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TwoPair
Episode 11 -こんにちは赤ちゃん-
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<アスカの家>

夜中嫌な夢を見た幼馴染アスカは、寝汗びっしょりで目を覚ました。リツコの話による
とそろそろ薬が効いて通常アスカの熱も下がる時間帯である。

しまったーーっ! 熱が下がったら、シンジの貞操が危ないじゃないのっ!

寝る前に様子を見に行った時は、熱があるんだから仕方が無いとおおめに見たが、通常
アスカにシンジが襲われる夢を見て、飛び起きる幼馴染アスカ。

急がないと、危ないわっ!

寝間着代わりのタンクトップとホットパンツのまま、玄関から駆け出すとミサトの家の
前でふさふさと揺れる青い丸い塊が2つ目に入った。

幼馴染アスカ「何してるの?」

転校生レイ「レイがアスカのことを心配してね・・・様子を見に行こうかって。」

幼馴染アスカ「リツコの薬を飲んだんだから、大丈夫よ。それよりシンジの方が。」

転校生レイ「シンちゃん?」

幼馴染アスカ「寝る前に様子を見に行ったんだけど、シンジと一緒に寝てたのよ。」

転校生レイ「えーーーーーーーーーーーっ!」

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                        :

<ミサトの家>

うーーん、暑い・・・重い・・・。

朝になりシンジがうとうとと目を覚ますと、なぜだか体の自由が効かない。しかも湯た
んぽを抱いているように暖かい。

ん? なんだ?

シンジ「わーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

通常アスカ「何よ、ウルサイわねぇ・・・ん? なっ、なによアンタ達っ!!!」

幼馴染アスカ「あ、おはよう。アスカのことが心配だったから、一緒に泊まってあげた
              のよ。感謝しなさいよね!!」

転校生レイ「おっはよーー。アスカ元気になって良かったわね。」

通常アスカ「誰もそんなこと頼んで無いわよっ! しかもどうしてシンジのベッドで寝
            てるのよっ!」

転校生レイ「だって、寝る所無いんだもん。」

幼馴染アスカ「アンタはどうして、シンジと一緒に寝てるのよ!?」

通常アスカ「えっ? そ、それは・・・。シ、シンジが一緒に寝て欲しいって・・・。」

シンジ「わーーーーーーーっ、そんなこと言ってないだろっ!」

シンジの右腕を抱き枕にして両手両足で抱き付いている通常アスカ、左腕を抱き枕にし
ている幼馴染アスカ。布団代わりになっている通常レイの下、シンジはどうしたものか
困ってしまう。

通常アスカ「レイっ! なんでシンジの上に乗っかってるのよっ!」

転校生レイ「だって、シングルベッドだったから、もうスペースが無いんだもん。」

通常アスカ「早く降りなさいよっ!」

転校生レイ「アスカが降りたら降りるわ。」

幼馴染アスカ「アスカが最初から寝てたんだから、先に起きるべきよねっ!」

通常アスカ「嫌よっ! アタシは熱があったんだから、最後まで寝てる権利があるわっ!」

シンジ「もう、ぼくは起きるからねっ。」

やわらかい3人の体の中心でもみくちゃにされながらも、シンジはのそのそと布団を潜
って足元から抜け様としたが、なぜか下に進めない。

ん?

通常レイ「碇くん、おはよう。」

何かが足元にあるので、転校生レイの体を持ち上げて布団の中を覗くと、ぱちくりとす
る赤い瞳の持ち主が、シンジの太ももを枕にして丸まって寝ていた。

シンジ「わぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

驚いたシンジは、慌てて枕元から這い出そうとするが、足を通常レイに抱きつかれ上半
身は3人娘にくっつかれており身動きが取れない。

シンジ「び、びっくりするじゃないか。いいかげんにみんなどいてよっ。」

幼馴染アスカ「まだ、6時じゃないの。そんなに慌てなくてもいいでしょっ。」

転校生レイ「アスカも病み上がりだから、まだ寝てた方がいいだろうしね。」

シンジ「えーーーーーーーーっ!!」

転校生レイ「アスカの風邪がひどくなってもいいの?」

シンジ「・・・・・・・・・・・・・。」

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                        :
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結局そのままの思春期の男の子にとっては生き地獄の状態で、寝ることもできずにもん
もんと1時間を過ごした。

シンジ「そろそろ起きないと、学校に遅れちゃうよ。」

通常アスカ「もう少し・・・。ぐぅ・・・。」

転校生レイ「ふわぁぁ。そろそろ起きましょうか。」

シンジ「ほらっ、アスカ達も起きて起きてっ!」

通常アスカ「ふぁぁぁぁ、仕方無いわね。」

幼馴染アスカ「ふぅ、寝不足だわ。さて、起きましょうか。」

シンジ「綾波も、もう起きなくちゃ。」

通常レイ「ええ・・・。」

確かに、そろそろ起きなければ学校に間に合わないので、もそもそと寝ぼけ眼で狭いベ
ッドからから起き出す4人娘達。

シンジ「みんなの分の朝ご飯を作っておくから、着替えたら来るといいよ。」

通常アスカ「久しぶりに、シンジの朝ご飯ね。」

転校生レイ「レイ、行きましょ。」

通常レイ「ええ・・・。」

シンジは、レイちゃんズとアスカコンビが部屋から出て行くのを見届けると、制服に着
替え始める。

なにもみんなでぼくの布団で寝なくてもいいのに・・・なんだか体中が痛いよ・・・。

ずっと自由が効かなかったので節々が痛い。うーーんと、伸びをして体を伸ばすとコキ
コキと音が鳴った。

早く着替えて朝ご飯の準備をしなくちゃ。

スーーーッ。

シンジがパジャマと、寝汗を掻いたシャツを脱いだ時、部屋の襖が開いた。

シンジ「わっ!」

通常レイ「碇くん、大変なの・・・。」

シンジ「ちょ、ちょっと待って、すぐ服を着るから。」

通常レイ「それどころじゃないの。早く来て。」

通常レイの様子がいつもと比べていっそうおかしいので、シンジはズボンだけ履くと急
いでリビングへと出て行った。

おぎゃーおぎゃーおぎゃー。
おぎゃーおぎゃーおぎゃー。
おぎゃーおぎゃーおぎゃー。

シンジ「な、なに? この赤ちゃん?」

どこから来たのかリビングには、すっぽんぽんの3人の赤ちゃんが泣いていた。

通常レイ「赤木博士の置いていったこの薬を飲んだら、みんなこうなっちゃったの。」

シンジ「えーーーーーーーーーーっ!! まさか、アスカとレイなの?」

通常レイ「ええ。」

シンジ「アスカっ! アスカっ!」

通常アスカ「おぎゃーおぎゃー。」

赤毛の赤ちゃんを抱っこして呼び掛けるが、泣いているだけで反応が無い。同じ様に青
い髪の赤ちゃんにも呼び掛けてみたが、反応は同じ。

シンジ「どうしよう・・・。」

通常レイ「赤木博士に電話してみたら?」

シンジ「そ、そうだね。電話してくるから、みんなを頼むよ。」

通常レイ「ええ。」

シンジは電話の受話器を取ると、リツコの自宅へと電話を入れた。

リツコ『もしもし? シンジ君? アスカに何かあったの?』

シンジ「何かどころじゃないですよっ! リツコさんの薬を飲んだら赤ちゃんになった
        じゃないですかっ!」

リツコ『えっ、そんなはず・・・・・・あっ!!』

シンジ「どうしたんですか? リツコさんっ! リツコさんっ!」

リツコ『風邪薬と間違えて、失敗作の若返りの薬を置いて行ったみたいね。』

シンジ「どうして、そんな薬があるんですかぁぁぁぁ!!」

リツコ『そ、それは・・・。それはともかく、その薬は持続力が無いから数時間くらい
        で元に戻るわ。』

シンジ「数時間で元に戻るんですねっ!!」

リツコ『ええ、大丈夫よ。少しの間だけ、悪いけど皆の面倒みてあげなさい。』

シンジ「はい、わかりました。」

リツコ『それから、その薬のことはミサトや碇司令には内緒よ。』

シンジ「え? どうしてですか?」

リツコ『そ、それは・・・その・・・ネ、ネルフの極秘計画だから、他言するなって碇
        司令から言われてるのよ。』

シンジ「父さん・・・。」

リツコ『わかったわね。』

シンジ「はい。」

リツコ『ほっ・・・。それじゃ、悪いけど後は任せたわね。』

シンジは、またゲンドウが何か良からぬことを考えているのでは無いかと不安になった
が、それより赤ん坊のことが心配なので電話を切るとリビングへと戻って行った。

通常レイ「みんな泣き止まないわ。」

シンジ「お腹が空いてるのかなぁ。何か赤ちゃんの食べれる物が無いか探してみるよ。」

通常レイ「ええ。」

赤ん坊の食べれそうなものが無いか、ごそごそと漁ってみるが離乳食などあるわけが無
い。そこでとりあえず味噌汁の上澄みを飲ませようとお湯を沸かすことにした。

ごぼっ、ゴボボゴボボ。

鍋に水を入れコンロの火にかけていると、後ろで変な音が聞こえてくる。

ぼこぼこぼこ。

何の音かと振り返ると、通常レイに普通の牛乳を飲ませれた通常アスカが、目を白黒さ
せてゲホゲホと吐き出していた。

シンジ「ん? わーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」

通常レイ「変ね。飲まないわ。」

シンジ「そんなの飲むわけないじゃないかっ!」

慌てて通常レイの手から牛乳を取り上げ、通常アスカを洗面台へ連れて行く。

通常レイ「どうして? 赤ちゃんはミルクを飲むのよ。」

シンジ「赤ちゃん用の粉ミルクってのがあるんだよ。そんな冷たいのダメだよっ!」

通常レイ「そうなの・・・。」

シンジは、通常アスカから牛乳を吐き出させると再びソファーに他の赤ん坊と並べて寝
かせる。

通常レイ「碇くん・・・レイのお尻濡れてる。」

シンジ「あ、おしっこしたんだ。困ったなぁ。」

赤ん坊の服など有るわけが無いし、オムツも当然無い。

シンジ「オムツと粉ミルクを買ってくるから、その間にこれを少しづつ飲ませておいて
        くれないかな?」

味噌汁の上澄みの入ったおわんとスプーンを、通常レイに渡す。

通常レイ「わかったわ。」

シンジ「それじゃ、行ってくるね。」

通常レイは、シンジが出掛けて行くのを玄関で見送ると、3人の赤ん坊に上澄みを飲ま
せ始めた。

転校生レイ「おぎゃーおぎゃー。」

通常レイ「これを飲むのよ。」

スプーンで少しづつ口に入れていくと、お腹が減っていたのか転校生レイは必死で飲み
始める。

通常レイ「次は、アスカね。」

代わる代わる赤ん坊を抱きかかえて、上澄みを飲ませる通常レイ。そして、最後の一口
を幼馴染アスカに飲ませようとした時・・・。

ブリブリブリ。

通常レイ「・・・・・・・・・・・。」

通常レイのパジャマの上で、幼馴染アスカがお漏らしをしてしまった。

ブリブリブリ。

通常レイ「・・・・・・・・・・・。」

汚れた自分の服と幼馴染アスカを見ながら、目を点にする通常レイ。

通常レイ「どうして、そういうことをするの?」

仕方なく、幼馴染アスカをお風呂に連れて行きお尻を洗ってあげる。それと一緒に自分
のパジャマも洗う。

幼馴染アスカ「きゃっきゃっ。」

お風呂に連れて行った幼馴染アスカに、暖かいシャワーをかけてやると、喜んではしゃ
ぎまわった。

ガッチャーン。

通常レイ「はっ! 今度は何!?」

リビングで何か物音がしたので、簡単に洗った自分のパジャマと下着を洗濯籠に入れる
と慌てて駈け戻る。

通常アスカ「ばぶーー。」

通常レイ「・・・・・あなた何してるの?」

そこには、立ちあがろうとしてテーブルクロスを掴んだようで、テーブルの上に置いて
あった物と一緒に全て引きずり落とした通常アスカがいた。

通常アスカ「ばぶーーばぶーー。」

通常レイ「あなた、こっちで寝てて。」

通常アスカをソファーの上に置くと、このまま裸でいるわけにもいかないので、シンジ
の部屋にTシャツを取りに行く。

碇くん・・・早く帰ってきて・・・。

疲れきった表情をしながら、シンジの部屋から持って来たTシャツを着こんで、テーブ
ルの掃除をしていると今度は風呂場からバッシャーンという物音が聞こえた。

あ・・・忘れてたわ。

慌てて風呂場へ駈けて行くと、半分ほど溜めた浴槽でじたばたしながら溺れる幼馴染ア
スカの姿があった。

通常レイ「どうして、溺れるの?」

ざばーーーっと幼馴染アスカを浴槽から引き上げる通常レイ。

幼馴染アスカ「おぎゃーーーおぎゃーーー。」

通常レイ「あなたも、こっちで寝てて。」

通常レイが幼馴染アスカを通常アスカの横に寝かせた時、玄関でシンジが帰ってきた音
がした。

ほっ。碇くん・・・。

シンジ「ただいまーー。あれ? どうして、ぼくのTシャツを着てるの?」

通常レイ「臭くなったから。」

シンジ「へ?」

通常レイ「オムツは?」

シンジ「うん、買ってきたよ。」

通常レイはオムツを受け取ると、珍しくすばやい動きでいそいそとアスカコンビと転校
生レイにオムツを履かせて、タオルケットでくるむ。

シンジ「ミルクを作るから、ちょっと待ってて。」

シンジがミルクを作っている間、通常レイは赤ん坊を代わる代わる抱っこすると、ぎこ
ちない手つきであやしてあげる。

転校生レイ「おぎゃーおぎゃー。」

通常レイ「よしよし・・・。」

通常アスカ「おぎゃーおぎゃー。」

通常レイ「よしよし・・・。」

幼馴染アスカ「おぎゃーおぎゃー。」

通常レイ「お腹が減ってるみたい。」

シンジ「うん、もうできたよ。」

赤ん坊をあやす通常レイの座るソファーに、肌温に暖めたミルクを哺乳ビンに入れて持
ってくるシンジ。

シンジ「綾波って、いいお母さんになるね。」

通常レイ「・・・・・そ、そうかしら。」

頬を赤くしながら、意識をオムツに集中する通常レイ。その表情から、なんとなく嬉し
そうにしているのがわかる。

通常レイ「なんだか疲れたわ。」

通常アスカを抱きかかえてミルクをあげながら、ぽてっとシンジに寄りかかる通常レイ。

通常アスカ「ばぶーーーっ!!」

通常レイ「い、痛いっ!!」

幼馴染アスカ「ばぶーーーっ!!」

転校生レイ「ばぶーーーっ!!」

通常レイ「やめて、痛いっ痛いっ!!」

シンジに持たれかかった途端、一斉に髪の毛を赤ん坊達に引っ張られてシンジから引き
離される通常レイ。

シンジ「何してるんだよ。」

痛がるレイから赤ん坊達を引き離して、シンジがだっこしてやるとおとなしくミルクを
飲み始めた。

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そうこうしているうちに、お昼時。赤ん坊トリオはおとなしく寝ているので、その間に
通常レイと自分の昼食を作る。

シンジ「リツコさん、数時間って言ってたけど、いつ元に戻るんだろう?」

通常レイ「そうね。」

通常レイが、焼きそばを食べながら赤ん坊の顔を見ていると、転校生レイが突然泣き出
した。

転校生レイ「おぎゃーおぎゃー。」

その声に反応するかの様に、アスカコンビも泣き始める。

シンジ「どうしたんだろう?」

通常レイ「オムツがびしょびしょだわ。碇くんも手伝って。」

シンジ「うん、わかった。」

通常レイが、通常アスカのオムツを変えている間に、他の2人のオムツを脱がして丸め
るシンジ。

通常レイ「はい、終わりよ。」

通常アスカのオムツを変えて、タオルケットでくるんでやる通常レイ。その間、シンジ
は幼馴染アスカと転校生レイの足を、オムツが変えられる様に高々と両手で持ち上げて
いた。

ぼむっぼむっぼむっ!

次の瞬間、突然元の姿に戻るアスカコンビと転校生レイ。

シンジ「!!!!」

転校生レイ「!!!!」

幼馴染アスカ「!!!!!」

素っ裸の転校生レイと幼馴染アスカの足を高々と持ち上げるシンジと、2人の目がぱち
くりと合う。

シンジ「はは・・・はははははっ・・・。」

転校生レイ「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

幼馴染アスカ「えっちっ! 変態っ! 痴漢っ! しんじらんなーーーーいっ!!」

シンジ「いや、これは、ちょ、ちょっと待って、わーーーーーっ!!」

ばっちーーーーーーーんっ!!

幼馴染アスカの強烈な平手を食らったシンジは、通常アスカの元へ吹っ飛ぶ。

シンジ「アスカ・・・助けて・・・。」

唯一タオルケットをまとっていたアスカに助けを求めるシンジ。

通常アスカ「アンタって奴わーーーーーーーーーっ!! 今度タイミングを外したら殺
            すって言ったでしょーーーがーーーーっ!!!」

タオルケットを胸の所で押さえて、青筋をたて拳を固めて立ちあがる通常アスカ。

シンジ「え・・・な、なんで・・・うげっ!」

ばっちーーーーーーーんっばっちーーーーーーーんっ!!
ばっちーーーーーーーんっばっちーーーーーーーんっ!!

そして、往復ビンタ2連発を食らったシンジの屍が、その場に転がり続けるのだった。

To Be Continued.
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