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TwoPair
Episode 07 -近くにある平凡なもの-
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<アスカの家>

学校から帰ってきた幼馴染アスカは、家にただいまの挨拶もせずに何やらご機嫌な様子
で自分の部屋へと駆け込んで行った。

幼馴染アスカ「へへ〜〜。」

学校のカバンの他に持って帰ってきた見慣れない紙袋をクッションの上に置くと、ガサ
ゴソと中からラッピングされた紙包みを取り出す。

どこに置こうかなぁ。アスカに、見つかったらまずいけど、机の中に入れておくのも嫌
よねぇ。

自分の部屋をきょろきょろと見渡しながら、紙袋から取り出した物が包まれているラッ
ピングを開けていく。

ここくらいしかないわねぇ。まっいっか。

出てきたのは写真立てだった。幼馴染アスカは、部屋の入り口からはちょうど死角にな
る本棚に丁寧に置き、今度は紙袋から写真の入った封筒を取り出す。

綺麗に写ってるかなぁ。

少し顔を緩ませながら取り出した何枚か写真を、ぺらぺらとめくる。そして、3枚ほど
写真とめくった時・・・。

幼馴染アスカ「なによこれーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

くっつくんじゃないかというほど顔を写真に近づけて、穴があくほどまじまじと見つめ
ている。

幼馴染アスカ「あンの、バカぁぁぁ!!!」

幼馴染アスカは、さっきまで大事そうに持っていた写真をぐしゃっと握り締めると、ダ
ッシュで家を飛び出して行った。

<レイの家>

ドンドンドンドンドン!!!!!

ガスガスガスガスガス!!!!!

レイの家の扉に殴る蹴るの暴行をはたらく幼馴染アスカ。

幼馴染アスカ「出て来ーーーーーい!! レイ!!」

ドンドンドンドンドン!!!!!

ガチャッ。

転校生レイ「もう、人がお風呂に入ってる時になによぉ・・・。」

白いバスタオルを体と頭に1枚づつ巻いた転校生レイが、玄関の扉を少し開ける。その
瞬間、セールスマンも顔負けの速さで扉の隙間に足を入れる幼馴染アスカ。

幼馴染アスカ「ウルサイ!! ア・ン・タに話があンのよ!!」

怒りもあらわにズカズカとレイの家へ上がり込む幼馴染アスカ。

転校生レイ「もう・・・どうしたってのよ。」

幼馴染アスカ「これは何よ!!! これはぁ!!!」

幼馴染アスカは、先日動物園で通りすがりの人にシンジと一緒に写してもらった写真を、
ダイニングテーブルの上にバンッと叩き付ける。その写真には、シンジの横でにっこり
笑う幼馴染アスカと、2人の真中にニマッと笑う転校生レイの姿が・・・。

転校生レイ「・・・・・あははは・・・・なにこれ・・・心霊写真?」

幼馴染アスカ「心霊じゃなくて、綾波レイよ!!! なんてことしてくれんのよ!!」

転校生レイ「お・・・覚えが無いんだけどなぁ・・・・あははははは・・・。なんで、
            写ってるのかなぁ???? ハハ・・・ハハハ。」

幼馴染アスカ「む〜〜〜〜!!! あっそ。」

転校生レイ「そ、そう・・・・なの・・・・わたしは知らないの・・・ははは。」

幼馴染アスカ「それじゃーーー。」

転校生レイ「え?」

幼馴染アスカ「思い出させてあげるわよ!!! うりゃーーー!!!」

<ミサトの家>

そろそろ、買い物に行く時間だ。今日は、ミサトさんの好きなスルメの天ぷらにしよう
かな。

シンジは、買い物カゴを腕にかけると玄関を出る。その姿は、主婦顔負けの貫禄すら漂
うまでになっている。

あっ、そうだ。レイと綾波の所、そろそろ醤油が切れる頃じゃないかなぁ。

自分の家の台所の様子だけでなくアスカやレイの家の台所の様子ですら、見ずともだい
たい想像ができる様だ。

<レイの家>

ガチャ。

レイの家の玄関扉を開けるシンジ。

シンジ「レイ? 買い物に行くから、一緒に醤油を買ってこ・・・・
        ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!」

シンジが見た物は、素っ裸の転校生レイとスカートがずり落ちた幼馴染アスカの熾烈な
プロレスシーンだった。

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・・・。」
幼馴染アスカ「・・・・・・・・・・・・・・。」

今までプロレスをしていた2人だが、その瞬間氷の様に体を固めると視線をシンジに集
中させる。

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・・・。」
幼馴染アスカ「・・・・・・・・・・・・・・。」

しばしの沈黙。

転校生レイ「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
幼馴染アスカ「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

あわててその場に座り込み、スカートでパンツを隠す幼馴染アスカと、素っ裸のままバ
スタオルを探して走り回る転校生レイ。

シンジ「ご、ご、ごめん!!!!!」

バタン。

シンジが出て行った後、真っ赤になって呆然と立ち尽くす2人だった。

<アスカの家>

通常アスカ「ふぁぁぁぁ! そろそろ、買い物に行かないと・・・。」

今日は午前中だけの授業だったので、学校から帰ってからずっと昼寝をしていた通常ア
スカは、眠い目を擦りながらリビングへ出てくる。

トントン。

通常アスカ「買い物に行きましょうよ。」

トントン。

幼馴染アスカの部屋をノックするが、返事が無い。

いないのかしら?

通常アスカ「開けるわよ。」

スッと襖を開けて部屋を覗いてみるが、やはり幼馴染アスカの姿は無い。

あーーあ。1人で買い物かぁ。

通常アスカは、ハンドバックを持つと買い物に出かけようと玄関まで行ったが、ふと足
を止める。

そうそう・・・買い物袋を持って行けってシンジが言ってたわね。

通常アスカは、ずっとスーパーで貰えるビニール袋で買った物を持って帰ってきていた
が、買い物篭を持参すると袋代として10円割り引きになるとシンジに聞いたのだ。

でもねぇ・・・なんだか、オバンくさくって嫌ねぇ。ミサトじゃあるまいし・・・。
そうだ!

自分の部屋から、かわいらしい紙袋を取ってくる。

これならダサくないわね。

ふと鏡を見た通常アスカは、制服姿で買い物に出かけようとしている自分に気付く。

せっかくかわいい袋を持ってるんだから、着替えてから行こうかしら。

通常アスカは、思い出の黄色いワンピースに着替えると、簡単に髪の毛の手入れをして
買い物に出ていった。

<スーパー>

今日は月に1度の安売りの日で、スーパーは食料品売り場から洋服売り場まで混雑して
いた。

うげぇぇ・・・こんな人ごみの中で買い物するのぉ? やっぱり、来るんじゃなかった
なぁ。でも、シンジが安売りの日に行ったらいいって言ってたしなぁ。

通常アスカは、気合を入れると人ごみの中に突進して行く。人にもまれながら、ターゲ
ットとなる牛肉売り場へ突撃あるのみ。

よくもまぁ、これだけ人が集まるものねぇ。

もみくちゃにされながらも、ぐいぐいと奥へ奥へと進んで行くと、ふと目の前に高校生
くらいのさえない男にお尻を触られている、同じ年くらいの女の子を発見した。

通常アスカ「あーーーー!! こ、この変態!! 痴漢!! そんな所で何してんのよ!!」

ガスッ!!

叫び声が響き渡った瞬間、その男は青ざめ逃げ出そうとしたが、それより早くアスカの
キックがわき腹に炸裂。

変態男「うげぇぇぇぇええええ・・・。」

通常アスカ「かっこわる〜〜。あーーーやだやだ。」

お腹を抱えてうずくまる男を、バカにした様に一瞥して通常アスカは再び牛肉を買いに
奥へ奥へと突進して行った。

<レイの家>

転校生レイ「もうダメぇぇぇ。わたしお嫁に行けなーーーい。シンちゃんにお嫁にもら
            ってもらおーーーっと。」

幼馴染アスカ「ふざけたこと言ってんじゃないわよ! アタシだって、パンツ見られた
              わよ!!」

転校生レイ「パンツと裸じゃ、全然違うわよ!」

幼馴染アスカ「だいたいアンタが、裸で暴れてるのがいけないんでしょ!」

転校生レイ「アスカが、いきなりブレンバスターなんかするからバスタオルがふっとん
            だのよ!」

幼馴染アスカ「それなら、すぐ取りに行けばいいでしょ! そのまま、パイルドライバ
              ーで仕返ししてきたじゃない!! やーねー、粗雑な娘は・・・。」

転校生レイ「ムキーーー! もう許さないんだからーーー!!」

幼馴染アスカ「望むところよ!!」

ローリングソバットをかけにいく転校生レイと、ウエスタンラリアットをかけにいく幼
馴染アスカ。2人のプロレスは、まだまだ続く様だ。

<スーパー>

さって、お肉も買ったから帰ろっと。

通常アスカが、買い物篭の代りに持ってきた紙袋を手にして歩き出すと、先程叩きのめ
した男とすれ違った。

フン! おどおどしちゃってさ。バッカみたい。

男が目を合わさない様に通り過ぎたのを見た通常アスカは、鼻で笑うとスーパーを出て
行こうとした。

ビービービー。

通常アスカ「ん!?」

スーパーの入り口に通常アスカが立った瞬間、警報が鳴り響いた。きょとんと周りを見
つめる通常アスカに1人の中年男が走り寄ってくる。

通常アスカ「なにか、あったのかしら?」

中年男「ちょっと、君!! その袋を見せてくれないか?」

通常アスカ「アンタ何よ!?」

中年男「ここの警備員だ。警報が鳴ったものでね。規則だから悪いが、見せてもらうよ。」

通常アスカ「どうせ、お肉と野菜ばっかりだから、いいけどね。」

中年男が紙袋の中を覗き込み、手を入れる。

中年男「これは何だね?」

通常アスカ「へ?」

中年男が紙袋から取り出した物は、万引き防止の機器がまだ取り外されていない音楽C
Dだった。

通常アスカ「何よそれ。知らないわよ?」

中年男「ここじゃ、他のお客さんのご迷惑になるから、ちょっと向こうで話を聞こうか。」

通常アスカ「ちょっと! アタシは知らないって言ってるでしょ!」

中年男「だから、話を聞くだけだよ。いいから、ちょっと来てくれないか。」

ここで不必要に騒げば、自分の立場が悪くなると考えた通常アスカは、中年男に付いて
スーパーの警備室へと入って行った。

<警備室>

通常アスカ「だから、知らないって言ってるでしょ!! だいたい、他の物にはお金払
            ってなんでこれだけ万引きしなくちゃいけないのよ!」

中年男「これだけ、はっきりとした証拠が上がってて、そんな言い訳が通用すると思っ
        てるのか!?」

通常アスカ「そうだわ! さっき変な変態男とすれ違った時に入れられたのよ! アタシ
            への腹いせに決まってるわ!!」

中年男「その男というのは、どこにいるんだ?」

通常アスカ「そんなの知らないわよっっ!」

中年男「いい加減にしないか! 最近、CDの万引きが増えているんだ! お前が犯人だ
        ったんだろ!」

通常アスカ「知らないって言ってるでしょーーが! 防犯カメラで確認しなさいよ!」

中年男「防犯カメラなんかで確認しなくても、長年の経験で万引きした奴くらいは見れ
        ばわかるんだよ!」

通常アスカ「アタシは、ネルフの職員よ! いいかげんにしないと、後でひどい目にあ
            うわよ!」

中年男「ネルフぅぅぅ??? ガハハハハハハ。追い詰められたからって、そんな嘘っ
        ぱち言って逃げられるとでも思っているのか!? これは傑作だぁ!!」

通常アスカ「よく言ったわね!! 見てなさいよぉ!」

通常アスカは、ネルフのIDカードを出そうと胸ポケットに手を当てるが、そこにはポ
ケットは無く、ふくよかな胸が揺れただけだった。

しまった・・・制服に入れたまんまだ・・・。

中年男「おやおや、どうしたんだ?」

中年男はニヤリと笑うと、右手を顎に当て通常アスカの体を頭の先から足の先まで嘗め
まわす様に見つめる。

中年男「なんだぁ? そこにも何か隠してるのか? ちょっと、服を脱いで見せてみろ!」

こ、この変態おやじがぁ!!

通常アスカ「アンタ、アタシがネルフの職員っていうことをわかってて言ってるんでし
            ょうね!」

中年男「わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ。うだうだ言うんなら、俺がやってや
        ろうか? えぇ?」

手を伸ばして近寄ってくるニヤけ顔の中年男から、通常アスカはじりじりと後退して行く。

どうするアスカ!!!

通常アスカは、キッと男を睨み付けた。入り口は中年男の後ろにある。なんとか脇をす
り抜けることができれば脱出可能なのだが・・・。

ガチャ。

脱出方法を試行錯誤しながら入り口の扉を睨み付けていると、ひとりでに扉が開いた。

チャンス!

扉を開けた人物に助けを求めようとした通常アスカだったが、次の瞬間にでた言葉は・・・。

通常アスカ「シンジ!」

                        ●

時間は少しさかのぼりアスカが痴漢を撃退している頃、シンジもアスカと同じスーパー
で買い物をしていた。

今日は、野菜が安いなぁ。ミサトさんにも、野菜を食べてもらわないといけないから、
買いだめしようかな。

女の子に生まれてきてたら、ヒカリ以上の家庭的な娘になっていたことだろう。シンジ
は、ミサトが好みそうな野菜とドレッシングを籠の中に入れていく。

さっきは、まいったよなぁ。

先程のレイの家で見た光景を思い出すと、自然と顔が赤くなってくる。これ以上妄想し
てまた鼻血が出るとかっこ悪いので、シンジは頭を振って無理やり思考を現実に戻した。

レイやアスカ・・・怒ってるかなぁ。
帰ったら、とにかく謝ろう・・・許してもらえないだろうけど・・・。

シンジは沢山の野菜と鶏肉を籠につめると、いつも人が少ない台所用品の通路を通って、
端から2番目のいつも人があまり並ばないレジへと向かった。

ビービービー。

レジで並んでいるとスーパーの入り口で警報が鳴りだしたので、なんだろうと振り向く
と赤毛の女の子が中年の男と話をしている。

ん? アスカ?

レジに並びながらじっと通常アスカの様子を伺っていると、中年男と一緒にスーパーの
端にある部屋へと入って行った。

どうしたんだろう? 落とし物でもしたのかな?

しばらく並んでいると清算の順番が回ってきた。シンジは、クレジットカードを差し出
しお金を払うと、持参した買い物篭に買った物を詰め込む。

せっかくだから、アスカと一緒に帰ろうかな。

野菜をたくさん買ったので重たくなった買い物篭を手にぶら下げると、先程アスカが入
って行った部屋の扉を開けた。

通常アスカ「シンジ!」

シンジが部屋の中に入ると、部屋の奥から真剣な眼差しでこちらを見つめる通常アスカ
の姿があった。

シンジ「どうしたの?」

いつもとは雰囲気が違う通常アスカを見たシンジは、咄嗟に何かあったことに気づいた。

中年男「なんだ? お前も仲間か?」

シンジ「仲間?」

中年男「おまえの、その籠の中も見せてみろ。何か万引きしてるんじゃないのか?」

シンジ「はぁ? 万引き???」

通常アスカ「違うわよ! 知らない間にCDを入れられたのよ!」

訴えかける通常アスカにシンジは軽く微笑み優しい瞳で見つめる。そんなシンジの表情
を見た通常アスカは、安心したのか冷静さを取り戻した。

シンジ「アスカが、そんなことをするわけありません。」

中年男「仲間同士でいくら言ったって、信じれるわけがないだろ? えー?」

通常アスカ「シンジ! ネルフのIDカード持ってるわよね!」

シンジ「うん・・・。」

シンジはうなずきながら、ネルフのIDカードを生徒手帳から取り出した。青ざめる中
年男を睨み付けながら、通常アスカは勝ち誇った様にシンジの横へ歩み寄る。

通常アスカ「携帯持って来るの忘れたのよねぇ。シンジの貸して。」

シンジ「いいけど。」

通常アスカは、シンジから携帯電話を受け取るといくつかボタンを押し、中年男を見な
がら耳にあてがう。

通常アスカ「もしもし、アスカだけど。○○スーパーに犯罪者がいるわ。すぐに捕まえ
            にきて。」

中年男「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は、仕事でやっただけだ。」

通常アスカ「防犯カメラも確認せずに犯人扱いして、服まで脱がそうとするのが仕事ぉ?
            ハンッ! ヘドが出るわ!」

中年男「・・・・・・・・だ、だから、あれは本気で言ったんじゃないんだ。」

通常アスカ「ウッサイわねぇ! そういうことは、ネルフの諜報部員に言うことね!」

真っ青になった中年男は、冷や汗をかき足をがくがく震えさせながら、ガクッっと膝を
床についた。

中年男「た・・・・頼む・・・勘弁してくれ。俺には妻も子供もいるんだ・・・。」

通常アスカ「フン! 行くわよシンジ!」

シンジ「う・・・うん。」

床に土下座して謝る中年男を尻目に、通常アスカはシンジと部屋を出ていった。

シンジ「あそこまで謝ってるんだから、許してあげたら?」

通常アスカ「アタシの服を脱がそうとしたのよ。」

シンジ「それは、許せないよ・・・許せないけど・・・。」

振り返って閉まった扉を見つめながら、哀れみの目で見つめるシンジ。

通常アスカ「そんな顔しないでよね。どこにも電話してないんだから大丈夫よ。あのス
            ケベおやじもこれに懲りたら、もうこんなことはしないでしょ?」

そのセリフを聞いたシンジは、一気に笑顔になる。

シンジ「さすがアスカだ。」

まいったわね。アンタのその笑顔は犯罪だわ・・・。

やれやれといった態度で、通常アスカはシンジから視線を逸らしトコトコと歩き出す。

通常アスカ「あーあ。今日は最低の日だわ。気分晴らしに、ちょっと公園に付き合いな
            さいよね。」

シンジ「いいけど。」

通常アスカは、このスーパーで買った食糧が入っている紙袋をシンジに持たせると、さ
っさと公園へ向って行った。

<公園>

シンジと通常アスカは公園のベンチに座り、来る途中に自動販売機で買ったジュースを
飲んでいた。

通常アスカ「どうして、男ってバカでスケベなのかしら。信じらんない。」

シンジ「はは・・・。」

買い物に出る前に見た転校生レイと幼馴染アスカの件があるので、なんだか自分が責め
られている様な気分になり、ぷぅっっと膨れるアスカに対して苦笑いを浮かべる。

通常アスカ「しっかし、アンタもいいタイミングで入ってきたわねぇ。」

シンジ「うん・・・レジでお金を払っている時、アスカを見かけたから一緒に帰ろうと
        思って・・・。」

通常アスカ「アタシが困ってるってーのに、アンタは呑気に買い物してたってーの!?」

シンジ「そ、そんな・・・。だって、あんなことになってるなんて知らなかったんだよ。」

シンジは必死で言い訳をするが、通常アスカのキッと睨み付けた目から逃げることがで
きない。

シンジ「アスカぁぁ〜〜。」

懇願する様な顔で許しを請うシンジの情けない顔を、通常アスカはしばらく睨み付けて
いたが、思わず吹き出してしまった。

通常アスカ「プッ。冗談よ。何、真剣に困った顔してんのよ。」

シンジ「だって・・・。」

通常アスカ「おかげで助かったわ。シンジ・・・ありがとう。」

シンジ「お役に立ててよかったよ。」

通常アスカ「ううん。アタシが万引きなんかしてないって、信じてくれたこと。」

シンジ「当然じゃないか。」

通常アスカ「どうして?」

シンジ「だって、アスカだったら万引きなんかせずに店ごと乗っ取りそうだもん。」

通常アスカ「どういう意味よっ!!」

シンジ「アハハ、だって、そんな感じじゃないか。」

通常アスカ「アタシは、あんなチンケな店なんかより欲しい物があるんだけどなぁ。」

通常アスカは遠くを見つめながら、隣に座るシンジにぽてっともたれ掛かった。やはり
心細かったんだろうなと思ったシンジは、そのまま優しい瞳で通常アスカを見つめる。

シンジ「そうだろうね。なんか、とんでもないものを狙ってそうだ。」

通常アスカ「ううん・・・。」

目を閉じて軽く首を振った通常アスカは、ちらっとシンジの方へ視線を移した。

通常アスカ「近くにある平凡なものよ・・・。」

そして、遠くを見つめる目で夕日を眺め続けるのだった。

<レイの家の前>

幼馴染アスカ「フン! 今日はこのくらいで許してあげるわ!!」

転校生レイ「いたたたた・・・体中が痛いよぉ・・・。」

幼馴染アスカ「じゃぁ、帰るわよ!」

エレベーターで上がってきたシンジと通常アスカが、レイの家の前を通りかかった時、
騒がしい声と共に、幼馴染アスカがレイの家から出てきた。

幼馴染アスカ「あーーーーーーー!!! アンタ達、何2人で買い物に行ってるのよ!」

通常アスカ「ち、ちがうわよ! 偶然○○スーパーで会っただけよ!」

転校生レイ「シンちゃん、ひどーーーーい。アタシを傷物にしといてーー!!」

シンジ「ゲ・・・。」

先程のスーパーでのことがあるので、今一番触れられたくない話題であった。

通常アスカ「傷物って何よ!?」

ジト目でシンジを睨み付ける通常アスカ。

転校生レイ「シンちゃんにね・・・アタシの裸見られたのよぉぉ。もう、お嫁に行けな
            いぃぃ!!」

シンジ「だ・・・だから・・・あれは・・・その・・・ごめん。」

そこへ、通常レイが出てくる。

通常レイ「私も前に、見られたわ・・・。」

幼馴染アスカ「それを言うなら、アタシも下着姿見られたわよ!」

シンジ「ちょ、ちょっと・・・もう許してよ・・・。」

なんだか冷たい視線を感じたシンジは、通常アスカの方へおずおずと振り返ると・・・。

ヒーーー!!

予想通りの顔で、シンジを睨み付けていた。

シンジ「違うんだ・・・ぼくは、何も・・・。」

通常アスカ「さいってい!!」

パーーーーーン。

シンジ「ウゲェ〜」

軽快な音と共に鼻血を出しながら吹き飛ぶシンジ・・・本日2度目の鼻血だ。

まったく!! どうして、アタシの裸だけ見ないのよ!!

通常アスカは、怒りもあらわにドスドスと家へと帰って行った。

To Be Continued.
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