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ΔLoveForce
Episode 10 -愛の形と愛の心と-
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<レイの団地>

レイは、中学校の制服に着替え、出かける準備をしている。

碇くんにひどいことをしてしまった・・・。これは、私に唯一できる償い。
私には、他に何も無いから。

今日は、シンジと約束していたデートの日。アスカに言われた様に、レイからシンジを
食事に誘ったのだ。

アスカを怒らしてしまった。
これで、許してくれるといいんだけど・・・。
アスカ・・・。

レイは、玄関を出ていった。

<公園>

昨日から今日のデートが楽しみで仕方が無かったシンジは、いつもより早起きすると、
珍しく、朝風呂に入り、どこが変わったのかわからないが髪の毛をセットし、一番お気
に入りの服を着込んで、約束の時間の2時間も前に公園に来ていた。

初めての綾波とのデートだ。アスカとは、何度か出かけたことがあったけど、デートっ
て生まれて初めてだな。

今日という日に思いをはせ、シンジの顔は緩みっぱなしである。

<ミサトのマンション>

この間からレイがシンジのことを、意識し始めてるのがわかってたのに、こんなことに
なるなんて・・・・・・・。
シンジに、アプローチしても振り向いてくれない。
レイの心を引き止めようとしても、離れて行ってしまう。
アタシには、もう何もできないの?

シンジがレイとのデートに行ったことは、アスカも知っている。今朝、嬉しそうにデー
トの準備をするシンジの顔を見るのが、辛くてずっと寝た振りをしていた。

やっぱり、アタシは誰からも愛してもらえないの?

知らぬ間に、アスカの目からは涙が一筋こぼれていた。

<公園>

今日のデートでシンジは、ろくに服を持っていないレイに、何か服をプレゼントしてあ
げたいと思っていた。

約束の時間の5分前。

「綾波!!」

公園の入り口に見えたレイの姿に向って、大きく手を振り自分の存在を示す。
その声に気付き、シンジを見つけたレイは、ゆっくりと無表情で近寄ってきた。

「じゃぁ、行こうか。」

「ええ。」

午前中は、ぶらぶらと街を歩いて、食事の後、デパートに行こうと計画していた。
駅前の賑やかな場所に向って歩くシンジの後ろから、レイは付いて行った。

<駅前>

「綾波、どこか行きたい所とか無い?」

「わからない。」

「じゃ、じゃぁさ、ゲームセンターにでも行こうか?」

「?」

最近は、ゲームセンターと言っても、ハイテクレジャーセンターとして、デートコース
としてもよく利用されている。

「うん。面白いゲームがいろいろあるんだけど?」

「それでいいわ。」

了解も得られたので、シンジは第3新東京市で一番大きくて奇麗なゲームセンターに、
レイを案内した。

<ゲームセンター>

ここは第3新東京市でも人気のゲームセンターだが、まだ昼前ということで人の数も少
ない。

「綾波見てよ、エヴァがゲームになってるよ。」

機関銃で、迫り来る使徒らしきものを、次々と撃ち倒し、全ての使徒を倒せばクリアと
いうゲームだ。昔からあるタイプのゲームで、キャラクターにエヴァが使われているだ
けに過ぎない。

「やってみようよ。」

シンジは、もちろん初号機を取る。レイは、零号機を取ると思っていたが、弐号機を選
択した。

「え? 綾波、弐号機なの?」

「はじまったわ。」

「あ!」

シンジは、レイの行動に少し疑問を感じたが、ゲームに熱中することにした。
使徒の映像などはトップシークレットである為、このゲームの開発者も苦労したのだろ
う。とても使徒とは思えないゾンビの様な敵キャラクタが次から次へと表示されていく。

「うわ!」
「しまった!!」
「あ!」
「やられたーーー!!」
「この!!」

コイン投入し、1人で盛り上がるシンジ。横でレイは、無表情で敵を殲滅している。シ
ンジが5回目のコンティニューだというのに、いまだレイはろくにダメージを受けてい
ない。

「この!」
「ちくしょうー!!」
「このこの!!」

そして、ようやくエンディング。無表情のままゲーム機を離れるレイと、汗だくになっ
てゲームを離れるシンジ。

「綾波、すごいね。やったことあるの?」

「ないわ。」

「そうなの? 初めてで1回もやられないなんて、すごいじゃないか。」

「そう?」

「うん。そう思うけど・・・。」

2人は、その後いろいろなゲームをしたが、シンジ1人で盛り上がってるだけだった。
レイが喜びそうなゲームを探すのだが、レイは全てにおいて無表情で高得点をあげてい
るだけだった。

<ファミリーレストラン>

ゲームをした後、街をふらふらしていると昼時になった。
シンジとレイは、近くにあった入りやすそうなファミリーレストランに入る。

「疲れたね。」

「・・・・・・。」

「何を頼もうか?」

「なんでもいいわ。」

「そんなこと言わないで、何か決めてよ。」

あわててメニューを手に取ると、レイが見やすい様にテーブルの上に広げる。

「パンとサラダでいいわ。」

「え? それだけでいいの?」

「ええ。」

「じゃ・・・ぼくも、同じのにしようかな。」

2人分のパンとサラダ、そして飲みのもにアイスミルクティーを頼む。

「この後さ、ショッピングに行こうと思っているんだけど、どうかな?」

「・・・・・・。」

「どこのデパートがいい?」

「どこでもいいわ。」

「えーーーと、じゃぁ、駅前の大きなデパートに行こうか?」

「ええ。」

ロールパンと海草サラダとアイスミルクティーが、運ばれてくる。やはり、シンジにと
っては、ボリュームが足りない。

「さぁ、食べようか。」

無言でパンとサラダを食べるレイ。

「綾波ってさ、学校が休みの時は、何してるの?」

「別に何も。」

「そ、そうなんだ・・・。」

「ずっと、家にいるの?」

「・・・・・・。」

「綾波って色が白いから、あまり外に行ったりしないんだろうね。」

「・・・・・・。」

「ハハハ・・・。」

元々量の少ない昼食だったので、2人はすぐに食べ終わる。

「そ、そろそろ行こうか。」

「ええ。」

デートの時の昼食代は、男の方が払うものだと思っているシンジは、2人分の料金を払
おうとしたが、それをレイが止める。

「いいわ。自分で払うから。」

クレジットカードを出すと、自分の分を清算しだした。

「あ、綾波、いいよ。昼ご飯代くらいおごるよ。」

「いいわ。」

シンジもそれ以上は何も言えず、結局割り勘で勘定を済ませた。

<デパート>

シンジは、10代の女の子が着る服を扱っているコーナーに、レイを連れて行く。
情報誌によれば、ここは第3新東京市でも取り扱っている洋服の種類が多いそうなので、
レイの気に入るような服もあるだろう。

「綾波ってさ、いつも制服だから、何か服でもプレゼントしようかと思って・・・。」

「べつにいいわ。」

「だって、今日も制服だろ?」

「おかしいかしら?」

「え・・・お、おかしくなんて、ないけど、服くらい持っててもいいと思って・・・
  その・・・。」

「・・・・・・。」

まずいことを言ってしまったのかと、シンジは慌ててフォローする。

「と、とにかく、見てみるだけでもいいから、行ってみようよ。」

レイは、並べられている洋服をちらちらと見て回るが、手に取る様子も無く特別気に入
った服があるわけでもないようだ。

「気に入る様な服、置いてないのかな?」

「よくわからないわ。」

「そう・・・。」

シンジは、服を1着プレゼントしたくて、服の置いてある店をいくつも回ったが、結果
は同じで、レイは反応をほとんど示さなかった。

「疲れたね・・・。喫茶店にでも入ろうか?」

「・・・・・・。」

足もくたびれてきたので、シンジはレイを連れてデパート内の女の子受けしそうな喫茶
店で休憩することにした。

「何か、飲み物頼もうか?」

「ええ。」

「オ、オレンジジュースでいいかな?」

「ええ。」

昼食の時に、レイは自分からどれにすると言ってこなかったので、今度はシンジの方か
ら注文するものを決めることにした。

「このデパートって、綾波の好きそうな服とかって無かった?」

「・・・・・・。」

「他の、デパートにすればよかったかなぁ。」

綾波、あまり楽しくないのかな・・・。
ショッピングとかって、好きじゃないのかもしれないなぁ。

「今度、どこか行きたい所とかある?」

「べつに。」

なんとかレイの笑顔が見たくて、朝から一生懸命にレイの喜びそうなことを考えていた
が、ずっと無表情のままだ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

運ばれてきたオレンジジュースを飲む2人。

「この後、どうする?」

「そろそろ帰りましょ。」

え・・・・!?

「そ、そうだね・・・・。」

確かに、そろそろ夕方ではあるが、こんな時間に帰ることになるとは夢にも思っていな
かった。がっかりするシンジ。

<帰り道>

レイを家まで送り届けたシンジは、今日1日のことを考えながら歩いていた。

何が悪かったのかな?
綾波って、ゲームセンターが嫌いだったのかな?
やっぱり、ショッピングが嫌いなのかな?
あまり楽しそうじゃなかったな。

シンジにしてみれば、今回のデートは大失敗に感じられた。1度も見れなかったレイの
笑顔。今日1日、ほとんど聞けなかったレイの声。何が悪かったのか、いくら考えても
わからない。

<ミサトのマンション>

決めたわ!! ウジウジしているなんて、アタシらしくないじゃないの!!
レイを引き戻そうなんて、セコイことを考えるのがいけないのよ!!
レイなんて関係無いわ!!
シンジの気持ちが、今どこにあるかなんて、問題じゃないのよ!!
シンジに、アタックあるのみ!!
攻めて!! 攻めて!! 攻めまくるのよ!!!!

アスカは、握りこぶしを作ってベッドの上でガニマタになりガッツポーズを取っていた。
あまり女の子の取るポーズだとは、思えない。

ガチャ。

玄関の開く音がするが、『ただいま』の挨拶が聞こえてこない。

シンジ? ミサト?

アスカが、気になって部屋を出ると、元気の無いシンジが食卓の椅子に腰を降ろしてい
た。

「どうしたの?」

「ん? なんでもないよ。」

「楽しかった?」

「え? う。うん、まぁね。」

「よかったわね。」

「うん・・・・。」

「ところでさ、明日は用事ある? まさか、明日もデート?」

「そんなことあるわけないよ。」

「じゃぁさ、アタシのショッピングにちょこっとだけでいいから、付き合ってくれない?」

「え・・・。」

「だめ?」

「だめじゃないけど・・・。」

ショッピングという言葉が、今日のことを彷彿させ、あまり良い気分でない。

あ! ショッピングは、まずかったかなぁ。いつもシンジ嫌がるもんねぇ。
でも、今更引けないわ! 攻撃あるのみよ!!

「じゃ、決まりね。明日は朝から出かけるからね!!」

「うん。」

やった!!!

その返事を聞いたアスカは、顔を明るくするとあわてて部屋に飛び込み、明日着ていく
服と選び始めた。

翌日。

朝、シンジが起きてくると、既にアスカは朝食の準備を終えていた。着ている服は、い
ろいろ悩んだ結果、この間シンジに買ってもらった緑色のワンピースだ。

「あ、シンジ! おはよう!」

「今日は、早いね。」

「そりゃーねー。朝ご飯の用意できてるわよ。食べたら出かけましょ。」

食卓には、ロールパンと海草サラダそして、アイスミルクティーが並べられていた。

これは・・・。

また、昨日のことを思い出し、憂鬱になるシンジ。

「早く食べちゃいましょ。」

「そうだね。」

アスカは、今日のことを考えうきうきしている。食事の間ひっきりなしに話し掛けてく
るアスカの相手をしているうちに、シンジも昨日のことを忘れ楽しくなっていった。
そして、朝食を食べ終わった2人は、食器の後片付けをすると、駅前に向って出かける。

<駅前>

「今からデパートに行っても、ちょっと早いわね。先にゲームセンターにでも行って時
  間を潰しましょうよ。」

「え? ゲームセンター?」

「嫌なの?」

「そんなこと無いけど・・・。」

「じゃ、決まりね。」

アスカは、シンジの手を引くと、昨日シンジとレイが行ったゲームセンターに連れて行
く。

やっぱり、ここなのか・・・。

「あーー、シンジ! エヴァがゲームになってるわよ! やりましょうよ!」

「そうだね。」

コインを入れるシンジとアスカ。

「アタシが、初号機をやるわね。シンジは弐号機よ。」

「え? どうして?」

「そりゃ、シンジの乗ってるエヴァを選びたいっていうのが、恋する乙女ってもんじゃ
  ん。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!! 綾波・・・。

そして、ゲームが始まった。

「くそ!」

昨日と同じように、一生懸命ゲームをするシンジ。

「あーーーーん、やられちゃった。」

再度コインを投入し、横でアスカもシンジ以上に興奮して一生懸命やっている。

「シンジ! そっちの使徒をおねがい!」

「わかった!」

お互いに、声を掛け合いながら何枚もコインを投入して、ゲームを楽しむ。

「あ! コインが無くなったよ。ちょっと、まってて!」

「アタシのを使ったらいいじゃない・・・、あ! アタシのも無い!」

「ぼくが戻ってくるまで死なないでよ!」

「アタシの分のコインもお願い!!」

ゲームを離れて、数十秒でシンジは走り戻ってくる。

「シンジ!! 早く! 早く! 死んじゃったよ! あと11秒でコンティニューできなく
  なるよ!」

「えーーー、ちょっと、まって!!」

ゲーム台に駆け寄ると、あわてて2枚コインを入れ、コンティニュー開始。

「あ、予備バッテリーだ! アスカにあげるよ。」

「OK!」

そして、エンディングを迎え、ゲーム終了。

「結構面白かったわねぇ。また、やってみたいわ。」

「そうだね。次は、どのゲームをしようか。」

「あれあれ!! あの自転車漕ぐやつで、勝負よ!!」

「よぉし!!」

2人は、昼まで白熱してゲームを楽しんだ。そして、昼食時、近くのファミリーレスト
ランと言えば、どうしても昨日行った所しか無い。

「はぁ、暑いわねぇ。」

「あれだけ、はしゃいで遊んだら、そりゃ暑いよ。」

「よく言うわね。シンジだって、汗まみれじゃない。それより、どれを頼もうか?」

昨日見たメニューを、再び見るシンジ。ロールパンと海草サラダに目が止まる。

「アスカは、どれがいいの?」

「やっぱり、ハンバーグかなぁ。あ! シンジ! このたらこスパゲッティーにしてよ!」

「どうして?」

「ハンバーグも食べたいし、スパゲッティーも食べたいのよねぇ。半分こしましょうよ。」

「うん、それでいいよ。」

「じゃ、決まりね。」

アスカは、ウェイトレスを呼ぶと、ハンバーグとスパゲッティーを注文する。

「ねぇねぇ、シンジ、駅前の大きなデパートに、この後行きたいんだけど、いいかな?」

「え? あそこなの?」

「何? 何かあるの?」

「いや・・・べつにいいよ。」

「そろそろ、新しい服がほしいのよねぇ。あそこのデパートに置いてある服って、セン
  スもいいし品揃えも多いし、この辺りじゃ一番良いのよ。」

「そうなんだ。」

何気ない話をしていると、先程のウェイトレスが、ハンバーグとスパゲッティーを運ん
でくる。

「じゃ、アタシが先にスパゲッティーを食べるから、シンジはハンバーグを食べてて。」

スパゲッティーを自分の元に引き寄せるアスカ。シンジは、ハンバーグを食べ出す。

「どう? ここのハンバーグおいしいでしょう?」

「うん。そうだね。おいしいよ。」

「だって、ここはハンバーグが売りだからねぇ。ここに来たらやっぱりハンバーグを食
  べないと。」

鉄板の上に乗っているジュージューと音を立てたハンバーグを、ふーふーと冷まして食
べる。なかなか美味しい。

「そろそろ、交代しましょ。」

ハンバーグが音を立てなくなった頃、アスカはスパゲッティーとハンバーグを入れ替え
る。

「スパゲッティーも美味しいね。」

「でしょ。」

その時、後ろの席から女の子の声が聞こえてきた。

『やっぱり、この熱々のハンバーグを食べるのが美味しいのよね。』

『でしょう、分厚い鉄板の上に乗ってるから、他の店より熱くていいのよね。』

その声を聞いたシンジは、既にアスカの食べるハンバーグが、冷めていることに気付く。

「何? じっとこっち見て?」

「ごめん・・・ハンバーグ冷めちゃったね。」

「あぁそんなこと気にしてんの? いいわよ別に、シンジに冷たくなったハンバーグを
  食べさせられるわけないじゃん。」

パクパクとハンバーグを口にほおり込みながら、アスカは笑顔で答えた。

アスカ・・・。

<デパート>

食事が終わった2人は、昨日シンジがレイと行ったデパートの洋服コーナーに行く。

「ねぇ、シンジ! こんなのどうかなぁ。」

昨日は、いろいろ見て回ったけど、綾波は、どれも気に入らなかったみたいだったなぁ。
そういや、前アスカと一緒に服を買いに来たこともあったな。

「ねぇ! シンジ!! 聞いてるの!?」

「あ、ごめんごめん・・・。で、何?」

「もぅ! この服見てよ!! 似合う?」

「うーーーん。それより・・・ちょっと待ってて。アスカに似合いそうな服があるんだ。」

シンジは、昨日服を探している時にみつけた、少し離れた所に掛けてある服を持ってき
た。あまり、レイには似合いそうに無かったので、昨日は手にしなかったが、アスカに
なら似合いそうだ。

「わぁ! これいいわ! うん、これにする!」

濃い赤色の、ツーピースの服。少し大人びた感じがする。

「いいの? もっと、いろいろ見てからの方がいいんじゃないの?」

「いいのいいの。初めて、シンジが選んでくれた服だもんね。これで、いいわ。」

「じゃぁ、プレゼントしてあげるよ。」

「え? いいわよ。こないだも買ってもらったんだし。」

「いいんだ。服1着分の余裕があるから。」

シンジは、ハンバーグの時のお礼も兼ねて、アスカにこの服をプレゼントすることにし
た。

「ほんとうは、プレゼントしてほしかったのよね。代りに、シンジに何か服をプレゼン
  トするわね。」

「別にいいよ、そんなの。」

「いいからいいから。」

アスカは、シンジにプレゼントしてもらった服の入った袋を抱きかかえて、今度は男性
用の洋服売り場へとシンジを連れて行った。

「やっぱり、服よりはGパンの方がいいわね。」

「本当に、買ってくれるの? なんだか悪いよ。」

「プレゼントしたいの! アタシが選んであげるわね。」

店頭に並ぶGパンを、鼻歌まじりで次々と見ていくアスカ。

「これなんかどうかしら?」

アスカが選んだのは、真っ白なGパンだった。

「白?」

「ええ。黒とかだと暑いでしょ。それに、シンジには濃い色より、薄い色の方が似合い
  そうだし。このGパン作ってるブランドって、今流行ってるのよ。ちょっとは、シン
  ジもお洒落しなさいよね。」

確かに、他のGパンと比べてデザインも良く、作りもよさそうだ。

「うん。それでいいよ。ありがとう。」

「いいって、いいって。」

アスカは清算を済ませると、Gパンの入った紙袋をシンジに手渡す。

「はい。」

「ありがとう。」

「じゃ、喫茶店にでも行きましょうよ。」

「そ、そうだね。」

なんだかシンジは、昨日のデートをもう一度やり直してるような気分になってきた。

<喫茶店>

喫茶店に入った2人は、オレンジジュースを2つ頼む。

「疲れたでしょう? シンジは、ショッピングとかあんまり好きじゃないものねぇ。」

「そうかな?」

レイに気を使いながら、デパートの中を歩き回った昨日と比べると、遥かに楽な様な気
がする。

「あれ? 珍しいわね。いつもショッピングっていうと、嫌がるのに。」

「ははは・・・。」

「この服、大事にするからね。」

「あ、Gパンありがとう。」

「ただのお礼だから、気にしなくていいわよ。でも、大事に履いてよね。」

「この後、どうする?」

「明日は学校だしねぇ・・・。
  そろそろ帰りましょ。」

「そうだね。」

昨日、この時間、この場所で、レイに言われたことと同じことを言うアスカ。
シンジは、昨日自分が言ったセリフと同じ返事を、今日は笑顔で答えた。

To Be Continued.
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