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TwoPair
Episode 15 -レイちゃんがんばる-
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<通常レイの寮>

部屋に戻ってからというもの、一言も喋らずにただ本を読みふけるレニのことを、通常
レイはじっと見ていた。

どうして、本ばかり読むの?
みんなとお喋りしたら楽しいのに・・・。

レニを見ていると、どうしても昔の自分とだぶらせてしまう。転校生レイ達が、この世
界へ来る前の自分に。

レニを笑わせてあげたい・・・。
それが、私の役目。

通常レイは、絶対にレニを笑わせてみせるんだという決意を固めると、その瞳に炎の闘
魂を燃やすのだった。

私、がんばる!

コンコン。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。シスターでも来たのかと、通常レイは自分の
椅子を立ち上がりドアを開ける。

通常レイ「誰?」

転校生レイ「わたしよ。ちょっといいかしら?」

通常レイ「レイ? 今、開けるわ。」

そう言いながらドアを開ける時、通常レイの頭に名案が思い浮かぶ。

ガチャ。

転校生レイ「あっ、レイ? ねぇ、最近なんだか思い詰めているみたいだけ・・・・・
            うにぃぃぃぃーーー。」

ぷにぷに。

通常レイ「レニ、見て。面白いわ。」

転校生レイがドアから顔を出すや否や、両方のほっぺたをぷにぷにと引っぱって、レニ
を笑わそうとする通常レイ。

通常レイ「駄目なのね・・・。この顔じゃ・・・。」

通常レイは面白いと思ったのだが、レニはクスリとも笑わなかった。心配してやってき
た転校生レイにしてみれば、いい災難である。

転校生レイ「うーーうーーうーー。な、なにするのよっ!」

突然の事にされるがままだった転校生レイだが、通常レイの両手を振り払って、文句を
ぶうたれる。

通常レイ「面白い顔だと思って・・・。」

転校生レイ「あ、あなたねぇ・・・。同じ顔してるんでしょうがっ!」

通常レイ「自分の顔引っぱっても、面白くないから。」

転校生レイ「人に引っぱられる方が、もっと面白くないわよっ!」

はっ! そうだわっ!

転校生レイの顔をじっと見ていた通常レイの脳裏に、またあることが閃く。今度こそ、
レニを笑わせる自信がある。

通常レイ「レニ? 見て。」

とっさに、両手の人差し指を転校生レイの口に突っ込むと、左右にぐわーーんと広げて
見せた。さっきの顔より傑作である。

転校生レイ「ふがふがふがふがふがっ!」

しかし、それでもレニはちらりと見ただけで笑おうとはせず、また本に視線を戻してし
まう。

通常レイ「この顔じゃ、役に立たないのね。」

転校生レイ「ふがふがふが。な、何するのよーーーーっ!」

再びなんとかかんとか、通常レイの指を口から抜き取った転校生レイは、先程より声を
張り上げて文句をぶうたれる。当然である。

通常レイ「もういいわ。」

転校生レイ「さっきから、何してるのよ?」

通常レイ「レイの顔じゃ、つまらないのね。」

転校生レイ「だーかーらっ! 同じ顔してるあなたはどうなるのよっ!」

通常レイ「うーーーん。」

転校生レイ「百面相するんなら、自分の顔で・・・。」

通常レイ「はっ! そうだわっ!」

転校生レイ「ねぇ・・・人の話聞いてる?」

心配して来てみたら、突然顔をいじくりまわされるわ。またなにか、通常レイがおかし
なことしてるわで、危機感を覚える転校生レイ。

通常レイ「もっと、面白い顔があったわ!」

それだけ言うと、通常レイは自分の部屋から、トタトタと廊下へ出て行った。

転校生レイ「ちょっと、待ってよ。」

なんとなく、このままほおっておくと、とんでもないことになりそうな気がした転校生
レイは、後を追って一緒に飛び出して行った。

転校生レイ「ねぇ、どこ行くのよ?」

通常レイ「アスカの所。」

転校生レイ「そんな所へ行って、どうするのよ。」

通常レイ「私達の顔より面白いわ。」

転校生レイ「それは・・・確かに・・・じゃなくて、さっきから何してるのよ?」

通常レイ「レニを笑わせたいの。」

転校生レイ「はぁ?」

通常レイ「昔の私を見てる気がするの。」

転校生レイ「・・・・・・・・・・・・。そういうことなのね。」

通常レイ「もっと楽しいことがあるって教えてあげたくて・・・。」

転校生レイ「わかったわ。わたしも協力するわ。」

通常レイ「ありがとう。」

通常レイの気持ちを大切にしたいとも思うが、別の思惑もあった。なんといっても、こ
れを口実に、アスカの顔を思いっきり引っぱれるのだ。

<幼馴染アスカの寮>

レイちゃんズは、まず幼馴染アスカの寮の前に来ていた。

転校生レイ「とりあえず、こっちの顔から使ってみましょうか。」

通常レイ「どっちでもいいわ。」

ほとんど、物扱いである。

転校生レイ「じゃ、呼び出すわよ。」

早速、転校生レイが手をグーにしてドアをノックしようとした時、部屋の中から聞こえ
てくる叫び声。

幼馴染アスカ「ここは、アタシの領域でしょうがっ! 入って来ないでよっ!」

織姫「ココハ キョウドウノ ヘヤデース! ワケノ ワカラナイ シュチョウ シナイデ
      クダサーイ!」

幼馴染アスカ「同室だろうが、プライバシーって物があるでしょうがっ! そんなこと
              もわかんないの? アンタバカぁ?」

織姫「プライバシート バショノ トリアイトハ イミガチガイマースッ! アナタノホウ
      ガ バカデースッ!」

幼馴染アスカ「ぬわんですてーーーーっ!!!」

織姫「アナタナンカニ マケマセーーンッ!」

転校生レイは冷や汗を垂らしながら、ノックしようとした手を止めてしまう。ちょっと
したいたずら心で近寄ると、とんでもないことに巻き込まれそうである。

転校生レイ「もう一人のアスカの方へ行きましょ。」

通常レイ「そうなの?」

転校生レイ「ここは・・・まずいわ・・・。」

通常レイは、言われるがまま転校生レイに付いて行くのだった。

<通常アスカの寮>

コンコン。

通常アスカ「はーーい。」

機嫌よく返事をして出て来る通常アスカ。こちらは特に問題無さそうである。

転校生レイ「ちょーっと、アスカの力を借りたいんだけど。」

通常アスカ「なによ。」

転校生レイ「アスカにしかできないことなのよ。」

通常アスカ「アタシにしかできないこと?」

転校生レイ「そうっ! その顔形が大事なのよっ!」

通常アスカ「ふーーん。まぁ、そう言われちゃ仕方ないかっ!」

自分のことを、美人と誉められたと思ったアスカは・・・転校生レイが誤解する様にわ
ざと言ったのだが・・・ほいほいと安請け合いをしてしまった。

<通常レイの寮>

通常アスカを引き連れたレイちゃんズ一行は、早速通常レイの寮の前に来ていた。

通常アスカ「なに? レイの部屋じゃない。」

転校生レイ「そうなのよ。ちょっと入ってみて欲しいの。」

通常アスカ「いいけど?」

少し怪しいとは思ったが、あまり深く考え様とはせず、通常レイの寮の扉を開ける通常
アスカ。その途端、後ろからレイちゃんズが飛び掛かってくる。

通常レイ「レニ、見て。」

ぶにょーーーーーん。

レイちゃんズの4つの手が、一斉に通常アスカの顔を上下左右に引っ張る。突然のこと
に目を白黒させて、慌てふためく通常アスカ。

通常アスカ「あばばばばばばばばばばばばばばっ!」

通常レイ「面白いでしょ?」

通常アスカ「あばばばばばばばばばばばばばばっ!」

しかし、それでもレニは一瞬こちらに向いただけで、視線を元の本に戻して背を向けて
しまった。

通常アスカ「うがーーーーーーーーっ!!!」

最初はいきなり何が起こったのかわからなかった通常アスカであったが、とうとう怒り
狂ってレイちゃんズを弾き飛ばす。

通常アスカ「なにすンのよっ!!!」

ドッカーーーーンっ!

転校生レイ「もうっ! ひどいじゃないぃ・・・。いたたたた。」

弾き飛ばされた転校生レイは尻餅をつきながら、ぷぅぅぅっと膨れて通常アスカを睨み
つける。

通常アスカ「それは、こっちのセリフよっ! いきなり何すんのよっ!」

転校生レイ「だって、協力してくれるって言ったじゃないっ!」

通常アスカ「今のとアタシの美貌と、何が関係あるってのよっ!」

転校生レイ「わたしは、アスカの顔にしかできないって言ったのよ?」

止めておけば良い物を、まんまと自分の策略にはまった通常アスカが面白くて、つい勝
ち誇った様に言ってしまう転校生レイ。

通常アスカ「だから、今のとアタシの美貌とどんな関係あるのかって、聞いてるのよっ!」

転校生レイ「わかってないわねぇ。あなたの面白い顔を借りて、レニを笑わそうとした
            んじゃない。だーれも、美貌なんて言ってないわよー。」

得意満面してやったりの顔で、やれやれという感じで両手の手の平を天に向けて転校生
レイが言い放った。

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

転校生レイ「だいたい、あなたも・・・ひーーーーーーーっ!」

しかし、目を開けて視線を通常アスカに移した瞬間、その先には髪の毛の先から逆立ち
始める通常アスカの姿が見えた。

転校生レイ「じょ・・・じょうだんよ・・・。ははは・・・やーねー、本気にしちゃっ
            て・・・ははは・・・はは・・・いやーーーーーーーーーーーーーっ!」

ドガッ! ベキッ! グシャッ! ドカドカッ!

最初からこうなることくらい容易に予想できたはずなのだが、哀れにもその場に沈黙し
てしまう転校生レイ。その間、通常レイはひっそりと物陰に隠れて嵐が過ぎ去るのを待
っていた。

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<中庭>

その後、気を取り直した通常アスカとレイちゃんズは、3人で中庭へ来ると仲良くベン
チに腰を掛けていた。

通常アスカ「そんなの個人の自由だから、ほっとけばいいじゃん。」

通常レイ「前の私を見てるみたいなの。」

通常アスカ「そういうのを、おせっかいってのよっ!」

転校生レイ「でもね、アスカ。おせっかいでも、レイが初めて人の為に何かしてあげよ
            うって思ったんだから、協力してあげてもいいんじゃない?」

通常アスカ「うーーーん。」

なんだかんだと言いながらも、最近いつも一緒にいる通常レイのことなので、通常アス
カも少し考えてみようかなという気になってくる。

通常アスカ「要するに、レイはいつも本を読んでるレニが心配なんでしょ?」

通常レイ「ええ。」

通常アスカ「でもねぇ。笑ったからって、解決しないんじゃない?」

通常レイ「え?」

通常アスカ「だって、そうなった原因を取り除かなくちゃ、笑わせただけで解決しない
            わよ。」

通常レイ「そうなのね・・・。」

通常アスカ「まずは、あの娘がどういう娘なのか、シスターに聞きに行きましょうよ。」

そういうことに決まり、通常アスカがリーダーシップを取ってベンチを立ち上がった時、
教会へ入って行くマリアの姿が見えた。

ん? こんな夕方から教会に何しに行くのかしら?

ふと、そんなことを思った通常アスカであったが、今はやらなければならないことがあ
るので、レイちゃんズを連れて職員室へと向かって行った。

<食堂>

職員室でシスターの話を聞いた通常アスカとレイちゃんズは、そろそろ夕食時なので食
堂へとやって来ていた。

レニは両親に幼い頃から英才教育を受けさせられ、常にトップを取らなければ許して貰
えない環境にあったらしい。友達もできないまま、勉強だけしてきたということだ。

通常アスカ「むぅ・・・。」

そんな人生を全面否定する転校生レイは、レニの両親へ怒りを剥き出しにしているが、
通常アスカは複雑な心境であった。

通常アスカ「アタシの場合、逆の方向へ向かっちゃったからねぇ・・・。」

アイリスの場合は、ある種自分に似ている所があったので理解し易かったが、レニの場
合境遇が似ていても、逆方向へ閉塞してしまっているので難しい。

通常レイ「そうだわ。」

通常アスカ「なに? 何か良い方法があるの?」

通常レイ「碇くんの顔を・・・」

ドゲシッ。

椅子から転げ落ちる通常レイを無視して、転校生レイと頭を付き合わせて悩む通常アス
カ。

転校生レイ「アスカと学力比べをして、いくら勉強したって所詮この程度なんだってわ
            からせてあげたら?」

通常アスカ「アンタバカぁ? そんなことして、もし逆効果になったら、取り返しのつ
            かないことになり兼ねないわよ。」

転校生レイ「そ、そうね・・・。」

そろそろ食事時なので、食堂へ来る生徒の数も増えてきた。そんな中、シンジとすみれ
が仲良く手を繋いで食堂へやって来る。

ビシッ!
ビシッ!

レニのことで真剣に悩んでいた通常アスカと転校生レイであったが、人のことより目前
に大問題が発生したので、思考を中断しシンジに向かって走って行く。

通常アスカ「あーーら、ユイ。ずいぶんすみれと仲良く食堂へ来るのね。」

転校生レイ「ちょーーっと、いいかしらぁ?」

シンジ「え・・・。あの、これは・・・。」

通常アスカ「いいから、いらっしゃいっ!」

すみれとシンジを引き離した通常アスカと転校生レイは、シンジをずるずると引きずっ
て行く。丁度その頃、通常レイは椅子へと這い上がってきていた。

通常アスカ「なに、べたべたしてんのよっ!」

鬼の様な形相で首をぎゅーーっと締め、シンジを責め立てる通常アスカ。

転校生レイ「こっちに来てから、わたし達のこと忘れちゃったのね・・・。しくしく。」

芝居じみた態度で、およよよよと泣き崩れる転校生レイ。

シンジ「う・・・苦しい・・・。だって、みんな誘ったけど、いなかったじゃ・・・な
        いか・・・うげぇ。」

通常アスカ「あっちのアスカは、まだ部屋にいたはずよ。」

シンジ「あんなどたばたしてる部屋に、恐くて入れないよぉ。」

通常アスカ「だからってすみれと、手繋いで来なく・・・ん?」

その瞬間、首を締め上げていた手を緩め、シンジをどさりと落とす。

通常アスカ「シンジっ! お手柄よっ!」

通常アスカはそれだけ言うと、泣き真似をしている転校生レイの襟首を掴まえて食堂へ
入って行く。

シンジ「ふぅ・・・なんだか、よくわかんないけど、助かったよ。」

やっと解放されたシンジが、溜息をついて立ち上がろうとすると、通常アスカがにょき
りと食堂の入り口から首だけを覗かせた。

シンジ「ひっ!」

通常アスカ「今度、手なんか繋いでるとこ見つけたら、お風呂の見張りしないわよっ!」

シンジ「わかったよ・・・。」

すみれと同室になって自分も苦労してるのに、どうしてこんな酷い目ばかりに会うのか、
我が身の不幸を呪うシンジであった。

ミサトさーん、ぼくだけでも帰りたいよぉぉ。

<幼馴染アスカの寮>

相変わらず、ぎゃーぎゃーとうるさい声が聞こえてくる幼馴染アスカの寮の前で、通常
アスカとレイちゃんズは立っている。

通常アスカ「アタシが、アスカを呼び出すから後は宜しくね。」

転校生レイ「わかったわ。」

通常アスカの作戦では、要するに本など読めない環境にすれば、レニの考え方にも変化
が現れるだろうということだ。

コンコン。

通常アスカ「アスカーーー。」

幼馴染アスカ「なによぉぉ。」

ノックをすると、ぼさーっとした髪の毛で、幼馴染アスカが出てきた。

通常アスカ「なによ。その髪の毛っ!」

幼馴染アスカ「あの女が、ちょっかい出してくるのよ。ボサボサじゃないのぉ。」

織姫「チョッカイ ダシテイルノハ、アナタノホウ デーースッ!」

通常アスカ「はぁ・・・。まぁいいわよ。それより、ちょっと用事があるんだけど、来
            てくれないかしら?」

幼馴染アスカ「いいけど?」

幼馴染アスカの連れ出しに成功した通常アスカは、適当な理由をつけながら、通常レイ
の寮ヘ連れて行く。

幼馴染アスカ「レニがアタシに? 何の用があるの?」

通常アスカ「さぁ、行ってみればわかるんじゃない?」

幼馴染アスカ「それもそうね。」

<通常レイの寮>

コンコン。

幼馴染アスカ「入るわよ。」

通常レイの寮に幼馴染アスカが入ると、一人レニは本を読んでいた。

幼馴染アスカ「なに?」

しかし、幼馴染アスカなど無視して、レイが本を読み続けているので、呼び出されたと
思っている幼馴染アスカは、その態度にカチンとくる。

幼馴染アスカ「アンタねぇっ!」

その時、再び通常レイの寮の扉が開き、今度は織姫が入って来た。

織姫「ナーンデスカ? ン? ナンデアナタガ ココニイルンデーースカ!?」

幼馴染アスカ「なんで、アンタまで来るのよっ!」

織姫「ワタシハ レニニ ヨバレタカラ キタダケデースッ!」

幼馴染アスカ「呼ばれたのはアタシよっ! シっシっ!」

織姫「ソノ シッシッハ ナンデースカッ! エラソーデース!」

幼馴染アスカ「なんですってーーーーーっ!!!!」

本を読みふけるレニの横で、どたばたと自分たちの寮でやっていたプロレスの続きを始
める二人。通常アスカと転校生レイは、その様子を外からニヤニヤしながら見ている。

レニ「もう、うるさいなぁ。喧嘩なら他でやってもらえないか?」

幼馴染アスカ「アンタが呼んだんでしょーがっ!」

織姫「ヨバレタノハ ワタシデース。」

幼馴染アスカ「アンタなんか、誰も呼んでないって言ってるでしょっ!」

ドッタンバッタンドッカーーンっ!

レニ「いいかげんにしてよっ!」

うるさくて本を読むどころではなくなったレニは、とうとう怒ってしまい、2人をジロ
リと睨みつける。

フフフフフ。作戦成功だわ。
二人とも、もっと暴れなさいっ!

この騒ぎの張本人である通常アスカは、人事の様にドアの隙間からニコニコして部屋の
中を覗き込んでいる。

幼馴染アスカ「キーーーーっ! 髪の毛引っ張るんじゃないわよっ!」

髪の毛を引っ張られたので、幼馴染アスカが思いっきり織姫を突き飛ばした。織姫は、
そのままレニの本棚に当たってしまい、本が雪崩の用に落ちる。

幼馴染アスカ「ハハーーン。いい気味だわっ!」

織姫「アナタ ヤッパリ ヤバンデース ドウリデ サルミタイダト オモッテマシター!」

幼馴染アスカ「なんですってーーーっ!」

そのまま本の上で、どたどたと暴れ回る幼馴染アスカと織姫。レニの本が次々と破かれ
ていく。

通常アスカ「よーーしっ! その調子で全部破いちゃえーーーーっ!」

部屋の外から中の様子を見ていた通常アスカも、勢いに乗って通常レイの寮へと飛び込
んで入る。

転校生レイ「やれやれーーーっ!」

転校生レイも調子に乗って中へと入って行った。部屋の中では、うつむき加減にじっと
破かれていく本を見ているレニの姿がある。

通常アスカ「どう? レニ? わかったでしょ? 本なんてすぐに破れちゃうけど、そん
            な物より・・・・・・」

レニ「いい加減にしてよっ! どうして、こんな酷いことするんだよっ!」

通常アスカが、諭す用にぽんぽんとレニの方を叩いた時、怒りも露わに今まで聞いたこ
ともない大声を張り上げた。

通常アスカ「えっ!? だ、だから、アンタの為に・・・。」

突然のことに、しどろもどろになりながら、後ずさりする通常アスカ。さすがの、幼馴
染アスカと織姫も、喧嘩を止めてきょとんとレニを見つめる。

レニ「もういいから、出て行ってよっ! みんな出て行ってよっ!」

そこへ、それまで中の様子を見ていた通常レイが入って来る。

通常レイ「ひどい・・・。本をこんなにするなんて・・・。」

レニ「大事にしてた本なのに・・・。」

通常レイ「あっ。これ読んだことあるわ。」

レニ「え? 君もこれを読んだの?」

通常レイ「ええ。この作者の小説好きだったから。」

レニ「うん、ぼくも好きなんだ。」

通常レイ「こっちの作者の本も読んだことあるわ。」

レニ「へぇ、君もけっこう本が好きだったんだね。」

通常レイ「ええ。」

レニ「ぼくの本でよかったら、好きなの読んでいいよ。」

にこりと、通常レイに微笑みかけるレニ。

通常レイ「あっ、レニが笑ったわ。」

いつの間にか和気あいあいで、本のことについて語り始める通常レイとレニ。そんな様
子を転校生レイとアスカコンビは、呆然と見ている。

転校生レイ「なんか、解決したみたい・・・ね。」

通常アスカ「アタシ達って・・・なんの為に・・・。」

通常レイに振り回されたあげく、悪者にされてしまった転校生レイと通常アスカは、な
んとなく空しくなったが、とりあえず解決した様なので、幼馴染アスカと織姫と一緒に
そそくさと退散して行ったのだった。

To Be Continued.
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