------------------------------------------------------------------------------
あまえんぼうアスカちゃん
Episode 03 -お熱-
------------------------------------------------------------------------------

<ミサトのマンション>

2015年のゴールデンウィークは、振替休日も含み5日間も連休となる。
今日は待ちに待ったその初日5/2の土曜日だ。アスカは珍しく朝早く目を覚ます。

「ん〜!」

明るい朝日の日差しの中、ぶかぶかのパジャマに身を包んだアスカは、ふかふかの布団
の上に座り伸びをする。今日も良い天気、絶好のお出かけ日より。

「早起きすると、気持ちいいわね。」

学校に行く日は、いつもねぼすけなのだが・・・たまに早起きすると、そう感じるのか
もしれない。

そうだ!

ポンと手を叩くアスカ。何か閃いたようだ。アスカは、にこにこしながら室内着に着替
えると、急いで自分の部屋を飛び出して行った。
そぉっと、シンジの部屋の襖を開け中を覗き込むと、案の定シンジはまだ寝ている。

やった! まだ寝てる。たまには、アタシが起こしてもいいわね。

物音を立てない様に、そぉっとそぉっと爪先で立って近寄るアスカ。

どうやって起こそうかしら???

朝、シンジを起こすなんてことは、アスカにとって初めての経験だ。なんだかワクワク
する。

案1、耳元で大声で叫ぶ。
案2、四の字型めをかける。
案3、やさしく抱き起こす。

う〜ん・・・。

シンジの寝顔を見つめながら、人差し指を口元に当ててこの貴重なシチュエーションを
いかに上手く利用しようかと考えるアスカ。

やっぱり・・・これしかないわね。

アスカは、シンジが被っているタオルケットをめくると、シンジに密着して添い寝の形
で寝転がり布団を被る。

シンジが起きるまで、こうしてよっと。

シンジを起こすのは、もうどうでもいいようだ。

ん?

なんだか、シンジが熱く感じらる。

ん? ん?

シンジのおでこに、自分のおでこをくっつけるようとするアスカ。

わっ! わっ!

シンジの顔がアップになったので、真っ赤になりながら一旦顔を遠ざける。しかし、そ
れでは熱は計れない。まぁ、体温計で計ればいいのだが・・・。

再び、戸惑いながらもおでことおでこをくっつけるアスカ。やはり熱があるようだ。か
なり熱い。

シンジ、熱があるじゃない・・・。

じ〜っと、おでこをくっつけたまま熱を計るアスカ。

かなり熱いわね。

じ〜っと、おでこをくっつけたまま熱を計り続けるアスカ。

昨日まで元気だったのに・・・。

まだまだ、おでこをくっつけたまま熱を計り続けるアスカ。

お薬あったかしら??? あ、その前にご飯作らないといけないわね。

いつまでも、おでこをくっつけたまま熱を計り続けるアスカ。

まだ、朝も早いからいいか・・・。

アスカは、おでこをくっつけたまま、シンジの横でしばらく添い寝をすることにした。
シンジのアップをじっと見つめる。

やっぱりシンジの顔、赤いわね。

アスカの方が真っ赤な顔をして、シンジの寝顔を見つめ続けていると、シンジの目が突
然パチリと開いた。

「ん? わーーーーーー!!!!!」

「あっ!」

「ア、アスカ!!! 何してるんだよ!?」

目が覚めると、目の前にアスカのドアップがあったので、びっくり仰天したシンジは、
布団を蹴飛ばして飛び起きる。アスカも、何の前触れも無くシンジが目覚めたので、こ
の状況をどう言い訳しようか、目をあちらこちらへ泳がすばかり・・・。

「そ・・・その・・・シンジの熱を計ってたのよ。決まってるでしょ。」

「熱?」

そう言われれば、体もだるいし喉も痛い。自分の手を額に当ててみると、確かに熱い。

「ほんとだ・・・熱があるよ・・・。あーあ、折角の連休だってのに。」

アスカの理由になっていない言い訳も、話をそらすだけの価値はあった様だ。

「ほんとよぉ! これじゃ、どこにも行けないじゃない。」

「今日は、おとなしく寝ていることにするよ・・・はぁ。」

「じゃアタシ、ご飯作ってきてあげるからね。おかゆでいい?」

「うん。それでいいよ。」

「わかった。」

アスカは、あわててシンジのベッドから降りると、添い寝の件の話がぶり返す前に、逃
げ出す様にキッチンへ駆け込んで行った。

ゴトゴト。

キッチンで料理をしている音がしばらく続いた後、お手製のおかゆを手にしたアスカが
シンジの部屋へ入って来る。アスカがしている赤いエプロンが、なかなか似合っていて
かわいらしい。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

シンジにおかゆを手渡したアスカは、陶器でできたスプーンでおかゆ食べるシンジを見
つめる。

なかなか、美味しそうにできたわね。

見ているだけでも、美味しそうである。

「シンジぃ、アタシも食べたい。」

「え?」

アスカはそう言うと、ベッドの上に座っておかゆを食べるシンジの膝の上に座った。

「あーーーーん。」

雛鳥の様に口を開けて、アスカはシンジに食べさせて貰うのを待つ。

「しょうがないなぁ。」

シンジは、スプーンにおかゆを乗せると、息を吹きかけて冷ました後アスカの口へ運ぶ。

もぐもぐ。

「うん、おいしい。もっと!」

もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・もぐもぐ。

「ふぅ、お腹いっぱい。」

シンジにおかゆを食べさせてもらったアスカは、満足気に微笑む。

「アスカ・・・ぼくのは?」

「え・・・あぁ、無くなっちゃったわね。また、入れてくるわ。まだまだあるわよ。」

アスカは、シンジの膝の上から降りるとお茶碗を持ってキッチンへと消えた。また、数
分の後、おかゆを持ってくるアスカ。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

ようやく食事にありつけたシンジは、美味しそうにアスカ特製おかゆを食べる。

「どう? 美味しい?」

「うん。美味しいよ。」

「そりゃ、このアタシが作ってるんだからね!」

「そうだね。」

簡単な料理ではあるが、なかなか上手くできている。しつこい料理は食べる気がしない
シンジも、あっさりしたおかゆなら美味しいのか、すぐに食べ終わった。

「ごちそうさま。ありがとう。」

笑顔でお礼を言い、お茶碗をアスカに返す。

わっ。

なんだかこのシチュエーションがうれしいアスカ。

「ど、ど、どういたしまして。」

アスカはお茶碗を受取ると、ぎこちなくギーコギーコと歩いて、キッチンへ戻って行った。

ドンガラガッシャーーーン!

「いったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」

強烈な物音が、リビングから聞こえてきたので、ベッドから飛び起きるシンジ。

「どうしたの!! アスカ!?」

シンジの笑顔で、ぼぉ〜っとしていたアスカが、どうやらリビングに置いてあるクッシ
ョンで足を滑らせ、転んでしまったようだ。

「痛い! 痛い! 痛い! 痛い! いたぁーーーーーーーーーーーーーい!!!」

お茶碗は、粉々に砕け散っている。丁度アスカが、手をついた場所に破片でもあったの
か、指の先から血が滲み出ている。

「痛いよぉ!!! シンジぃぃぃ!!! 痛いよぉ!!!」

「もぉぉ、何してるんだよ。ゴホゴホ。」

シンジは、だるい体で救急箱が置いてあるタンスまで行くと、消毒液とばんそうこうを
取り出して持ってきた。

「ここ! ここ! ここが痛いのぉ!」

アスカが、血の出ている指をもう片方の手の人差し指で指し示しながらシンジに見せる。

「わかってるよ。ちょっとじっとして。ゴホゴホ。」

シンジが、床に座りアスカの指を消毒しようとした時、アスカはシンジの膝の上に移動
する。

「ちょっと、アスカ・・・。」

「この方がいい。」

「もぉ・・・手当てしにくいじゃないか・・・。」

シンジはぶちぶちいいながらも、アスカの指を消毒し、ばんそうこうを巻く。猫の絵柄
が描かれているピンク色のばんそうこうに満足したアスカは、ニコニコしてシンジの膝
の上で、ばんそうこうを眺め続ける。

「アスカ、お茶碗とか片付けるから、ちょっとどいてよ。」

「あっ、そうね。」

「ゴホッゴホッ。」

シンジは、咳をしながら割れたお茶碗を片付け、破片が残らない様に掃除機で細かい欠
片を丁寧に吸い取る。

「ゴホッゴホッ。じゃぁ、ぼくは寝るからね。」

「熱があるんだから、安静にしておきなさいね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかってるんだけどね。ゴホゴホ。」

シンジが、自分の部屋へ入っていった後、アスカは1人でTVを見ていたが、だんだん
寂しくなってくる。

あーーーん、退屈ぅ!!!!
もぉ、どうして、ゴールデンウィークに風邪なんかひくのよぉ。

暇になってきたアスカが、襖をそっと開けて中を覗き込むと、汗をかきながら寝ている
シンジの姿が見える。

熱も結構あったわよねぇ。大丈夫かしら???

シンジの苦しそうな顔を見ていると、心配になってくる。なんとかシンジが早く治る方
法は無いものか・・・。

うーーーーーーーーん。そうだわ、風邪といえば!

アスカはシンジの部屋の襖を閉め、冷凍庫からありったけの氷を洗面器にぶち込み水を
満たす。洗面器の中で泳ぐ氷を指でつついてみると冷たくて気持ち良い。

あとは、タオルね。

タンスから奇麗なタオルを取り出し、洗面器に浸してシンジの部屋へ持って行った。

ぎゅぎゅぎゅ。

氷水に浸かっていたタオルを絞り、シンジの額に乗せると、心なしか気持ちよさそうに
している様に見える。

これで、熱も下がるわよ。

それからアスカは、シンジの顔をずっと見つめながら、タオルが暖かくなってくると、
氷水に浸けて冷やし、またおでこに乗せる。
どれほどそれを繰り返しただろう。しばらくすると、朝早起きしたアスカはだんだんと
眠たくなってきてしまった。

スースー。

知らないうちに、シンジのベッドに寄り掛かかって寝てしまったようだ。

                        :
                        :
                        :

ドガッ! ドガッ! バシ!

「い、痛い!」

いきなり殴り飛ばされ目が覚めるシンジ。ふと横を見るとアスカが添い寝している。
いつのまにか、寝ぼけて布団に潜り込んだ様だ。
夢でもみているのか、足をばたつかせてシンジを蹴り倒している。

もぅ! アスカ!! ゆっくり寝かさせてくれよ!!

眠りの邪魔をされムっとしたシンジが、ふとベッドの下を見ると、氷水が満たされてい
る洗面器。枕の横には、今まで自分がしていたものであろう濡れたタオルが布団を湿ら
せていた。

アスカ・・・。

シンジは、タオルケットをアスカに掛けてやると、自分はリビングのソファーへ移動し
再び眠りについた。

                        :
                        :
                        :

「ふぁぁぁぁあ、あら? アタシ寝ちゃったの? シンジは?」

ベッドの上にあるのは、自分の姿だけ。シンジを探してリビングに出るとソファーで寝
ている。

もぅ、布団も掛けないで、なんでこんな所で寝てるのよ!

今まで自分が着ていたタオルケットを持って、シンジの側へ寄って行くと、なんだかさ
っきより苦しそうだ。寝汗もひどく、顔も真っ赤になっている。おでこをくっ付けてみ
ると、かなりの高熱だ。

「シ、シンジ!!」

どうしよう・・・どうしよう・・・シンジぃがぁ〜シンジぃがぁ〜。

救急箱をひっくり返したり、冷蔵庫を漁ったり、あたふたあたふた家中を走り回るアス
カ。

シンジぃぃぃ・・・。ちょっと待ってなさいよ! 今なんとかするからね!!

しかし、熱をすぐに下げるような便利な代物は、どこを探しても出てこない。

どうしよぉぉぉ・・・。あ! そうだわ!

「シンジ! 起きて! お医者さんに行くのよ! シンジ! シンジ!」

「ん? ア、アスカ? ゴホゴホ。」

「お医者さんに行くわよ。準備はできてるから、急いで。」

「え・・・うん。そうだね。ゴホゴホ。」

既に用意は終わっていたので、シンジはTシャツの上にカーディガンだけ羽織るとアス
カに寄り掛かりながら病院へ向った。

<病院その1>

「アスカ・・・休みだよ?」

今日は土曜日の祝日ということで、一番近くにある内科の病院は定休日だった。

「こ、こ、こぉの一大事に、ぬぁにが定休日よ!!!! ぶち壊してくれるわ!!!!」

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!

病院の玄関を蹴りまくるアスカ。

「出てきなさいよ! このっ! このっ! このっ!」

ガンガンガン。

「この! この! これでもか!!」

急に暴れだしたアスカに驚いたシンジは、慌てて後ろからアスカを羽交い締めにする

「ア、アスカ。ちょ、ちょっと、落ち着いて・・・。」

「落ち着いてなんか、いられるもんですか!!!!」

「もうちょっと先に、救急病院があるから、そこなら開いてるはずだよ。」

「でも、病人がここまで来てるのよ! 開けてくれたっていいじゃない! きっと中で聞
  こえているのに、意地悪して出てこないのよ!!」

「そ、それに、ぼくもアスカと一緒にもうちょっと歩きたいし、ね。アスカの肩を貸し
  てよ。」

「え?」

「ね、もうちょっと歩こうよ。ゴホゴホ。」

「う、うん。」

なんとか、アスカを落ち着かせたシンジは、アスカの肩を借りながら少し向こうにある
救急病院まで足をのばした。

<病院その2>

「碇さん、どうぞ。」

さすがは救急病院だけあって、休日でも診察をしていた。シンジ達が待合室で少し待つ
っていると、受け付けの女性からお呼びが掛かる。

診察室に入って行くシンジ・・・・とアスカ。診察室に入ると、医者が椅子に座りなが
ら、いぶかしげにこちらを見ている。

「お付き添いの人は、待ち合い室で待っていて貰えますか?」

「嫌よ!」

「診察の邪魔です。待合室で・・・・。」

カチン!

こ、こ、このアタシが・・・じゃ、邪魔ですってぇぇぇぇ!!!!

「アンタみたいなヤブ医者が、シンジに変なことしないように、しっかり見ておかない
  と心配よ!! うだうだ言ってないで、さっさと診察しなさいよ! このヤブ! ヤブ!
  やぁ〜ぶぅぅ!!」

「ア、アスカ!!」

突然、何を言い出すのかと、シンジは仰天する。

「す、すみません。すぐに出て行かせますから。」

医者に謝りながら、アスカを外に連れ出そうとするシンジ。

「シ、シンジまで、アタシを追い出すの!? いいこと、良く聞きなさい! アンタは、
  この腐れヤブ医者に騙されてるのよ!!!!!」

「ちょ、ちょっと、いいから外へ出てよ。」

アスカのあまりの暴言に、医者はブスっとしてシンジ達の方を睨み付けている。
結局、その病院にいたたまれなくなったシンジは、アスカを連れて診察も受けずに病院
を出た。

「アスカぁ、頼むからおとなしくしていてよ。」

「だって・・・。」

「この先に、総合病院があるから、次はちゃんと待合室で待っているんだよ。」

「う、うん。」

いくら頭に血が登ったとはいえ、少しやりすぎたかと自分でも反省しているアスカは、
素直にシンジの言うことを聞いてうなずいた。

<病院その3>

「わかったね。ちゃんと待合室でおとなしく待ってるんだよ! いい子にしてるんだよ!」

「うん。まかせなさい。」

何をまかせるのかわからないが、とにかく待合室の長椅子でおとなしく座っているアス
カの様子を見届けたシンジは、安心して診察室へ入って行った。

シンジ、大丈夫かしら?
痛いことされてないかしら?

シンジの姿が見えなくなると、途端に不安になってくるアスカ。

ちょっとくらい中の様子を見てもいいわよね。

辛抱しきれなくなったアスカは、長椅子から腰を持ち上げると、診察室の扉をそぉっと
開く。周りにいる患者達が、何をしているのだろう?と、不思議な顔をしてアスカの様
子を見ている。

何あれ?

医者が、銀色のペンシルケースみたいなものを手にしていた。それに興味を持ったアス
カは、その様子を見ていると、中からは注射器が取り出されシンジの腕に近づいていく。

「い、い、いた〜〜ぁ。」

あまりに痛そうな光景に、思わず声を出してしまうアスカ。
注射をしようとしていた医者は、その声に手を止め診察室の扉の方に目を向ける。様子
がおかしいので、シンジも医者の視線の先に目をやると、そこには赤い髪の毛が揺れて
おり、覗き込んでいるアスカの青い瞳が・・・。

「ア、アスカ!!!!!!」

「あ!」

シンジに見つかってしまい、おろおろするアスカ。

「もう! 邪魔するんなら帰ってよ!! もういいよ!!」

「そ、そんな・・・。」

「早く出ていってよ!! 邪魔しないでよ!!」

シンジの声に驚き、サッと診察室の扉を閉めたアスカは、目に涙を浮かべて長椅子に腰
を落とした。

シンジに怒られた・・・。
邪魔って言われた・・・。
帰れって言われた・・・。

涙が、次から次へ溢れてくる。

ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。

アスカが、しょぼくれて長椅子に座っていると、診断が終わったらしく診察室からシン
ジが出てくる。

あ、シンジ!

しかし、シンジの前でどんな顔をすればいいのか、何を言えばいいのかわからないアス
カは、シンジを見たまま唖然としていた。

シンジ・・・シンジぃ・・・。

アスカが”ごめんなさい”と訴えかける様な目で見つめていると、シンジは近寄ってき
て、アスカの前に腰を降ろす。

「さっきは、ごめんね。」

優しい笑顔で、微笑みかけるシンジ。

「え?」

「ちょっと、言い過ぎた。」

「シンジぃぃぃぃぃぃぃ。」

怒っていると思っていたシンジから、優しい言葉が出てきたので、安心したアスカは目
にいっぱいの涙を溜めシンジに抱き着いた。

「ちょ、ちょっと・・・。」

先程から目立っているのに、更にこの状態だ。周りの視線が気になるシンジ。

「シンジぃぃぃぃ。」

「もう、いいよ。ほら座って。」

「うん。じゃ、ここがいい!」

シンジの膝の上に座るアスカの顔には、涙のあとが残るものの既に満面の笑みがこぼれ
ている。

はぁ。

こんな所で抱き着かれるよりはまだましかと思ったシンジは、先程きついことを言って
アスカを悲しませたという負い目もあり、しばらくアスカをだっこしてやった。

そして、清算を済ませたシンジとアスカは、帰路につく。
さすがに注射の効き目は早く、シンジもだいぶ楽になっていた。

「今日は、いろいろありがとう。」

失敗もしたが、一生懸命看病をしてくれたアスカに心からお礼を言うシンジ。

「そんなのいいわよ。その代り、アタシが病気になったら介抱してね。」

「もちろんだよ。」

何気ない会話だったが、わずか数日後にその言葉は現実の物となり、シンジは想像以上
の苦労をするのだが・・・それはまた別のお話。
今は、今日のアスカのがんばりを誉めてあげよう。

To Be Continued.
作者"ターム"へのメール/小説の感想はこちら。
tarm@mail1.big.or.jp
inserted by FC2 system