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TwoPair
Episode 18 -メイクコンテスト-
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シンジの通う女子校には、文化祭や体育祭が無い代わりに、ダンスパーティーと剣術大
会が行われる。そして今日は、剣術大会に先立って開催されるダンスパーティーであり、
メインイベントは思春期の女の子なら誰しも興味のあるメイクコンテストだ。

<通常アスカの寮>

通常アスカは鏡を覗いて、薄いピンクのルージュを引いている。厳しいカトリック系の
学園でも、今日だけはメイクが解禁になる為、女の子としては周りにライバル意識を燃
やし、気合いが入るというものだ。

アイリス「みてぇ。可愛いかなぁ?」

通常アスカ「可愛いじゃないっ。その服どうしたの?」

アイリス「ママが、今日の為に送ってくれたの。えへへ。これ着て、ダンスするんだぁ。」

通常アスカ「良かったわねぇ。アタシなんか・・・。」

メイクアップに勤しんでいたアスカは、ブスっとして洋服ダンスに目を向ける。そこに
は、安物っぽいドレスが1着掛けられてあった。

ミサトの奴っ!
あれだけ言っといたのに、バーゲンで買った様なドレスなんかっ!

ブツブツ文句を言うアスカだったが、全寮制なので自分で買い物に行くわけにもいかず、
今日はこれを着るしかない。

アスカ「アイリスは、メイクしないの?」

アイリス「アイリス。お化粧したら、なんだか変になるの。」

通常アスカ「そっかぁ。それじゃぁさ、ルージュだけでも引いてみたら? いらっしゃ
            いよ。」

アイリス「いいよ。いい。ほんとにいいっ。」

通常アスカ「いいから、いいから。一度やって、やっぱ嫌なら落とせばいいじゃん。」

アイリス「うん・・・。大丈夫かなぁ?」

通常アスカ「アタシに、任せなさいってっ!」

アイリスを手招きした通常アスカは、今まで自分の座っていた椅子に座らせると、今迄
使っていた色より更に薄いピンク色のルージュを、顔を見ながら丁寧に引いてやる。

通常アスカ「ほらっ。見てみなさいよ。」

アイリス「うん・・・。」

手渡された手鏡を、少しはにかみつつ興味深々でワクワクしながら覗き込むアイリス。
なんだかんだ言ってもやはり女の子。ルージュだけでも、嬉しいのだろう。

アイリス「わぁぁぁ、なんかアイリスじゃないみたーい。」

通常アスカ「でしょ。アンタもこれくらいはしなくっちゃ。」

アイリス「ありがとうっ!」

2人は互いに顔を見合わせ、ニコニコしながらダンスパーティーが始まる時間を待つの
だった。

<幼馴染アスカの寮>

場所は変わってこちらは幼馴染アスカの寮。同じ顔のアスカがもう1人いるので、ここ
は腕の見せ所であろう。

幼馴染アスカ「ムキーーーーーーっ!!!」

織姫「ナニ スルンデスカッ!」

幼馴染アスカ「ヤッタワネッ! ウリャーーーーッ!」

他の女生徒がメイクに気合いを入れている時、この部屋からは大きな物音が聞こえてい
た。こともあろうか、互いの顔にルージュや頬紅で落書きし合っていたのだ。

幼馴染アスカ「何すンのよっ! コノーーっ!」

織姫「ソレハ コッチノ セリフデーーースッ!」

幼馴染アスカ「アンタなんか、いくらメイクしたって一緒よっ!」

織姫「モトガ ヨイカラデースッ!」

幼馴染アスカ「なに勘違いしてんのよっ! バカっ! こうしてやるっ! こうしてやるっ!」

即座に織姫の頭を無理矢理抱え込んで捕まえると、ニヤリと笑ってその頬に口紅をぐり
ぐり塗りつける。もちろん、織姫も黙ってなどおらず即座に体勢を立て直し反撃。

織姫「ナーニスルンデスカッ! ウツクシイ カオヲ ヨゴサナイデ クダサーイッ!」

幼馴染アスカの鼻の下にアイシャドーを塗りつける。狭い部屋の中を互いに掴み合って
転がり回る。

幼馴染アスカ「キーーーーーーー!」

織姫「ヤメテクダサーイッ!」

この2人がまともにメイクを始めるまでには、まだしばらくの時間が必要の様だった。

<シンジの寮>

完璧にメイクを終えたすみれは、シンジを部屋の隅にメイクアップセットを片手に持っ
て追い詰めていた。

シンジ「い、いいよっ! 化粧なんていいよ。」 

すみれ「何をおっしゃってますの? せっかくのダンスパーティーの日ですわよ?」

シンジ「ぼ、ぼくはいいんだ。」

すみれ「駄目ですわ。はい、じっとして下さらないこと?」

シンジ「わーーっ! やめてくれーーーっ!」

すみれ「じっとしてないと、変になりますわよ?」

そう言いながら、すみれは部屋の隅に追い詰められたシンジの上に、容赦無く覆い被さ
って来る。

シンジ「うっ・・・。」

すみれの顔が眼前に迫り、ふくよかな胸がシンジの顔や体を刺激する。

シンジ「助けてぇぇぇっ!」

すみれ「わたくしに、お任せになって。」

抵抗しようとすると、すみれの体と触れ合ってしまい、その結果熱膨張の原理で自分が
男であることが、ばれてしまいそうになる。

ミサトさーーーん。
もう帰りたいよーーーっ!

結局シンジは、すみれに覆い被さられたままなす術も無く、次から次へと強引にメイク
されていったのだった。

<廊下>

ドレスを着てメイクを済ませた転校生レイとさくらが、他の生徒の様子を見に廊下を歩
いていると、前方から通常アスカが現れた。

転校生レイ「あら、アスカ。もうメイク済ませたの?」

通常アスカ「もっちろんよ。フーン、アンタもメイクしたみたいね。」

転校生レイ「簡単にだけどね。」

通常アスカ「なかなか似合ってるじゃない。」

フッ! アタシの勝ちだわっ!

転校生レイ「そういうアスカこそ、奇麗よ?」

フッ! わたしの勝ちねっ!

通常アスカ「ウフフフフフフ。」

転校生レイ「ウフフフフフフ。」

不気味な笑みを浮かべる2人を見たさくらは、理由はわからないがなんとなく背中に寒
い物をひやりと感じる。

通常アスカ「それにしても、アンタのドレスも安そうよねぇ。」

転校生レイ「そうなのよぉ。ひどいと思わなーいっ?」

ミサトにしてみれば、5人にドレスを送らなければならないので、ある程度安くなって
しまうのも仕方がないのかもしれないが、やはり周りと比べると見劣りしてしまう。

通常アスカ「だいたい、昔っからあの女はケチなのよっ!」

ミサトの悪口に意気投合しながら廊下を歩いていると、洗面所で顔を念入りに洗ってい
る2人の少女に出くわす。

さくら「あら? 織姫さん。どうしたの?」

織姫「ドウシタモ コウシタモ アリマッセーンッ! コノオンナノ セイデースッ!」

幼馴染アスカ「アンタが最初にやってきたんでしょうがっ!」

どうやら、メイクを落としている様だ。その様子を見た3人は、またつまらないことで
喧嘩でもしたんだと、容易に察しを付ける。

通常アスカ「それより、急がないと。メイク間に合わないわよ?」

幼馴染アスカ「わかってるわよっ! フーン、アンタはそういうメイクねっ! よーしっ!
              勝ってみせるからっ!」

通常アスカ「あっ! きったなーいっ! 人を見てからメイクするなんてズルイわよっ!」

幼馴染アスカ「へへーんだ。楽しみにしてなさーいっ!」

チョンチョン。

その時、転校生レイの肩がトントンと指で叩かれる。なんだろうと、振り返った転校生
レイはその人物を見て、思わず吹き出してしまった。

転校生レイ「ブーーーーーーーっ!」

謎の人「どうしたの?」

アスカコンビ「「ギャーーーーーーーっ!」」

さくら「・・・・。」

織姫「ウッ!」

転校生レイの吹き出す音を聞いて振り返る一同。アスカコンビは悲鳴を上げ、さくらと
織姫は声も出ない。彼女達の目の前には、”おてもやん”がいたのだ。

おてもやん「どうしたの?」

転校生レイ「も、もしかして、あなた・・・。」

”おてもやん”の声を聞いた転校生レイは、その顔を覗き込みながら信じられないとい
う顔で、恐る恐るおずおずと話し掛けてみる。

おてもやん「ん?」

きょとんとして見返している”おてもやん”。

転校生レイ「まさか・・・レイ?」

通常レイ「ええ。」

”おてもやん”は、メイクをした通常レイだった。

アスカコンビ&転校生レイ「「「・・・・・・。」」」

何と声を掛ければ良いのかわからず、言葉に詰ったネルフ派遣トリオは、ただただ唖然
として”おてもやん”と化した通常レイを見つめる。

転校生レイ「あ、あの・・・その顔は?」

通常レイ「メイク。」

通常アスカ「ブッ!」

通常レイ「がんばったの。」

何をどうしたらこんなメイクになるというのだろうか。元が誰なのか、判別できないほ
ど塗り込んでいる。

さくら「あ、あの・・わたし。用事あるから。」

織姫「ワタシモ メイク シテキマース。」

身内のアスカコンビと転校生レイはともかく、どういうリアクションをしていいのかわ
からない2人は、そそくさと逃げ行く。

通常レイ「優勝したらどうしましょう。」

通常アスカ「・・・・・・バカ。」

転校生レイ「優勝って・・・。」

幼馴染アスカ「ほらっ、同じレイでしょ? 何とか言ってやりなさいよ。」

コツコツと肘で転校生レイの脇腹を突つく幼馴染アスカ。どうも自分のメイクが非常に
気に入っている様子の通常レイに、似合わないとは言い辛い。

転校生レイ「え? わ、わたし? え、えっと。こ、こいうことは、元パイロットのアス
            カの方が・・・。」

通常アスカ「ア、アタシに振るんじゃないわよっ!」

幼馴染アスカ「誰でもいいから、早く教えてあげなさいよ。」

通常アスカ「なら、アンタが言いなさいよっ!」

醜くも互いに責任の擦り付けを始める。なぜ3人が揉めているのかわからない通常レイ
は、その話題にまさか自分が関係しているとも思わず、きょとんとして成り行きを見守
っている。

通常アスカ「そうだわっ! こういうことは、シン・・ユイに任せるべきよっ!」

幼馴染アスカ「それっ! グッドアイデアっ!」

転校生レイ「さんせーーーっ! ほらっ、レイちょっといらっしゃい。」

通常レイ「ええ。」

結局、審判を下す責任をシンジに擦り付けてしまった3人は、通常レイを引っ張ってシ
ンジの寮へと歩いて行くのだった。

<シンジの寮>

シンジの寮の前にやってきたアスカコンビとレイちゃんズは、扉をノックしてシンジを
呼び出そうとする。

通常アスカ「ユイー。ちょっと出て来てよ。」

転校生レイ「早くぅぅぅ。」

シンジ『えーーーーーっ! やだよぉ。』

すみれ『何をしておられるんですの? 呼んでおられますわよ?』

シンジ『だって・・・。』

扉の向こうでシンジは何かウダウダ言っているらしく、なかなか出て来ようとしないの
で、気の短いアスカコンビのイライラが募ってくる。

幼馴染アスカ「何してんのよっ! こっちは、まだメイクもしないといけないんだからっ!
              急いでんのよっ!」

すみれ『少々お待ち下さい。只今開けて差し上げますわ。』

結局シンジはいつまで経っても出て来ず、代わりにすみれが部屋の扉を開け、アスカコ
ンビとレイちゃんズを迎え入れる。

通常アスカ「入るわよ。あのねユイ、お願いが・・・。わっ!!!!」

幼馴染アスカ「どうしたのよ? わぁっ!!!」

転校生レイ「なに? ん? キャッ!!!」

目を点にして、シンジの姿を見つめるアスカコンビと転校生レイ。驚きの余り、声も出
せずしばし唖然とする少女達。

シンジ「あんまり・・・見ないでよ。恥ずかしいから・・・。」

転校生レイ「き、きれい・・・。」

通常アスカ「ウソっ! ア、アンタって・・・。」

幼馴染アスカ「す、すごい・・・。」

すみれ「そうで御座いましょ? こんなに綺麗になれるのに、メイクを嫌がるんですの
        よ?」

まさしくそこには、絶世の美女に化けたシンジの姿があったのだった。意外な展開に自
分達が何をしに来たのかも忘れて、ぼーっとシンジに見蕩れてしまう。

通常レイ「どうしたの?」

その後ろでは、ここに何をしに来たのか、なぜみんなが驚いているのかわからない、お
てもやんに化けた通常レイが、ぼーっとして立っているのだった。

<パーティー会場>

パーティー会場となった体育館に集まる一同。やはりシンジは注目の的であったが、そ
れ以上に別の意味で注目を集めたのは通常レイであった。

幼馴染アスカ「どうすんのよっ! あのメイクのまま来ちゃったじゃないのよっ!」

転校生レイ「じゃぁ、メイクが変だって教えてあげてよ・・・。」

通常アスカ「早くしないとこのままコンテストに出ちゃうわよっ?」

3人の視線の先にある通常レイは、自分のメイクが注目を集めているので、コンテスト
に向けて自信を付ける。

優勝。
それは立派なこと。
碇君が誉めてくれること。

既に優勝気分になっている通常レイは満足気だ。そんな通常レイに、どう言ったら良い
のか、困ってしまう3人。

一方シンジは、良い意味で注目を集めていた。特に下級生からの眼差しが、宝塚モード
に突入してしまっており異常に熱い。

もうやだよ・・・。
なんで、ぼくが化粧なんかしなくちゃいけないんだよ。
化粧して綺麗って言われても、ぜんぜん嬉しくないよ・・・。

早くこの場から逃げ出したくて仕方の無いシンジだったが、勝手にアスカ達がコンテス
トに応募してしまったので、どうすることもできなかった。

『ねぇねぇ、あの人誰なの?』
『えーーっ! まだ、知らないの? この前、転校して来た2年のユイお姉様よ。』
『あぁ〜、ユイ様ぁ。くらくらぁ〜。』

中性的な顔立ちのシンジは元々注目が集まっていた上に、今回のメイクコンテストを切
っ掛けに、下級生達を中心としてユイ様ブームが一気に高まってしまっていた。

パーンパーンパーン。

クラッカーの音と共に、メイクアップコンテストが始まる。

コンテストに応募した時は、自信満々のアスカコンビや転校生レイであったが、メイク
したシンジを見た後、参加を辞退していた。男の子に負けたという事実を残したくない
のだろう。

通常アスカ「どうすんのよっ! レイ、コンテストに出て行っちゃったわよっ!?」

転校生レイ「はぁ〜・・・。もう知らない。」

幼馴染アスカ「元々、あの娘を誘ったのは、レイでしょうがっ!」

転校生レイ「そんなこと言ったってぇぇ。」

そしていよいよメイクの審査が始まり、参加者は1人づつシスターのワンポイントアド
バイスを受けながら点数を付けられていく。

審査員のシスター「素晴らしいですわ。言うことがございません。」

予想通り、シンジの評価は最高の様だ。まだ結果はわからないが、点数も満点に近い優
勝なのだろう。

その後、さくらとすみれの審査が終わり、今は別のクラスの女生徒。少し厚めの化粧で
ある。

シスター「あなたは、もう少し中学生らしく薄化粧した方が、良いですわね。」

いくらパーティーとはいえ、やはりカトリック系の学園である。厚化粧の評価は低い様
だ。そしてその後、とうとう恐れていた瞬間がやってきた。

通常レイ「綾波レイです。」

体育館の舞台に、ひょこひょこ上がって行く通常レイ。そのメイクを見たシスターは、
アドバイスのことなど頭からすっ飛んでしまい、絶望した顔で絶句してしまう。

シスター「・・・・・・。」

通常レイ「?」

何も言葉を発さないシスターを、小首を傾げてきょとんと見つめる通常レイ。そんな様
子をアスカコンビと転校生レイは、目を覆って直視することができない。

通常アスカ「はぁ・・・もうダメだわ・・・。」

転校生レイ「シスター。青ざめてるわよ。」

幼馴染アスカ「だから。こうなる前に、教えとくべきだったのよ・・・。」

シスターは何とワンポイントアドバイスすれば良いのかわからない。そもそも、ワンポ
イントくらいでは、にっちもさっちもいかないではないか。

シスター「・・・・あ、あの・・・。」

通常レイ「はい。」

シスター「あの・・・。も、もういいです。」

通常レイ「はい。」

シスターの言葉を聞いた通常レイは、何も指摘が無かったので嬉しそうな顔をして舞台
を降りていく。

はっ!
もしかしたら、碇君より点数が上?
ごめんなさい。碇君。

そして、パーティーも終わりに近づいた頃、本日のメインイベント、メイクアップコン
テストの結果発表となった。

シスター「では、続いてベスト3の発表です。3位、神崎すみれさん。」

パチパチパチ。

拍手の中、少し不満気なすみれが表彰状を受け取りに舞台へ上がって行く。シンジには
負けるかもしれないが、2位は確実だと思っていたのだろう。

シスター「では、優勝の発表です。」

他のクラスの女生徒が2位に選ばれ、いよいよ優勝者の発表であるが、既に優勝者は決
定している様なものなので、生徒達の視線はシンジに集中する。

はっ!
いよいよ私・・・。

ただ、1人だけ違うことを考えている少女がいるようだが。

シスター「優勝は、碇ユイさんです。」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。

拍手喝采の中、恥かしそうに俯いて舞台へ上がって行くシンジ。下級生達から、キャー
キャーを歓声が上がる。

なんで、ぼくが優勝するんだよ。
アスカ達も酷いよ。いつの間にかキャンセルしてるし・・・。
キャンセルできるなら、そう言っといてよ。

ブツブツ言いながら舞台に上がったシンジはシスターの前に立ち、男として不名誉とし
か言い様の無い、表彰状と記念品のメイクセットを受け取る。

シスター「これから、女性としてパーティーに出る機会もあると思います。その時に、
          今回の経験を有効に活用して下さい。」

シンジ「はい。」

活用って・・・。
こんなメイクセット、使うことなんてもう無いよ。たぶん・・・いや絶対っ!
メイクコンテストの表彰状だって、恥かしくて誰にも見せれないよ。

シンジの内心とは裏腹に、パーティー会場は最大の盛り上がりを見せている。そんな中
で、がっかりとして俯く通常レイ。

やっぱり、碇君には勝てないのね。
でも、どうして2位じゃなかったの?
どうして・・・。

がっかりしている通常レイの側に、心配したアスカコンビと転校生レイがおずおずと寄
って来た。

通常アスカ「どうしたのよ? がっかりしちゃって。」

通常レイ「ええ。」

転校生レイ「ほらほら、そんな顔しないで。」

通常レイ「ええ。」

幼馴染アスカ「だいたい、元が誰だかわからないくらいに塗るから、点が低かったのよ。」

通常レイ「でも、みんなお化粧をちゃんとしてないのに・・・。」

通常アスカ「アンタより、みんなちゃんとしてるじゃない。」

通常レイ「あれはお化粧じゃない。これが、お化粧。」

そう言いながら、通常レイはポケットから何枚かの写真を取り出した。どうやら、今回
のメイクの参考にした写真らしい。

通常アスカ「・・・・・・。」
転校生レイ「・・・・・・。」
幼馴染アスカ「・・・・・・。」

そこには、リツコの何枚かの写真が握られていた。

通常アスカ「アンタ・・・リツコの真似をしたの?」

通常レイ「そう。」

通常アスカ「アハハハハハハハハハっ! リ、リツコの真似してそれぇぇぇっ!??」

お腹を抱えて笑い出す通常アスカ。それにつられて、幼馴染アスカと転校生レイも笑い
始める。

通常レイ「そう。それと、赤木博士のお友達。」

通常アスカ「アハハハッ! お、お友達って?」

涙を流しながら笑う通常アスカに、通常レイは別の写真を取り出して見せる。

通常レイ「これが、お友達。」

通常アスカ「ブッ。ギャハハハハハハハハハハハハハっ! こ、こ、これが、これがっ!
            これが、リツコのお友達ぃぃっ!? アハハハハハハハハハハハハッ!!!」

幼馴染アスカ「クククククククク。これを赤木博士が聞いたら、何て言うかしらっ!?
              アハハハハハハハハハハっ!」

転校生レイ「クスクスクスクスクス。」

通常レイが後から出してきた写真は、歌舞伎役者の写真集だったのだ。どうやら、長年
通常レイはリツコと歌舞伎役者はお友達だと思っていたらしい。

通常アスカ「アンタが、今迄どんな目でリツコのこと見てたか、ようやくわかったわっ!
            アハハハハハハハハハハハッ!」

大爆笑するアスカコンビと転校生レイを前に、どうして笑われているのかわからない通
常レイは、今日という日は理解できないことばかりだったと思うのだった。

その後、今回の学園生活の報告書を読んだリツコは、化粧にヒビが入るくらい眉間に皺
を寄せて怒ったらしい。

この学園での任務が終わり、ネルフへ帰った通常レイの運命やいかに・・・。
しかしそれは、まだまだ先の話。

To Be Continued.
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