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西遊記物語 
Episode 02 -シーン1-
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<富士山の麓>

岩山から飛び出したアスカが近寄ってくる。

見上げるシンジ。

アスカは腰に手を当て言い放った。

「<−−ここに入るアスカのセリフをアンケートから選択して下さい。−−>」

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アンケート結果
1位:627票「シンジぃぃぃぃ、会いたかったよぉぉぉぉぉっ!!!」
2位:471票「ファーストのヤツっ! ぶっ殺すっ!」
3位:214票「もう汗でべとべとぉぉ。さいってーっ! まずはお風呂に案内するのよっ!」
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「シンジぃぃぃぃ、会いたかったよぉぉぉぉぉっ!!!」

天界を乗っ取りシンジとの甘い甘い生活をするのよ計画は、既にもろくも崩れ去ってし
まったが、1度は死別してしまった想い人との再会に、アスカはこれ以上無いくらいに
甘い声で喜びを表す。

ビクッ!

だが、そんな桃色の声を聞いたシンジは、体をビクビクさせて目を大きく見開いた。2
人の仲を死が分かち、心の内に秘めていたシンジへの想いの大きさにアスカが気付いた
など知る由もない。彼の知っている彼女が、こんなセリフを言う時とは・・・。

また、ぼくを騙そうをしてるの?

それも、彼女がシンジとコミュニケーションを取ろうとしてやっていたことなのだが、
鈍感なシンジは不器用な彼女の愛情に気付いてあげれていない。

また、ぼくをコキ使おうとしてるの?

それも、彼女がシンジとコミュニケーションを取ろうとしてやっていたことなのだが、
鈍感なシンジは不器用な彼女の愛情に気付いてあげれていない。

また、ぼくを鞭と蝋燭で苛めるの?

それも、彼女がシンジとコミュニケーションを取ろうとしてやっていたこと・・・もと
い、そんな行動は流石の彼女も取ったことはない。何を妄想しているのだろうか。

このままじゃ駄目だっ!
このままじゃ駄目だっ!
このままじゃ駄目だっ!

そうだっ! 綾波に貰った指輪があったんだっ!
これを付ければ、アスカも大人しくなるはずだっ!

いつも優柔不断な彼だが、今回ばかりは思い立つとすぐに行動を開始した。ポケットに
入れておいた金色の指輪を取り出すと、右手の親指と人差し指で挟み、アスカの前に差
し出す。

「これ、アスカにつけて欲しいんだ。」

「えっ!!!! な、な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

や、やばい。
アスカを大人しくさせる指輪だってこと・・・ばれた?

背筋に寒気が走り、冷や汗をだらだらと流して、顔を真っ青にするシンジ。それに対し
アスカの顔は、今にも爆発せんばかりに真っ赤になっていた。

いやーん。
そんなぁ。いきなり婚約だなんてぇ。
シンジったら、積極的なんだからぁ。

もじもじしながら頬に右手の平を当ててみたりして恥じらいの表情を浮かべ、赤く染ま
った顔を背けながらも、しっかりと左手の薬指をシンジの前に、そら嵌めろと言わんば
かりに突き出す。

ん?
なんだ? ばれてないのかな?
まぁいいや。チャンスだ。

この機を逃してなるものかと、急ぎ指輪を薬指に通す。その指輪・・・緊箍は、まるで
そこが自分の居場所だと主張するかのように、ぴったりとアスカの指に収まった。

やったっ!
これで、もうアスカに苛められないぞっ!

そんなシンジの思惑など露知らず、指輪を嵌めて貰ったアスカは心の中で飛び上がって
舞い踊っていた。

嗚呼、この日がこんなに早く来るなんてっ。
シンジぃぃぃ。
アタシは、もうシンジのものなのよーーーっ!

天にも昇らんばかりの気持ちで、アスカは右へ左へぴょんぴょん跳ねながら喜びを表現
し、両手を広げてシンジに抱き付きに行く。だがシンジはじりじりと後退し、アスカか
ら逃げ始めた。

な、なんだっ!?
フットワークしてるよ・・・両手広げて。
も、もしかして、右ストレートっ!? クロスカウンターっ!?

ぴょんぴょん。

「シンジぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

あ、綾波ぃぃぃぃっ!
あの指輪、ぜんぜん効かないじゃないかぁぁっ!!!

ぴょんぴょん。

「シンジぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

わぁっ! 掴まるぅぅぅっ!
助けてぇぇぇぇっ!

ぴょんぴょん。

「シンジぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

ガバっ!!!

とうとうシンジは掴まり、アスカの両手の中に納まってしまった。あまりの恐怖に、体
を硬くして目を閉じてしまった彼だったが、思っていた衝撃がいつまでたってもやって
こない。

「シンジぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

それどころか、背中に両手を回して自分を羽交い絞めにしているアスカの体がやわらか
くて、ぷくっとした2つの膨らみがやわらかくて。

あぁ、綾波ぃぃ。
なんだか知らないけど、幸せだなぁ。

アスカに抱き締められ続けるシンジは、いつまでもいつまでもその幸せな気持ちに浸り
続けるのだった。

<浜名湖>

一行は早速初号機を探しに旅を開始していた。リツコに跨るシンジと、その横を金斗雲
に乗って飛ぶアスカ。

あれ、なんだろう?

金色に光る雲に乗っているだけでも不思議なのだが、それ以上にアスカのお尻から生え
ているしっぽが気になって仕方がない。

しっぽ?
なんで?

金斗雲が右へ旋回すると、アスカは体を右へ傾けるが、しっぽは逆の左に伸びてバラン
スを取っている。ご機嫌にお喋りをしている時は、フリフリと右へ左へ振られている。

やっぱり、しっぽなの?
前からアスカにしっぽなんてあったっけ?
うーん。あったような、なかったような。

興味が沸いてしまったものは仕方がなく、触ってみたくてたまらない。リツコに揺られ
ていたシンジは、丁度真横にアスカが飛んで来た時、おずおずとその手をしっぽに伸ば
してみた。

むにゅっ。

念願のしっぽを片手でむにゅむにゅっと掴んでみる。やわらかい。

「あっあーーーーーぁぁぁぁん。」

その途端、突然アスカが背中を仰け反らせ妙に色っぽい声を漏らした。びっくりしたシ
ンジは、慌ててしっぽから手を離す。

「も、もうっ! 変なとこ掴まないでよっ!」

「ご、ごめんっ!」

変なとこも何もただのしっぽなのだが、怒られたのでわけもわからずとにかく条件反射
的に謝る。

「やめてよねぇ。1番敏感なとこなんだから。」

「ごめん・・・。」

そんなに敏感なところだったら、無防備に外に出しておかないでよ。
でも・・・。

さっきのアスカの声を思い出したシンジは、またもう1度握るんだと、強く強く誓うの
だった。

そんな一行が町に差し掛かると、ぽつりぽつりと人の声が聞こえてきた。どうやら、あ
の世から無事に人として帰還してきた人達のようである。

『しくしくしく。』

だがその声は、喜びに満ち溢れたものではなく、すすり泣くような悲しみに満ちた泣き
声だった。

どうしたんだろう?
誰か泣いてるよ。

初号機を見つけることを最優先に考えなければならないのはわかっているが、こういう
所は人の良いシンジである。気になって仕方がない。

「あの・・・どうしたんですか?」

家の前で家族や近所の人に囲まれて泣く、1人の役名も与えられていないエキストラの
少女に声を掛けると、その少女は涙声で語り始めた。

「わ、わたし・・・生贄になんかなりたくない。」

「「およよよよよよ。」」

少女の切なるその言葉に泣き崩れる両親。まわりに集まった近所の人々も、目に涙を溜
めて彼女のことを見詰めている。

「生贄? どういうことですか?」

「実は・・・。」

少女も両親も悲しみに暮れ、とても喋れる状態ではないので、近所の人がシンジに向か
ってこの町の悪夢を語りだした。

なんでもあの世から戻って来たのはいいが、この町には凶悪な豚の妖怪が住み着いてお
り、少女を出さなければ町ごと燃やすと脅してきたということだった。そして、この少
女で生贄は既に3人目となっているらしい。

「なんて酷いブタだっ! 退治しなくちゃっ!」

だがアスカもリツコも、どうも無償の人助けには乗り気でないようで、面倒くさそうな
顔をしている。

「えーーーー。そんなことより、さっさと初号機見つけましょうよ。」

「ヒヒーーーーーンっ。」

アスカの提案に、そうだそうだと首を縦に振ってリツコも賛同するが、お人良しのシン
ジにこの人達をほおっておくことなどできるはずもない。

「もういいよっ! ぼく1人で退治にし行くよっ!」

何の力もないシンジにそんなことができようはずもなく、ただの馬鹿であるが、彼のそ
の心意気だけは天晴れだろう。シンジはリツコから降りると、豚の妖怪がいるという浜
名湖の畔に向かって歩き出してしまう。

まずいわ・・・。
今シンジ君がやられたら、美しい私の体に戻れなくなるわ。

即座に自分の不利益を超高速で計算したリツコは、4つの足を動かしてシンジの後を追
い掛ける。

もー。シンジもブタの妖怪なんかほっとけば・・・ん?
ブタの妖怪? 燃やす?
ま、まさかっ!!!!

『豚』と『燃やす』の2つのキーワードに、アスカはあることにピーンと来た。どう考
えても、レイに豚に変えられそうになった炎の妖術を身につけたマナとしか思えない。

まずいっ!
あの女の所にシンジを1人で送り込むなんて危険すぎるわっ!
下僕に激甘LASを与えるようなもんよっ!

こうしてはいられないと、アスカも大慌てでシンジの後を追い掛け、一行の豚退治が幕
を開けることとなった。

「シンジ? ブタ妖怪のいる場所、わかってるの?」

「こっちの方だって、さっきの町の人が言ってたけど。」

「そーんなの、素直に出て来るわけないじゃん。頭使うのよ。」

「頭? どういうこと?」

「アタシが生贄の身代わりになるわ。」

「えーーっ!? そんなの危ないよ!」

「だーいじょうぶだってぇ。今のアタシには、ファーストの音速平手攻撃以外に怖いも
  のなんてないもん。」

「うーん・・・そうなの?」

「まっかせなさいっ!」

なんとしてもシンジがブタマナに掴まることだけは避けたかったアスカは、まずは自分
が先に彼女に接触しようと生贄身代わり作戦を発動し、泣いている振りをしながらハン
カチで顔を隠し、リツコの背中に乗って浜名湖の周りを進み始めた。

<豚妖怪の屋敷>

ここ豚妖怪の屋敷では、1人の茶髪の少女が両手に炎を溜めながら、怒りをメラメラと
燃やしていた。

酷いじゃないっ、綾波さんっ!
なにもブタなんかにしなくてもっ!

体系や顔が豚になることは免れたものの、しっぽと耳が生えてしまっている。これがウ
サギや猫ならまだしも、よりによって豚である。

絶対、天界にもう1度殴り込んで、元の姿に戻して貰うんだからっ!
あい しゃる りたーんっ!

拳を握り締め決意を固めるマナの目の前には、町から選抜した生贄・・・もとい精鋭の
少女2人が軍事訓練を受けている。

「欲しいものはなんでもあげるから、マナちゃんの為に働くのよぉっ!」

「「はーいっ。マナお姉さまっ!」」

最初は町の人に生贄だと聞かされ、さめざめと泣きながらやってきた少女達だったが、
マナが天界を取った暁には、褒美は思いのままだと聞かされ、今では完全に飼いならさ
れていた。少女ばかり狙うのは、シンジ以外の男の子と1つ屋根の下で暮らすのが嫌だ
ったからだ。

さぁ、今日は3人目の女の子が届くはずよね。
迎えに行かなくちゃ。

マナは少女達に訓練をしておくように言い付けると、早速屋敷を出て3人目の少女を引
き取りに浜名湖の湖畔へ出て行く。

うーん。そろそろ来る頃だけど。
どこかなぁ。

目をクリクリさせてこちらに向かって来る人影を探していると、帽子で顔を隠した男の
子に引かれた金色の鬣の馬に、ハンカチで顔を隠して泣いている少女が乗っている姿が
見えた。

あっ、あれね。きっと。
よしよし。これで精鋭が3人になったわ。

膳は急げとばかりに、馬に乗った少女に近付いて行く。その瞬間だった。それまでさめ
ざめと泣いていた少女が、ガバっと顔を上げたかと思うと金色の雲に飛び乗り突進して
来たのだ。

「な、な、なっ!!!!」

びっくりして目を見開くマナ。一方、飛び出したアスカの青い瞳には殺意すら感じられ
る。

「やっぱりアンタだったのねっ! シンジには近づけないわよーーーーーっ!!!」

「ア、アスカぁぁぁっ!? って、シンジ? シンジってっ!?」

よくよく見ると帽子で顔を隠していた少年とは、どうやらシンジだったようである。ま
さかこんなところで再開できるとは思っていなかったマナは、大喜びでシンジに駆け寄
ろうとするが、そんなことをアスカが許すはずもない。

「シンジに近付く女はぶっ殺すっ!」

「邪魔するなら、燃やすわよっ!」

金斗雲をマッハ10で駆り如意棒を振り翳すアスカと、両手に地獄の業火を溜めるマナ
が、正面から向き合う。そんな2人をシンジはあっけに取られて見ていた。

なんだ?
あれ、マナじゃないか?
うーーーーん。

久し振りに会ったマナを見ていると、もう我慢ができなくなってきたシンジは、思わず
駆け寄り、<−−この後に続くシンジの行動をアンケートから選択して下さい。−−>

以下は、アンケート結果により、物語の進行方向が変わります。

To Be Continued.
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