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ΔLoveForce
Episode 14 -過ちと反省(後編)-
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<病院>

「き・・・霧島さん!?」

「あ!!!」

自分の名前を呼ばれて振り返ったマナは、そこにシンジ達の姿をみつけて一瞬凍りついた。

「アンタが、どうしてここにいるのよ!?」

「くっ!」

顔を伏せながらマナは、止めようとする黒服の男達を振りきって逃げ出す。

「追え!」

一斉にマナを追い駈け出す黒服の男達。

「ぼく達も追い駈けよう!」

「ええ!」

これは普通じゃないと思ったシンジ達も、マナを追い駈けた。

「アスカ、こっち!」

マナの走って行った方向を見ていたレイが、先回りする為に近道へシンジとアスカを誘
導する。

「あの先に、トイレがあるわ。そこに隠れるの。」

シンジとアスカがレイの言う通りにトイレへの入り口で隠れていると、マナが走ってく
る音が聞こえた。

「今よ!」

ガバッ!

「キャーーーー!!」

「シッ!!」

追っ手を振り切ろうと必死で走ってきたマナが角を曲がった瞬間、突然アスカとレイが
トイレに引き込んだので、悲鳴をあげてしまう。

「ここで、あいつらをやり過ごすの!」

「アスカさん! 綾波さん!」

「シッ!」

ドドドドドという音とともに、トイレの前を走っていく男達の足音が聞こえる。4人は
しばらく息を潜めていたが、男達が通り過ぎて行くとようやく安堵の息をもらした。

「アンタ、いったい何物なのよ!」

「・・・・・・・・・。」

「答えなさいよ!」

「言いたくなけりゃ、いいじゃないか。」

「でも、この娘なんか変よ! スパイだったらどうするのよ!」

「言いたく無い秘密くらい誰にでもあるよ。」

「シンジがそういうんなら・・・アタシはいいけど・・・。」

「それより、ここからどうやって脱出するかを考えようよ。」

おそらく出入り口は既に封鎖されているだろう。のこのこ出て行ったらそれこそ袋のネ
ズミだ。シンジとアスカは、何か妙案は無いものかと思考錯誤する。

「葛城三佐に連絡すれば、なんとかしてくれるわ。」

それまで黙っていたレイが、携帯電話を取り出した。

「そうだね、ミサトさんにお願いしよう。」

                        :
                        :
                        :

ミサトが言うには、16時04分00秒きっかりに病院の前へ車で行くから、飛び乗れ
ということだった。
シンジ達は時計を合わせて、トイレから走り出すタイミングを計る。

「そろそろね。」

2分前。そろそろギリギリの時間だ。

「いくよ。」

「ええ。」

「せーーの!」

4人は一斉にトイレから飛び出した。エレベータを使うと、止められる可能性があるの
で階段を駈け降りる。

1分前。

早く着いて捕まることを恐れた為、ぎりぎりの時間を設定した。

30秒前。

全力で病院内を駈けぬける4人。1秒の遅れが命取りとなるのだ。

15秒前。

ようやく入り口が見えて来た。表にはミサトの車は無く、病院の門の所から黒服の男達
がこちらを見ている。どうやらシンジ達に気付いた様だ。

5秒前。

入り口目前。黒服の男達も病院の敷地内を建物の入り口へ向かって正面から走って来て
いる。

1秒前。

キキキキーーーーーーーーーーー!!

「乗って!!」

テールスライドさせながらミサトが病院の建物の前に白いバンを横付けした。急いで乗
りこむ4人。

「行くわよーーーー!! どっかに捕まって!!」

ギャギャギャギャギャ!!

ホイルスピンしながら、ロケットスタートする白いバン。

ガンガンガン!!

後ろから銃声が聞こえる。

「わーーーーーー!!」
「きゃーーーーー!!」

ミサトの運転のすさまじさに、車の中から悲鳴が聞こえる。

「ミサト! もうちょっと、マシな運転しなさいよ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

「これじゃ追ってから逃げれても、頭打って死んじゃうわよ!」

アスカの苦情もなんのその、ミサトが駆る白いバンは第3新東京市を猛スピードで駆け
抜けて行った。

<山道の休憩所>

ミサトがネルフへ助けを呼ぶ為に電話をしている間、4人は休憩所でミサトの運転によ
って受けたダメージを回復していた。

「はーーー、ミサトを呼んだのは失敗だわぁ。自殺行為ね・・・。」

「でも、おかげで逃げられたじゃないか。」

レイはミサトの運転にもこたえた様子は無く澄まし顔だが、アスカとシンジは休憩所の
椅子にぐったりと腰を落としていた。

「ごめんなさい・・・わたしの為に・・・。」

「まったくよ!」

「わたし、実は戦自のスパイなんです。」

「やっぱりねぇーーー。どうりで、シンジに接近したわけだわ。」

「アスカ! そんな言い方やめろよ。」

当初命じられたのは、シンジの彼女として接近する計画だったが、あの宿の近くの池で
レイの存在を知ったマナは、計画の遂行は不可能だと進言した。というのも、元々マナ
はこういったことをするのが嫌だったのだ。
しかし、その夜のケイタとムサシの脱走という予期せぬ事態が発生したのだ。
2人のことを心配したマナが上役に助けを請うと、シンジからエヴァのことを聞き出せ
れば助けてやるということだった。
マナは2人を助ける為に、必死で考えた。そして、レイとアスカの間で悩むシンジに、
相談相手という形で近づくことにしたのだ。

「なーるほどねぇ。」

「わたしも仲間を助けたくて必死だったから・・・。でも、裏切られた。」

「ところで、アンタ。ずっとアタシ達のことを偵察してたの?」

「ごめんなさい・・・。でも、1つ疑問があるの。綾波さん?」

「なに?」

黙って話を聞いていたレイの方へ、突然振り返ったマナは、真剣な眼差しで見つめる。

「綾波さん、本当に碇くんのことが好きなの?」

「え・・・・・・・・・・・・・。」

「わたしには、綾波さんが碇くんのことを好きだとは、とても見えないわ。」

「私は・・・。」

このことは、シンジもアスカも疑問に思い始めていたことだ。レイを除く3人の視線が、
レイに集中する。

「私は、相互間テストの時、碇くんにひどいことをしてしまった・・・。だから・・・。」

「なによそれ?」

アスカが、ずいと前に出てレイを睨み付ける。

「アンタ、そんなことでシンジと付き合うことにしたんじゃないでしょうね!」

「私には、これくらいしか償う方法がなかったから・・・。」

シンジは愕然として、声も出ない。

パーーーーーーーーーーーーーーン!!

アスカの平手が、レイの頬に炸裂した。

「そんなことをして、シンジが喜ぶとでも思ってンの!!! アンタは!!!」

「ア、アスカ・・・。」

レイは赤く腫れた頬を押さえながら、驚きの色を表情に浮かべてアスカを見上げる。

「確かに、あの時アンタがしたことはいけないことよ! だからといって、アンタがや
  ったことは、それ以上に絶対にしちゃいけないことなのよ! わかってんの!? シン
  ジの心をもてあそんだのと同じなのよ!!」

アスカは泣きながら、レイを睨み突ける。

「アスカ・・・。私・・・。ごめんなさい・・・。」

「綾波・・・もういいよ・・・。アスカも・・・。」

ようやく、シンジが口を開いた。

「何がいいってのよ!! この娘は! この娘はーーー! アタシが欲してやまないもの
  を、もてあそんだのよ!!」

自慢の髪の毛を振り乱し、涙を飛ばして叫ぶアスカ。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」

涙を浮かべてシンジとアスカに謝り続けるレイ。しかしアスカは許す気はないらしく、
これでもかというくらい睨み付ける。

「なんで、アンタはこんな娘を許せるってのよ!!」

「間違ってたってわかって、綾波も反省してるんだ。これ以上責めて、どうするってん
  だよ!」

「シンジ・・・アンタ・・・。」

「碇くん・・・ごめんなさい・・・。やっぱり、私はアスカのことが好きなの・・・。
  もう、私なんか相手にしてもらえないかもしれないけど、それでもアスカのことが・・・。」

アスカの睨み付けていた目から、少しづつ怒りの色が薄れていく。

「アタシも・・・そうやって、シンジに許してもらったわ・・・。」

「でも・・・もうアタシには人を愛する資格なんて・・・。」

レイは、アスカから目をそらして地面を見つめる。その地面を濡らすレイの涙が、黒い
斑点をいくつも作り出していた。

「レイ・・・シンジがもう1つ言ってたことがあるの。」

「・・・・・。」

「どんな状態になっても綾波を想い続ける・・・んだって。」

アスカは腰を下ろすと、うつむくレイを見上げながら微笑んだ。

「このアタシに向かってそんなこと言うのよ? 信じられる?」

「アスカ・・・。」

「でも、アタシも言うわ。アタシはシンジが好き。でも、アンタも好きならとことん想
  い続けなさい!」

「アスカぁぁぁーー。」

レイはそのままアスカの胸に倒れ込んだ。そんなレイの頭をなでてやるアスカ。

「嫌いになったりなんてしないから。」

しばらく、レイはアスカの胸の中でじっとしていたが、何か思い立った様にアスカから
離れるとシンジの前までゆっくりと歩いて行く。

「碇くん・・・私、取り返しのつかないことを・・・ごめんなさい・・・。でも、私は
  アスカのことを想い続けることにする。」

レイは、ふかぶかとシンジに頭を下げた。

「もう・・・いいんだ。本当に綾波がぼくのことを好きになってくれるまで、ぼくもが
  んばるから。」

あまり、感情を表に出すことのないレイだが、シンジの言葉を聞きその場で泣き崩れる。

「みんなーーー、そろそろ行くわよ! この尾根を越えたらネルフの部隊と合流できる
  わ!」

ミサトの呼び声を聞いたシンジとアスカは、泣き崩れるレイの手を取り車に向かって歩
き出すのだった。

<山道>

ミサトの車が尾根を抜けると、存在するはずのネルフの部隊は無く、あったのは戦自の
封鎖線だった。

キキキーーー。

さすがにバンごときでは突破できない為、やもおえずミサトは車をその場に停止した。

「あなた達! こんなことをしてただで済むと思ってるの!」

窓をあけて抗議の声を上げた時、前に止まっていた黒塗りの車からゲンドウが降りてく
る。

「葛城三佐、何をしている。」

「指令・・・。」

「何をしている。」

「父さん! 霧島さんを助けてよ!」

ゲンドウが出てきたので、シンジも黙っておれずマナの保護を懇願した。しかし、ゲン
ドウはシンジの言うことなど、聞こうともせず戦自に合図を送る。

「キャーーーーーーーー!!」

「霧島さん!!」

「霧島さん!!」

連れ去られようとするマナを助けようと、シンジとアスカが抵抗するが戦自の兵士に取
り押さえられる。ミサトとレイは、苦虫を噛み潰した様な顔でじっと見つめているだけ
だった。

「碇くん!! アスカさん!!」

「霧島さん!!!」

「離しなさいよ!!! このぉぉぉ!!!」

しかし、シンジとアスカの抵抗も空しくマナは黒い車に乗せられて連れて行かれてしま
った。

<学校>

それから数日後。

「おい、シンジ! あれ霧島ちゃうんか?」

トウジが窓から外を見ると、何台もの戦自のトレーラーが学校の前に止まっており、そ
のうちの1台に檻に入れられた様な形でマナが乗せられていた。

「き、霧島さん!」

シンジに続いて、アスカとレイも駆け寄ってきた。

「シンジ! 助けに行くわよ!」

有無を言わさす教室を飛び出して行く3人のチルドレン。しかしトレーラーは、シンジ
達が校庭に出る前に走り去ってしまっていた。

「くそーくそーーー!!」

シンジは、校門を叩いて悔しがる。その時、レイの携帯にネルフからの呼び出しがかか
った。

<ネルフ本部>

シンジ達は、ネルフ本部の司令室へ集合する。

「今戦自は、霧島マナを囮として湖の辺に配置しているわ。そこで、脱走したロボット
  が第3新東京市からの脱出を計ったら、食い止めて欲しいと、戦自から正式な依頼が
  あったわ。」

「なんでアタシ達が、戦自なんかの手伝いをしなくちゃいけないのよ! 絶対嫌よ!」

「いえ・・・やります。」

断固拒否を示すアスカの横で、シンジがミサトの命令を受け入れた。

「シンジ!」

「これは、霧島さんを助け出す最後のチャンスなんだ・・・。」

「碇くんの言う通りね。私もやるわ。」

「そうね・・・よーーーし、まっかせなさい!」

3人はエヴァに乗るとミサトの指示に従いエヴァを配置し、第3新東京市の周りにロボ
ットの包囲網を引いた。

<第3新東京市近辺>

マナを囮にされ、たまりかねたムサシはロボットを湖から出し、マナを救出しようと戦
自と戦っていた。

『みんな、聞いて!!』

シンジ達にミサトからの通信が入る。

『ロボットを取り逃がした場合は、N2爆雷で攻撃されることが決議されたわ! ぜー
  ーたいに逃がすんじゃないわよーー!!」

「ひどーーーい!!」

「はい。」

「霧島さん・・・助け出してみせる!」

ロボットは湖近辺でしばらく暴れていたが、マナを捕獲すると全速力で飛行し始めた。

「シンジ! そっちへ行ったわ!」

「わかってる!」

シンジが待機していた方向へロボットが向かった為、アスカとレイは必死で追い駈ける。

「これが・・・最後のチャンスだ!」

シンジは、空の彼方から現れるロボットを神経を集中して待ちつづけた。

・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。

「ごくっ。」

・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。

ゴーーーーーーーーーー。

来た・・・。

シンジは、ロボットを捕まえる為に飛び上がる態勢を整え、タイミングをみはからって
いた。

ゴーーーーーーーーーー。

今だ!!

飛行するロボットの高さまで初号機は飛び上がり、両手を広げてロボットを押さえよう
とした。

「!!!!」

ロボットとぶつかるギリギリのところで、身をかわすシンジ。初号機は、そのまま落下
していく。

「霧島さん! くっ!」

ロボットが、マナの乗っているコンテナを手にしていた為、体当たりで止めることがで
きなかったのだ。

「逃がした!!」

アスカとレイに通信で状況を報告する。

「碇くん! 今、私の上空を爆雷機が飛んで行ったわ!」

「くそっ!」

ぎりぎりまでシンクロ率を上げ、ロボットを追いかけるシンジ。シンジの次に近い所に
いたアスカも、シンジを追いかけてきている。

「シンジ! 時間が無いわ!」

「わかってる!」

その時、エヴァのレーダーに映っていたロボットの位置が停止した。このまま停止して
いたら、シンジだけは爆雷の前にぎりぎり間に合う計算だ。

<草原>

シンジがようやくロボットと接触すると、そこにはロボットから降りたマナとロボット
のパイロットらしき男の子がが抱き合っていた。

「霧島さん!」

シンジはエヴァから降りると、マナとその男の子をエントリープラグに乗せようと、駈
け寄った。

「2人とも! 早く乗って!」

しかし、マナは首を横に振ってシンジの誘いを断った。

「今助かっても、戦自に連れ戻されるわ。もう嫌なの・・・。」

「霧島さんっ!!」

強引に2人をひっぱろうとするが、その手を振りほどいてロボットに乗り込む2人。

「碇くん、いろいろありがとう!!」

ロボットのコックピットから、シンジを見下ろして手を振るマナ。

「霧島さん!!! 戻って来て!!」

「さようなら!」

もう、爆雷機が上空まで来ており、あと数秒で爆雷が開始される。しかし、シンジは諦
めず呼びかける。

「霧島さん!!!」

「お願い! 碇くんは、もう戻って!! あなたまで死んでしまうわ!!」

「嫌だ! ぼくだけでなんて!」

「シンジ!!!」

そこへ、弐号機が到着しアスカが駆け下りてくる。

「アンタ! 何してんのよ! タイムリミットを過ぎてるわ!」

「でも、アスカ!!」

「アタシは、アンタを失うわけにはいかないのよ!!! それに、これは彼女の選んだ
  道なのよ! アンタにとやかくできる権利は無いわ!!」

「・・・・・・・・くっ!」

アスカに説得されたシンジはエヴァに乗り込む前に、ロボットの方を振り返った。そこ
には、ロボットのパイロットの少年と抱き合う幸せそうなマナの姿があった。

「くそ・・・。」

2人を救えなかった自分を怨みながら、シンジがエントリープラグに入り離脱。

ピカッ!

後ろで閃光が光った。

                        :
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                        :

<爆破後>

シンジ,アスカ,レイは、N2爆雷で攻撃された地点に残された、溶けた金属の固まり
の横に立っていた。

「霧島さんは、あれで幸せだったんだろうか・・・。」

「きっと、パイロットの男の子が好きだったのよ。」

「ぼくもそう思う・・・けど、死ぬなんて・・・。」

「アタシが霧島さんの立場でも、シンジと一緒に死ぬ方を取ると思うわ。」

「アスカ・・・。」

「碇くんなら、どうするの?」

特に他意は無いようだが、レイが何気ない言葉をシンジに問い掛ける。

「ぼくなら?」

「ええ。」

「!!」

何かを思い立った様に、瞳を輝かせるシンジ。

「ぼくなら、自分が死んでも綾波やアスカを助ける。」

「自分だけ助かろうとなんてアタシならしなし、たとえシンジがそう言ってもきっと言
  うことをきかないわ。」

「だからぎりぎりの所までがんばって、無理矢理脱出させれば・・・。きっと、あのパ
  イロットの男の子も・・・。」

「確かに、脱出ポットが無い戦闘ロボットなんてありえないわ。その可能性もあるわね。」

アスカにとっても、マナは親友である。なんとか生きていることに望みを託したい。

「ここからだと、芦ノ湖か富士五湖あたりへ打ち出すはずだわ。」

レイも位置とポッドの持つ出力を考え、打ち出されたであろう位置を予測する。

「よーーし。探すわよ!」

「うん!」

可能性が見えてきた3人は、少し明るい表情でネルフ本部へと戻っていく。

「でも、シンジ?」

「何?」

「もし、アタシが霧島さんの立場になった時、アタシだけ助けたりしたら許さないから
  ね!」

アスカはじろっとシンジと睨みながら、前を歩くシンジの腕に抱き着く。そんな様子を
後ろから見ていたレイは、シンジのことを赤い瞳に炎を燃やして睨み付けるのだった。

<芦ノ湖>

加持からマナが漁船の乗組員によって救出されたことを聞いた、シンジ達はマナとの最
後の別れに芦ノ湖まできていた。

「霧島さん。ありがとう。」

シンジが、マナと握手する。

「私も・・・。」

シンジと入れ替わり、レイもマナと握手する。

「アンタに会えて、よかったわ。」

次は、アスカが別れの握手をした。

「みんな、ありがとう。アスカさん、綾波さん。がんばってね。」

「ええ。」

「まっかせなさい!」

「それから、碇くん?」

「なに?」

「ちょっと・・・。」

マナが、アスカとレイの元からシンジだけ少し引き離して、なにやら耳打ちした。

「じゃ、そろそろ行かなくちゃ。」

「新しい街でもがんばってね!」

「さようなら。」

「霧島さん! よくわからないけど、考えてみるよ!」

マナは手を振ると、黒い車に乗って去って行った。

「さって、アタシ達も帰りましょうか!」

「そうね。」

「うん。」

「ところで、シンジ? 霧島さん、さっき何て言ったの?」

「よくわからないんだけど・・・。」

「何よ。」

「人には言っちゃダメだって・・・。自分1人で考えなさいって・・・。」

「なにそれ?」

「よくわかんない・・・。」

シンジは、帰る道でマナの言葉を考えていた。

『間違ったと気付いてからじゃ、反省しても取り返しのつかないことがあるのよ。』

To Be Continued.
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