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TwoPair
Episode 05 -セカンドアタック-
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<レイの家>

転校生レイより一足先に帰った通常レイは、生まれて初めての試みに挑戦していた。

これは、醤油・・・。

通常レイの目の前には、フライパンが真っ赤になって加熱している。その横には、おお
ざっぱに切り刻まれたキャベツとニンジン、袋から取り出したもやしが並べられている。

これは、塩・・・。

フライパンから熱気が伝わってくる。そう、レシピの本を見ながら通常レイは野菜炒め
に挑戦していたのだ。

あぶらはどこ?

その超初心者向けのレシピの本には、ファーストステップとして、油をフライパンに入
れると書いてある。しかし、そのあぶらが見当たらないまま、通常レイは呆然としてい
た。

わからない・・・たぶん私は3人目だから・・・。

通常レイの格闘は続く。

<繁華街>

喫茶店を出たシンジと転校生レイは、家へと向かい繁華街を歩いていた。

シンジ「あれ?」

転校生レイ「どうしたの?」

シンジ「ぼくのヘッドホンステレオ・・・。」

胸ポケットや鞄の中をごそごそと探すが、シンジのヘッドホンステレオが見当たらない。

転校生レイ「わたし?」

転校生レイも自分の鞄の中を覗き込むが、かわいらしいノートや筆記用具,ポケットテ
ィッシュ,シールだらけの携帯電話などが入っているだけだ。

シンジ「さっきの喫茶店に忘れてきたんだ・・・。」

転校生レイ「きっとそうよ。取りに戻りましょうよ。」

シンジ「レイは先に帰ってて、1人で行ってくるから。」

転校生レイ「わたしも行くわよ。」

シンジ「そ、そう。ごめんね。」

転校生レイ「そんなこと気にしなくってもいいから、取られる前に早く戻りましょうよ。」

シンジ「うん。」

シンジと転校生レイは、今歩いてきた道を引き返して行った。

<喫茶店>

通常アスカ「これって、シンジのじゃない?」

見覚えのあるヘッドホンステレオが、アスカの横に置かれており、目の前のテーブルに
はアイスクリームが乗っていたと思われる2つの皿が置かれている。

幼馴染アスカ「中のDATは?」

幼馴染アスカに言われて、通常アスカがヘッドホンステレオを開けると、まさしくシン
ジのDATテープが出てきた。

通常アスカ「間違いないわ。シンジのよ。」

幼馴染アスカ「シンジ・・・誰かとここへ来てたのね!!」

通常アスカ「決まってるじゃない、レイよ。」

幼馴染アスカ「アタシ達を料理教室へ押し込めておいて抜け駆けしたのね! やってく
              れるわねぇ!!」

通常アスカ「むむむむむむむむぅぅぅぅ!!」

幼馴染アスカ「レイのやつめぇぇぇぇぇぇ!!!!」

長い髪の毛が総立ちになりそうな勢いの怒髪天アスカコンビだった。

<繁華街>

転校生レイ「ほら、シンちゃん急ぎましょうよ。」

シンジ「そんなに走らなくても大丈夫だよ。」

急ぐ転校生レイに手を引っ張られて歩くシンジ。シンジの物を取りに戻るというのに、
転校生レイの方が真剣である。

転校生レイ「取られたら大変じゃない。」

シンジ「そりゃそうだけど。」

シンジと転校生レイが踏み切りを渡ろうとした時、カンカンカンと音がけたたましく鳴
り遮断機が降りはじめる。

転校生レイ「シンちゃん急いで!!」

転校生レイは、シンジの手を引くと遮断機を潜り抜けようとする。

シンジ「あぶないじゃないか!!!!!」

転校生レイは、シンジにぐいと引っ張り戻され、シンジの胸の中に倒れ込んでしまう。
めったに聞けないシンジの大きな声を聞いた転校生レイは、何事かとシンジの胸の中で
きょとんとシンジを見上げた。

シンジ「あぶないから、やめたほうがいいよ。」

先程の様子が嘘のように、いつものシンジの口調で転校生レイにやさしく注意する。そ
んなシンジを見つめるレイの頬は、うっすらと赤く染まっていた。

転校生レイ「で、でも・・・急がないと、シンちゃんの・・・。」

シンジ「別にいいよ。忘れたんだから仕方無いよ。」

転校生レイ「ごめんね・・・わたしが、音楽を聴きたいなんて言ったから。」

シンジ「そんなことを気にしてたの?」

転校生レイ「だって、シンちゃん・・・大事そうにしてたから・・・。」

シンジ「だからって、こんな危ないことしないでよ。ヘッドホンステレオなんかより、
        レイにもしものことがあったら、どうするんだよ。」

ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン。

シンジとレイの前を電車が通り過ぎ、強い風が2人を襲う。転校生レイが、風に舞わな
い様に髪の毛を両手で押さえた時、スカートがぶわっと翻った。

転校生レイ「きゃっ!」

慌てて両手を、足の前に持っていきスカートを押さえ、ちらりとシンジの方に視線を向
けた。

転校生レイ「見えた?」

シンジ「え・・・あの・・・。」

電車が通り過ぎ、やかましく鳴り響いていた踏み切りの音も消え、遮断機が上がった。
シンジを置いて、パタパタと踏み切りを渡り出す転校生レイ。

シンジ「あ、待ってよ。」

シンジは、気まずく思いながら後を追いかけると、踏み切りの真ん中で転校生レイは、
くるりと振り返りシンジを見つめる。

転校生レイ「えっち。」

シンジ「え・・・?」

転校生レイは、はにかみながらそれだけ言うと、シンジがついてきていることを確認し
ながら再び走って踏み切りを渡って行った。

<喫茶店>

ウエイトレス「ご注文は何になさいますか?」

通常アスカと幼馴染アスカが、シンジのヘッドホンステレオを吟味している所に、ウエ
イトレスが注文を聞きにやって来た。

通常アスカ「あ、ちょっと用事を思い出したからもういいわ。」

ヘッドホンステレオを鞄に詰め込むと、席を立つ通常アスカ。幼馴染アスカも、通常ア
スカに続いて、席を立ち上がった。

幼馴染アスカ「やってくれるわねぇ!!」

通常アスカ「おぼえてなさい!! 抜け駆けした報いをくれてやるわ!!」

そんなアスカコンビは、全身に怒りのオーラを纏い、鬼神でも恐れおののく様な雰囲気
に包まれていた。

ウエイトレス「あ、ありがとう・・・ご、ございました・・・。」

注文を聞きに来ただけなのに、なぜこの様な恐ろしい物を見なければならないのか・・・。
我が身の不幸を呪うウエイトレスだった。

通常アスカ「さっさと帰って、あの女を締め上げるわよ!」

ドスドスと、喫茶店を出て行こうとする通常アスカだが、幼馴染アスカに腕を引かれ立
ち止まる。

幼馴染アスカ「あのさぁ、ここで待ってたらシンジがヘッドホンステレオを取りに帰っ
              てくるんじゃない?」

通常アスカ「うーーーーん・・・。」

<繁華街>

シンジと転校生レイは、喫茶店のすぐ側まで戻ってきていた。

転校生レイ「ほら、もうすぐ喫茶店よ。」

シンジ「うん、まだあるといいね。」

人事の様に、レイに微笑みかけるシンジ。そんなシンジの微笑みを見た転校生レイは、
今日一緒にショッピングにこれて良かったと思う。

<喫茶店>

シンジと転校生レイは、ようやく喫茶店まで戻ってきた。

転校生レイ「わたしが見てくるわ。シンちゃんここで待ってて。」

シンジ「うん。」

転校生レイは、パタパタと喫茶店へ入って行く。

転校生レイ「あ!」

転校生レイが喫茶店の中に入ると、先程2人が座っていた席には既に別の客が腰かけて
いた。転校生レイは、ヘッドホンステレオがまだ机の上か、椅子のまわりに無いかきょ
ろきょろと探してみる。

客1「あのぉ、何か?」

転校生レイ「アハハハ・・・、ごめんなさい。さっき、ここで忘れ物しちゃったんです。
            この辺りにヘッドホンステレオ、ありませんでした?」

客2「え? うーーん。無いようだけど?」

その客は、きょろきょろと自分の周りを見渡したが、見つからなかった様だ。

転校生レイ「そうですか。すみません。」

転校生レイは2人の客に一礼すると、レジに立っているウェイターに話し掛ける。

転校生レイ「あの、ヘッドホンステレオを忘れていったんですが、ありませんか?」

ウェイター「うーーん、そういうのは届いてませんけど。」

転校生レイ「そうですか・・・。」

がっかりとした様子で、喫茶店の扉を開ける転校生レイ。

ウェイター「あの、見つかったら置いておきますね。」

その転校生レイの肩を落とした様子があまりにもかわいそうで、ウェイターははげまし
の言葉をかけるが、その効果も空しく転校生レイはがっかりとして喫茶店を出ていった。

転校生レイ「シンちゃん、無かった・・・。」

シンジ「そ、そう・・・。いいよ、もう古くなってたし・・・。」

転校生レイ「ごめんね・・・。」

シンジ「だからいいんだって、忘れたぼくが悪いんだから。」

転校生レイ「でも・・・わたしが、言わなかったらシンちゃんも鞄から出したりしなか
            ったでしょ。」

シンジ「そんなこと気にしないでよ。それよりもう遅いから帰ろう、ね。」

転校生レイ「うん・・・。」

申し分けなさそうに肩を落とす転校生レイを元気付けるかのように、シンジは手を引い
て家路を急ぐのだった。

<アスカの家>

幼馴染アスカ「やっぱり、喫茶店で待ってた方がよかったんじゃない?」

通常アスカ「あのバカシンジが、ヘッドホンステレオを無くしたことに気づくわけない
            でしょ! きっと、レイに連れ回されてるのよ!」

アスカコンビは、喫茶店で待つべきか帰るべきか悩んだあげく、シンジは気付かずに家
に帰るという通常アスカの意見から、コンフォート17マンションに帰ることにしたの
だ。しかし、帰ってみるとシンジと転校生レイの姿が見えない。

幼馴染アスカ「でも、2人だけまだ帰ってないってことは、これでシンジと一緒にいた
              犯人が確定したわね!」

通常アスカ「帰ってきたら、ただじゃすまさないわよ〜〜!!!」

ひとまず命拾いをした転校生レイだったが、それもあまり長くは続かない様だ。

<レイの家>

やっぱり、油は必要だったのね・・・。

通常レイの前にあるフライパンの中には、真っ黒になった野菜炒めが山盛り入っていた。

お焦げ・・・黒い物・・・焦げ臭い物・・・。

初めての試みが炭と化してしまった通常レイは、がっくりとキッチンの床に腰を落とし
てしまった。知らず知らずのうちに涙が零れる。

は! 泣いてるの? 私・・・。

焦げ臭いキッチンで、通常レイはタオルで涙を拭き取るのだった。

<コンフォート17マンション前>

シンジと転校生レイは、仲良くコンフォート17マンションまで帰ってきた。

転校生レイ「今日はとっても楽しかった。」

シンジのヘッドホンステレオが無くなり、しばらく落ち込んでいた転校生レイだったが、
逆にシンジにはげまされ、いつもの元気を取り戻していた。

シンジ「うん、そうだね。ぼくも楽しかったよ。」

転校生レイ「本当!?」

シンジ「今度は、みんなで行こうか。」

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・・・・・・む〜。」

シンジ「え?」

転校生レイ「なんでもない。それより夕焼けが奇麗よ。公園によってかない?」

シンジ「でも、そろそろ夜ご飯の準備をしなくちゃいけないから。」

このままマンションに入ってしまうと、2人っきりの時間は終わってしまう。次、いつ
こんなチャンスが訪れるとも限らない。転校生レイは、なんとか今という時間を少しで
も伸ばしたい気持ちだったのだが、そろそろ夢の国から目覚める時間の様だ。

転校生レイ「そ、そうね。わたしもご飯の支度しなくちゃいけないし。」

そして、2人はそれぞれの家へと戻って行く・・・・













はずだったのだが・・・。

<ミサトの家の前>

通常アスカ「アンタ達!!! 今まで2人でどこへ行ってたのよ!!!」

シンジ「え? ただショッピ・・・・・・いってーーーーーーーーーーーーーーー!!
        レ、レイ! 何するんだよ!」

正直に今日の行動を話そうとしたシンジのお尻を、転校生レイにぎゅっとつねられる。

転校生レイ「どこって・・・、帰りにそこで会っただけよ?」

涼しい顔で、しらっととぼけてみせる転校生レイ。

幼馴染アスカ「あっらぁぁぁぁ、帰りに会っただけっていうのは、2人で喫茶店に行く
              ことを言うのかしらぁぁぁぁ!? とぼけても無駄よ!」

転校生レイ「ゲッ!」

まさか、そこまで調べがついているとは夢にも思ってなかった転校生レイは、冷や汗を
浮かべる。

シンジ「な、なんなの?」

なぜ今険悪なムードになっているのかさっぱりわからない立派な当事者であるシンジは、
きょとんと成り行きを眺めていた。

通常アスカ「アンタは、もういいから、お家に帰ってミサトの晩御飯でも作ってきなさ
            いよ!」

転校生レイ「そ・・・それじゃ・・・わ、わたしも・・・。」

シンジと一緒にコソコソと家へ帰ろうとした転校生レイの襟首を、アスカコンビがガシ
っと掴んだ。

幼馴染アスカ「さぁ、一緒にお話しましょうかぁ。」

転校生レイ「え・・・あのね・・・。」

通常アスカ「アタシ達の家へ、どうぞぉぉ・・・。」

転校生レイ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

ズルズルとアスカコンビに、引きずられて行く転校生レイ。今やアスカの家は、転校生
レイにとっては、地獄の入り口に見えていた。

<アスカの家>

リビングのソファーの間に座らされた転校生レイは、ソファーに足を組んで座るアスカ
コンビに挟まれ、睨み付けられていた。

幼馴染アスカ「1人で抜け駆けするとはいい度胸じゃない。」

転校生レイ「ううぅぅぅ・・・。」

全てネタは上がっている様なので、何とも言い訳ができない転校生レイ。

転校生レイ「でも・・・どうして、喫茶店に行ったことや、ショッピングをしたことが
            わかったの?」

アスカコンビ「「ショッピングぅぅーーーーーーーーーーー!!!!!!??」」

転校生レイ「え!? えぇぇぇ!?」

ネタはまだ全てあがっていなかったようである。

通常アスカ「ますます許せないわね!」

転校生レイ「うぅぅぅぅぅ・・・ご・・・ごめんね。」

幼馴染アスカ「謝って許されるとでも思ってるわけぇ!?」

転校生レイは両手を合わせてかわいらしく謝ってみせたが、全く効果が無かった。シン
ジが相手じゃあるまいし、当然といえば当然ではあるが・・・。

転校生レイ「うぅぅぅぅぅ・・・。」

通常アスカ「アンタは、抜け駆けしたのよ! 抜け駆けぇ!!!」

通常アスカは、右手の人差し指を転校生レイの顔の前にビシビシと突き立てて、叱り付
ける。

転校生レイ「うぅぅぅぅぅ・・・。」

アスカコンビに頭をぐりぐりとされながら転校生レイは、攻められ続ける。

幼馴染アスカ「アンタが、シンジを誘ったんでしょ!!」

転校生レイ「う・・・うん・・・。」

通常アスカ「当然でしょ! シンジから誘うわけないじゃない!! この口が誘い出した
            のよ!!」

転校生レイ「あわわわわ・・・。」

両手の人差し指を口につっこまれ、左右に口を開かれながら、さらに攻められ続ける。

幼馴染アスカ「さぁ、今日どこへ行って何をしたか、全部白状しなさいよ!」

転校生レイ「あの・・・えーーっと、ショッピングしてね・・・それから・・・。」

幼馴染アスカ「それから?」

転校生レイ「あの・・・公園で抱きしめられて、キスされて・・・。」

2匹ヘビに睨まれたカエル状態でどうしていいかわからなくなった転校生レイは、せめ
てもの反撃にと、あること無いこと喋りだした。まぁ、何を言っても、今以上悪くなる
ことはないだろうが・・・。

アスカコンビ「「な、な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」

転校生レイ「もう、遅いもんねぇ。シンちゃんのファーストキスはもらったんだから。
            べぇぇぇぇぇ。」

通常アスカ「アンタ、この後におよんでまだごまかす気ね!」

転校生レイ「ど、どうしてよ!」

通常アスカ「シンジがファーストキスって言ったの?」

転校生レイ「そうよ!」

通常アスカ「嘘ね! だって、ファーストキスは、このアタシが奪ったもの!」

幼馴染アスカ・転校生レイ「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

通常アスカ「アンタ達が、こっちの世界に来る前にちょっとね・・・えへへ。」

幼馴染アスカ「ひ、ひどいじゃない! そんなのフェアじゃないわよ!」

転校生レイ「そうよそうよ! ひどいわよ!」

いつのまにか、アスカコンビ vs 転校生レイという図式から、補完計画コンビ vs 通常
アスカに変わってしまった。

転校生レイ「そういえば、思い出したわ! 確かに今回わたしは抜け駆けしちゃったけ
            ど、元はといえばアスカがメールでシンちゃんを誘いだそうとしてたんじ
            ゃないの!」

通常アスカ「え・・・・ど、どうして知ってるのよ・・・。」

幼馴染アスカ「な、なんですって!!! アンタ達!!!」

通常アスカ「あ・・・あれは・・・ただ、シンジとショッピングに・・・。」

転校生レイ「それじゃぁわたしとやってること一緒じゃないの!」

通常アスカ「だ・・・だから・・・。」

幼馴染アスカ「ふーーーん、そう。それじゃ、今度は、アタシに権利が来てもいいわけ
              よねぇ。」

転校生レイ「え?」

幼馴染アスカ「アンタ達、2人して抜け駆けしたんだから、次の休みのデート権はアタ
              シにあるの! いいわね!」

転校生レイ「・・・・・・わかったわよ・・・。」

通常アスカ「そ、それはひどいわよ! アタシは実行犯じゃないじゃない!!」

幼馴染アスカ「抜け駆けしようとしたことに変りはないわ! それに比べてアタシは、
              ちゃんとみんなに宣言してるんだからね!」

通常アスカ「そ、それじゃ・・・せめて午前中だけでいいから、一緒に行かせてよ。お
            昼ご飯を食べたら帰るから。お願い。」

幼馴染アスカ「へーーー、やけに素直じゃない。ま、それくらいならいいわ。」

らしくもなく、両手を合わせてお願いするしおらしい通常アスカに、幼馴染アスカもそ
れくらいならいいかと、大目にみてやることにした。

フフフ・・・午前中のうちにこのアスカをまいてしまえば、後はこっちの物よ!

しかし、内心はしおらしさのかけらも無く、またしても策謀をめぐらす通常アスカであ
った。

そうはさせないわよ! 邪魔してみせるわ!

転校生レイも、なにやらよからぬ陰謀を巡らしている様だ・・・。

通常アスカ「さって、次の休みの計画は決まったわ! 解散しましょ!」

こうして女3人の熱く長い語らいは、いくつかの策謀と策謀に包まれながらも、次のア
タッカーは幼馴染アスカということに決まり、表面上は平和に終わりを告げた。
シンジの意志や都合は、いつもの様に全く考慮されていないのだが・・・。

<ミサトの家>

通常レイ「次はどうするの?」

シンジ「ここで、醤油をすこし入れるといいよ。」

通常レイ「うん・・・。」

ポタポタ。

シンジ「そうそう、それくらいかな。」

通常レイ「あ、碇くん・・・いい香りがしてきたわ。」

シンジ「そうだね。次は少し胡椒を入れてみようか。」

通常レイ「ええ・・・。碇くんってすごいのね。」

尊敬の眼差しでシンジを見つめる通常レイ。

シンジ「野菜を炒める時、フライパンをこう持ってお箸をこう持ってね、こうやって・・・。」

通常レイを抱きかかえるように、後ろから両手を掴んで野菜の炒め方を教えるシンジ。

通常レイ「うん・・・。」

シンジに手取り腰取り、野菜炒めの作り方を教えてもらう通常レイは、少し頬を赤くし
ながらも幸せそうである。

野菜炒め・・・いい香りがする物・・・おいしい物・・・。
碇くん・・・・いい香りがする人・・・やさしい人・・・。

誰知らぬ所で、おそらく本人も意識せぬまま、通常レイは2番目の抜け駆けをして、シ
ンジと楽しい一時を送っていた。

To Be Continued.
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