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TwoPair
Episode 23 -クロウカードなんかどうでもいいのよっ!-
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<アスカのマンション>

今日からピッカピカ小学4年生になったチルドレン達。気分も新たに、ここアスカコン
ビの家では、清々しい朝を向かえていた。

幼馴染アスカ「アスカぁっ! いい加減起きなさいってばっ!!」

通常アスカ「ぐがーーーーー。」

幼馴染アスカ「小学校で立たされるなんてヤよっ! 起きなさいってばっ!」

ドゲシッ! ドゲシッ! ドゲシッ!

通常アスカ「いたーーーーーーーーっ! 痛いじゃないのっ! なにすんのよっ!」

幼馴染アスカ「いつ迄も、よだれ垂らして寝てるからよっ!」

通常アスカ「誰がっ! よだれなんかっ!」ジュル。

通常アスカは天才かもしれないが、ガサツで料理も禄に作れない。こんな自分の分身と、
同じアスカだと思われたくないこともしばしば。

シンジっ。こんなアスカはダメよ。
やっぱり、女の子はおしとやかなアタシみたいじゃないとっ!

言い過ぎに思えるところもあるが、本人の勝手なので、そう思っているのならそれもい
いかもしれない。

通常アスカ「ふあぁぁぁ。お弁当はできたのぉ?」

幼馴染アスカ「アンタバカぁ? 小学校って言ったら給食でしょ?」

通常アスカ「ふーん、そうなんだ。よっこらしょっと。」

寝惚け眼をゴシゴシ擦りシャワーを浴びに行く同居人を見送り、できたばかりの朝ご飯
を食べ出す。

幼馴染アスカ「アスカーっ。早くなさいよっ。ご飯食べる時間なくなるわよ。」

通常アスカ「ウッサイわねぇ。わーってるわよ。」

幼馴染アスカ「わかってんなら、さっさとシャワーなんか出て来て。」

通常アスカ「アンタは、小姑かっ!」

時間が無いというのに、バスルームから聞こえ続けるシャワーの音が止む気配もない。
だんだんとイライラしてくる。

通常アスカ「今日は、シンジとキスするんだから、しっかり洗っとかなくちゃいけない
            もん。」

幼馴染アスカ「そうか・・・。今日いきなりってことも。よ、よしっ!」

朝ご飯を食べ終わった幼馴染アスカは、自分の分を片付け通常アスカの朝ご飯用に、新
たに作った目玉焼き追加して、学校へ行く準備を始めた。

<通学路>

シンジやレイちゃんズがマンションを出る時間に、なんとか間に合ったアスカコンビは、
ランドセルを背負いみんなで仲良く小学校までの通学路を歩く。

転校生レイ「ランドセルって、両手が空いて便利ねぇ。」

幼馴染アスカ「胸が苦しいだけよ・・・あ、ごっめーん。アンタは苦しくないわよね。」

ペタペタ。

自分の胸をペタペタと撫でてきて、めんごのポーズを取る幼馴染アスカを前に、転校生
レイが額に青筋を浮べる。

転校生レイ「シンちゃんは、でぶっちょさんよりわたしみたいなコの方がいいんだもん
            ねぇーだ。」

シンジ「・・・・え。」

4人の女の子の真ん中を歩いていたシンジは、いきなり際どい話題を振られ言葉を詰ま
らせる・・・いや詰まらせた振りをして答えることから逃げようとしたのが正解。

転校生レイ「ね。ね。」

だが「え」の一言で逃げれる程人生甘くはない。転校生レイがシンジの腕に抱き付いて、
執拗に返事を求めて来る・・・が、こちらもそんなことを続けられる程甘くはない。

通常アスカ「何してんのよっ!」

ドゲシっ!

幼馴染アスカ「誰がっ、でぶっちょですってぇぇぇっ!」

ドゲシっ!

転校生レイ「あーーーっ! アスカがぶったぁぁっ!」

幼馴染アスカ「アンタがふざけたこと言うからでしょっ!」

ドゲシっ! ドゲシっ!

転校生レイを殴り倒す幼馴染アスカ。どこの誰だっただろうか? 自分のことをおしと
やかとか、大真面目にのたまっていたような気がしたが・・・気のせいかもしれない。

通常レイ「・・・なんだか、にんにくラーメンの臭いがする。」

通常アスカ「アンタバカぁ? いきなり何わけわっかんないこと言ってんのよ?」

転校生レイ「くんくん。ん? ほんとだ。」

幼馴染アスカ「クスクス。」

通常アスカ「何処よ? そんな臭いしないわよ。」

通常レイ「するわ・・・。」

シンジ「ほんとだ・・・。」

今歩いている小学校迄のスクールゾーンには、ラーメン屋や中華料理屋どころか飲食店
など建っていない。通常アスカも臭いを嗅いでみるが、そんな臭いはしてこない。

通常アスカ「やっぱり、しないじゃない。もしかして、これがクロウカード?」

転校生レイ「んーーーーー・・・アスカの方からだ。」

通常アスカ「ア、アタシ?」

驚いて目を見開き、人差し指を立て自分の鼻をちょんと指差す通常アスカの横で、とう
とう幼馴染アスカが堪え切れず噴出してしまった。

幼馴染アスカ「あははははは。・・・プクク。」

通常アスカ「何笑ってんのよっ!?」

幼馴染アスカ「朝ご飯に目玉焼きあったでしょ? あれにニンニクスパイス入れちゃた
              かもぉ。アハハハハハ。」

通常アスカ「ぬわんですってーっ!」

ようやくはめられたことに気付く通常アスカ。シンジとのキス防止対策に思いっきり引
っ掛かってしまったらしい。

通常アスカ「よくもよくも、そんな汚い真似をっ!」

ブルブルと拳を震わせて目を吊り上げ、怒り心頭と言った感じで迫るが、幼馴染アスカ
はケロっとしてあっさりと言い返す。

幼馴染アスカ「アタシは”食べて”なんてお願いしてないもん。寝坊して自分で作る時
              間が無いアスカがいけないんでしょ?」

通常アスカ「ぬぬぬっ!」

シンジ「いいじゃないか。ニンニクくらいで、そんなに怒らなくても。」

通常アスカ「よくないわよっ!!!」

シンジ「なんで、そんなに怒るんだよ・・・。」

まさか回りの女の子達が、虎視眈々とキスの瞬間を狙っているなどと夢にも思わないシ
ンジは、きょとんとするばかりだった。

<友枝小学校>

小学校4年生のクラス。教卓の前に立ち自己紹介する5人のメンバー。やはり身長を始
め、体格がかなり違いクラスメートの目を引いている。特にアスカコンビは注目の的。

小学生「うわー、胸でけー。」

あったりまえよっ!
レイ達と一緒にしないで。

レイちゃんズを横目に、勝ち誇ったような顔で胸を張るアスカコンビ。

小学生「あれで、4年生かよ? 気持ち悪ぅぅ。」

通常アスカ「むっ!」

どうやら小学生には、アスカコンビのスタイルはあまり人気がないようだ。相手が小学
生だとわかっていても、さすがに”気持ち悪ぅぅ”にはムッとしてしまう。

小学生の女の子A「ねぇねぇ。碇くんて、ちょっと格好よくない?」
小学生の女の子B「背も高いしさぁ。」

まだ恋心など知らないこの年齢の男子達とは違い、一部の精神的に成長の早い特定の女
子がひそひそと話をしている。同年代の男の子がみんなガキっぽく見えるのに比べると、
例えシンジであってもしっかりして見えるだろう。

通常アスカ「アンタっ。ロリコンの趣味ないでしょうねっ。」

シンジ「なんだよっ! それっ! あるわけないだろっ!」

通常アスカ「なら、よろしい。」

小学4年生相手を警戒するのも馬鹿らしいので、一部の女子の声など無視。通常アスカ
達は、1番後ろに用意された席につく。身長が高いので、どうしても後の席になってし
まう。

先生「お友達も増えたから、今日はみんなでドッヂボールしましょう。」

生徒達「「「わーーーーーーーいっ!」」」

喜んで騒ぎながら運動場へ出て行く小学生達を前に、なんだか年齢のギャップを感じて
しまう。やはり、小学4年生といえばこういう感じなのだろうか。

通常レイ「ドッヂボール・・・それは何?」

転校生レイ「相手にボールを当てたら勝つスポーツよ。」

通常レイ「わかった。当てればいいのね。」

どうやら体操服にも着替えず運動場に出て行くようだ。アスカ達も小学生の後を追い、
運動場へと出て行く。

さくら「あの・・・アスカさん?」

通常アスカ「ん? どうしたの? みんなと運動場行ったんじゃないの?」

さくら「なんだか、クロウカードの気配がするんです。」

通常アスカ「そうなの? ってことは・・・チャ〜ンス!」

ニヤリ。

さくら「注意しなくちゃ。」

通常アスカ「わかったわ。先行ってて。」

さくら「はい。」

通常アスカ「あっ。ちょっと待って。」

さくら「なんですか?」

通常アスカ「このことはみんなに内緒にしといて。ね。」

さくら相手に、自分では可愛くウインク一発。バッチんバッチん。

さくら「ん? は、はい。???」

よくわからない顔をしながら、運動場へ走り出て行くさくら。それとは反対方向に踏み
出した通常アスカは、急ぎ洗面所へ入りうがいを始める。

ガラガラガラ。

よくもニンニクなんかっ!
覚えてらっしゃい、アスカの奴っ!

運動場では、シンジ達の歓迎ドッチボール大会が開かれていた。特に男の子達が気合を
入れて頑張っている。

男の子「どりゃーーーーっ!」

思いっきり力を入れて投げたボールだったが、あっさりとシンジに受けられてしまう。
まぁ、中学生だから受けれて当然なのだが・・・敵対チームには驚異的存在だろう。

困ったなぁ・・・。
小学生に思いっきり投げれないよ。

取ったボールを、相手チームの小学生に投げようか、外に出ている味方の小学生にパス
しようか悩んでいると、敵になっている通常レイと目があった。

綾波なら投げてもいいよな。

投げれる相手が見つかり、シンジはニコリと笑ってボールを手に振り被る。

碇君。私を見て笑ったわ。
きっと楽しいのね。
私も・・・そう、楽しいのね・・・

ドゲシっ!

通常レイ「ぎゅっ!」

シンジの顔をぼーっと見て立っていたレイの目の前に、突然ボールがズームアップした
かと思うと、そのまま顔面におもいっきり衝突。くらくらくらと倒れて行く通常レイ。

シンジ「あーーー、綾波っ。ご、ごめん。」

通常レイ「うーーん・・・。」

転校生レイ「もう。なにぼーっと立ってんのよ。」

シンジ「大丈夫? 綾波?」

転校生レイ「いいって。いいって。シンちゃんは悪くないから。ぼーっとしてるこのコ
            がいけないのよ。」

通常レイ「鼻・・・痛い。」

転校生レイ「あったりまえよ。受けるなり避けるなりしなくちゃ。」

さくら「大丈夫ですか?」

通常レイ「痛い・・・。」

通常レイは転校生レイに背中をポンポンと押され、鼻を押さえながらコートの外へ出て
行く。

転校生レイ「あれ? アスカがいないわねぇ。」

さくら「えっと、クロウカードの気配がするって言ったら、どっかに行っちゃいました
        ・・・あっ、他の人に言っちゃ駄目って言われてたんだぁ。」

転校生レイ「アスカがそんなこと言ったのぉ? 言っちゃダメって。」

さくら「はい・・・。」

転校生レイ「むぅぅぅーーっ!!」

抜け駆けしよって魂胆ねっ。
そんなの許さないんだから。
よーしっ。

転校生レイ「ねぇねぇ、アスカぁ?」

幼馴染アスカ「なによっ。アンタ敵なんだから、話し掛けないでよ。」

転校生レイ「それどころじゃないのよ。実はさぁ・・・ごにょごにょ。」

幼馴染アスカ「なんですってぇっ!」

転校生レイ「どうしよっか?」

幼馴染アスカ「許せないわっ! ここは協力して、あのコを排除するのよっ!」

転校生レイ「そうこなくっちゃ。」

共同戦線を引くことになった転校生レイと幼馴染アスカ。通常アスカを排除してしまえ
ば、邪魔される可能性が激減するというものだ。

転校生レイ「さくらちゃん?」

さくら「ほぇ?」

転校生レイ「いざって時の為に、わたし達から離れないようにね。」

さくら「はいっ。」

その頃通常アスカは、まだ洗面所で何度も何度もガラガラガラと嗽をしていた。できれ
ば歯ブラシが欲しいが、無いものは仕方ない。

もういいかな?
よーしっ、いつでもいらっしゃいっ!
シンジはアタシのものよっ!

気合を入れ臨戦体制で運動場へ飛び出して行った通常アスカだったが、結局ドッチボー
ル大会の間は何も変わったことは起きなかった。

3,4時間目は体育でプール。小学生のプールは自由時間があるので、みんな楽しそう
に仲の良い友達とはしゃいでいる。

とにかくシンジの近くにいなくちゃダメよね。
いざって時にアタシだけシンジの近くにいてぇ〜。

通常アスカ「えへ。えへ。えへへへへへ。」

女子更衣室で水着に着替えながら良からぬ妄想をする通常アスカを横目に、転校生レイ
と幼馴染アスカは、急ぎ着替えてプールサイドへ出て行く。

幼馴染アスカ「見た? あのニヤケた顔ぉー。」

転校生レイ「抜け駆けを考えてるのよ。許さないんだから。」

幼馴染アスカ「ねぇ、さくらちゃん? どう? カードの気配は?」

さくら「なんだか、凄く近いような・・・気が。」

幼馴染アスカ「そう。そろそろってことね。じゃ、レイよろしく。」

転校生レイ「うんっ。」

幼馴染アスカとがっちりと握手した転校生レイは、プールサイドをペタペタと走ると、
再び女子更衣室へ戻って行く。

転校生レイ「アスカ? 大変。シンちゃんが、鼻血出して保健室に運ばれたって。」

通常アスカ「う、うそっ?」

転校生レイ「わたし、ちょっと見て来るね。」

通常アスカ「あっ、いいって。もう着替えちゃったんでしょ? アタシが行ってくるわ。」

転校生レイ「そう? じゃ、宜しくぅ。」

通常アスカ「まっかせなさいっ。」

今シンジと離れてはいざという時、にっちもさっちもいかなくなる。通常アスカは、ニ
ヤリとほくそ笑み脱ぎ掛けていた制服を再び纏うと、保健室へと歩いて行く。

これで、アタシとシンジは2人っきりぃっ!
レイの奴ったら、ばっかねぇ。
敵が近くにいるともしらないで。
これで、シンジはアタシのものねっ!

そんなことを考えながら保健室へ向かう通常アスカを、してやったりの顔でガッツポー
ズを取っているのは、転校生レイと幼馴染アスカ。

シンジ「あれ、アスカじゃない? 何処行くんだろう?」

今からプールという時に、トコトコ校舎へ向かって歩いて行く通常アスカの後ろ姿を、
プールサイドからフェンス越しに怪訝な顔でシンジが眺める。

幼馴染アスカ「うーん、なんか気分が悪いとかみたいよ?」

シンジ「えっ? そうなの? 大丈夫かな? 様子見に行った方が。」

転校生レイ「あっ、いいのいいの。ほっとけば。」

シンジ「でも。」

幼馴染アスカ「シンジぃ? 女の子の事情に首を突っ込まないの。」

シンジ「あっ・・・。そ、そうなんだ・・・。」

女の子の持つ伝家の宝刀を振り翳し、シンジをこの場に留めた2人は、一緒にプールの
中へちゃぽん。

幼馴染アスカ「えっと、もう1人のレイは・・・?」

きょろきょろ回りに目を配ると、プールサイドで鼻をコネコネしながら通常レイは座り
込んでいた。さっきドッヂボールで当たったのがまだ痛いようだ。

幼馴染アスカ「対象外ねっ! レイっ! 後はアンタと一騎打ちよっ!」

転校生レイ「望むところよっ!」

ライバル4人のうち2人は戦線離脱状態。幼馴染アスカと転校生レイは、シンジから離
れないようにぴったりとくっつき、今か今かと決戦の火蓋が切って落とされる瞬間を待
ちながら、全身の神経をピリピリと緊張させる。

シンジ「あははは。やっぱり、夏はプールだね。冷たくて気持ちいいや。」

まさか、2大怪獣が獲物を見据えるような目で自分のことを見ているなど露知らず、シ
ンジは小学生と一緒に、バシャバシャと水の中で遊ぶ。泳げなくても背が立つので、ま
さにシンジ向き。




保健室では。

通常アスカ「失礼しまーす。」

保険の先生「どうしたの?」

通常アスカ「あのぉ。碇シンジくんが倒れたって聞いて・・・。」

保険の先生「碇くん? なに?」

通常アスカ「何処で寝てるんですかぁ?」

保険の先生「こっちには来てないけど?」

通常アスカ「来てない? え?」

保険の先生「ええ。 今日は誰も、保健室に来てないわよ?」

通常アスカ「はっ!」

し、しまったーーーーーーっ!
アイツらぁぁぁっ!!!!!

バァァァァアアアアアアアンっ!!!!

扉が壊れるのではないかと思える程大きな音を立てて閉め、通常アスカは保健室を飛び
出して行く。保健室では静かにしましょう。

所戻ってプールでは、異変が起きていた。プールに満たされていた水の一部が、ぐねぐ
ねと生き物のように波打ち始めたのだ。

小学生A「わーーーっ! 水が恐いよぉ。」
小学生B[助けてぇぇぇっ!」
シンジ「うわーーーっ、溺れるよぉ。怖いよぉっ。」
小学生C「せんせーーっ、助けてーーっ!」

さくら「クロウカード!? ケロちゃんっ!」

急ぎプールサイドに持って来ていた携帯電話を手に取り、ケロちゃんに電話をかけ始め
る。水の中では、幼馴染アスカと転校生レイが、なんとかシンジに近付こうと無我夢中
で泳いでいた。

<鈴原家>

ケロちゃんは、今朝からトウジの家で楽しく遊んでいた。なぜ平日なのにトウジが家に
いるのかは、ヒカリにばれると怒られるので秘密。

トウジ「たこ焼き、焼けたでぇ。」

ケロちゃん「やっぱ、関西人にしかこの味はわからへんでぇ。」

トウジ「”味”っちゅったら、海にいる奴でっか?」

ケロちゃん「それは、”味”ちゃいまんがな、”鯵”でんがな。」

トウジ&ケロちゃん「「わはははははははは。」」

トウジ「ワイは嬉しいで。ボケツッコミしてくれる、関西人と知り合えて。」

ケロちゃん「ほや。さくらなんか、いっこもツッコミしてくれへんねや。」

トウジ「ほやほや、ヒカリもほうや。」

ケロちゃん「おっ! 蛸や。でっかい蛸やでぇぇ。」

トウジ「あんまりでかかったら、空飛べまへんで。」

ケロちゃん「そりゃ、”凧”でんがな。」

トウジ&ケロちゃん「「わはははははははは。」」

その時、ケロちゃんの電話が鳴った。

トウジ「ん? 電話が鳴ってんで。」

ケロちゃん「おうっ! ”電話”が鳴っても誰も”出んわ”ぁぁっ!」

トウジ&ケロちゃん「「わはははははははははははははははははっ!」」

ブチ。電話を切ってしまうケロちゃん。

いつ迄も続きそうなので、場所をプールに戻すとしよう。

<友枝小学校>

ピポパポパ。

携帯電話のプッシュを押し、ケロちゃんに電話をしていたさくらの耳に、呼び出し音が
聞こえてくる。

プルルルルル。

プチ。

電話に出た音がした。

さくら「あっ! ケロちゃん? 大変なの・・・」

ケロちゃん『電話が鳴っても誰も出んわぁぁっ!!! わははははははははははっ!!!』

ブチ。

電話が切れる。

さくら「・・・・・・。」

ケロちゃん・・・。
こ、この大事な時にぃ!

ブチ。

さくらの中で、何かが切れる。

さくら「もうっ! ケロちゃんなんか知らないっ!」

そんなことより、急いでみんなを助けなければいけない。さくらは封印の鍵を手にし、
大きく振り被り、うねっている水を前に振り翳した。

さくら「汝のあるべき姿に戻れっ! クロウカードっ!」

振り下ろされる封印の鍵。だが、その前には真っ赤な壁が展開され、水面まで封印の鍵
が届かない。

さくら「やっぱり駄目。アスカさんっ! レイさんっ!」

幼馴染アスカと転校生レイは、もうクロウカードのことなど眼中になく、渦巻く水の中
で大慌てしているシンジ目掛けて形振り構わず泳いでいた。

幼馴染アスカ「負けるもんですかっ!」

転校生レイ「シンちゃんは、わたしのものよっ!」

シンジ「あっ、アスカぁ、レイぃ、た、助けて・・・ごぼごぼごぼ。」

荒れ狂う水の中で、泳げないシンジがこっちに向かって泳いでくる2人に、縋るような
目で助けを求め手を延ばす。

が、

そんな手など振り解いて、幼馴染アスカも転校生レイも必死の形相でシンジに襲い掛か
かった。

シンジ「うわーーーーーーっ! アスカっ! レイっ! 何するんだっ! 助けてーっ!」

水の中に押し込まれるシンジ。溺れかけるシンジなどお構い無しに、幼馴染アスカと転
校生レイの顔がシンジの目の前に迫る。

シンジ「ゴボゴボ。お、溺れる・・・だ、だずげで。ゴボゴボ。」

転校生レイ「仝∀Å※☆⇔∋★◇○!!!」

幼馴染アスカ「☆Å◇○※仝∀⇔∋★!!!」

シンジをプールの底に押し付け、水の中でキス権を巡って大喧嘩を始める転校生レイと
幼馴染アスカ。

シンジ「ゴボゴボゴボ。だ、だずげで・・・。」

もう生死の境をさ迷っているだけのシンジ。その首根っこを先にぐいと掴んだのは転校
生レイだった。

シンジ「ゴボゴボゴボ。」

わたしの勝ちぃっ!

心の中で勝利宣言をして、シンジを両手で抱きしめる転校生レイ。その後から幼馴染ア
スカが迫って来るが、もう勝敗は決していた。

シンジ「ゴボゴボゴボ。」

当のシンジは溺死寸前。

シーンジっ!

ニコリと笑みを浮べた転校生レイがシンジの唇に迫るが、その時ふと素朴な疑問が浮か
んでしまった。

ATフィールドって、どうやって張るのか聞いてない・・・。
キスした後、どうするんだろう?

ザッバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

もたもたしている間に、水から叩き出されるシンジ達。水面に打ち上げられた転校生レ
イもあたふたしている。

転校生レイ「キスはいいけど、ATフィールドってどうやって作るの?」

幼馴染アスカ「そんなの知らないわよっ!」

転校生レイ「あーん。わかんないよーっ!」

幼馴染アスカ「やかましいっ! キスすりゃいいのよっ! キスっ!」

転校生レイ「だめーーーっ! シンちゃんに近寄っちゃっ! よーし、キスだけでもしち
            ゃうんだからっ!」

また喧嘩を始めた2人と、目を白黒させて渦の中で溺れているシンジに襲い掛かるウォ
ーティーのクロウカード。

ザッバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

転校生レイ&幼馴染アスカ「「きゃーーーーーーっ!!!!」」

とうとう3人纏めてプールサイドにぶっとばされる。そこへ、通常アスカが鬼のような
形相で走って来た。

通常アスカ「アンタらーーーっ! よくも騙したわねーーーーーっ!!!!!」

更衣室を回っていては間に合わないと判断したのか、ガッシャンガッシャンとプールの
回りを取り囲んでいる金網をによじ登り始める通常アスカ。とっても恐い顔をしている。

転校生レイ「あっ! このままじゃ、アスカにシンちゃんが取られるっ!」

幼馴染アスカ「負けるもんですかっ!」

通常アスカ「シンジは貰ったぁぁぁぁっ!」

さくら「早く、この赤い壁なんとかしてくださーーーいっ!」

その時だった。ようやくプールサイドに逃れ、息ができるようになったシンジが意識を
取り戻す。その倒れるシンジが見上げた目の前には通常レイ。

シンジ「ん? ぼ、ぼく・・・。」

通常レイ「碇君。」

シンジ「あ、綾波? ん? どうなったの?」

通常レイ「これは必要なこと・・・。」

シンジ「えっ?」

チュっ!

ピキュイーーーーーーーーン。シンジ、トランス。

シンクロスタート。

意識が回復したと思ったら、またトランス状態に入り意識がなくなるシンジ。ある意味、
非情に哀れかもしれない。

通常レイ「ATフィールド全開っ!!!!」

ドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっ!!!

久しぶりに見せる通常レイのピッとした表情。いまや、もうあまり似合わない。それは
さておき、一気にウォーティーのATフィールドが中和されていく。

通常アスカ「あーーーーーーっ! それはアタシの役だったのにぃぃぃっ!!!」

さくら「汝のあるべき姿に戻れっ! クロウカードっ!」

ゴーーーーーーーー。

辺り一面の水が、さくらの前に集りカードの形に収束していく。

さくら「ほっ・・・」

幼馴染アスカ「むぅぅぅぅ。」
転校生レイ「やられた・・・。」
通常アスカ「こんちくしょーーーーーーっ!!!」

さくら「ありがとうございましたぁ。これで1つカードが・・。」

アスカコンビ&転校生レイ「「「クロウカードなんかどうでもいいのよっ!」」」

ギロリ。

さくら「ほ、ほえぇぇぇ〜。」

せっかく敵も殲滅してハーピーエンドだというのに、なぜ鬼のような形相で睨みつけら
れるのかわからないさくらは、冷や汗をたらたら流すしかなかった。

そのかたわらで。

通常レイ「碇君・・・。」

ポッ。

今回の勝利者が、頬を赤らめトランス状態に入ったシンジに膝枕していた。

<アスカのマンション>

その夜。

ATフィールドの張り方をなんとしても聞かなくてはならないと、幼馴染アスカと転校
生レイは同居人に頼み込んでいた。

幼馴染アスカ「ねぇ。お願いだから教えてぇぇぇ。」

通常アスカ「ニンニク盛るわ、嘘ついて保健室へ追い遣るわっ! それで教えて貰える
            と思ってるわけぇぇっ!?」

幼馴染アスカ「アスカ様っ! お願いしますっ! アスカ様っ!」

通常アスカ「やかましいっ! ぜーーーったい、教えるもんですかっ!」

幼馴染アスカ「もう、2度と卑怯なことはしませんっ! おねがーーーいっ!」

通常アスカ「イヤったら、イヤっ!」

一生懸命下手に出ているのに、通常アスカは余程怒っているのか、プイと横を向いてし
まって教えてくれない。

幼馴染アスカ「もういいわよっ! レイに聞くからっ!」

とうとう我慢の限界に達した幼馴染アスカは、ズカズカと家を出て2軒隣のレイちゃん
ズの家へと入って行く。

<レイのマンション>

だがこちらでは、転校生レイが通常レイに余計な入れ知恵していた。

幼馴染アスカ「お願い。ATフィールドの張り方教えて。」

通常レイ「碇君のほっぺにキスして、お猿さんの真似してから、本当のキスをすればい
          いわ。」

幼馴染アスカ「そうだったのっ!? ありがとーーーーーっ!!!」

喜び勇んで飛び出して行く幼馴染アスカを部屋の影から見送りながら、転げ回り笑って
いるのは転校生レイ。

通常レイ「あれでいいの?」

転校生レイ「あははははははは。う、うん。バッチリよっ! あはははははは。」

通常レイ「そう。バッチリなのね。それは、とてもとても良いこと。」

転校生レイ「あはははははははははは。さ、猿の真似ぇだってぇ。あははははははは。」

はてさて、残るカードは後4枚。いったいどうなることだろうか。

To Be Continued.
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