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西遊記物語 
Episode 03 -シーン2-
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<浜名湖>

金斗雲をマッハ10で駆り如意棒を振り翳すアスカと、両手に地獄の業火を溜めるマナ
が、正面から向き合う。そんな2人をシンジはあっけに取られて見ていた。

なんだ?
あれ、マナじゃないか?
うーーーーん。

久し振りに会ったマナを見ていると、もう我慢ができなくなってきたシンジは、思わず
駆け寄り、<−−この後に続くシンジの行動をアンケートから選択して下さい。−−>

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アンケート結果
1位:665票 思わず駆け寄り、マナのしっぽを握ってしまった。
2位:456票 思わず駆け寄り、マナに抱き付きキスしてしまった。
3位:255票 思わず駆け寄り、2人の前で腹踊りを始めてしまった。
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思わず駆け寄り、マナのしっぽを握ってしまった。この間のアスカの反応を見てしまっ
ては、ここは握るしかないだろう。

ぎゅっ!

お尻から生えているクルリンと円を描くブタのしっぽを思いっきり握って、期待に胸を
膨らませながら上目遣いにマナの様子を見上げると・・・。

「ぎゃぁぁぁーーーーーーぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!!!!」

「えっ!?」

「ぎゃぁぉぎゅぁぁぁぁぁぁぁぁおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

その目に映った光景は期待していたそれとは大きく掛け離れており、目を血走らせて口
から火を吐き暴れ始めるマナの姿。

金斗雲に乗りいざ攻撃すべく迫って来ていたアスカもこれにはおったまげたが、マッハ
10の速度で突進していた為、すぐに止まれるはずもない。

「キャーーーーーーッ! なによこれーーーーーっ!」

「ぎゃぁぁぁーーーーーーぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!!!!」

ボボボボボボーーーーーー!

辺り一面に次々と火柱が上がり、天まで焦がさん勢い。アスカは精一杯体重移動し、な
んとか回避しようとしたが、どこもかしこも炎、炎、炎。

「いーーーーーやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

逃げ場を失い、その地獄の業火に焼かれ地面に急降下。顔から激突。ぐしゃっ! 鼻を
打った。かなり痛い。涙が出る。

「わーーーーーーっ! なんだっ? どうなってるんだーーーっ!」

尻尾を握りったままのシンジは、右へ左へブンブンと振られ泣きそうな顔で悲鳴を上げ
る。この手を離したら、どこに飛ばされるかわからず、そこは間違いなく炎の中。

ボボボボボボーーーーーー!

マナは留まることを知らず、次から次へと口から怒涛のごとく炎を吐き撒き散らし、一
帯をまさしく火の海にしていく。

「助けてくれーーーーーーっ!!!」

「いやーーーーっ! 熱いのーーーーっ! お鼻、痛いーーーーっ!」

「熱いよぉっ! ぼくが悪かったよぉ。もうやめてよぉっ!」

「シンジっ! アンタ、マナに何したのよっ! なんとかなさいよっ!」

「何もしてないよぉぉっ!」

半泣きになりながら、火柱の中を右へ左へしっぽに振られているシンジの元へ、如意棒
片手にアスカが、赤くなった鼻を押さえて駆け寄って来る。

「なにもしてないわけないでしょうがっ! 」

「だってぇぇぇ。」

「このマナ見てみなさいよっ! 普通じゃ・・・はっ!」

マナを指差し大声で叫んだ瞬間だった、キランとその目がアスカを捕らえたかと思うと、
特大級の炎を口から発射。

ゴゴゴゴゴーーーーーーーーー!!!!!

「ぎゃ−−−−−−っ! ま、また、火ーーーーーーっ!!!」

直撃。

燃えるアスカ。

ブスブスブス。

髪もしっぽも服も真っ黒焦げになり、その場に倒れる。熱いなんて形容詞では言い表せ
ない程熱かったようだ。

「アスカ? 大丈夫なの?」

「大丈夫なわけないでしょうがっ!!!」

灼熱地獄と貸した浜名湖の湖畔で、まだマナのしっぽを握ったまま振られているシンジ
を、まっ黒焦げになったアスカが睨んで立ち上がった・・・その途端。

ボロボロボロと、黒く焦げた服が崩れ落ち・・・露になったのは。ぽっ。

「キャッ! キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

両手で胸を隠しアスカが座り込む。

「わっ!」

目を大きく見開いてびっくりするシンジ。もう、瞬きもできない。

「こっち見ないでっ!」

「あ、いや・・・その。」

「見ないでっ!!!!」

大慌てで呪文を唱え、仙人に教わった蘇生の術を使い、服も焦げた髪も元にしたアスカ
の目と、こっちを食い入るように見詰めていたシンジの視線が一直線に交わった。

「えっちっ! ちかんっ! へんたいっ! しんじらんなーーーーいっ!」

「い、いや、べつに見たくて見たわけじゃ・・・。仕方なく・・・つい。」

「ぬ、ぬわんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

真っ赤になるアスカの顔。先程まで恥ずかしくて赤らめていた顔とは異質の赤さだ。怒
っているのかもしれない。

「でりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

その顔を赤くし額に青筋を浮かべたアスカの手にあった如意棒が、一気に伸びたかと思
うと、その先端がシンジの顔面を捉る。

「わーーーーーーーっ!!!」

それまでしっぽを握っていたシンジだったが、如意棒にぶっとばされアッという間に浜
名湖の中へ沈んだ。

「あのバカっ。ん?」

その時だった、それまでしっぽを握られていたマナだったが、シンジがぶっとばされい
なくなると同時に、まるで糸の切れた操り人形のようにバタリと倒れた。

え? なに?

もしかして。
マナってしっぽを握ったら・・・。

そうか。きっとそうだわ。
これは使えるっ!

大暴れしていたマナが、まるで脱力感に襲われたかのように空ろな目をし、半分意識の
無いような顔で、地面の上をうにょうにょと動いている。

「マナっ! 起きなさいっ! マナっ!」

「う、うーーーーーん。」

「さっさと起きるっ!」

「え? わ、わたし・・・う、なんだか頭痛い。」

「アンタっ! まさか、今迄のこと何も覚えてないんじゃないでしょうねっ!」

「いたたたた、あんまり大きな声ださないでよっ。なによ? うーん・・・アスカとシ
  ンジと会って・・・えっと、それで・・・闘いが始まったはずじゃ。」

ニヤリ。

その言葉を聞いたアスカの顔に、不適な笑みがニヤリと浮かんだ。

「ったくっ! アンタはアタシに負けたのよっ!」

「えっ。えーーーっ? なんで?」

「覚えてないわけぇぇっ!? アタシに負けたアンタは、子分にして下さいって土下座
  してお願いしたじゃないっ!」

「そ、そんな・・・・。」

単にシンジがしっぽから離れたら大人しくなっただけ・・・というのが真相なのだが、
記憶の無い相手にはあること無いこと言ったもの勝ち。

「見てみなさいよっ! この焼け野原。」

「え・・・これ、わたしが?」

「そうよっ! ま、アンタも一生懸命戦ったけどね。アタシの足元にも及ばなかったわ
  けよっ!」

「こ、こんなになるまで頑張ったのに・・・負けたのね。」

周りを見ると、自分がどれほど頑張ったかがわかる荒れようだ。それでもアスカの服に
は焦げ跡1つ付いていない。

アスカには勝てない・・・半分以上騙されているとも知らず、この時マナは心底そう思
った。

「約束だから、アンタはアタシの子分よっ! わかったーーーっ!?」

「うん・・・約束なら仕方ないわ。」

やーりーっ!
強力な手駒をゲットしたわっ!

こうして子分になったマナを引き連れたアスカは、リツコに跨り初号機を探す新たな旅
に出掛けるのだった。

ん?
誰か1人足りないような・・・。

<伊勢>

一行は東海道を西へ西へ旅を続け、名古屋を通り過ぎここ伊勢まで足を進めていた。

「酷いよっ! もうちょっとで、浜名湖で溺れるとこだったよ!」

「アンタもしつこいわねぇ。浜名湖ってなによっ! 何処よっ!」

「あっちだよ。」

「あっちに見えてんのは、伊勢湾よっ!」

「今はそうだけど・・・。」

「なら、もういいでしょうがっ!」

「で、でもっ。」

「伊勢湾になんか恨みでもあるわけっ!?」

「ないけど・・・。」

「なら、もういいでしょっ!」

「う、うん・・・。」

泳げないシンジは、浜名湖で溺れ死にそうになっていたのだが、なんとか天国のレイの
元へ旅立つ前にアスカに助けられ、今はリツコの上に跨っている。

ヒヒーーーン。

そんなシンジを『無様ね』と言わんばかりに見ていたリツコの鼻に、なにやら美味しそ
うなご馳走の匂いが漂ってきた。横ではマナも、くんくんと鼻を鳴らしている。

「アスカぁ? なんか美味しそうな匂いがするよ?」

「ほんと。丁度、お腹ぺこぺこだったのよねぇ。」

「ねぇねぇ。行ってみよ? 美味しいものがあるわ。」

「そうと決まればレッツゴーよっ!!!」

「駄目だよ。アスカ。」

美味しいものを前にノリノリのアスカだったが、間髪入れずシンジが釘を刺す。アスカ
だけでなく、マナまでこれにはぶーと膨れる。

「こんなとこでのんびりしてちゃ駄目だよ。」

「何言ってんのよっ。こんなに美味しい匂いがしてるのにっ!」

「だって、早く初号機探さなくちゃ。妖怪があちこちで暴れてるんだよ?」

「なんでアンタはそんなにいい子ちゃんなのよっ! いいじゃないっ! 食べてからでっ!」

「駄目だってば。」

「じゃ。あのご馳走の傍に初号機があったらどーすんのよっ!?」

「そんな都合良くないってば。」

「無いってアンタに言い切れるわけっ!? 証拠はっ!?」

「そ、それは・・・。」

「そうだわっ! きっと初号機を見ながら、みんなで美味しいの食べてんのよっ!」

「うーん、でも。」

「無いって言い切れないんでしょっ!?」

「うん・・・。」

「じゃ、みんなで初号機探しに、あのご馳走まで行くのよっ!」

「わかったよ。」

とうとうシンジも、アスカの言うことにも一理あるかなと思い始め、みんなでご馳走の
ある所まで行くことになってしまった。

<伊勢神宮前>

一行が美味しい匂いを漂わせている伊勢神宮前までやってくると、まさしくそこには大き
な鍋が置かれており、松坂牛のしゃぶしゃぶの準備を料理人がしている最中だった。

「うわーーーぉっ!」

キラキラと目を輝かせるアスカが、喜びを声に表しながら駆け寄って行く。無論その後
にマナとリツコも続くが。

「リツコっ! アンタ馬なんだから、ニンジンしか食べれないでしょ。」

「!!!」

ぎょっとして自分の姿を新ためて見直すと、馬。口も草食動物にありがちな肉など食べ
れる構造になっていないことに気づく。

ヒヒーーーーーーン!

悲しみの嘶きを上げるが、食べれないものは仕方がない。無様な自分の姿を呪いながら、
がっくりとしてその場で足を止めてしまう。

フッ!
分け前が増えたわねっ!

「ねーねーっ! アタシのはどれなのーーー?」

「わたしも食べるぅぅっ!?」

「あの・・・。アスカ? マナ? まだ誰も食べていいなんて言ってくれてないんだけど。」

見ず知らずの人達を前に、あつかましいことこの上ない。シンジは怒られやしないだろ
うかと、ヒヤヒヤしながら眺めるばかり。

「ほらほら、早くアタシにも頂戴っ!」

「早くくれないと、燃やすわよ。」

マナ・・・それは脅迫というのだ。下手をすると、そこいらで暴れている妖怪達よりタ
チが悪いかもしれない。

「すまんなぁ、嬢ちゃん達。」

「ぬわんですってー、くれないってーのっ!?」

「いや、これは貢物なんだ。」

「アタシに? 貢いでくれるの?」

「・・・・・・。」

アスカに丁寧に話し掛けて来てくれた年配の料理人も、さすがにこのずーずーしさには
目が点になってしまう。

「いや。最上級の摘みと、蔵いっぱいのエビチュを貢がなければ、この町を洪水で押し
  流すと、恐ろしいカッパが言って来たんだ。」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

今度は、アスカとマナの目が点になる。もうこれ以上、何も聞かずとも犯人が誰なのか
全てがわかってしまった。

「アスカーーっ! 大変じゃないか。その妖怪を僕達で退治してあげなくちゃ。」

「アンタ・・・まさか犯人がわかってないんじゃ。」

「え? カッパの妖怪って・・・。」

一瞬、座った目でシンジを呆れたように睨んだアスカだったが、それ以上説明するのも
面倒になり、リツコの元へ近寄って行く。

「アンタ、一緒にいたんでしょ。なんでこうなったのよ?」

ヒヒーーーーン。

「あ、喋れないのね。もういいわ。」

泣きそうになるリツコ。草しか食べれなくなったばかりか、セリフも言えない。しかも、
アンケートで1位を取ったにも関わらず、西遊記のストーリーで1番影の薄い馬である
ことを、改めて実感したようだ。

「じゃぁさぁ、もしカッパを退治したら、アタシにこのご馳走全部くれる?」

「本当ですかっ!? 退治してくれたら、いくらでもっ!」

「交渉成立ねっ! 約束よっ!」

ニヤっとアスカが最上級の笑みを浮かべる。

へへーーん。
相手がミサトなら、家族のアタシが声掛けりゃ一発ってもんよっ!
楽勝っ! 楽勝っ!
この高級肉ってば、アタシのもんよーーーっ!!!

「シンジっ! 早速カッパを倒しに行くわよっ!」

「さすがアスカだっ! やっぱり、みんなのことを考えていたんだねっ!」

「だってぇ、シンジがそう言うんだもん。アタシはシンジの為に頑張るからねっ!」

急にモジモジしながら、アスカは頬をほんのり赤らめ恥ずかしそうにシンジを見上げる。

「え? ぼくの為に?」

「もちろんじゃない。」

「ア、アスカ・・・ぼく嬉しいよ。」

「だって、シンジの為だもーん。」

などと、しどろもどろの口調で言いながらも、心の中では大きなガッツポーズをし、拳
を天高く突き上げていた。

シンジのハート、ゲッチュよっ!

全てが計画通りに進み、ウキウキ気分でカッパ退治に出掛けたアスカだったっが、そう
そう話が上手くいくわけもなく・・・。

<紀伊山脈>

伊勢の料理人に言われた場所へやって来ると、確かにそこにいたのはアスカの想像した
通り、頭にお皿と背中に甲羅があることを除けば、間違いなくあのミサトだった・・・
のだが。

その目は完全に据わっていた。

「エビチュ持って来たかーーーーっ! うぉぉーーーーおおおおおおおおおっ!!!」

よ、酔ってる・・・。
それもかなり。

思いっきり冷や汗を流すアスカ。泥酔しオヤジと化したミサトの怖さは、長い間一緒に
家族たるものをやってきてイヤという程知っている。

「あ、アスカ・・・あれ、なんかミサトさんじゃない?」

「わかってるわよっ!」

「なんだか酔ってない?」

「わかってるわよっ!」

「かなり・・・やばいんじゃない?」

「わかってるわよっ!」

「に、逃げようっ! アスカっ!」

「わかって・・・・・・・・いやーーーーーーーーっ!!!!」

シンジとアスカが青褪めた顔でごちゃごちゃ喋っていると、エビチュが無いことに気付
いたミサトが、頭のお皿を光らせて凄い勢いで迫って来た。もう逃げるしかない。

「あっ! 川だっ! アスカ、マナっ、あそこに逃げようっ!」

「アンタバカーーーっ!?」

川に飛び込んで逃げようとするシンジを、大慌てがガバっとアスカが押さえつける。カ
ッパが追い掛けて来ているのに、泳げないシンジが川に逃げてどうする。

「マナっ! アイツはきっと火が苦手よっ! 攻撃すんのよっ!」

「で、でも・・・あれって葛城さんじゃ・・・。」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょうがっ!」

「で、で、でも・・・。」

以前の鋼鉄時代に世話になったミサトを攻撃するのを、マナはどうしても躊躇ってしま
う。そうこうしている間にも、お皿を光らせて迫り来るオヤジと化したミサト。

「馬っ! 攻撃よっ!」

名前も呼ばれず、ただ「馬」扱い。さすがにリツコは額に#マークを浮かばせ、プイと
横を向いてしまう。

「馬っ! なにしてんのよっ! 馬っ! コラっ! 馬っ!」

ピク、ピク、ピク。ブチっ!

とうとうキレてしまったリツコのボディーがジャキーンと開き、大量のミサイルが姿を
現した。

「そうよっ! 馬っ! 攻撃よっ! 目標、酒徒!」

ヒヒーーーーーーンっ!

ミサイル一斉発射。

ズガガガガガガガガガガガガガっ!!!

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

だがそのミサイルの全ては、アスカに向けて放出された。びっくりしたアスカは、大慌
てで如意棒を握り直し、それらを次々と叩き落として行く。

「なにすんのよっ! 馬っ!」

「えびちゅぅぅぅぅぅぅっ!!!」

だがリツコに文句を言っている暇もなく、泥酔ミサトがシンジに覆い被さっているアス
カに襲い掛かって来る。

「こんちくしょーーーっ!」

後ろは川。前からは酒徒が襲い掛かって来る。もう逃げ場はない。最後の手段だ。アス
カは、<−−この後に続くアスカの行動をアンケートから選択して下さい。−−>

以下は、アンケート結果により、物語の進行方向が変わります。

To Be Continued.
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