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TwoPair
Episode 01 -ようこそアタシ-
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作者注:この小説は、話し手がややこしくなる為、セリフの前に人物名を付けます。
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ゲンドウと冬月は、ポーカーをしていた。

ゲンドウ「ツーペアだ。」

冬月「負けたな・・・。」

ゲンドウが、出したカードは、ハートの1とダイヤの1そして、ハートの2とダイヤの
2そして、スペードの3というツーペアの組み合わせだった。

冬月「そろそろ、行かねばならんぞ。」

ゲンドウ「そうだな。」

<司令室>

使徒殲滅が完了したネルフでは、ゲンドウ立ち会いの元、人類補完計画の実験が開始さ
れようとしていた。最初の被験者は、3人のチルドレン。シンジ,アスカ,レイである。

リツコ「パルス正常。」

各エヴァの中で、LCLに溶けていく3人のチルドレン。この実験の失敗は、人類補完
計画の瓦解を意味する。技術部を始めとし、司令室全体が緊張している。

マヤ「変ですねぇ。」

モニタを見つめていたマヤが、首を傾げる。

リツコ「どうしたの?」

ビーーーービーーーービーーーー!

その時、警報が鳴り響いた。

リツコ「シンクロをカットして! 実験中断!! 生命維持最優先!!」

マヤ「ダメです! 受け付けません!」

ミサト「シンジくん達は!?」

騒然となる司令室。人類補完計画の失敗、そして、3人の生命の危機。

マヤ「エントリープラグ排出されます!」

カシュー。

初号機のエントリープラグが、自動的に排出される。

ミサト「まずい!! シンジくん!!」

ケージに駆け下りるミサト。

マヤ「零号機,弐号機のエントリープラグに変化! 質量が増量しています!」

リツコ「増量!? そんなバカな!」

マヤ「ダメです! 零号機,弐号機共にエントリープラグが排出されます!」

カシュー。カシュー。

初号機に続いて、零号機と弐号機のエントリープラグが排出され、LCLが流れ出る。

<ケージ>

「!!」

ケージに降りたミサトの目前で、排出される零号機と弐号機のエントリープラグ。

ミサト「アスカ! レイ!」

愕然とするミサトの後ろから、声がかかった。

「ミサトさん? 何してるんです?」

「シンジくん??」

「どうしたんです? 涙なんか流して・・・。」

「シンジくん・・・・!!」

エントリープラグから出てきたシンジは状況がつかめず、抱き着いてきたミサトを怪訝
そうに見つめている。

「どうしたんですか??」

シンジの無事を確認したミサトの脳裏に、あとの2人の顔がよぎる。

「は! アスカとレイは!?」

振り返るミサト。その時、零号機から声が聞こえてきた。

レイ「あ、あ、あんた誰!!?? ちょっとーーどうなってるのーー!!??」

レイの声である。

レイ「わからない・・・。」

再びレイの声がする。

レイ「どうでもいいけど、ここはどこーー!?」

エントリープラグから顔を出すレイ・・・とレイ。

ミサト「ど・・・どうなってるの? レイが2人・・・。」

口をあけたまま、目を丸くして2人のレイを見つめるミサト。

アスカ「アンタ、 誰よ!! どーなってるのよ、いったい!!」

今度は、弐号機からアスカの声である。

アスカ「アンタこそ、誰よ! アタシは、惣流・アスカ・ラングレーよ! アンタは!?」

アスカ「アタシも・・・・・・・・・・あーーーーシンジーーーー。」

何が起こっているのか理解できず、きょとんとしているシンジを見つけたアスカが、手
を振りながら近寄ってくる。

アスカ「変な服来て、何してるのよ! ここどこ!?」

シンジ「へ?」

アスカ「ちょっと・・・聞いてるの!?」

シンジ「アスカ・・・何、言ってるのさ・・・?」

その様子を見ていた司令室も、ケージもパニック状態になっていた。

<司令室>

シンジと2人のアスカそして2人のレイは、司令室に集まっていた。

リツコ「だいたいの状況はわかったわ。補完計画の実験では、LCLの中でのあなた達
        の性格とか経歴を操作していたのよ。けど、実験が失敗した時、現実のアスカ
        とレイとは独立して、補完後のあなた達が実体化したみたいね。」

ミサト「ちょっと! 簡単に言うわね! どうするのよ!」

リツコ「もう、どうしようもないわ。元に戻すということは、新しく出てきたアスカと
        レイに死ねと言うことなのよ!」

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作者注:ここから先は、話し手を以下の様にします。
        通常アスカ = TV本編のアスカ
        幼馴染アスカ = シンジと幼馴染のアスカ
        通常レイ = TV本編のレイ
        転校生レイ = にぎやかな転校生レイ
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通常アスカ「ちょっと! じゃーこれからは、アタシが2人になるわけ?」

リツコ「同姓同名の双子だと思えばいいじゃない。戸籍上は、アスカもレイも既にそう
        なってるわ。」

アスカコンビ「「なんですってーーーーーー!!! 勝手に戸籍いじるんじゃないわよ!!!」」

自分の戸籍を勝手にいじられ、青筋を立てて起こるアスカコンビ。

リツコ「仕方無いでしょ・・・。」

転校生レイ「アスカはまだ、いいわよ。どうして、もう1人のレイって、こんなに暗い
            のかしら? とてもわたしだとは思えないわ。」

通常レイ「・・・・・・。」

転校生レイ「ねぇ、どうして黙ってるの?」

通常レイ「お腹すいたわ。」

転校生レイ「・・・・・・。」

シンジ「これから、こっちの綾波と、こっちのアスカはどこに住むことになるんです?」

幼馴染アスカ「こっちとは何よ! アンタはアタシと幼馴染なんだからね!」

転校生レイ「もう、向こうの世界じゃラブラブだったもんねー。」

転校生レイの言葉に顔を真っ赤にする幼馴染アスカ。

幼馴染アスカ「な、な、何言ってるのよ!!!」

むぅぅーーーーーーーっとした通常アスカが、割って入る。

通常アスカ「ちょ、ちょっと!!! それって本当なの!? こんな奴と!? 信じらん
            ない!!」

転校生レイ「あっらーーー、さすがは同じアスカ同士ね。こっちのアスカも、シンちゃ
            んに気があるみたいねーーー。」

通常アスカ「なんですって! そんなわけないでしょ!」

転校生レイ「むきになっちゃって、かっわいーーー。」

通常アスカ「これ・・・本当にファースト? なんか調子狂うわねーーー。」

よく知っているレイと、あまりにもギャップがあるので対応に困る。どちらのレイもア
スカにとっては、苦手のようだ。

シンジ「あの、綾波・・・そのシンちゃんっての止めてよ・・・恥ずかしいから。」

転校生レイ「なに照れてるのよぉ、シンちゃんはシンちゃんじゃない。それより、綾波
            って何よ!」

シンジ「何よって・・・綾波だろ?」

転校生レイ「これからは、わたしのことは、レイって呼ぶように!」

シンジ「えーーーーーーーーーーー!! 恥ずかしいよ!」

通常レイ「お腹すいたわ。ラーメンが呼んでいる。」

転校生レイ「それって差別じゃない? アスカのことは、アスカって呼んでわたしは綾
            波?」

シンジ「差別って・・・。」

転校生レイ「じゃ、”レイちゃん”でもいいわよ!」

シンジ「・・・・・あ、あの・・・・・・。」

シンジも、レイのギャップに面食らってしまい、うまく話ができない。

幼馴染アスカ「何が差別よ! アンタとアタシではシンジとの歴史が違うのよ!」

通常アスカ「歴史も何も、こないだ会ったばかりよ!」

リツコ「いいかげんにしなさい! ここは司令室よ! アスカは2人ともミサトの家でし
        ばらく住むように。レイは・・・。レイ、こっちのレイもあなたの家において
        あげて。」

リツコは、レイのことになった時、少し言葉を詰まらせたが、ひとまずそういう対応を
取ることにした。

<レイの団地>

転校生レイは、通常レイの部屋を見て愕然とする。女の子が住める部屋ではない。

転校生レイ「ちょっとーーマジーー!!? あんた・・・こんなところで一人暮らしし
            てんの??」

通常レイ「そうよ。」

転校生レイ「嫌よ! 絶対嫌ーー!! 赤木先生・・・あ、こっちじゃ先生じゃないのね。
            赤木博士に電話してよ! こんな所、絶対に嫌よ!」

通常レイ「わかったわ。」

通常レイは、携帯電話を取り出す。

通常レイ「もしもし、綾波です。」

リツコ『どうしたの?』

通常レイ「もう1人の私が、話をしたいそうです。」

リツコ『やっぱりね・・・。わかったわ。』

通常レイは、転校生レイに携帯電話を手渡す。

転校生レイ「もしもし、綾波レイです。こんなとこに住むの嫌です!!」

リツコ『そういうだろうと思って、あなた達が帰ってからミサトとも話し合って、住む
        所を手配しておいたわ。もう1人のレイも連れてミサトのマンションに行って
        ちょうだい。』

転校生レイ「はーーーーい。」

転校生レイは、ほっとして、携帯電話を通常レイに返すと、ミサトのマンションに向っ
た。

<ミサトのマンション>

一方ミサトのマンションに入ったアスカコンビはというと・・・。

幼馴染アスカ「ちょっと! アタシの部屋はぁ!?」

通常アスカ「そんなのあるわけないでしょ!」

幼馴染アスカ「アンタの部屋半分よこしなさいよ!」

通常アスカ「嫌よ! 絶対嫌だからね!」

早速喧嘩をしていた。

幼馴染アスカ「アタシに部屋無しで過ごせっての!! アンタは!」

通常アスカ「そーだわ、いいこと思い付いたわ!」

通常アスカが幼馴染アスカの耳元で、なにやらひそひそと話し出した。

そのころシンジは、ベッドに寝転がってヘッドホンステレオを聞いていた。

あー、アスカ1人でもやかましいのに、これからどうするんだよ・・・。

部屋の外で大騒ぎしている2人のアスカのことを考えると、憂鬱になるシンジ。

ガタ!

部屋のドアが開く。嫌な予感がして、がばっとベッドから跳ね起きるとアスカコンビが
立っていた。

シンジ「何?」

2人のアスカの目は、使徒のようにぎらぎらと輝き、口元は、ゲンドウのようにニヤつ
いていた。

シンジ「ひっ!」

冷や汗を流して、引いてしまうシンジ。あのアスカが2人して何か企んでいるのだ。

通常アスカ「始めるわよ!」

幼馴染アスカ「いいわよ!」

シンジ「何をするんだよ!」

シンジの言葉など気にせず、2人のアスカは、次々とシンジの荷物を部屋の外へ運び出
し始めた。

シンジ「あーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

通常アスカ「よいしょ! よいしょ!」

運び出される勉強道具。

幼馴染アスカ「よいしょ! よいしょ!」

運び出されるシンジのチェロ。

シンジ「やめてよーーーー!! この部屋まで取られたら、ぼくはどーするんだよ!」

もう、ここまでくると、ただのいじめだ。

幼馴染アスカ「アンタは、男なんだから部屋なんていらないでしょ! よいしょ、よいしょ!」

自分の荷物が運び出されて行く様子を、涙を流しながら見つめるシンジ。

シンジ「2人で、アスカの部屋に行けばいいじゃないか!」

通常アスカ「嫌よ! 狭くなるじゃない!」

シンジ「狭くなるって・・・ぼくの部屋は、無くなっちゃうじゃないか!!」

幼馴染アスカ「細かいことは気にしないの! このアタシに使ってもらえるのよ! 光栄
              に思いなさい!」

シンジ「なんで、アスカはこんなにそっくりなんだよ・・・。綾波みたいに正反対の性
        格になってくれれば、おしとやかになったのに・・・。」

ボソッっと呟いたシンジの言葉が、2人のアスカの地獄耳に入る。

アスカコンビ「「なんですってーーーーーー!!!!」」

2人のアスカに両耳をひっぱられるシンジ。

シンジ「痛いよ・・・やめてよ・・・。」

本当に、ただのいじめられっ子である。

ガチャ。

そこへミサトが帰ってきた。目前に広がるシンジの荷物の数々。

ミサト「あなた達、何してるの?」

幼馴染アスカ「お部屋作り。」

シンジ「ミサトさーーーん。部屋が取られちゃいますよー。なんとかして下さいよ!」

情けない声で、ミサトにすがるシンジ。

ミサト「アスカ達、そんな必要無いわよ。これからあなた達には隣で暮らしてもらうこ
        とにするから。」

通常アスカ「えーーーーーーーーーーーーー!!!」

あからさまに嫌な顔をする通常アスカ。

幼馴染アスカ「ふーーん。あっちの世界と同じね。」

幼馴染アスカには、特に抵抗は無いようだ。

通常アスカ「この娘だけ、そっちで暮らさせたらいいじゃない!!」

幼馴染アスカ「ちょっと、待ってよ。それはずるいんじゃないの?」

通常アスカ「何がずるいのよ! 部屋も全部使えるし、いいことだらけじゃない!」

幼馴染アスカ「レイはかなり性格が違うみたいだから、わからないけど。アタシとアン
              タってそっくりよね。」

ニヤニヤする幼馴染アスカ。

通常アスカ「それがどうしたのよ!」

幼馴染アスカ「アンタの考えてることくらい、ぜーーーんぶわかるんだからね!」

ビクッ!

通常アスカに引きが入る。

幼馴染アスカ「今、ここで言ってあげましょうか!?」

通常アスカ「ちょっと、こっちへ来なさいよ!」

通常アスカに引っ張られて、幼馴染アスカは、現状のアスカの部屋へ入った。

通常アスカ「アンタに、アタシの何がわかるってのよ!」

幼馴染アスカ「ほーーー、シンジが居ないところでは強気ね! 別に何とも思ってない
              ってんならいいけどね。シンジは渡さないわよ!」

幼なじみアスカが、ジロっと通常アスカを睨む。

通常アスカ「さすがに全てお見通しってことね・・・。」

とうとう、開き直る通常アスカ。

幼馴染アスカ「フェアで勝負よ!」

通常アスカ「わかったわ。仕方ないわね。」

アスカコンビが火花を散らしていたころ、2人のレイがミサトのマンションにやってきた。

転校生レイ「おじゃましまーーーす。」

ミサト「よく来たわね。あなた達の家を用意しておいたわ。」

2人のレイをマンションの一室へ案内するミサト。ミサトの家をはさんで、アスカの家
とレイの家がある形になる。

通常レイ「ここで暮らすの?」

ミサト「そうよ。あなたもちょっとは、人と接した方がいいからね。」

通常レイ「はい、わかりました。」

こうして、引越しが始まった。アスカとレイの家には、生活に必要なものは全て揃って
いる。レイは2人とも自分の荷物がほとんど無い為、すぐに終わったが、アスカの方は
大事だった。

通常アスカ「ちょっと! アンタも手伝いなさいよ!」

幼馴染アスカ「なんでよ! それは、アンタの荷物でしょ!」

通常アスカ「アンタ! それでもアタシ? 薄情者!!」

幼馴染アスカ「だいたい、そんなに沢山の荷物、どこに置くのよ!」

通常アスカ「ほっといてよ!」

幼馴染アスカ「あっそ! じゃ、シンジと遊びに行ってこようっと。」

通常アスカ「あーーーーーーーーーーーーーフェアに勝負って言ったのは、そっちでし
            ょーが!!」

幼馴染アスカ「充分フェアだと思うけどなぁ。じゃね!」

そのころ、レイコンビの家では・・・。

転校生レイ「あなた、シンちゃんのことどう思う?」

通常レイ「碇くん・・・。」

転校生レイ「そんなことわかってるわよ! シンちゃんのこと、どー思ってるのよ!」

通常レイ「碇くん・・・。」

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・。あのねぇ・・・・。」

もう、何を言ったらいいのかわからない。

通常レイ「碇くんと一つになりたい。」

ビクーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!

突然のレイのセリフに、おもいっきり引く転校生レイ。

転校生レイ「あ・・・あなた・・・いきなり凄いこと言うわね・・・。」

通常レイ「どうして?」

転校生レイ「いい? わたし達は、ひとまず同盟を組むのよ! 向こうが2人なら、こっ
            ちも2人でかからなきゃ、シンちゃんとられちゃうからね!」

通常レイ「命令ならそうするわ。」

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・・その前に、あんたにいろいろ教えないといけ
            ないわね・・・・はぁ。」

さて、シンジを連れ出しに行った幼馴染アスカは・・・。

幼馴染アスカ「シンジーーーーーーーーーーー!!」

シンジ「今持って行くから、ちょっと待ってよ。」

アスカの荷物運びを手伝わされているシンジが、小さなタンスを持って出てくる。

幼馴染アスカ「そんなのいいから、この街案内しなさいよ!」

シンジ「向こうの世界でも、同じだって聞いたよ?」

幼馴染アスカ「微妙に違うのよ! さぁ、行くわよ!」

シンジの手を引っ張る幼馴染アスカ。

通常アスカ「ちょっと! アンタ!」

さっき手に持っていた荷物を、部屋の中に置いたアスカが、急いで飛び出してくる。

通常アスカ「あ−−!! シンジ、そんなの運ばないでいいわよ! 貸しなさいよ!」

片腕を幼馴染アスカに引っ張られ、タンスを通常アスカに引っ張られるシンジ。バラン
スを崩して、転んでしまう。

シンジ「わーーーー。」

その衝撃で、タンスの中身が放り出されて宙を舞う。シンジは白やらピンクの下着の山
に埋もれてしまった。

通常アスカ「きゃーーーーーーーーーーー!!! 何すんのよ!!! 変態!!!」

パーーーーーン。

平手を食らったシンジは、情けない顔で立ち上がる。
ふと、何かが肩に乗っているのに気付き、手に取るときわどい黒の下着だった。投げつ
けるわけにもいかず、その手のやり場に困るシンジ。

シンジ「アスカ・・・こんなのももってるんだ・・・はははは・・・ははは。」

パーーーーーン!!

通常アスカ「勝手にさわるな!!!」

シンジ「ぼくが何をしたっていうんだよ・・・。」

両頬にモミジを作ったシンジは、これからの生活にとてつも無く大きな不安を抱いてい
た。

To Be Continued.
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