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ポケ使徒
Episode 11 -仲間-
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<第3新東京市>

アスカは、変わり果てた第3新東京市を見渡す。ネルフドイツ支部の映像では確認して
いたが、目の当たりにするとやはりショックは大きい。

「ひどい惨状ね。」

まずは、シンジを探さなくてはならない。この場合、考えられるシンジの行動は2つし
か無く、ミサト達を探しに行ったか、エヴァを探しに行ったかどちらかである。となる
と、どちらにしてもネルフ本部にいる可能性は高い。

「まずはネルフ本部へ、行くわよ。」

「そうね。じゃ、わたしが先導するから、アスカは付いて来て。」

「わかったわ。」

マナは、敵の警備兵の死角をつきながら、アスカと共にネルフ本部へと進入して行く。

<ネルフ本部>

ネルフ本部もかなり破壊されており、いくつかある進入路もことごとく土砂や瓦礫で埋
まっていた。

「本当に、こんな所にシンジがいるの?」

「わからない・・・けど、シンジも一度はここへ来たはずよ!」

他に探す所が思い付かないアスカは、今はここに望みを託すしかないのだ。

「でも、これじゃ進めないわよ。」

マナの言う通り、進入できる通路が見つからない。

「そういえば・・・。」

ネルフの停電になった時のことを思い返すアスカ。

「ダクトから、中に入れるかもしれないわ。」

アスカの案内で、ダクトへ向う2人。

「ここから、ダクトへ入れるわ。」

アスカとマナは、狭い真っ暗なダクトを腹這いになって進む。

ギシギシ。

ダクトがきしむ。どのくらい進んだのかわからないが、かなり下へ降りてきたような気
がする。

「あと、どれくらいなの?」

「確か、そろそろ出口だったと思うんだけど・・・。」

マナを先導するアスカだが、前の時の様にまた道を間違ったのではないかと不安になっ
てくる。

「もうちょっと進んで、出口が見つからなかったら引き返しましょうか?」

「もしかして、迷ってるの?」

「え・・・。」

その時。

ガンガンガン!

「キャーーーーーーーーーー!」
「キャーーーーーーーーーー!」

拳銃の弾がダクトの下から、アスカとマナの間に飛び上がってきた。

「誰かいるぞ!!」

ダクトの外から人の声が聞こえる。

ガンガンガン。

腹這いのまま、後づさりして行くマナ。目の前では、無数の銃弾が雨あられの様に飛び
出してきている。

「なんで、こんなところで見つかるのよ!」

アスカは、後ろから拳銃にあおられて、前進するしかなかった。

ガッコーーーン。

銃弾でぼこぼこになった、ダクトを切り裂き入ってくる黒服の男達。アスカは、かなり
前進していたので、見つからなかったが、後退して逃げていたマナは退却が遅れ、発見
されてしまう。

「おい! こっちにいたぞ!」

マナは、少し広くなった部分で、反転すると全力で上へと這い登っていった。幸いダク
トは曲がりくねっており、銃撃される心配は無い。

「まずいわねぇ。アスカと、はぐれてしまっちゃった!」

こういう場合、小柄なマナの方が、体の大きな男達より遥かにスムーズに前進すること
ができる。時間が経つにつれその差はどんどん広がり、マナは無事にネルフ本部の外へ
出ることができた。

一旦退却するしかないわね。アスカ、シンジを見つけるのよ!

再びダクトに戻ることなどできないし、これ以上の長居は危険なので、一旦郊外へと逃
げることにする。

<ターミナルドグマ>

ドガーーーーーーン!!

コンクリートの壁が崩れ去る。そのコンクリートが放つ粉塵の向こうには、赤い2つの
光が見えた。

「誰?」

銃を構えるミサト。

「僕だよ。ミサトさん。」

「え?」

粉塵の向こうから入ってきたのは、カヲルだった。

「みんな、一緒かい?」

「ええ、幸いここにいることは、今まで気付かれなかったわ。」

「それは良かったね。じゃぁ、脱出しようか。」

カヲルは、ネルフのスタッフを連れて、ターミナルドグマから出ていった。

<二子山の麓>

「ふぅ・・・。さて、これからどうしようか。」

マナは、二子山の麓でこれから自分は何をすべきなのか、考えながら歩いていた。

「ん? あれは?」

倒れている人が見えたマナは、ゆっくり近づきながら目を凝らす。

「!!!!!!!!  ・・・・・・レ、レイ!!!」

倒れていたのがレイだと気付いたマナは、慌てて駆け寄り抱き起こす。幸い呼吸はして
おり、意識を失っているだけの様だ。

「レイ! レイ!」

「ん・・・。」

マナに抱き起こされ、体を揺すられたレイは、うっすらと目を開ける。

「大丈夫? 何があったの?」

「あなたは・・・。」

マナに支えられながら、ゆっくりと体を起こすレイ。

「シンジは?」

「わからない。」

「わからないって・・・。何があったの?」

「ライチュウの攻撃にあったわ。応戦しているうちに、碇くん達とはぐれてしまったの。」

「そう・・・でも、ということは、ここにシンジはいたんだ・・・。」

「碇くんを探しに行くわ。」

「ちょっと待って、夜になるまで待ちましょ。明るいうちに近寄るのは危険だわ。」

「そうね。」

「それまでに、これでも食べていて。」

携帯食料をレイに渡すマナ。夜になった方が進入はしやすいのは確かではあるが、それ
以上に、レイの体力の回復が最優先だというマナの思惑があった。

<第3新東京市郊外>

ミサト達を、無事脱出させたカヲルは、人気の少ない郊外まで案内した。

「葛城三佐達には、ここでネルフ支部との通信回復をお願いするよ。」

「さすがは、ATフィールドね。楽勝で脱出できたじゃない。」

「そんなことないさ。もし、ライチュウと遭遇していたら、終わりだったね。」

「あなたはどうするの?」

「シンジ君と合流するよ。」

「シンちゃんは、どこにいるの?」

「シンジ君は、まだ本部の中さ。じゃ、行ってくるよ。」

カヲルは、ネルフ本部へ向って夜の第3新東京市を走って行った。

<ネルフ本部>

マナとレイは、マナが先程脱出してきたダクトへと続く道の前に立っていた。

「警備は3人。どう? いけそう? レイ。」

「ええ。」

「じゃ、突撃よ!」

「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

レイを先頭に、突進していくマナ。いきなり何事かと、振り向いた男達が最後に見た物
は、真っ赤な壁だった。

「さすがは、レイね!」

「先を急ぐわ。」

その時、マナとレイは、肩を後ろから捕まれる。

「キャーー!」

応戦しようとしたマナが、拳を固めて振り返った所には・・・。

「やぁ、久しぶりだね。」

「あなた・・・。」

「ほら、もうレイは入って行ってるよ。僕達も急ごう。」

ふと見ると、ダクトへと続く通路をレイは1人で歩いていた。

「ちょ、ちょっとまってよ。」

頼もしい仲間が2人も増えたことにより、少し余裕がでてきたマナは、いつもの明るい
調子で、レイを追いかけて行った。

「シンジはどこにいるの?」

「この下にいるのさ。」

「何をしているの?」

「エヴァを探してるのさ。僕はその間に、ネルフのスタッフを救出してたんだけどね。」

「やっぱり、そうなのね。」

通路をしばらく進むと、先程の瓦礫が崩れている場所へたどり着いた。

「こっちのダクトから進めるわ!」

マナが、ダクトを案内しようとするが・・・。

「碇くんが呼んでいる・・・。」

ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

瓦礫は、レイのATフィールドで木っ端微塵に吹き飛んでしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・むちゃくちゃだわ・・・。」

その先も、通路を塞ぐ瓦礫がある度に、レイはATフィールドで吹き飛ばし、ひたすら
一直線に進んで行った。

「これは、しばらく僕の出番は無いようだね。」

カヲルはいつもの微笑を浮かべながら、マナを挟む様にレイの後に続いて歩いた。

                        :
                        :
                        :

「おい! こっちだぞ!」

後少しで、ジオフロントに入るというところで、黒服の男達が駆け寄ってくる。

ガンガン。

拳銃をレイに向って撃ちながら、迫り来る男達。

「碇くんが、呼んでいる・・・。」

ズガーーーーーーーーーーーーーーン!!

「やれやれ・・・。」

ATフィールドを炸裂しまくるレイにあきれながら、カヲルとマナはエヴァケージ目指
して進行して行った。

そして、ようやくジオフロントに入る。

<ネルフ本部地下>

「近いようだね。」

「ええ。」

短い会話を交わすカヲルとレイ。

「ねぇ、どうしたの?」

何を言っているのかわからないマナは、何が起ころうとしているのか不安にかられる。

「これからは、君にも戦ってもらわなければいけない。ぼく達のATフィールドは、中
  和されてしまうから、防御するだけで精一杯なのさ。」

「そ、それって・・・。」

「近くにライチュウがいるってことさ。」

さらにケージへと向って進む3人。遠くから、幾人かの人の足音が近づいてくるのがわ
かる。

「戦闘開始ね!」

マナは拳銃を構え、レイとカヲルは弱まった2人のATフィールドを合わせて、マナを
守る体勢を取る。

ガンガンガン。

始まる銃撃戦。しかし、たとえ弱まったとはいえ、銃弾の防御くらいには問題無い。
カヲルとレイは、ATフィールドを張りながら敵との距離を詰め、マナは後ろから、確
実に敵を倒して行った。

その後、幾度かの銃撃戦を交わしたが、ATフィールドと、訓練を受けたマナの銃の腕
という組み合わせの前に、黒服の男達はことごとく殺られていった。

そして、もうすぐシンジがいるであろうケージという所まで来た時、天井が崩れ落ちて
くる。

ガラガラガラ!!!!

「キャーーーーーーーーーーーーー!!」

レイとカヲルは、ATフィールドを精一杯に張りながら、悲鳴を上げるマナを守りつつ
後退する。

「ライ・チュウーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

ビカビカビカーーーーバリバリバリーーーー!

ライチュウの奇声と共に、100万ボルトの電流が、廊下一面に流れ火を放つ。

「くぅぅぅぅぅ・・・・。」

全身全霊を込めて、ATフィールドを張り続けるレイ。

「がんばるんだ! レイ!」

カヲルも、必死でATフィールドを展開し、ライチュウからの攻撃から耐える。

「マナ君! 後退してくれないかい? 君を守り切れないからね!」

「で、でも!」

「あなたまで守れないわ・・・。」

退却すべきか、どうすべきか悩むマナに、苦痛にもがくカヲルから再び声が掛かる。

「早く!」

「わ、わかった!」

元来た道を掛け戻っていくマナ。これ以上いては足手まといになることくらいは、自分
でもわかる。ここまでの銃撃戦には役に立てたんだから、それでいいと思うことにした。

「くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「シ、シンジ君・・・まだか・・・。長くは持ちそうにないよ・・・。シンジ君・・・。」

ライチュウからの電撃に、弱まったATフィールドで耐え続けるカヲルとレイ。

「フ・・・タブリス。」

その時、崩れた天井の上からカヲルに声がかかる。そこには、白髪の老人が立っていた。

「や・・・やぁ、久しぶりだね。」

「我々の元に戻れ。」

「断らせてもらうよ。キールさん。」

「そうか・・・もう、ネルフは壊滅した。あとは、エヴァのコアをこのライチュウに組
  み込めば私に対抗できる物は無くなる。」

お互いにATフィールドが弱まっているのだが、使徒数匹分の力があるだけライチュウ
のATフィールドの方が優勢である。その上、ATフィールドの他にライチュウには電
撃があるのに対し、カヲルやレイには、攻撃する手段が無い。

「さすがはタブリスだな。他の使徒では、とても耐え切れないだろう。ここで殺してし
  まうのは勿体無いが・・・やむをえんな・・・。」

バリバリバリバリバリ。

「シンジ君・・・。」

「くぅぅぅぅ・・・碇くん・・・。」

辺り一帯を貫く電撃の音と、カヲルとレイの苦痛にもがく悲痛な叫びが、ネルフ本部に
こだましていた。

To Be Continued.
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