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TwoPair
Episode 04 -ファーストアタック-
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<学校>

弁当を食べ終わったシンジは、トウジやケンスケ達と校庭にバレーボールをやりに行っ
た。教室ではアスカコンビとレイちゃんズが別々の場所に固まり、それぞれが話をして
いる。

通常アスカ「まさかレイもお弁当を用意しているとは思わなかったわね。」

幼馴染アスカ「こんなことなら、アタシがお弁当を作って来るんだったわ。」

通常アスカ「明日はシンジがお弁当作ってくれるって言ってるから、明後日はアタシが
            作らないといけないわ。」

幼馴染アスカ「でも、多分レイもまた作ってくるんじゃないかしら?」

通常アスカ「ほっときゃいいのよ。」

幼馴染アスカ「でも、シンジのことだから、どーせ『ふたつとも食べるよ。』なんて言
              いだすわよ。」

通常アスカ「そうねぇ。今日はレイのお弁当を食べたんだから、それじゃ不公平ね。」

幼馴染アスカ「当番制にしましょうか?」

通常アスカ「ダメよ。妥協は許されないわ。これは勝負ね!」

幼馴染アスカ「勝負?」

通常アスカ「そうよ。勝負よ!」

言うが早いか通常アスカはすっくと立ち上がると、レイちゃんズの方へと歩き出した。

通常アスカ「ちょっといいかしら?」

転校生レイ「何?」

通常アスカ「明後日は、このアタシがお弁当を作ってくるからね!」

転校生レイ「わかったわ。」

通常アスカ「へ?」

反撃が来ると思っていた通常アスカは、あっさりと転校生レイがお弁当の権利を譲り渡
した為、対応に困ってしまう。

転校生レイ「どうしたの?」

通常アスカ「な、なんでもないわ。」

転校生レイ「それだけ?」

通常アスカ「そ、そうよ・・・・・・じゃなくって、明後日からはずっとアタシがお弁
           当を作るから、もうアンタは作ってこなくていいわ。」

転校生レイ「えぇぇーー!!? どうしてよ。そんなの不公平じゃない!!」

きたきた!! こうこなくっちゃ!!

ようやく転校生レイからリアクションが返ってきたので、臨戦態勢を整える通常アスカ。

通常アスカ「何? 不満なの?」

転校生レイ「あったりまえじゃない。当番制にするべきよ。」

幼馴染アスカ「ほら、やっぱり、そうなるのよ・・・。」

通常アスカ「アンタは黙ってなさい! それじゃ明後日、アタシとアンタの作ったお弁当
            をシンジに食べさせましょうよ。シンジが美味しいって言った方が、お弁
            当を作る権利を取るってのはどう? これなら公平でしょ。」

転校生レイ「え!?」

通常アスカ「何? 自信無いの?」

幼馴染アスカ「・・・アンタの自信がどこから来るのかが、アタシには不思議よ・・・。」

通常アスカ「ウルサイ!!!」

通常レイ「無駄よ。」

通常アスカ「なにがよ?」

通常レイ「碇くん、どちらも選ばないわ。」

幼馴染アスカ「そーよ。どーせ『どっちかな? あはははは。』とか言って逃げ出すの
              がおちね。」

通常アスカ「ムムムムム・・・。」

幼馴染アスカ「いいじゃない。シンジも含めて丁度5人いるんだから最初は月から金の
              当番性でも。そのうち、シンジにも誰のお弁当が一番美味しいかわかる
              わよ。」

通常アスカ「ムムムムム。」

料理のうまい転校生レイと幼馴染アスカを、正面から相手にするとすぐにしっぽが出て
しまう通常アスカは、早期にライバルを蹴り落としたかったのだが・・・。

転校生レイ「わたしもそれでいいわ。」

通常アスカに比べて、幼馴染アスカと転校生レイは料理の腕に自信があるので、余裕が
あるのか平然としている。

通常レイ「私の分も・・・。」

転校生レイ「もちろん、みんなの分を作るわよ。」

自分の弁当が確保できて、通常レイも嬉しそうにしている。しかし、自分に当番が回っ
てくるということをわかっているのだろうか?

通常アスカ「わかったわよ。じゃ、明日はシンジの当番ね。」

転校生レイ「そうね。シンちゃんも明日作ってくるって言ってるし。」

弁当騒動の話もまとまった頃、予鈴のチャイムが鳴り、レイちゃんズとアスカコンビは
それぞれの席に戻って行った。

シンジ「ほらぁ、ぼこぼこじゃないか。怒られても知らないよ。」

ケンスケ「そういうシンジだって楽しんでたじゃないか。」

シンジ「そんなこと無いよ。」

トウジ「こういうもんは、その場の乗りなんや。かまへんかまへん。」

ガヤガヤと校庭で遊んでいた男子が教室へ戻ってくる。トウジの手にはサッカーをした
後のボコボコになったバレーボールが握られていた。

キーンコーンカーンコーン。

5時間目の授業開始のチャイムが鳴る。トウジとシンジはバレーボールを教室のロッカ
ーへ片付け、それぞれの席についた。

ピピッ。

ん?

『今日、食料の買い出しに行くから付き合いなさいよね!(Y/N)』

シンジの端末の画面にメッセージが表示される。通常アスカからのメッセージだった。
断る理由も無いのでシンジはYを押す。もっともアスカ(通常,幼馴染共に)の場合、
形は問い合わせでも、断ると後が恐いということもあるが。

『それじゃぁ、放課後スーパーの前で待ってるわ。遅れるんじゃないわよ!』

それから、5時間目,6時間目と授業は進み放課後。シンジは、遅れたら何を言われる
かわからないので、授業が終わるとすぐに1人でスーパーまで走って行った。

転校生レイ「あ、アスカ!」

幼馴染アスカ「何?」

転校生レイ「今日ね、お料理教室の無料体験コースを料理専門学校で開催してるらしい
            わよ。行ってきたら?」

幼馴染アスカ「そんなの受講しなくたって、アンタなんかに負け無いわよ!」

転校生レイ「ちがうって、もう1人のアスカに受けさせてあげたらいいんじゃないかな
            ぁって。」

幼馴染アスカ「うーーん。」

人差し指を口元に当てて、少し考える幼馴染アスカ。

幼馴染アスカ「それもそうねぇ。」

幼馴染アスカは、こそこそと帰り支度をしている通常アスカの側へ走り寄る。

幼馴染アスカ「アスカ! ん? 何を慌ててるの?」

通常アスカ「え? な、なんでもないわよ。べつに・・・慌ててなんか・・・。」

もぅ! もうちょっとだったのに、どうして邪魔しにくるのよ!

1人で抜け駆けしようとしていた通常アスカは、おもむろに取り乱してしまう。あと少
しで帰り支度を済ませて、教室から脱出できるところで声をかけられたので内心おだや
かではない。

幼馴染アスカ「今日ね、無料の体験料理教室があるらしいわ。一緒に行きましょ。」

通常アスカ「え? いや・・・今日は・・・。」

幼馴染アスカ「用事でもあるの? 何の用事?」

通常アスカ「用事があるってわけじゃないんだけどね・・・。」

幼馴染アスカ「そう、それならいいじゃない。一緒に行くわよ!」

通常アスカ「・・・・・・・。」

さすがに、1人で抜け駆けしてシンジに約束を取り付けたとは言い出せない通常アスカ
は、しぶしぶ幼馴染アスカに連れられて、料理教室へ向った。

転校生レイ「ねぇ、レイ?」

通常レイ「何?」

転校生レイ「今日ねぇ、ちょーーーっと用事があるから、先に帰ってくれないかしら?」

通常レイ「わかったわ。」

通常レイがカバンを持って、家に帰ったのを見届けた転校生レイは、我が事成れりと心
の中でガッツポーズをとると、カバンを持ってシンジの待つスーパーへ全力で走り出し
た。どうやら、通常アスカの極秘メッセージが、ハッキングされていた様だ。

<スーパー>

アスカ、遅いなぁ。急いで来るんじゃ無かったよ。

急いでスーパーへ向ったシンジは、流れる汗を手で拭いながら通常アスカが来るのを待
っていた。その時、突然目隠しをされる。

シンジ「わ!」

転校生レイ「だーれだ!」

レイの声くらいはすぐにわかる。まさか通常レイが『だーれだ』なんてしないだろうか
ら、どちらのレイかも判断できる。

シンジ「ちょ、ちょっと、レイ。」

転校生レイ「あら? わかった?」

シンジ「そりゃわかるよ。」

転校生レイは、目隠ししていた手を離すと、てへへと笑っておどけてみせた。

転校生レイ「シンちゃん、汗びっしょりじゃない。」

シンジ「うん。急いで来たからね。ところで、どうしてレイがここにいるのさ? アス
        カと待ち合わせしてたんだけど?」

転校生レイ「今日アスカね、料理教室へ行くことになってしまったから代りに来たの。」

シンジ「そうなんだ。」

転校生レイ「ほら、汗拭いて。」

転校生レイは、ハンカチを取り出すとシンジの額に光る汗を拭ってあげる。

シンジ「い、いいよ。」

転校生レイ「いいからいいから。」

一通り、シンジの汗を拭い終わった転校生レイは、シンジの腕を取って歩き出した。

シンジ「ちょ、ちょっと何処行くのさ?」

転校生レイ「まだ、生活用品とか整ってないから、ちょっと買い物付き合ってね。」

シンジ「予定も無くなったから、いいけど・・・。」

転校生レイ「じゃぁ、行こう!!」

転校生レイの勢いに流される様に、シンジは転校生レイについてデパートに向って歩き
だした。

<デパート>

シンジ「ねぇ、買い物って何買うの?」

転校生レイ「今日は、洋服をちょっとと、学校で使う筆記用具くらいかなぁ。」

シンジ「そうなんだ。じゃ、先に筆記用具を見に行こうか?」

転校生レイ「どうして?」

シンジ「だって、服を買ったら持って歩くのが大変だと思って。」

転校生レイ「そうね。じゃそうしましょ。」

シンジと転校生レイは、文房具屋でノートとシャープペンシル,ボールペンを見てまわ
る。

シンジ「どうしたの?」

転校生レイ「どっちがいいかなって思ってね。」

手には流行のブランド物のボールペンと、流行のキャラクター物のボールペンが握られ
ていた。

シンジ「レイには、こっちの方が似合ってるんじゃない?」

転校生レイ「む! ちょっと、シンちゃん? それどういう意味?」

かわいらしいキャラクター物のボールペンを指差して微笑むシンジを、不機嫌な顔で睨
みつける転校生レイ。お子様だと言われた様で、気に入らないのだろう。

シンジ「どういう意味って・・・、こっちの方がかわいいから・・・。どうして?」

転校生レイ「まぁ、いいわ。シンちゃんの言う通りにする。」

少し納得できないところがあるものの、ひとまず納得した転校生レイは、そのボールペ
ンと同じキャラックターのシャープペンシルも手に取って、レジへ向った。

転校生レイ「じゃぁ、洋服を見に行きましょ。」

シンジ「そうだね。それ、持つよ。」

転校生レイ「いいわよ。これくらい。」

シンジ「そう? じゃ、服を買ったら服を持つね。」

転校生レイ「ありがとうシンちゃん。」

シンジと転校生レイは、仲良く寄り添いながらエレベータを降り洋服のコーナーへ向う。

転校生レイ「ねぇねぇ、わたし達って恋人同士みたいに見えるかなぁ?」

シンジ「え? そ、そんなこと無いと思うよ。」

転校生レイ「そーかなぁ。」

シンジ「どうしたの?」

転校生レイ「もういい。」

エスカレータを降り、洋服のコーナーへ入ると転校生レイは意外と早く買う服を2着ほ
ど決めてしまった。

転校生レイ「この2つにしようかと思うんだけど、どうかな?」

シンジ「いいんじゃないかな。」

清算を済ませた後、シンジは、洋服の入った紙袋を片手で抱きかかえる様に持ってレイ
と一緒に洋服コーナーを出る。

転校生レイ「ねぇ、歩き回ったから疲れちゃった。どこかでジュースかアイスクリーム
            でもどう?」

シンジ「そうだね。」

転校生レイ「じゃ、デパートの下の喫茶店に寄って行こうよ。」

シンジ「うん。いいよ。」

<喫茶店>

2人はデパートの1階にある小さな喫茶店に入ることにした。その喫茶店は特に変わっ
た所も無くごく普通のチェーン店の店だ。

シンジ「何にしようかな。」

転校生レイ「アタシ、アイスクリーム。」

シンジ「ぼくもアイスクリームにしようかな。」

転校生レイ「じゃぁさぁ、シンちゃんはオレンジにしてよ。わたしはメロンを頼むから
            半分こしようよ。」

シンジ「わかった。」

シンジは、内心ジュースにしようかとも考えていたのだが、転校生レイにオレンジのア
イスクリームにしてほしいと言われたので、レイの分と一緒にアイスクリームを注文す
る。

転校生レイ「ねぇ、また買い物付き合ってくれるかな?」

シンジ「うん、いいよ。」

転校生レイ「じゃぁねぇ、お礼に今度はシンちゃんの買い物に付き合ってあげるね。」

首をかしげてシンジに微笑みかける転校生レイ。なんだか幸せの絶頂という感じだ。
しばらくして、2つのアイスクリームが運ばれてくる。

転校生レイ「わぁ、おいしそう!」

シンジ「うん、果汁を使ってるのかなぁ。おいしいよ。」

パクパクとアイスクリームをほお張るシンジと転校生レイ。丸い山の形をしていたアイ
スクリームはみるみるうちに崩されていく。

転校生レイ「ねぇ、シンちゃんはいつも家に帰って何してるの?」

シンジ「家事をしてるか、部屋で音楽聞いてるよ。たまにチェロとかもするけどね。」

転校生レイ「音楽? どんなの?」

シンジ「これだよ。」

シンジは愛用のSDATヘッドホンステレオを、転校生レイに見せる。

転校生レイ「ちょっと聴いてもいいかな?」

シンジ「うん、いいよ。」

イヤホンを耳に当て目を閉じて音楽を聴いている転校生レイを、アイスクリームを食べ
ながら見つめるシンジ。

転校生レイ「あーーー!! ストップ!! ストップぅぅ!!」

シンジ「へ?」

転校生レイ「わたしの分もアイスクリーム残しておいてよぉ!」

シンジ「あっ! そうか・・・。」

転校生レイ「ちょっと待ってね。半分まで食べたら交換しよ。」

シンジ「うん、待ってる。」

転校生レイがアイスクリームを半分まで食べると、交換して2人は再び食べだした。も
う、転校生レイの頬は楽しくて楽しくて緩みっぱなしである。

<料理教室>

少し時間はさかのぼり、次の弁当の当番の日に向けて特訓をする通常アスカと、その様
子を見ながらイライラする幼馴染アスカの漫才が繰り広げられる料理教室。

幼馴染アスカ「ちょっと、アンタ何やってるのよ!」

通常アスカ「だって、ここで醤油を入れるって書いてあるじゃない。」

幼馴染アスカ「アンタ、濃口醤油と薄口醤油の区別もつかないの?」

通常アスカ「何よそれ?」

幼馴染アスカ「アンタバカぁ? そんなことも知らないで、日本で料理するつもり?」

通常アスカ「うっさいわね!」

はーぁ、いまごろシンジと一緒にショッピングだったのになぁ。シンジ、まだスーパー
で待ってるかなぁ・・・まさかねぇ。後で何て言い訳しようかなぁ。

通常アスカの記憶力や判断力は、ずば抜けているのだから、料理の実習などを受ければ
一気に上達するはずなのだが、意識の半分以上はシンジの方へ向いてしまっており料理
に集中できない。

幼馴染アスカ「あーーー! アンタ何やってるのよ!」

通常アスカ「え? あーーー!!!」

今度は、砂糖の入れすぎである。

幼馴染アスカ「もぉ〜、アンタやる気あるわけ?」

通常アスカ「ちょっと考え事してただけよ。」

幼馴染アスカ「何考えてんのよ! 余計なこと考えないで集中しなさいよね!」

通常アスカ「わかってるわよ! アンタもいちいちうっさいわねぇ!」

幼馴染アスカ「なんですって! アンタがぼけぼけっとしてるから注意してあげてるん
              でしょぉ!」

結局できあがった物は見るも無残な玉子丼となってしまった。

幼馴染アスカ「こんなの食べれやしないじゃない。」

通常アスカ「さっ帰るわよ。」

幼馴染アスカ「はぁあ。」

さっさと料理教室を後にする通常アスカに続いて、幼馴染アスカも料理教室を出ていっ
た。その後に開催された試食会は静かに行われたことだろう。

<繁華街>

通常アスカ「喫茶店にでも寄っていきましょうよ。」

幼馴染アスカ「そうね。玉子丼食べ損なったしね。」

通常アスカ「なによ!」

幼馴染アスカ「べぇつにぃ。」

アスカコンビはデパートの下にある喫茶店に向った。

<喫茶店>

シンジ「じゃ、そろそろ帰ろうか。晩御飯の準備もしなくちゃいけないし。」

転校生レイ「そうね。今日はありがとう。」

アイスクリームを食べ終わった転校生レイは、ニコニコしながらシンジの顔を見つめる。

転校生レイ「ここはわたしがおごるわ。」

シンジ「え? いいよ、そんなの。」

転校生レイ「今日のお礼がしたいの! いいでしょ?」

伝票を片手で持ち、ひらひらさせながらねだる様な目つきで見上げる転校生レイ。

シンジ「わかったよ。ありがとう。」

転校生レイ「どういたしましてぇ。」

ご機嫌な転校生レイは、かわいらしい財布から小銭をちゃらちゃらと出すと、清算を済
ませる。

シンジ「ごちそうさま。行こうか。」

転校生レイ「うん。」

シンジと転校生レイが喫茶店を出た後、喫茶店のマスターが伝票の整理をしていると、
赤毛の双子の様な2人の女の子が喫茶店に入ってきた。

マスター「いらっしゃいませ。」

通常アスカ「あ、あそこの席が空いてるわよ。」

幼馴染アスカ「でも、まだ片付いてないみたいよ。」

通常アスカ「いいのいいの。すぐ片付けてくれるわ。」

幼馴染アスカ「そうね。」

アスカコンビは、数秒前までシンジが座ってた席につこうとした。

ん?

通常アスカが椅子に座ろうとした時、ふと目にとまる物があるので手に取っ手みる。

これって・・・・・・。

通常アスカが手にしたのは、シンジのSDATヘッドホンステレオだった。

To Be Continued.
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