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ΔLoveForce
Episode 31 -赤き瞳は最後のシ者の証-
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<地上>

「イヤーーーーーーッ!!! レイーーーーーーーーッ!!!!」

零号機自爆。

爆風に吹き飛ばされる弐号機。エントリープラグの中で涙を撒き散らしながらも、アス
カは即座にレイ救出に向かうべく、必死で体勢を立て直そうとレバーを操作する。

自爆・・・今から救出に行ってもムダ。そんな思考は無理やり頭の中から排除し、がむ
しゃらにレバーをガチャガチャ力任せに、まるで殴りつけるように、叩きつけるように
押して、引く。

「レイッ! レイッ! チクショッ! チクショーーッ!!!!」

地面を蹴り弐号機を強引に立ち上がらせる。

バランスが取れない? 関係無い。とにかく地を蹴り、レイの元へ。

きのこ雲が上がる爆炎の中へ突進。

炎の中央に揺れる黒い影目掛け。

「レイっ! 応答シテッ! レイッ! レイッ!!!!」

後先考えず、業火の中へ突っ込む。

だが、その行く手にあったのは。

真紅の壁。

「使徒ッ! コンチクショーーーーーッ!!!」

砂煙の中、バズーカを構え。

トリガーを引く。

ありったけの弾を一斉射撃。

ATフィールドは中和した。手応えはあった。

「ヨクモッ!!!!!!」

『わーーーっ! なにするんだっ!!』

「え?」

ズガーンっ! ズガーンっ! ズガーンっ!

『痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! やめてよぉっ! アスカぁぁ〜。』

シンジの声? 目の前で初号機の顔にバズーカが次々と命中している。

「な、なんでシンジがっ!? 使徒はッ!? レイ、レイはっ!!?」

『綾波を助けに出て来たのに・・・。酷いじゃないかぁ〜っ!』

「へ?」

涙でぼやけた視界で状況をよく見ると、初号機が零号機のエントリープラグを握ってい
る。シンジが映るモニタに目を向けると、バズーカが命中したフィードバックでだろう、
両手で顔を押さえ、エントリープラグの中でのた打ち回っている。

「レイッ!」

今はバカなことをやっているシンジを相手にしている余裕はない。アスカは弐号機から
エントリープラグを射出し外に出ると、砂埃が舞う中を一目散にレイのプラグへ向かっ
て走って行く。

それを見たシンジは、顔を押さえてひーひー言いながらも、地面にレイのエントリープ
ラグを置く。

「こ、こんのーーーーっ!!!!」

両手にめいいっぱい力を込め、エントリープラグの重く堅いハンドルに全身の体重を乗
せ回す。

「レイっ!!」

ハッチが開き溢れ出てくるLCLの中プラグ内に入ると、コックピットに座り下を見て
うな垂れているレイの姿があった。

「レイっ! 生きてるのっ!? レイっ!」

無言で僅かにコクリと頷くレイ。

「レイーーーーっ!」

無事を確認したアスカは、目に涙を溜めて思いっきり抱きついた。だがレイはこっちを
見ようとはせず視線を逸らす。

「どうして・・・私生きているの・・・。」

「!」

「どうして・・・まだ生きてるの・・・。」

「今、なんて言ったのよ。」

「誰も私を必要としないのに・・・。」

「くっ!!!」

レイを抱きしめていたアスカは、その体を離し目を吊り上げる。レイが何を考えている
のか、自分のことのように痛い程わかる。

だからこそ、似た苦しみを味わったアスカだからこそ、このままにはできなかった。

「アンタバカーーーっ!!!」

バッシーーンっ!!!

思いっきり平手で殴る。レイは赤くなった頬を押さえて視線を落とす。

「アスカには碇君が・・・。」

「だからなんだってのよっ!」

「誰も私を必要としていない。私はただの道具・・・。」

「それがどーしたってのよっ!」

「生きている意味・・・無いもの。」

「えーそうよっ! アンタはみんなになんて必要とされてないかもしんないわよっ!」

「うっ・・・。」

さすがに最愛のアスカに言われ、唇を噛み締め目に涙を溜める。

「アタシだってっ! みんなに必要とされてなんかないっ!」

「そんなことないわ。あなたには碇君が・・・。」

「そうっ! アタシにはシンジがいるっ! そしてアンタも必要とされてるじゃないっ!」

「私?」

「アタシはっ! アタシは、アンタとシンジがいれば強くなれるしっ、幸せなのっ!
  だから・・・。」

平手を打ち赤くなった頬を優しく右手で押さえ、反対の頬に左手を包み込むように添え、
アスカはレイの顔を自分の方へ振り向かせると、優しく微笑む。

「アタシには、アタシにはアンタが必要なの。」

レイの赤い瞳が、青い瞳に吸い込まれていく。

近付くアスカの顔。

触れ合う唇と唇。

「ん・・・。」

吐息が漏れる。それと同時に目を閉じるレイ。

その閉じられた目から、綺麗な綺麗な涙が一滴落ち、LCLに波紋を描いた。

<レイ湖>

アルミサエル戦でレイが作った湖に、今日は3人で遊びに来ている。当初この湖は第3
芦ノ湖と名付けられる予定だったが、誰が言い出したのか結局レイ湖という名前となり、
レイの名前は湖を作った女として語り継がれていくこととなった。

今3人は新しく名所となったレイ湖の、湖畔に出ている出店でアイスクリームを買い、
それぞれの好みの味を楽しんでいる。レイは枇杷の葉ソフト、アスカはチョコレートソ
フト、そしてシンジは関東某所の名物であるソフトを食べていた。

この芋ソフト美味しいや。
アスカも食べるかな?

「ねぇ、アスカ?」

「ん?」

「これ美味しいよ。ちょっと・・・げふっ!!!」

振り向いてアスカに自分のソフトクリームを一口あげようとしたシンジだったが、次の
瞬間レイに足を引っ掛けられその場に転んでしまう。顔にソフトクリームが激突してぐ
ちゃぐちゃだ。

「私の枇杷の葉。美味しい。食べてみて。」

「じゃ、アタシのチョコもちょっとあげるわね。」

ソフトクリームを交換して貰い、頬を染めながら嬉しそうに食べるレイの足元で、顔中
ソフトクリームだらけにしたシンジが起き上がってくる。

「酷いよ・・・。」

「アンタ何やってんのよ。勿体無いわねぇ。」

「だって、綾波が・・・。」

「アスカ。ボートがあるわ。乗りましょ。」

「面白そうじゃん。」

レイに手を引かれて走って行くアスカの後ろから、とぼとぼとシンジが付いていく。顔
中ねちゃねちゃべとべとだ。

「シンジぃ、もっと早くぅっ!」

「もっとって、これで限界だよ。」

ボートの中央にアスカとレイが仲良く並んで座り、対面に座ったシンジはボートを漕ぐ
係。

「あっ! あっちのカップルに負けてるじゃないっ! だらしないわねぇっ!」

「そんなこと言ったって、向こうは軽いじゃないか。こっちは2つも重い・・・
  はっ!!」

ドゲシッ!

「いたーーーーーーーーーーーっ!」

グーである。ボートの上でばたりと倒れたシンジは、殴られた頭を抑えながらレイ湖の
水面をボートから覗き見る。そこに映るのは自分の殴られて頬を赤くした顔と、楽しそ
うに話をしているアスカとレイの姿。

こんな時間がずっと続いたらいいのに・・・。
平和っていいな。

「シンジっ! 頑張って漕いでよっ! あのカップルに負けたら承知しないわよっ!」
「碇君。ボートも焦げない人。アスカ・・・こんな人やめたら?」

「わかったよっ! 漕ぐよっ! 漕げばいいんだろっ!」

死に物狂いで汗をいっぱい掻いてボートを一生懸命漕ぎ始めたシンジは、息を切らしな
がら思った。

こんな時間がずっと続いたら死んじゃうよ・・・。
早く終わってよ。

ボートを存分に楽しんだアスカとレイ、そしてへとへとに疲れたシンジは、お昼時とい
うこともあり、近くのラーメン屋に昼食を食べに入った。

「私、わかめラーメン。」

「フカヒレチャーシュー大盛ねっ!」

「ぼくは、えっと、えっと、あっ! カレーラーメンっ!」

「えっ? カレーラーメンなんてあるの? アタシもそれにするっ! レイは?」

「私は・・・。」

「一緒に食べましょうよ。」

「そう? わかったわ。」

結局みんなカレーラーメンになったのだが、出て来たそれは真っ赤なカレーで超激辛の
物だった。一口食べただけで舌が麻痺しそう。

「なんで、アンタこんなの頼むのよっ!」

「ぼくだって、こんなに辛いって知らなかったんだよ。」

「碇君の言う通りにすると、いつも最悪。」

「ちょっと待ってよ。ぼくは別に食べて欲しいなんて・・・。」

「男の癖に言い訳するなんてみっともないわよっ!」

「そんなぁぁ。」

ただでさえ頼んだラーメンが異様に辛くてめげそうなのに、更にアスカとレイに睨まれ
てシンジは泣きそうだった。

強烈なカレーラーメンもなんとか食べ終わり、綺麗な散歩道を散歩する。
左端のシンジの腕にアスカが左手を絡ませ、そのアスカの右腕にレイが左手を絡ませ、
3列で歩くちょっと奇妙な恋人達。

「あっ、綺麗な小石っ。」

湖畔沿いに作られた散歩道の脇、湖の水辺と接する所に夕日のように赤く光る宝石のよ
うな小石をアスカが見つけた。

「ほんとだ。綺麗だね。」

アスカは片手でシンジに抱き付いており、もう片方の手はレイに抱き付かれているので、
シンジがその小石を拾ってあげる。

「アリガト、シンジ。なんか宝石みたい。今日の記念に大事にしよっと。」

「アスカ? 私も・・・。」

「ん?」

レイが自分のことを指差してアスカを見ている。どうやらレイも同じ物が欲しいようだ。

「ちょっと待って、探してあげるよ。」

「嫌。」

「なんで? 欲しいんじゃないの?」

「碇君が拾ったのは嫌。」

「もっ、アタシが拾ってあげるわよっ!」

「うんっ。」

ニコっと笑うレイ。アスカはシンジとレイから腕を離し、同じような綺麗な小石を探し
始める。

いいんだ、どうせぼくなんて・・・。
しくしく。

ん? でも・・・この小石って。
うーん。
なんだっけ?
まぁいいや。

1人シンジが立つ前で、アスカは一生懸命レイの為に小石を探している。

「無いわねぇ。もうないんじゃない?」

「そう・・・アスカは私にくれないのね。」

「あー、そんな顔しないでよ。一緒に探しましょ。」

「うんっ。」

ニコっと笑うレイ。

「ぼくも探すよ。」

「碇君は、向こうへ行ってて。」

ブスっとするレイ。

「・・・・・・。」

そんなにぼくのこと嫌わなくても・・・。
でも綾波、よく笑うようになったな。

この湖を作ったあの戦いの後、アスカと一緒にいるレイを見ると本当に幸せそうである。
昔は恋した少女の笑顔、今では恋愛対象ではなくなったとしても、そんな顔を見ている
と嬉しくなってくる。

「ねぇ。やっぱりさっきシンジが拾ったのが最後だったのよ。」

「・・・・・・。」

「そんなに欲しいの?」

「アスカに拾って欲しいの。」

「でも、無いじゃない。」

「碇君に拾って貰った時、アスカ嬉しそうだったもの。」

「はぁ〜、はいはい。わかったわよ。頑張って探すわよっ。」

かれこれ1時間近くが過ぎようとしている。アスカとレイは水辺にへばりついて2つ目
の石を探し続けている。

ん?
あっ、あれっ。

何気なく視線をシンジ巡らした時だった。2人が探している場所から少し離れた所に、
たった1つだけ砂に塗れて同じ光を放つ石を見つけた。

どうしよう。
ぼくが見つけたら、また綾波いやがるだろうな。
なんとかしてアスカに気付かせないと。

「アスカぁっ!」

「なに?」

「向こうに大きな木があるよっ。」

「今それどころじゃないのよ。」

見向きもしてくれない。作戦失敗。どうすればさりげなくアスカに気付かせることがで
きるだろう。

そうだ。
アスカをこそばして、顔を振り返らせよう。

名案を思いついたシンジは、背後から忍び寄る。アスカは全く気付く様子もなく、レイ
の為に一心不乱に砂を掻き分け探している。

全然気付いてないな。
ちょっと脅かしてみようかな。

真後ろまで近付いても全然気付かないので、ちょっとしたいたずら心が湧いてきたシン
ジは、そーっと脇の下に手を伸ばした。

「えいっ!」

こちょこちょこちょ。

「きゃーーーーっ!!!」

突然のことにびっくりしたアスカは、体を悶えさせ勢いよく跳ね起きた。が、足場が砂
だった為バランスを崩してシンジの方へ倒れ込む。

「きゃーーっ!」

「わーーーっ!」

ドサッ。

体を地面にぶつけないように、咄嗟にシンジはアスカを抱きかかえる。アスカも何がな
んだかわからないままシンジに抱きつき、2人は砂場に倒れ込んだ。丁度アスカがシン
ジに覆い被さる形で2人は抱き合っている。

「も、もぉ。急になにすんのよっ。びっくりしたじゃないっ。」

「ごめん。まさかあんなに驚くって思わなくて。」

「そりゃ、びっくりもするわよ。急にっ!」

「ごめん。怪我なかった?」

「うん・・・。大丈夫だけどさ。」

少しいい雰囲気になりつつある2人・・・だったが、その背後でズモモモモという何か
が燃え立つような気配を感じた。

「碇君、いつまでアスカを抱きしめてるの。」

声のした方に振り返ると、レイが赤い瞳を逆三角にしてこっちを睨んでいるではないか。
よく考えると、ずっとアスカと砂の上で抱き合ったままだ。

「違うんだ。綾波。これは、あのね。」

「あっ! レイっ、あんなとこに、赤く光ってるのがあるわよっ! 小石じゃないっ!?」

「えっ? ほんと?」

起き上がろうとしたアスカが、どうやら先程の赤い小石を見つけたようだ。怒っていた
レイもその朗報に機嫌を直し小石を拾いに行ったアスカの後を追って行く。

助かった・・・。
なんとか目的は果たせたけど。
ちょっと怖かったよ・・・綾波のあの目。しくしく。

他のことにはあまり関心がないレイも、アスカのこととなると感情が噴出すので、あま
り刺激しないようにしようと心に決めるシンジであった。

夕方になり、3人はそろそろデートも終わりにして家へ帰ることにした。

「じゃ、アタシ達こっちだから。」

「アスカ・・・・。」

帰り道も途中までは機嫌の良かったレイだったが、いざ自分の団地へ向かう道とミサト
のマンションへ行く道の岐路に来て、寂しそうな顔をする。

「アスカはいつも碇君と一緒なのに・・・。」

「そんな我侭言わないの。」

「私は独り。」

「違うでしょ。寝る所が違うだけ。アンタは独りじゃないわ。」

「でも・・・。」

かなり寂しそうである。シンジにしてみても、やはりレイは嬉しそうにしているのが良
く、こんな顔はあまり見たくない。

「良かったらぼくが家まで送って行こうか?」

「絶対嫌。」

”絶対”まで言わなくても・・・。
しくしく。

「諜報部員の管理の問題とかあるから、アンタはあそこにいなくちゃいけないのよ。わ
  かるでしょ?」

「でも・・・。」

「また明日うちに遊びに来たらいいじゃん。」

「・・・・・・。」

「わかったわ。じゃ、ミサトにレイを今度うちに泊めていいか聞いてといてあげるから。
  今日は我慢して帰りなさいって。」

「本当?」

「アタシはウソつかないでしょ?」

「わかった・・・。」

まだシブシブだったが、どうやら納得してくれたようでレイはトボトボと自分の団地へ
帰って行った。あんな団地で1人可愛そうにとも思うが、一応自分達もミサトのマンシ
ョンに居候の身なのでこれが限界である。

「帰ろっか。シンジ。」

「そうだね。」

「ねぇ、シンジぃ。今日は楽しかったね。」

それ迄もある程度腕を組んだりはしていたものの、それなりに毅然とした表情をしてい
たアスカだったが、べったりとシンジに凭れ掛かり甘えてくる。やはりレイの手前、3
人でいる時はここまではできないのだろう。

「最後はちょっと、あれだったけど。綾波も嬉しそうだったよ。」

「うん。レイが喜んでくれて良かったわ。」

「こんな平和な時がずっと続いたらいいのに。」

「きっとそんな日が来るって。アタシ達3人が力を合わせれば。」

「はは・・・アスカはいいけど、綾波がぼくに力を合わせてくれるかな。」

「あんなこと言ってるけどさ。あのコ、結構アンタのこと信頼して頼りにしてんのよ?」

「ははは・・・まさか。」

「こうして楽しい時間を過ごせるのも、アンタが助けてくれたお陰だって言ってたもん。」

「ウソ?」

「ほんと。ほんと。ただ、ちょっとヤキモチやきさんなんだけどさ。」

「ちょっとじゃないかも・・・。」

「だから、アタシも控えてるでしょ。」

その反動というわけでもないのだろうが、2人っきりということで肌を寄せてぴったり
くっついてくるアスカ。

「あのさ、まだミサト帰って来てないでしょ?」

「そう思うけど。」

「帰ったらさ。久しぶりにチェロ聞きたいな。」

「最近弾いてないからなぁ。」

「なんでもいいからさ。」

「簡単なのなら。大丈夫だと思うけど。」

「やった。」

チェロを聞かせて貰えることになり、嬉しそうに早足でアスカはシンジを引っ張り帰る。
エレベータを上り、アスカがこの後の演奏会に心弾ませて玄関のドアに鍵を差し込むと。

「ん? 開いてる。」

「もうミサトさん帰って来てるんだ。」

「えーーー。そんなぁ。」

「また、今度だね。」

「はぁーあ。ミサトのヤツぅ・・・最悪ぅ。」

「チェロならいつでも弾いてあげるからさ。そんな顔しちゃ駄目だよ。」

「だって。」

ぶぅと膨れながら玄関の扉を開け、シンジと一緒に家の中へ入って行く。一方シンジは、
急ぎ夕食を作ろうと、そそくさとダイニングへ向かう。

「ただいま。ミサトさん、帰ってるんですか?」

「おかえりなさい。シンジ。」

「えっ!!?」

「やっと会えたわね。」

だがダイニングから廊下に出て来たのはミサトではなかった。突然の出来事に、廊下で
シンジは固まってしまう。

「ま、まさか。」

「苦労をかけたわね。シンジ。」

「母さんっ!!・・・なのっ?」

「そうよ。母さんですよ。」

「ほ、本当に?」

「もちろんですとも。」

「本当に、本当なんだねっ!!!」

「だから、そう言ってるでしょ。」

両手を広げ優しい微笑みを浮かべているのは、紛れもなくシンジの母、ユイの姿だった。
想像もしていなかった突然の出来事に、目に涙を浮かべてその腕の中へ飛び込んで行く。

「かあさーんっ!」

「苦労を掛けてごめんなさいね。」

その後ろ。独り取り残されたアスカは、予想だにしていなかったこの状況に唖然として
いた。

今、自分達の身に何が起こっているのか、その聡明な頭でもすぐに理解できなかった。
だが、ただ1つわかっていることは目の前でシンジが幸せそうな顔をしていることだけ。

「母さん。生きてたんだね。母さんっ!」

「ええ。もうずっと一緒よ。」

「母さんっ!」

我が子を包み込むように抱きしめるユイが、目を細めて優しくシンジに微笑み掛ける。
その瞳は赤く光っていた。

To Be Continued.
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