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TwoPair
Episode 16 -みつけたっ! 秘密実験室-
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<教室>

3時間目前の休み時間。シンジは、自らの運命を左右する様な絶体絶命のピンチに立た
されていた。

通常アスカ「目っ! 閉じて着替えんのよっ!」

転校生レイ「目を開けちゃ駄目よ。」

幼馴染アスカ「なーにしてんのよっ! さっさと着替えなさいよっ!」

なんのことはない、転校して以来初めての体育だ。アスカコンビとレイちゃんズに囲ま
れて、シンジは目を閉じながら体操服に着替えている。

通常アスカ「もうっ! なにボケボケっとしてんのよっ!」

通常アスカが、シンジのスカートに手をつっこんでブルマを履かせる。そんな様子を、
怪訝な顔をして見ている生徒が数人。

すみれ「先程から、何をやっておられますの?」

さくら「どうしたの? そんな所に固まちゃって。」

転校生レイ「レイ。なんとか、ごまかして。」

すみれとさくらが、教室の隅でごそごそしているシンジ達の近くに近寄って来たので、
通常レイが2人の前に出て行く。

ごまかすのね。
それなら、得意。

通常レイ「山・・・動かないもの・・・。」

ボカッ!

転校生レイ「何わけわかんないこと言ってんのよっ! 」

通常レイ「痛い・・・。」

さくら「いったい、何なの?」

通常アスカ「だからさ。ユイって、人が着替えている所見たら、例の病気が・・・。」

すみれ「あぁ、そうでしたわ。大変ですわね。」

以前、通常アスカが適当な言い訳で言った、”人の着替えを見ると踊り出す病”のこと
である。

シンジ「何? 病気って?」

通常アスカ「アンタはさっさと着替えろっ!」

シンジ「はい・・・。」

あまり深入りすると怒られそうなので、シンジは自分の体操服を手探りで探す。アスカ
コンビやレイちゃんズが、さくら達の相手をしているのでほおっておかれたのだ。

ぼくの体操服・・・何処だよ・・。・
えっと・・・。ん? これかな?

幼馴染アスカ「きゃーーーっ!」

シンジが伸ばしていた手で体操服を掴んだ瞬間、幼馴染アスカの悲鳴が響いた。それと
同時に手に感じる柔らかい感触。

シンジ「へ?」

思わず目を開けた視界に飛び込んだのは、幼馴染アスカの胸を握る自分の手と、その周
りで着替える女の子の下着姿の群。

ツーーーーー。

鼻血を垂らして、目を血走らせるシンジ。

幼馴染アスカ「こっ! この、変態っ!」
通常アスカ「どうしてアンタは、いつもいつもっ!」

パーーーーーーン。
パーーーーーーン。

2人の平手をくらったシンジは、鼻血を飛び散らせながら掃除用具入れへとぶっとばさ
れたのだった。

<運動場>

今日の授業は、バスケットボールだった。クラスをいくつかのチームに分けて、試合形
式で授業が行われる。

ブルマって、落ち着かないなぁ。
スカート履かされたり、ブルマ履かされたり、散々だよ・・・。

体育館の隅でシンジはそんなことを考えながら、別のチームの試合を眺める。幼馴染ア
スカのチームと織姫のチームが、目の前のコートで試合をしている。

幼馴染アスカ「何すんのよっ! ぶつかってくるんじゃないわよっ!」

織姫「ナーニイッテルンデスカ トロトロシテルカラ アタルンデース!」

幼馴染アスカ「なんですってーーっ! もう一度言ってみなさいよっ!」

織姫「シアイチュウニ ツマラナイコト イワナイデクダサーイッ!」

幼馴染アスカ「つまらないのは、アンタのプレーでしょうがっ!」

ダンっ!

その言葉を聞いた織姫は、目を吊り上げボールを床に叩き付けると、殴り掛からんばか
りの勢いで幼馴染アスカに迫る。

織姫「ダレノ プレーガ ツマラナインデースカッ! モウイチド イッテミテクダサーイ!」

幼馴染アスカ「何度でも言ってやるわよっ! このド下手っ!」

織姫「モーーーッ! ユルシマセーン!」

コートの真ん中で取っ組み合いを始めた幼馴染アスカと織姫だったが、体育の教師をし
ているシスターが、笛を吹いて止めに入って来る。

体育教師「貴方達、授業中に何をしているんですっ! 退場ですっ! この時間中、正座
          して見学してなさいっ!」

幼馴染アスカ「なっ! だって、こいつがっ!」

織姫「ワタシハ ワルク アリマセーン。」

体育教師「喧嘩にどっちが悪いもありませんっ! 反省してなさいっ!」

結局、幼馴染アスカと織姫は、体育館の隅の冷たい床の上で正座をさせられ、授業を並
んで見学することになってしまった。

通常アスカ「バッカねぇ。何やってんのかしら?」

違うコートで試合をしていた通常アスカは、呆れ顔で幼馴染アスカをちらりと見ると、
汗を拭きながらシンジの横に寄ってきて、ちょこんと腰を下ろした。

シンジ「あの2人、どうして仲良くできないんだろう?」

通常アスカ「まっ、いいんじゃない? それより、次ユイよ。がんばってね。」

シンジ「うん・・・。」

通常アスカや、そのチームと対戦していた転校生レイと入れ替わりに、シンジがコート
に入って行く。対戦相手には、通常レイがいるようだ。

相手は綾波かぁ。綾波って、けっこう運動神経いいんだよなぁ。
ん? カンナさんもいるじゃないか・・・。恐いなぁ。

マリア「ユイさん? バスケは上手いの?」

同じチームには、クラスの委員長であるマリアがいる様だ。やはり、体育のチームでも
自然的にリーダーの様な、まとめ役をしてしまう。

シンジ「うん、結構好きかな?」

マリア「そう。じゃ、私と一緒に先制点を狙いましょうか?」

シンジ「先制点?」

マリア「そう。カンナのチームには、やられっぱなしなの。今日こそは。」

シンジ「そういうことか。やってみるよ。」

マリアとシンジがオフェンスという状態で、試合が始まっていった。もちろん相手のチ
ームはカンナ中心で攻めてくる。

マリア「はいっ! ユイさんっ!」

シンジ「うん。」

マリアからボールを受け取ったシンジは、ドリブルしながらコートを走って行く。シン
ジは、運動神経抜群というわけではなかったが、ある程度ネルフで訓練を受けた男子だ。
根本的に一般の女子中学生とはレベルが違う。

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作者注:この話のカンナは普通の女子中学生なので、体育会系というだけで空手などや
        っていません。
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カンナ「あっ!」

あっさりとカンナをフェイントで抜いたシンジは、そのまま全力で走って相手のチーム
へ切り込み、シュートを決めてしまった。

マリア「ユイさん、すごいわ。」

シンジ「ははは・・・そかな?」

マリア「みんなー、ユイさん中心で攻めるわよっ!」

次はカンナの攻撃の番となった。シンジが強敵とわかったので、パスでボールを回して、
シンジを避けながら攻撃していく。

カンナ「レイっ! パスっ!」

通常レイ「・・・。」

カンナから回ってきたボールを受け止め、その場にぼーっと佇む通常レイ。そんなレイ
からボールを奪おうと、シンジが駆け寄っていった。

あっ・・・碇くん・・・。

レイはそのまま、シンジにぽいっとボールを渡してしまう。

カンナ「な、なにしてんだーーっ!」

まさかレイが敵にパスするとは思っていなかったカンナは、慌ててシンジを追い掛ける
が、シンジはそのままシュートを決めてしまう。

カンナ「敵にボール渡してどうするんだっ!?」

通常レイ「ごめんなさい。」

カンナ「次からは、注意しろよな。」

その後、通常レイの失敗はあったものの、シンジとマリアに対してカンナ1人では根本
的に力の差があり、シンジのチームの圧勝という形で終わった。

カンナ「なかなかやるじゃないか。見直したぜ。」

シンジ「そうかな・・・。」

そう言い残してカンナが去っていった後、シンジの周りにはクラスの女子たちがぞろぞ
ろと集まってきた。

女生徒A「すごいわねぇ。前の学校でバスケでもやってたの?」

シンジ「そんなことないけど。」

女生徒B「ほら見てよ、こんなにがっちりしてるんだもん。」

シンジの腕をさする女生徒B。女子と男子の違いがあるのだから、筋肉の付きかたが違
うのも当然である。

女生徒C「本当だーっ! ユイさん、絶対に何かスポーツやってたでしょう。」

シンジはいつのまにか、羨望の眼差しで幾人かの女生徒に見られることになっていた。
そんなこんなで3時間目も終わり、皆教室へと帰っていく。

幼馴染アスカ「あーぁ、もう〜。足が痛いよぉ。正座なんかして、足の形潰れたらどう
              するのよぉ。」

通常アスカ「あんな所で、じゃれ合うからよ。」

幼馴染アスカ「だーれがっ! アイツが悪いのよっ。」

足を摩る幼馴染アスカ達と一緒に帰るシンジが中庭に差し掛かった時、人目をはばかる
様に教会へと入って行くマリアの姿が見えた。

あれ? マリアさんだ。
もうすぐ4時間目なのに、何してるんだろう?
委員長だから、いろいろあるのかな?

人のことなのでシンジはあまり気にする様子も無く、4時間目の授業に遅れない様に教
室へと帰って行った。

<食堂>

昼休みになり、シンジ達は食堂で昼食を食べていた。レイちゃんズはいつもの様にラー
メンを食べ、シンジとアスカコンビはカツ丼である。

通常アスカ「ねぇねぇ、目を皿の様にして光らせてるけど、ゼーレらしい動きなんてな
            いんじゃない?」

シンジ「うん、ぼくも注意してるけど、さっぱりわかんないよ。」

通常レイ「私もわからない。」

昼食を口に頬張りながら、頭を突き合わせてヒソヒソと話をするチルドレンの3人と、
フムフムと興味深そうに聞くW補完娘。

転校生レイ「ゼーレって、どんなことしてるの?」

幼馴染アスカ「そうよ。相手がどういう組織か、よく知らないアタシ達に探せって言わ
              れてもねぇ。」

通常アスカ「チルドレンの育成って言ってたから、やっぱりエントリープラグとかそれ
            らしい実験室とか、どっかにあるんじゃないの?」

シンジ「そうだね。後でちょっと探してみようか。」

転校生レイ「わーー、面白そうっ! ねぇねぇ、どこから探す?」

通常アスカ「そうねぇ。運動場とか教会なんて何も無いだろうから、まずは校舎から当
            ってみましょうよ。」

シンジ「うん、ぼくもそれがいいと思うな。」

昼食を食べ終わったシンジ達は、まずは校舎の中であまり人が近付きそうにない教室か
ら順に当ってみることにする。

<校舎>

早速、シンジ達一同は、ほとんど使われることのない旧校舎の4階へと来ていた。窓に
は1日中カーテンが掛かっており、教室の中は全く見えない。

通常アスカ「やっぱ、1番怪しいのってここよねぇ。」

転校生レイ「やだー。なんか、雰囲気わるーい。」

シンジ「とにかくさ、1つ1つ見て行こうよ。」

シンジはそう言いながら、先頭に立って端の教室の扉に手を掛け力を込めた。しかし、
その扉は鍵がかかっている様でビクともしない。

幼馴染アスカ「そりゃぁ。使わない教室なんだから、鍵くらい掛けてるわよ。」

シンジ「そうだね。どうしよう・・・。」

転校生レイ「うーん、これじゃ調べられないよ?」

せっかく意気込んで4階まで上がって来た一同であったが、出鼻から挫かれてしまい、
どうしたものかと腕組みをして悩む。

通常レイ「鍵を開ければ?」

通常アスカ「わかってるわよ。その鍵をどうするかが問題なんでしょっ!」

通常レイ「これがあるわ。」

通常レイは、ポケットからおもむろにヘアピンを取り出すと、鍵穴にごそごそと差し込
んだ。

カチッ。

通常レイ「開いたわ。」

幼馴染アスカ「アンタ・・・何者・・・。」

シンジ「すごいや、綾波。」

通常アスカ「はっ! まさかっ! エヴァに乗ってた時、アタシのロッカーから、度々ま
            んじゅうが消えてたのは・・・。」

通常レイ「知らない。」

通常レイはじとーっと睨む通常アスカから目を逸らすと、スタスタと扉の前から離れて
行く。

シンジ「アスカ? どうして、ロッカーにまんじゅうなんか入れてたのさ?」

通常アスカ「え?」

シンジ「そういや、ぼくが買っておいたまんじゅうが、部屋から度々消えてたんだけど・・・。」

通常アスカ「知らないわよっ! そんなのっ! 変なこと言ってないで、さっさと調べる
            わよっ!」

通常アスカは疑い深い目で見るシンジから目を逸らすと、スタスタと扉を開けて教室へ
と入って行った。

シンジ「怪しいなぁ・・・。」

幼馴染アスカ「アタシ達も行きましょ。」

転校生レイ「どう? アスカ? 何かあった?」

転校生レイ達が通常アスカに続いて教室へと入って行ったが、そこには古い机や椅子が
山積みされているだけで、特に変わったものは無い。

転校生レイ「最悪ぅ。誇りっぽーい。」

転校生レイは、鼻を左手で摘んで右手の手の平を顔の前でパタパタさせながら教室から
出て行く。

通常アスカ「レイ。もういいわよ。閉めて。」

通常レイ「駄目。」

通常アスカ「なにが駄目なのよ?」

通常レイ「閉め方・・・知らない。」

通常アスカ「ぬわんですってーっ! 開けっ放しにしてたら、やばいじゃないのよっ!」

通常レイ「まんじゅうを取るのに閉める必要は・・・はっ!」

通常アスカ「アンタっ! やっぱりっ! アタシがシンジからくすねたまんじゅうをっ・・・
            はっ!」

シンジ「あーーっ! やっぱり、ぼくのまんじゅうを取ってたんだーーーっ!」

通常アスカ「そ、そうじゃないわよ。あれは・・・その。」

シンジ「ひどいよっ! いつも楽しみにしていたのにっ!」

あたふたする通常アスカに、鬼の首とった状態で詰め寄るシンジ。しかし、逃げ道が無
いと解った通常アスカは、突然開き直りグイと胸を張ってシンジに迫る。

通常アスカ「ええ、そうよっ! で、なにかこのアタシに、文句でもあるわけぇっ!」

シンジ「うっ・・・いや・・・その・・・。無いです。」

通常アスカ「よろしい。」

なんだよ、なんだよ。
結局、力ずくで押さえつけるんじゃないか・・・。
いいんだぁ・・いじいじ。

”の”の字を書くシンジの前で、通常アスカに引き寄せられた通常レイが、教室の扉の
鍵を閉めている。

カチッ。

通常レイ「閉まったわ。逆に回せば閉まるのね。」

通常アスカ「・・・・・・・。」

こうして、一行は1つ1つ教室を開けて調べては、隣の教室へと移動していく。そして、
とうとう最後の教室となってしまった。

幼馴染アスカ「本当にこんな所に、そんな怪しい部屋があるの?」

通常アスカ「そんなのわかんないわ。まずは、手始めってやつよ。」

転校生レイ「なんか、みんなただの倉庫よ?」

通常アスカ「とにかく、今日はこの教室まで調べちゃいましょうよ。どう? レイ? 開
            いた?」

通常レイ「何か変・・・。」

ふと見ると、通常レイは扉に耳を押し当てて中の様子を伺っている。シンジ達も不信に
思って近寄ると、中から何か機械音が聞こえてきた。

転校生レイ「ちょっとぉ。これって、超ヤバじゃない?」

シンジ「ミサトさんに、連絡した方がいいんじゃないかな?」

通常アスカ「なに弱気なこと言ってんのよ。さぁ、レイ開けて。」

通常レイ「ええ。」

カチッ。

鍵が音を立てて開く教室の扉。その前で5人は、固まってしまう。

幼馴染アスカ「早く、様子を見なさいよ。」

通常アスカ「こういうのは、レイの役目よ。」

通常レイ「私は、鍵を開けたわ。」

転校生レイ「嫌よっ! 鍵を開けろって言ったのは、アスカじゃないっ!」

シンジ「・・・・・・。」

こういう時とばっちりを食らわないように、黙っているのがシンジの処世術である。シ
ンジは、黙って嵐が過ぎ去るのを待つ。

通常アスカ「わかったわよ。行きゃーいいんでしょっ! 行くわよっ! アスカっ!」

幼馴染アスカ「へ? アっ、アタシーー!?」

通常アスカ「あったりまえでしょうがっ! それとも、怖い?」

幼馴染アスカ「怖くなんかないわよっ! 行ってやろうじゃないっ!」

さすがに相手が自分となると、扱い方も心得ている様である。

通常アスカ「行くわよっ!」

幼馴染アスカ「ええっ!」

扉の前に立ち、扉に手を掛け臨戦態勢を取るアスカコンビ。その後ろでレイちゃんズは、
固唾を飲んで見守っている。更にシンジはその後ろで、逃げれる体制を整えていた。

ガラッ。

一気に開く扉。

通常アスカ「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

幼馴染アスカ「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

教室に飛び込んだ瞬間、一気に悲鳴をあげるアスカコンビ。

転校生レイ「キャーーーーーーーーーーっ!」

ガラッ!

その後ろで転校生レイも悲鳴をあげて、思わず教室の扉を閉めた。

ドンドンドン。

通常アスカ「開けなさいよっ! 開けなさいって言ってるでしょっ!」

転校生レイ「いやーーーっ! 何かいたもーーんっ!」

幼馴染アスカ「そんなこと言ってる場合じゃないでしょーがっ!!」

ドンドンドン。

シンジ「ア、アスカ? ぼ、ぼくは、なにもしてないからねっ!」

ドンドンドン。

転校生レイ「いやーーーっ! 中を先に確かめてーーっ!」

通常アスカ「開けんかーーーーーーーっ!」

ガラッッッ!

アスカコンビが、転校生レイの押さえる扉を2人がかりでこじ開けて、躍り出てくる。

通常アスカ「なにすンのよっ!!!」

転校生レイ「だって・・・恐かったんだもん。」

シンジ「ぼくは、なにもしてないよ。ははは。」

幼馴染アスカ「この裏切りもーーんっ!」

ドゲシッ!

転校生レイ「いったーーーーっ!」

思いっきり、頭をはたかれる転校生レイ。

シンジ「ぼくは、なにもしてないからね。」

ドゲシッ!

シンジ「うぅぅぅぅ・・・どうして・・・。」

思いっきり、頭をはたかれる見て見ぬ振りをしていたシンジ。

通常アスカ「アンタも同罪よっ!」

転校生レイとシンジが、アスカコンビの怒りをかっている頃、通常レイは、窓の外に広
がる綺麗な空を何も知らない顔でのんびり眺めていた。

転校生レイ「で、さっきのあの、ターミネーターみたいなの、なんだったの?」

幼馴染アスカ「アンタが、扉なんか閉めるから、そんなの見てる余裕なんて無かったわ
              よ。」

通常アスカ「今度は、レイっ! アンタが先頭で見に行くのよっ!」

転校生レイ「いやーーっ! 絶対いやーーっ!」

通常アスカ「やかましいっ!!! さっさと行く! シンジっ! アンタもよっ!」

シンジ「えーーーっ! ぼくもぉ?」

通常アスカ「あったりまえでしょうがっ!」

アスカコンビに背中をぐいぐいと押されたシンジと転校生レイは、再び先程の教室の扉
をそっと開けて中を覗き込む。

ガラっ!

転校生レイ「きゃーーーーっ! シンちゃーーーんっ!」

だきっ!

それを見た瞬間、転校生レイは目を閉じ黄色い悲鳴をあげてシンジに思いっきり抱き付
いていた。

幼馴染アスカ「アンタっ! 何してんのよっ!」

転校生レイ「いやああああああ。シンちゅわあああああん。」

シンジ「レイ? ただのロボットみたいだけど?」

転校生レイ「シンちゅわあああああん。こわあああああい。」

だきっ!

シンジ「ほら、よく見てよ。ただのロボットだから。」

転校生レイ「こわあああああい。」

ドゲシゲシッ!

アスカコンビのダブルキックが、背中にみごとに炸裂して、教室の中に叩き込まれる転
校生レイ。

幼馴染アスカ「どさくさに紛れてなにやってんのよっ! アンタはっ!」

転校生レイ「うぅぅぅ・・・。いたい・・・。今日は厄日だわ。」

床に打ち付けた頭を両手で押さえながら、もそもそと起き上がったレイの前には、鉄の
鎧の様なウーパールーパーに似た1つ目のロボットが立っていた。

転校生レイ「なんだ、ロボットだったのね。それにしても、なーんか不気味なロボット
            ねぇ。」

幼馴染アスカ「これって、ゼーレに何か関係あるのかしら?」

通常アスカ「少なくとも、学校にある様なもんじゃないわねぇ。怪しいわ。」

いぶかしげな目つきで、そのロボットを怪しみながら見てまわる通常アスカ。更にその
周りには、何かを実験している様な機材が沢山散らばっている。

通常アスカ「見て、シンジ。」

シンジ「どうしたの?」

通常アスカ「コックピットみたいな物があるわ。」

シンジ「本当だ。このロボット、乗れるのかなぁ?」

幼馴染アスカ「ちょっと、乗ってみてよ。」

通常アスカ「やーよっ! 何が起こるかわからないじゃないの。アンタ乗りなさいよっ!」

幼馴染アスカ「だってアタシ達、こんなの乗ったことないもん。ねぇ〜。」

転校生レイ「ねぇ〜。」

利害が一致した為か、珍しく幼馴染アスカと転校生レイが意気投合し、ずいと通常アス
カに迫ってくる。

通常アスカ「そんなこと言うなら、レイだってっ! ん? レイ?」

きょろきょろと通常レイを探してみるが、どこにも見当たらない。ターゲットを見失っ
た通常アスカは、速攻シンジに向き直った。

通常アスカ「アンタっ! 男でしょっ!」

シンジ「わたし・・・ユイ。」

ドゲシっ!

シンジ「いたいよぉぉぉ・・・。」

通常アスカ「バカなこと言ってないで、さっさと乗るっ!」

シンジ「えーーっ! やだよーーっ! エヴァみたいに、取り込まれちゃったら、どうす
        るんだよぉ。」

通常アスカ「こんな旧来的なロボットで、そんなことあるわけないでしょっ!」

シンジ「それなら、アスカが・・・。」

通常アスカ「の・り・な・さ・いっ!」

シンジ「うぅぅぅぅ。」

結局通常アスカの迫力に負けたシンジは、嫌々ながらものそのロボットのコックピット
に乗り込む。あまり大きなロボットでないので、中はかなり狭い。

シンジ「なんか、動くみたいだよ。」

転校生レイ「本当? シンちゃーん、動かしてみてぇ。」

シンジ「うん・・・。」

ギーーー。ゴトン。

幼馴染アスカ「わーーっ! 動いたぁぁ。」

ギーーー。ゴトン。

そのロボットは、シンジがペダルやレバーを操作すると、なんとかかんとかバランスを
保ちながら、1歩また1歩と歩き始める。

シンジ「結構面白いよ。これ。」

通常アスカ「もういいわっ! 降りなさいよっ! 次はアタシが乗るから。」

シンジ「だって、せっかく乗ったのに。」

幼馴染アスカ「アタシも乗ってみたーーい。」

転校生レイ「わたしもーーーっ!」

通常レイ「私も。」

いつの間にか現れた通常レイまでが、ロボットの周りに集まり、まるで遊園地の乗り物
の順番を待つ様な目でロボットを見ている。

通常アスカ「アンタ達っ! ロボットなんか、乗ったこと無いって言ってたじゃないっ!」

幼馴染アスカ「いいじゃない。面白そうだもの。」

当初の目的を忘れたアスカコンビとレイちゃんズは、代わる代わるロボットに乗って教
室の中を歩き回っていた。

転校生レイ「きゃははははははは、おもしろーいっ!」

シンジ「ねぇ、みんなぁ。早く、ミサトさんに報告しないと。」

通常アスカ「あっ、そうだったわね。これは、大手柄よっ! 早速電話してましょ。」

ガラッ。

その時、教室の扉が勢い良く開いた。思わず身構えるシンジ達。

紅蘭「あんたら、何してはんのやっ!?」

転校生レイ「あら? 紅蘭、実はね。」

クラスメートが現れたので、近寄って行こうとした転校生レイを、通常アスカが腕を引
っ張って引き留める。

通常アスカ「あの娘がゼーレの人間かもしれないわ。注意して。」

転校生レイ「えっ・・・。」

紅蘭「あぶないなぁ。勝手に触ったら、あきまへんわ。」

通常アスカ「このロボットは何なの?」

紅蘭「これは、うちが作ってる。光武っちゅーロボットや。」

幼馴染アスカ「どうして、こんなもの学校で作ってるのよ?」

紅蘭「クラブ活動ですわ。うちは、科学者目指しとりますさかいなぁ。夢は、あの赤木
      博士の様な科学者になることですわ。」

通常アスカ「げぇ・・・。」

リツコを目指していると聞いた通常アスカは、もしかしたら紅蘭が未来のマッドサイエ
ンティストかと思うと、嫌ーな顔をする。

シンジ「じゃぁ、これって科学部で作ったロボット。」

紅蘭「ほうですわ。どうですぅ? すごいですやろ?」

シンジ「そうだね。」

通常アスカ「じゃぁ? なに? ここって科学部の部室?」

紅蘭「部室は別にありますけどな。こういう機械は危ないっちゅーことで、この部屋を
      先生に許可貰ろうて、借りとりますんや。」

通常アスカ「・・・・・・。」
幼馴染アスカ「・・・・・・。」
転校生レイ「・・・・・・。」

その後、科学部のうんちくをうんぬんかんぬん聞かされたシンジ達は、今日の行動が全
て徒労に終わったことを実感し、疲れ果てて寮へと戻ったのだった。

<幼馴染アスカの寮>

はぁ・・・疲れたぁ。
また部屋に戻ったら、あのうるさい女がいると思うと嫌んなるわ。
よーしっ! 今日という今日は、徹底的にぶちのめしてくれるわっ!

拳をバキバキとならしながら、自分の部屋へと入って行く幼馴染アスカ。早くも臨戦態
勢である。

幼馴染アスカ「ほらっ! アスカ様のおかえりよっ!」

織姫「・・・・。」

大声を出して、部屋に入って行った幼馴染アスカだったが、ベッドで寝ていた織姫はち
らっと幼馴染アスカのことを見ただけで、布団の中へ潜り込んでしまった。

To Be Continued.
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