殴り込みを掛けに
行った。

「うりゃーーーーーっ! 斉天大聖アスカ様よっ! みんなアタシの下僕になるのよっ!」

ありとあらゆる仙術を身に付けたアスカを前に、天界の兵士はなす術なく次から次へ、
ばったばったとぶっ飛ばされてしまう。

「うりゃうりゃうりゃーーーーーーーーーーっ!!!」

それまで平和そのものだった天界は、まさに大騒ぎとなっていた。その様子を聞き付け
激怒したのは大神様である。

「人間界のならずものだとっ!?」

「はっ。惣流・アスカ・ラングレーというものが、天界最上部に殴り込みをっ! 更に、
  雲の上では霧島マナという者が、西洋の天使に戦争を仕掛けておりますっ!」

「釈迦牟尼尊者は何をしておったのだっ! 綾波レイをっ! あの者を呼べっ!」

「はっ!!!」

人間界と人間界から上がってきたばかりの者を監視するように、綾波レイは言いつけら
れていた。それにもかかわらずこの騒ぎである。大神様は、部下に綾波レイをすぐに呼
ぶように言いつけた。

ズルズルズル。

何か忘れてたような・・・。
まぁいいわ。ラーメンを食べましょう。

幸せそうな顔でラーメンを食べ続けていたレイの元に、大神様の使者が血相を変えて飛
び込んで来る。

「釈迦牟尼尊者っ! 綾波レイ様っ!」

「何? 今、とてもとても忙しいの。」

「大神様がお怒りですっ!」

「えっ!?」

さすがに、大神様が怒っていると聞いては、のんびりラーメンなど食べてはいられなく
なり、箸を止める。

まずいわ。
ラーメンばかり食べていたのがばれたの?

「人間界から上がって来た少女2名が、大暴れしております。」

「・・・天使になったばかりの者にそんな力はないわ。」

「それが、大変な力でしてっ。」

「そんなはずないわ。」

「惣流・アスカ・ラングレーという者と、霧島マナという者なのですが、それはもう強
  いのなんの。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

レイはただでさえ白い顔を真っ青にした。あの2人なら十分ありえそうな話なのだ。

「わかったわ。すぐに行くから。」

なにも対策せずにあの2人の前に出ると危険なので、見かけだけでも威圧感を持たせよ
うと、リリスの力を使って巨大化し早速2人の前に向かうのだった。

雲の上。

「見えたわっ! ミカエルの軍よっ! みんな、負けたら燃やすわよっ!」

「「ひぃぃぃぃぃぃ。」」

進む先には強いことで知られているミカエルの精鋭軍。後ろには炎を撒き散らしている、
天蓮元帥こと霧島マナ。進めど戻れど地獄である。

「わたしが、天界の女王になるのよーっ!」

その様子を見たレイは、胃が痛くなりそうだった。食べ過ぎ用に用意しておいた胃薬は
まだあっただろうか。それはさておき、早く止めなければ大神様に怒られてしまう。

「攻撃ーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

突撃を慣行するマナ。その時・・・。

「やめなさい。」

ひょい。

「ん?」

ふいに首根っこを掴まれ体が宙に浮いたかと思うと、マナの前に巨大なレイの姿が出て
来たのだ。

「あっ。綾波さんっ? 今、大事なとこなのぉ。離してぇぇ。」

ジタバタジタバタ。

足をばたつかせるが、首根っこを押さえられていてどうすることもできない。そんなマ
ナの姿を見ながら、レイはもう一方の手を天界の最上部へ伸ばしていた。

「うりゃりゃりゃりゃーーーーーーーっ! アタシの前に膝間付くのよぉぉぉっ!!!」

そこにはいたのは如意棒を振り回している、暴れんぼうアスカちゃん。こちらも急ぎ止
めなければいけないので、マナと同じように首根っこを掴み自分の前に連れてくる。

「な、な、なにすんのよっ! って、アンタ、ファーストぉっ!?」

「どうして、私のラーメンの邪魔をするの。」

「わけわっかんないこと言ってないで離しなさいよっ! たとえアンタでも、ただじゃ
  済まさないわよっ!」

「そうよそうよっ! 今、マナちゃんは1番大事な時って・・・あーーーっ! みんな逃
  げて帰ってるぅぅぅっ!」

眼下の部下の水軍に目を向けると、マナがいなくなったことをいいことに、ミカエルの
軍勢に背中を向けてすぐさま全兵士が逃亡を始めてしまっていた。ミカエル軍側も、呆
れてしまいただ唖然を見守るだけ。

「天界で戦争を起こしちゃ駄目。ラーメンが食べれなくなるもの。」

「あーーーーん。離してくれなきゃ、燃やしちゃうわよーーーっ!」

「熱いのは嫌・・・豚さんになって反省しましょう。」

「ぶ、ぶたーーーーーーーーーー?」

次の瞬間、マナの頭には豚の耳が生え、お尻には豚の尻尾が生えてきた。

「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

いくらアンケートで決まったこととはいえ、顔もお腹も豚になることだけは耐え難かっ
たマナは、じたばた暴れてレイの指を振り解いた。

「あーーーーーれーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

無論、宙に吊られた状態だった為、レイの指から離れると落下する。マナの体はどんど
ん重力に引っ張られ加速度が付き雲を突き抜け、耳と尻尾が豚になったまま地上・・・
つまり人間界へ落ちて行った。

それを見てびっくりしたのはアスカである。いくらなんでも豚になどされてはたまった
ものではない。

「あなたは・・・お猿さんになって反省するの。」

今度はアスカのお尻に猿の尻尾がにょきにょきと生えて来る。

「猿もイヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

「あれだけ暴れたんだもの。仕方ないわ。」

「なんで、このアタシがアンタなんかに猿にされなきゃいけないのよっ!!!」

「今は私の方が偉いもの。」

「ほーーーっ! じゃ、アンタの方が偉いっていう証拠見せてくれたら、言うこと聞い
  てあげるわっ! そのかわり、それができなかったらこの尻尾、消すのよっ!」

「ええ。かまわないわ。」

「で、どうやって証拠見せてくれるわけぇぇっ!?」

偉いかどうかなど、そう簡単に証拠を見せれるものではない。アスカはニヤリとして、
大きくなったレイを見上げる。

「私の手の平から飛び出せたら、あなたの勝ち。出れなかったら、私の勝ち。」

「はーん。やっぱ、アンタバカね。そーんなの簡単じゃん。」

「そう。ならやってみれば。」

「いっくわよーーーーーーーーーーーーーっ! きんとうーーーーんっ!」

言うが早いか、アスカは金斗雲を呼びレイの手の平からマッハ10のスピードで飛び出
して行く。

ハッハーンっ!
楽勝じゃん。

これでもかというくらい飛び続けるアスカ。もうレイの顔は遥か後ろへ消え行き、ゴマ
粒程にも見ることができない。

さ、これでアタシの方が偉いことがわかったわね。
約束通り、尻尾を消して貰わなくちゃ。

などと考えていると、目の前に巨大な5本の柱が見えてきた。

む? あれが世界の果てかしら?
よーし。
斉天大聖 惣流・アスカ・ラングレー様が来たことを記念に、サインしとこっと。

金斗雲を5本の柱の前に止めて、早速サインしようとポケットをまさぐるアスカ。その
時、大変なことに思い至る。

しまったーーーっ!
油性マジックがないっ!

えーーーっと。
えーーーっと。

あっ、彫刻刀があったわっ!

スカートのポケットに忍ばせておいた彫刻刀を見つけたアスカは、それをぎゅっと握り
締め5本の柱のうち1番背の高い真中の柱に名前を彫ることにした。

まずは、斉天大聖・・・っと。

ギリギリギリ。
ゴリゴリゴリ。

「いっ、いったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!」

次の瞬間だった。柱が大きく動いたかと思うと、雲の下から巨大な手の平が飛び出して
来た。びっくりして腰が抜けそうになるアスカ。

「キャーーーーーーーッ! な、なんなのよこれはーーーーーっ!!!」

「いたいのーーーーーーーーーーーっ!!!」

そしてその空に舞上って行った大きな手の平は、空の上で自分に向いたかと思うと、ま
るで蝿でも叩くかのように凄い勢いで迫って来た。思わずアスカも、迫り来る巨大な手
の平を前に悲鳴を上げることしかできない。

「ちょ、ちょっとーーーーっ! いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

ベチっ!

「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

マナと同じく、アスカも猿のしっぽを生やしたまま雲を付きぬけ、人間界に落ちて行く。
しかも、マナの時の自由落下とは違い、シバキ落とされたのでその速度は尋常ではなか
った。

「きんとうーーーーーーんっ!」

即座に金斗雲を呼ぶが、余程レイは痛かったのか、マッハ10を超える速度でアスカを
叩き落してしまったので、追いつくことができない。

迫り来る地面。だんだんと明らかになるその地形には見覚えがあった。真下に見えるの
は富士山のとんがった頂上。あれに当たるととても痛そう。

「マ、マジぃぃぃぃぃっ!!!?」

脂汗を出しながら落下していくアスカ。

ギューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

あっという間に富士山が迫る。

そして、チュッとキス・・・・なんてものではなかった。

ドガドガドガっ! ズガーーーーーーーンっ! バリバリバリっ!!!!!!

「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! いたーーーーーーーーーーーーいっ!」

富士山の中心に、アスカの体がめきょめきょめきょと減り込んで行く。仙人の術を会得
していなければ、ただでは済まなかっただろう。

仙人の術を会得してても痛いわよっ!!

あまりの衝撃に噴火を始める富士山。サードインパクトで人々が全ていなくなった後だ
ったのが、せめてもの救いだろう。

ゴンゴロゴンゴンゴーーーーーン!

溶岩と岩がアスカの上から次々と落下してきて、アスカの体を埋めて行く。

ゴチンゴチンゴチン!

「痛いっ! 痛いっ! いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」

そしてある程度噴火が落ち着いた頃、アスカは新たに出来た岩山と化した富士山の下で
顔だけ出して埋められてしまっていた。

「いたたたたた・・・な、なにすんのよっ! ファーストッ!」

「あなたが私の指に彫刻刀で名前を彫るから・・・。」

「えーーーい、こんな岩ぁっ! すぐに飛び出してやるっ! もう、いくらアンタでも許
  さないんだからっ! 殺してやるーーーーーーっ!」

マズイっ!
弐号機パイロットが怒ってるわ。

さすがに本気でアスカを怒らせると怖いと思ったレイは、まずは自分の身を守ることが
先決とばかりに、以前に大神様に貰った封印の張り紙を有無を言わせず岩山になった富
士山に貼り付けた。

間に合ったわ。
これで大丈夫。

「いっくわよーーーーーっ! でりゃーーーーーーーーーーーー・・・・ん?」

少し遅れて仙人の術を使い、めいいっぱいのパワーで力を込めたアスカだったが、岩山
はびくりともしない。

「ありゃ? なんで? もう1回・・・。でりゃーーーーーーーっ・・・ん?」

何度やっても駄目である。

「あなたの頭の上に封印を張ったの。もうその岩山は動かないわ。」

「ぬ、ぬわんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

「じゃ、私ラーメン食べるから・・・。」

「待ちなさいっ! 待ちなさいよっ! ファーストーーーーーーーーーーーーーーッ!
  こんちくしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

だがもうレイはラーメンを食べに戻ってしまっており、アスカの空しい声だけが再び戻
って来た赤い人間界に響き渡るのだった。

<人間界>

同じ頃、人間界では異変が起きていた。黄泉路から次々の人間が戻って来始めたのだが、
それと同時に魔物や死んだはずの使徒までもが人間界に湧き出ていたのだ。

更に最悪なことには、人間であるにも関わらず黄泉路を逆行した影響からか、人にあら
ざる力を身につけた者まであらわれ、暴れ始めるものすら現れていた。

そして、ここにもそんな被害を被った者達がいた。

「ねぇ。鈴原?」

「なんや。」

「この角と牙・・・どうしても取れないの。」

「かまへんかまへん。ワイかて、鬼の姿になってもたんや。」

「可愛くないわよね・・・。こんな姿じゃ。」

「何言うてんねん。姿がどないなっても委員長は委員長や。ワイは委員長のことが好き
  なんや。エヴァに乗ってやられた時、そう言うたやないか。」

「鈴原・・・。」

かつてエヴァ参号機に乗り足を失ったトウジと、その時に愛を確かめ合ったヒカリは、
再び人間界に戻った時に姿を鬼に変えてしまっていたが、変わらぬ愛を誓い合う。

「ほれになぁ。なんや知らんけど、魔物がいっぱいおるさかい、これくらい力ないと危
  ないわ。」

「そうね・・・いったいこの世界、どうなっちゃったのかしら?」

「大丈夫や。委員長はワイが守る。この紅葫蘆があれば、怖いもんなしやっ。」

トウジが取り出したのは、あの世から戻る時に拾った紅葫蘆と呼ばれる瓢箪で、この瓢
箪を持ちながら名前を呼ぶと、返事をした相手がこの中に取り込まれてしまうという不
思議な武器だった。

「鈴原、いつまでも2人で仲良く暮らして行きましょうね。」

「あぁ。なんや、この姿になって足も治ったし、畑でも耕して暮らしていこうや。」

「ええ。」

姿形は変われども、仲睦まじく暮らす恋人2人の平和な1シーンだった。

無論、あの世から黄泉路を逆行して帰って来たのは、トウジやヒカリだけではない。こ
こにも1人姿を変えて帰って来た女性がいた。

フッ。無様ね。
どうして、私がこんな姿に・・・。

4つの足でてくてくと歩く金色の鬣の馬。だが、ただの馬ではなく妙にメカニックでサ
イボーグのような出で立ちをしており、そのボディーには”MAGI”とロゴが入って
いる。

あら?
あそこにいるのは・・・。

「助けてくれーーーーっ! ぼくは、スイカを食べてただけなんだぁぁぁぁっ!」

「コイツ、サードインパクト前の人間だぜ。」
「コイツを食うと、寿命が1000年延びるって聞いたぜ。」

「なんで妖怪なんかがいるんだよぉぉっ。誰かぼくに優しくしてよぉっ!」

やっぱりシンジくんだわ。
仕方ないわね。

「ヒヒーーーーンっ!」

妖怪に食べられそうになっているシンジを見るに見かねたリツコは、パッパカパッパカ
走り彼の元へ近付いて行く。

「あっ、なんだか強そうな馬さんだっ! 馬さん、ぼくを助けてよっ!」

「ヒヒーーーーンっ!」

ジャキーーーンっ!!

馬になったリツコのボディーが開くと同時に、ポジトロンライフルが姿を現す。

発射よっ!

ズガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

一瞬のうちに辺りが光に包まれる。それと同時に、再び妖怪達は地獄へ通じる黄泉路を
あるべき方向へと進んで行った。

「うわーーーーーーっ! 馬さん、無茶しちゃ駄目だぁぁぁぁぁぁっ!!!」

だがそのあまりの衝撃に、シンジも一緒に吹き飛ばされ地面に顔から激突してしまう。
その横では、シンジなど無視して勝ったとばかりにヒヒーンといななきをあげるリツコ。

「いたたたたた。なんだか、この馬さん怖いよ・・・。」

怖いだなんて失礼ね。
でも・・・この姿、なんとかしなくちゃ。
私の美貌が台無しだわ。

「でも、助けてくれてありがとう。じゃ、ぼくもう行くね。」

待ちなさい。
私は喋れないから、シンジ君がいなくなると困るわ。

立ち去ろうとするシンジの後から、リツコはパカパカと付いて行く。歩けど、歩けど、
その異様にメカニカルな馬がずっと付いて来るので、シンジは怖くなってきた。

「わーーー、ぼく何も悪いことしてないよ。もう付いてこないでよ。」

「ヒヒーーーーン。」

「神様ぁぁ。馬さんが、怖いよ。助けてよっ。」

ピカッ!

その時、天国から眩い光が差し込めた。そのなんだかニンニク臭い光に、思わず鼻を摘
んでしまう。

「うっ・・・臭い。」

「碇君・・・。」

「ん? 綾波? 綾波なの?」

「ええ。久し振りね。」

「わぁ。綾波と話ができるなんて、ぼく嬉しいな。」

「碇君。よく聞いて。」

「どうしたの?」

「その馬は、赤木博士なの。」

「違うよ。リツコさんは、馬じゃないよ。おばさんだよ?」

パッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっ!!!

次の瞬間、さっきの馬に思いっきりお尻を蹴られた。それはもう、死んでしまうかと思
う程の痛さがお尻に襲い掛かってくる。

「いたたたたたたたたた・・・。酷いよっ! 馬さんっ!」

「実は、死者や妖怪が沢山人間界に出て来てしまったの。」

「えっ!? そうだったのかぁ。だから、妖怪がさっきいたんだねっ!」

「今から大事なことを説明するわ。よく聞いて。」

レイの話では、死後の世界から戻って来た人間は仕方が無いとしても、妖怪は全て地獄
に戻さなければならないということだった。また、人にあらざる力を持ったり姿になっ
てしまった者を、元の姿に戻す必要があるらしい。

なぜ、レイがそんなことをしているのか・・・それは。

レイが勝手にアスカとマナを人間界に叩き落したとこが、先程天界で大問題になったの
だ。困ったレイは、今問題になっている黄泉路の逆行事件のことを思い出し、慌ててこ
う答えてしまった。

『あの2人が、黄泉路を戻った妖怪を地獄に戻してくれるそうです。」

その案に、大神様からお褒めの言葉を頂いたのだが、これが嘘だとばれるとタダでは済
まない。

そこでレイが考えた作戦は、シンジにみんなを纏めさせて、まずは初号機を探し出す。
その後、シンジが初号機でフォースインパクトを起こせばなんとかなるはずだ。
無論、事の発端がレイの失敗を隠す為だということは、シンジには隠してある。

「ということだから、まずは初号機を探して欲しいの。」

「エヴァなんて、もう何処に行ったかわかんないよぉ。」

「碇君、このまま妖怪がいっぱいになったら、折角生き返った人はどうなるの? 碇君
  に世界の人を助けて欲しいの。」

「わかったよ。みんなの為だもんねっ。ぼく、頑張るよっ!」

うまくいったわ。
これで、また毎日ラーメンが食べれるのね。

「何か言った?」

「いいえ。なんでもないの。じゃ、約束よ。頑張ってね。」

「うん。わかったよ。じゃ、ぼくはこの馬のリツコさんと初号機を探せばいいんだね。」

はーぁ、リツコさん恐いもんなぁ。
1人で探す方が気が楽なんだけど・・・。
また妖怪とか出てきたら恐いし・・・。

あまりリツコと一緒に旅をすることに気乗りしないシンジだったが、自分だけでは妖怪
に太刀打ちできないので、その条件は飲むしかないだろう。また、リツコも同じように
利害の一致を考えていた。

シンジ君がフォースインパクトを起こしたら・・・。
私はあの華麗な姿に戻れるのね。
今の姿のままじゃ無様だものね。
ここは、協力すべきかしら。

「それから。葛城三佐も、弐号機パイロットも、霧島さんも、そこの赤木博士も、みん
  な仙術や妖術を身につけて、そっちの世界に戻ってるの。みんなを上手く纏めて欲し
  いの。」

「えっ、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!
  リツコさんだけでいいよーっ! そんなにいっぱい、恐い人が出てきたらやだよっ!」

レイにしてみれば、それは非情に困る。リツコだけでいいと言われたら、アスカとマナ
を人間界に叩き落してしまった事の言い訳ができなくなるのだ。

「妖怪はとてもとても強いのがいるわ。赤木博士だけじゃ、辛い旅になるの。」

「で、でも。じゃぁ、マヤさんとか、加持さんとか、他にいるだろ?」

「どうして、そんなに嫌がるの? 私は悲しいわ。」

「だって、どう見たって、メンバーが濃過ぎるじゃないかっ!」

「大丈夫。みんなが言うことをきいてくれるアイテムをあげるから。」

「えっ!? そうなの?」

「ええ。これをあげるから頑張って。約束よ。」

「うん。それなら、大丈夫だ。頑張るよっ!」

「受け取って。」

空高くから金色の小さな輪がキラキラ輝きながら落ちて来る。だいたい大きさは指輪く
らいだろうか。

「なにこれ?」

「これは緊箍よ。」

「なにそれ?」

「これを相手の指に嵌めて、賛美歌を歌ったら言うことを聴いてくれるわ。」

「そうなんだ。なーんだ。それならぼくにだって・・・って、あの? 1つしかないん
  だけど。」

「約束よ。頑張ってね。弐号機パイロットは富士山にいるわ。さようなら。」

「だから、1つしかないんだってばーーーーっ! 人数が足りないんだよーーーーっ!」

必死で天に向かって叫ぶシンジだったが、もうレイの姿は何処にも見えなくなっていた。
仕方なく、緊箍と言う金色の指輪を握り締めるシンジ。

「はぁ。約束しちゃったもんなぁ。仕方ないなぁ。やるしかないよね・・・。」

何度考えても、あまりにもメンバーが濃過ぎて早くも憂鬱になってくるが、約束してし
まったものは仕方がないと、シンジは諦めてリツコの傍に近寄って行く。

とりあえず、リツコさんが暴れないように、この指輪使おうかな・・・。
ん?
ひ、蹄じゃないかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!

どう頑張っても、リツコの樋爪には緊箍という指輪は嵌めれそうにない。

酷いよ。綾波・・・。
まぁ、いいや。他のメンバーの誰かに付けて貰おう。

「リツコさん? 旅に行くことになったよ。」

「ヒヒーーーン。」

どうやらリツコも、今回のことには利害の一致を見たらしく、うんうんと首を頷かせ、
シンジの襟元を咥えて背中に乗せてくれた。

「まずはアスカを探しましょうか。」

こうして、シンジの旅が始まったのだった。

<富士山の麓>

レイに教えられた通り、アスカがいるという岩山と化した富士山の元へリツコに乗って
シンジはやってきた。

おかしいなぁ。
この辺りにアスカが住んでるはずなんだけど・・・。

周りを見回すが何処にも人が住んでいるらしき人家が見当たらない。だがこの辺りにい
るはずなので、シンジはアスカを呼びながら探し続ける。

「アスカぁぁぁぁぁ。」

探す。

「アスカぁぁぁぁぁ。」

探す。

「アスカぁぁぁぁぁ。」

探す。

どれくらい探しただろう、いつしか日も暮れ掛かってきて、そろそろ今夜寝る場所を探
さなければならないと思い出した頃だった。

「シンジぃぃぃぃ、シンジなのぉぉぉ?」

アスカらしき女の子の声が聞こえて来た。ようやく会えそうだと、シンジは嬉しくなっ
て声のする方へ駆け寄って行く。すると・・・。

「あっ! アスカっ!!!」

シンジの目に見えたのは、岩山に閉じ込められ顔と手だけ見せているアスカの姿だった。

「大丈夫っ? アスカっ!?」

「シンジっ! シンジっ! 早く、この上のお札取ってっ!」

「わかったよ。」

言われた通り、ペリリとお札を剥がす。・・・と同時に、アスカの顔にニヤリと笑みが
零れ、そして。

ズッガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっ!!!!

「うわーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

一気に岩山が吹き飛ぶ。シンジはびっくりして、その場に腰を抜かして座り込んでしま
った。

「シンジ・・・。」

岩山から飛び出したアスカが近寄ってくる。

見上げるシンジ。

アスカは腰に手を当て言い放った。

「<−−ここに入るアスカのセリフをアンケートから選択して下さい。−−>」

以下は、アンケート結果により、物語の進行方向が変わります。

To Be Continued.
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