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あまえんぼうアスカちゃん
Episode 14 -決戦!(前編) VS 戦略自衛隊-
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<戦略自衛隊本部>

人間の醜さを象徴するかのような漆黒の暗闇。その中に浮かび上がる数体のモノリスが、
不気味に薄い光を出している。

殺せ!
殺せ!
殺せ!

暗闇の中に蠢く軍服の男達に浴びせ掛けられる残忍、欲望、エゴイズムの意思。軍服の
男達はそれに応え、忠誠を誓い高々と手を掲げる。

手榴弾。
戦車。
ミサイル。

人類を守る為に作られたものではなく、人類を殺戮する為に作られた、兵器という道具
の名前が会議室を飛び交う。

二子山に配置。
芦ノ湖より出撃。
MAGIオリジナルの確保。

戦略。戦術。人類が自らを自らの手で貶める為の、愚かしき行動のストーリーが作られ
て行く。

ザッザッザッ。

人間の暗黒面を映し出す会議室の外から、休む間もなく軍靴の音。号令の声。武器を整
備する音。エンジンの音。

「諸君の検討を祈る。」

暗黒の中に消えるモノリス。動き出す軍服の男達。もう後には引けない。権力の為。欲
望の為。軍服の幹部と呼ばれる男達は、同じく軍服を来た自らの道具達に号令を下す。

「MAGIオリジナルの確保が最優先である。」
「チルドレンは発見次第抹殺せよ。」
「エヴァンゲリオンの起動を阻止せよ。」
「ネルフ職員の生死は問わん。」
「作戦の遂行を最優先とせよ。」

骰子は投げられた。

動き出す殺戮部隊。戦略自衛隊。

目的地、第3新東京市。ネルフ本部。

<ネルフ本部>

同時刻ネルフ、戦略自衛隊の動向を察知。対人兵器の予算削減。物資、兵力面の戦力差。

対使徒には圧倒的な力を持つネルフだが、対人となった場合、殺戮の訓練もしておらず、
兵器もない。戦自・・・まともに当たっては勝てる算段がない。

「職員全て銃を持って応戦っ! A級戦闘配備っ!」

ミサトの号令がけたたましくネルフ内を駆け巡る。

「D級職員は至急退避。チルドレンはっ!!!?」

「零号機パイロット。保護済みです。初号機パイロット、本部に只今入りました。ケー
  ジへ向かっていますっ。」

「頼んだわよ。シンジくん・・・。辛い闘いになるだろうけど。」

コンソールを操作し、即座にマヤが応える。そのモニタには、初号機へ向かうシンジの
姿が映し出されている。

「弐号機パイロット・・・弐号機パイロットは・・・。」

「なにっ? 報告は正確にっ!!」

今すぐ保護しなければ、チルドレン達の命にかかわる。苛立ったミサトはアスカの所在
地を示すMAPが表示されているモニタを覗み、その瞬間悲鳴をあげた。

「アスカーーーーーーーーー!!!!」

<遊園地>

ぽかぽかぽっか、とっても陽気であったかい。おひさま、キラリン、キラキララ。おべ
んと持ってルンルンルン。

お花さん、こんにちは。

ちょうちょさん、こんにちは。

うきうきわくわく、とってもあったか遊園地。お馬さんに乗っちゃうの。ゴンドラさん
に乗っちゃうの。

でもね。でもね、お馬さんはダメダメよ。
ゴンドラさんもダメダメよ。

だって、だって、おしりがとっても痛いのよ。
ちゅめたいところは、やのやのやーんよ。

シンジのお膝におっちんよ。シンジがお馬さんにのって、アタシはシンジのお膝におっ
ちんするの。

シンジがゴンドラにのって、シンジにだっこして貰うのよぉーっ。

なのに。なのに。なのなのに。

いったいどーーーなってるのか・・・わっかんないのよーーーーっ!!!
ぷーーーんぷーーーんぷくぷくぷーーーーーーんなのよーーーーっ!!!

遊園地までやってきたアスカは、ほっぺをいっぱいに膨らまし、遊園地の警備員さんに
ぶーぶーぶー。

「だめなのよっ! 今日は遊園地なのよっ!」

「なに言ってるんだっ! 非常事態宣言が出ているのが聞こえんのかっ!!! さっさと
  避難しなさいっ!!」

「だめだめだめよっ。シンジとおっちんしちゃうのよっ!」

「わけわかんないこと言ってんじゃないっ! さっさとシェルターに避難しなさいっ!」

「そんなのは、だめだめなのよーーーーーーーーっ!!!」

なんとびっくり、遊園地が勝手にお休み。しかもさっきから、ウぅぅ、ウぅぅ、ってあ
ちこちが煩くて、とってもアスカちゃんは不機嫌だ。

ほんとにとっても困った遊園地に、アスカちゃんはおめめをクリンクリン。ほっぺは、
ぷくんぷくん。

「いつまでいても、今日は遊園地は開かないっつってるだろ。さっさと避難しなさいっ。」

「お馬さんに乗るのよ。コーヒーカップさんもラブリーよ。でもでもぉ〜、お化け屋敷
  は、ずぅぅぅっと閉まってたらいいのよぉ!」

「君の好みを聞いてるんじゃないっ。」

「アタシの好み? しゅきなものはねぇぇーっ!!」

ニヘラ〜と笑みを浮かべて、リュックに入れてきたシンちゃん人形をガバっと取り出し
ぎゅっと抱き締め。

「シンジなのよぉぉぉぉぉっ! しゅきしゅきしゅきーーーっ!!!」

「・・・・・・。」

ルルリ、ルルリ、ルンルララン。手に手をとって、シンちゃん人形と、ステップ、ステ
ップ、ダンス、ダンス、しゅきしゅきしゅき、だいしゅきシンジぃぃ。

「・・・・・。」

頭痛がしてくる警備員。一生懸命頑張ってはみたのだが、とても対抗できそうにない。
そこへ救いの神が、青いスポーツカーに乗って現れた。その女神は、車から飛び降りる
と、ルンルリ踊っていたアスカの手をむんずと掴む。

「なにしてんのっ、さっさと来なさいっ!」

「や、や、や、や、やのよぉぉぉぉっ!!!!」

「警報が聞こえてるでしょっ!!!」

ウーウーウーとけたたましく街中に鳴り響くサイレンのスピーカーを指差しながら、ミ
サトはアスカを引き摺り出す。

「だめだめだめなのよぉぉ。だって、今日はシンジとデ・・・・。」

”デ”まで言ったアスカちゃん。とっても、とっても、恥かしくて。お顔もいっきに総
崩れ。ふにょにょにょーんと、笑みを浮かべる。

「でぇとなのよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

ドゲシっ!!!

「うげっ。」

アスカの頭をスパナでおもいっきりミサトがはりたおすと、『うげっ』という声ととも
に地面に顔からぶっ倒れた。

「どうも、ご迷惑をおかけしました。」

「あ・・・いえ。」

遊園地の警備員さんに一言挨拶したミサトは、ヘロヘロになったアスカを車に叩き込み
アクセル全開。

「やのやのやのーーーー。遊園地なのぉぉ。」

フラフラする頭を押さえながら、遠ざかる遊園地に向かい、必死で窓から名残惜しげに
手を伸ばす。

「やのやのよぉぉ。ミサトのバカーーーっ!!!」

「それどころじゃないでしょっ!!」

「ミサトのババーーーっ!!!」

ブチッ!っとミサトの中で何かが切れた音がしたかと思うと、再びスパナをその手に。

ガス!!!

「いたいのよーーーーーーーーーーーーっ!!!」

頭を押さえて、ぷるぷる震えるアスカちゃん、かなり怒っているようだ。

「遊園地ぃぃぃ。お約束なのよぉぉっ!!」

「はいはい。あとでね。」

「あとはやのよぉぉっ! 今なのよぉぉっ!!!」

「シンちゃんなら、ネルフにいるから、おとなしくなさい!」

「えっ? シンジぃぃ? わ、わかったのよぉぉっ!」

ニマーと笑みを浮かべるアスカちゃん、いったい何を考えているのかはわからないが、
この場はとにかくネルフへ急ぎ向かうのだった。

<ネルフ>

発令所に戻ったミサトは、いくつもあるスクリーン、モニタに目をやり、今の状況を把
握、分析する。

「戦自、二子山まで兵を進めています。侵攻も時間の問題かと。」

「ギリギリ、チルドレンの確保。間に合ったわね。」

「で、アスカちゃんはどこに?」

「どこって、ここに・・・ん?」

マヤに聞かれ、なにを意味のわからないことをという感じで、自分の隣を指差したが、
今までいたはずの赤い髪の毛が見えない。

「あれ? あれ? アスカーーーーーっ!!!」

ミサト、再びアスカをロスト。

<二子山仮設基地>

二子山に前線を築いた戦略自衛隊は、ネルフに対しミサイル攻撃を開始した。続いて戦
車による攻撃も始め、火力にものを言わせ初戦において圧倒的な成果を上げる。

「敵防御兵器は殲滅した。全兵力をもって突入せよっ!」
「チルドレンは見つけ次第排除。」
「必要があれば、ネルフ職員は殺してもかまわん。」

軍司令部の号令がかかる。戦自の主力部隊が、一斉にネルフのゲートへ向かい小銃を構
え突入を開始。

最優先事項は、MAGiオリジナルの確保。

ダッダッダッダッ。

初戦において無人兵器による抵抗はあったものの、その兵器を排除した今、ほとんど無
抵抗で戦自の兵士達はネルフのゲートへ駒を進めることができた。

白兵戦の経験の無いネルフ職員は全てが、ジオフロントのある地下奥深くに退却し陣を
構え応戦体制に入った為、入り口付近は無防備となっていた。

<ネルフ本部内>

同時刻。ネルフ本部の廊下では。

階段さん、ぴょんぴょん飛んじゃうの。シンジを探して、ぴょんぴょんぴょん。

うっうーん。シンジとかくれんぼぉ。
早くみつけて、だっこだっこだっこなのよぉぉっ!!!

だけど、アスカちゃんったら、ちょっとおせんち。
だって、シンジがなかなかみつからないんだもん。ぐす。

階段を上へ上へぴょこぴょこ上りながらシンジを探していると、ミサトがいつも乗って
いる青いぶーぶー発見。

ぶーぶーで探したら早いのよ。
ぶっぶっぶーーーって、探すのよ。

ところが、いざ車に乗ろうとすると、近くに撒いてあった長く太いホースから硬化ベー
クライトが噴出し始めた。邪魔である。

「の、乗れなくなっちゃうのよっ!!」

あんなもので車が固まってしまっては大変だ。アスカちゃんは、邪魔にならないように
車の屋根にホースをどっかとくっつけると、ぶーぶー乗って、ハンドルにぎにぎ、サイ
ドを下げていざ発進!

「いやーーーーん。あんよが届かないのよぉぉぉぉっ!!!」

大変だ。ミサト仕様のぶーぶーだから、アスカちゃんのあんよがアクセルに届かない。

「でも、大丈夫よ。」

ニコリと笑うアスカちゃん。近くにあった、車輪止めのブロックをアクセルの上にどっ
かと置いた。

ぶおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

「いーーーーーーやーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

いきなりぶーぶーが暴走。

「大変なのよぉぉ!! ぶーぶーがぁぁぁ。ぶーぶーがぁぁぁ。」

屋根に積んだベークライト放出用のホースが、だんだん勢い良くベイクライトを撒き散
らし始め、ミサトのぶーぶーも、ぶーーーーんぶーーーーんぶーーーーーん。

階段もエスカレーターもぶーん、ぶーん、登って行く。ガコガコガコガコ車は走り、サ
スペンションもボディーもボコボココ。

だけど、なんだか・・・気分はとっても遊園地。

「ジェットコースターーーなのよぉぉぉっ!!!」

だんだん面白くなってきたアスカちゃん。ぶーぶー走らせて、上へ上へと登って行く。
勢い良く噴出すベークライトが、べんべろべんべろうねり出し、べんべろべんべろどろ
どろろ。

ぶーぶー通ったその後は、どこもかしこも、まっかっか。ベークライトに固められ、辺
り一面まっかっか。

「むむむむむっ?」

ふと前を見ると、たくさんの人が降りて来ている。みんな仲良しお友達。

ぶーーーんぶーーーん、ぶんぶんぶーーーん。

「あそこにシンジがいるかもかもなのよぉぉっ!」

前から鉄砲を持ってやってくる人達向かって、アスカちゃん突進開始! ぶーーーんぶーーーん、
ぶんぶんぶーーーん。

「シンジぃぃぃ。アスカちゃんを受け止めてぇぇぇぇぇぇっ!!!」




一方。

ネルフへ突入した戦略自主力部隊は、ゲートを通り、ジオフロントへ通路を少し降りた
位置で、奇妙なものに遭遇していた。

「な、なんだあれはっ!!!!!」

前から物凄い勢いでベークライトを撒き散らしながら、ボコボコになったルノーが猛ス
ピードで迫って来るではないか。

「て、敵だーーーーっ!!!」

最前線部隊が銃を構え、車の中の運転手に銃口を向けたが、そこにはしまりのない笑顔
を浮かべた女の子が何かを叫びながら、体をくねくねさせているではないか。

「ぶっ! ・・・なんだあれは。」

その一瞬の躊躇が全ての終わりだった。躊躇無くベークライトを撒き散らしながら、突
進してくる暴走車。銃を撃つどころか、壁際に逃げるのが精一杯。

「シンジぃぃ! シンジはどこなのぉぉっ!!!」

逃げ惑う兵士の上に、うねるダクトからベークライトが、べんべろべんべん。べろべろ
べんと降り注ぎ。

「シンジがみつかんないのよぉぉぉっ!!」

「うわーーーっ! なんだこれはっ!」
「退却しろーーーっ!」
「ネルフの新兵器だっ!!!」

どろどろどんどん。どろどろりん。兵士は次々身動きがとれなくなり、通路内で壁際に
よけた兵士は、ベイクライトに首まで固められていく。

「あっあーーん。もうすぐ出口なのよぉぉ。シンジがいないのよぉぉっ。」

1度パニック状態が広がると人の心とは脆いもの。兵士とて人の子で、あっという間に
総崩れになっていく。

そして、アスカが地上に飛び出たとき、既に陸上部隊の主力は全てベイクライトに固め
られてれてしまい、その機能を失ってしまっていた。

地上に踊り出たアスカは。

「シンジがいないのよぉぉぉ。あーーーん、シンジぃぃ、アタシはここよぉぉっ。
  プリティーハートを受け止めてぇぇっ。」

あったかお日様、ぽっかぽか。今日もお外は、ぽっかぽか。シンジを探してアスカちゃ
ん。ベークライトを撒き散らしながら、愛のメッセージを地上絵に書き始める。

”シンジ ラブ しゅきしゅき”

ナスカの地上絵なんのその、”シンジ ラブ しゅきしゅき”の地上絵メッセージを残し、
アスカちゃんはドンドコドコドコ、ポンコツになった車を運転して何処へともなく去っ
て行くのだった。

「・・・・・・。」

その絵を見て絶句していたのは、言わずと知れたシンジである。地上の様子が気になっ
て、初号機のエントリープラグのモニタから様子を見ていたのだが。

”シンジ ラブ しゅきしゅき”

なんて字を書いていくんだよぉ・・・。

いや、それよりも、どうやらアスカが1人で暴走していることを知ったシンジは、これ
まで以上に真っ青になっていた。

「だ、だめだ。このままじゃ。アスカを止めなくちゃっ!!!」

とにかくアスカかを保護しなければ、なにが起こるかわからないと、シンジは初号機か
ら降り走り出したのだった。

<二子山>

とにもかくにも予想外に甚大な被害をうけた戦自の仮設基地本部では、首脳陣が頭を抱
えていた。

「な、なんだ。さっきのはっ!」

「申し訳ありません。不意をつかれましてっ。」

「くっ。先の戦闘で現れたのは、セカンドチルドレンであることに間違いはないか。」

「はっ。」

「英才教育を受けた天才だと聞いてはいたが、まさかここまで戦闘能力があるとは・・・。」

「いかがされますか。」

「今、ヤツの所在はっ!」

「つかめておりません。」

「作戦を変更する。セカンドチルドレンを、最優先で抹殺せよっ!!」

ここに、この最終戦闘の図式が、『ネルフ vs 戦自』から『アスカちゃん vs 戦自』と
いう図式に変更されたのだった。

「ところで・・・。」

「なんだ。」

「あの地上に描かれた、”シンジ ラブ しゅきしゅき”という暗号の意味はなんでしょ
  うか?」

「わからんっ! 暗号解読班に回せっ!!」

それからしばらくの間、戦自の暗解読班のコンピューターは、「シンジ ラブ しゅきし
ゅき」の文字列でうめつくされ、解析に全てのCPUを稼動させたらしい。

<ネルフ本部>

ぶーぶーに飽きてしまって、とっても寂しいアスカちゃん。なかなかシンジが見つから
ない。

「シンジぃぃ、どこなのぉぉ? 遊園地で遊ぶのよぉぉっ。」

あんよがとっても疲れてきちゃって、シンジのだっこが恋しくなちゃう。

「むむっ!?」

ふと見ると、LCLにどっぷりつかった模擬体がみつかった。疲れたあんよと、ムシ暑
い日には、冷たいお水はとっても魅力的。

「ちゃぷちゃぷするのぉぉぉっ!!!」

たくさん歩いてあちゅいあちゅいなのよ。
シンジもきっとあちゅいあちゅいよっ。

シンジと一緒にプールに入るのよぉぉぉっ!!!!

とっても素敵な名案が思い浮かんだアスカちゃんの瞳には、お星様がキラキラキラリン
煌いた。

<戦略自衛隊空挺部隊>

通常の出入り口をベークライトで塞がれ、主力兵力を失った戦略自衛隊は、次なる作戦
の実行に移ろうとしていた。

「ジオフロントの通気口より、空挺師団を落下させ一気に侵入をはかるっ!」

マトリエル戦でシンジ達も利用した巨大な通気口から、空挺師団を一気に侵入させよう
というのだ。

あそこには対人兵器が装備されていないという情報もあり、ほとんど抵抗なしに最下層
まで侵入できるはずである。

「作戦開始っ!」

上層部の号令により、戦略自衛隊の残存兵力を全て投入する大規模な作戦指示が出され、
空挺師団が、ジオフロント目掛け降下作戦に入った。

<ネルフ本部>

ちゅめたいちゅめたい、お水でちゃっぷんこ。プラグスーツに着替えて、ちゃぷちゃぷ
ちゃっぷん、とってもとっても気持ちいぃ。

アスカちゃんは、もっともっとちゅめたいLCLを出そうと、LCLのダクトを開くハ
ンドルを思いっきり力を込めて回し出す。

「ううーーーーーん。とっても重いのよぉぉぉっ!!!」

あんよを踏ん張り、うんとこしょ。おててに力をいれて、うんとこしょ。ちゅめたいお
水が待っている。

「ううーーーーーーーーーん。」

あと少し。もうちょっとで、ちゃっぷんこ。

「ちゃっぷんこなのよぉぉぉっ!!!!!」

とうとうやった。
ハンドル回って、ちゃぷちゃっぷん。

その時、アスカの後から、聞こえてきたのは!

「アスカっ!!!」

とうとう見つけたラブリーシンちゃんのピュアボイス。

「あぁぁぁぁぁっ! シンジなのよぉぉぉーーーっ!!!!」

一気に回すLCLのハンドルさん。

ドバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

アスカの声と同時に、大量のLCLが流れ出す。お水に流され、シンジのお胸にジャッ
プンジャップン、ジャーーーーーンプなのよーーーー!!!

「うわーーーーーーーっ!!!」

いきなりLCLに押し流され、悲鳴を上げるシンジにがっちり抱き付いて、お水の中で
愛のスクリュードライバー。

「シンジぃぃぃ、しゅきしゅきぃぃぃ。」

「わーーー、アスカ、なんてことをっ。」

「シンジぃぃ、だっこぉぉ。だっこなのよぉぉぉ。」

「だっこって・・・。」

ぐるぐるぐるぐるLCLの中で濁流に流されながら、アスカちゃんはシンジに抱き付い
て流されて行く。

「あんよがとっても痛くなっちゃったのよぉぉ。」

「はいはい。どこが痛いの?」

「ここ、ここなのよぉぉぉ。」

一生懸命、痛くなったふくらはぎを見せる。シンジは濁流の中アスカを離さないように、
しっかり抱き締めて、ふくらはぎをさすってあげる。

もみもみ。もみもみ。

「あーーーん。とっても気持ちいいのよぉぉ。シンジぃぃぃ、しゅきしゅきぃぃ。」

「好きって・・・それよりさ。これどこまで流されるんだよ。」

「アスカちゃんのラブリーワールドまでなのよぉぉぉ。」

「うーーん。そうじゃなくて・・・。」

とにかく急ぎケージに戻りエヴァに乗らないとマズイ状況だが、LCLの流れが強くア
スカを離さないようにするだけで、シンジも精一杯。

「あーーん。シンジったらーーーん。」

「どうしたの?」

「そんなにちゅよくだっこしたら、しゅきしゅきーーーってなっちゃうのぉぉぉ。」

「だって、離れ離れはイヤだろ?」

「そんなの、いやなのよぉぉぉっ!」

「だから、しっかりだっこしてなきゃ。」

「はなればなれはいやいやのーーーっ! もっと、もっと、だっこなのよぉぉっ!」

またさっきみたいに、ひとりぼっちはだめだめ。一生懸命おててに力をこめて、集中!
だっこに全神経、集中!

「シンジと一緒なのよーっ! しゅきしゅき、だいしゅき、だいしゅきよーーっ!!!」

このLCLの中には模擬体が3対いる。ままりにもシンジしゅきしゅき集中したアスカ
ちゃんは、とうとうシンクロしてしまった。

ドバーーーーーーーっ!!!

いつしかLCLの濁流は、ネルフの通気口の最下層に噴出し。ダクトを伝って上へ上へ
と上がり始めた。

同時刻。

戦自空挺師団が、ダクトに向かい落下開始。残存全兵力を全て投入した、大規模落下傘
部隊。

「わーーーーっ! な、なにか変な液体がっ!」
「液体が噴出してきますっ!!!」
「ワーーー−−ッ! またネルフの新兵器だーーーーっ!!!」

落下傘を背負い大量に飛び降りていた空挺師団達。もちろん、あとは落ちていくしかなく、
次々湧き出すLCLの中に、じゅぽーーーん。じゅぽーーーん。じゅぽーーーん。

うろたえる兵士達に、軍司令部より厳命が無線で飛び交う。

『たかが水でうろたえるなっ! お前達は水中戦の訓練もしておるっ! 突入せよっ!!!』

だが、それは水ではなかったのだ。

こともあろうか、アスカがシンクロしているLCLに、次々と兵士は飛び込んで行く結
果となってしまった。

LCLに入った兵士が、最初に見た光景とは・・・突き抜けるように澄んだピンク色の空。

ハートの雲がぽっかりこ。

またまたこっちも、ぽっかりこ。

お花畑でルンルンルン。シンジのお膝でしゅきしゅきしゅき。

「ああーーーん。シンジぃぃ、だいしゅきよーーーーーーっ!!!!!」

ガボガボガボ。

LCLで呼吸ができるはずだが、次々兵士が悶え出す。溺れてしまったかのように、手
足をバタバタさせ、もがき苦しむ兵士達。

そんな兵士の耳に届くは、ラブリーピュアーなアスカちゃんのキュンキュンボイス。

「さぁぁ! みんな一緒に、しゅきしゅきしゅき! しゅきしゅきしゅき!」

「「「ぐわーーーーーーーっ!!!」」」

喉をかきむしり苦しむ兵士。

「おててを胸の前で組みましょうっ! 右の肘と左の肘をしっかり合わせて、左右にく
  ねくねするのよ。はーい、みんなで、しゅきしゅきしゅきしゅき。」

精神汚染を受けた兵士たちは、皆例外なく、両手を胸の前で組み始める。

「アスカちゃんったら、おしりもプリンプリンふりふりよぉぉ。」

兵士たちも、勝手に体が動き出し、おしりをつきだし、プリンプリンプリン。

「みんな、いっしょにしゅきしゅきしゅき。」

とうとう耐え切れなくなった兵士の中から、ひとり、またひとりと、ほっぺを赤く染め
はじめ、みんなで一緒にしゅきしゅきしゅき。

「さぁ、あまえんぼうの星に向かって! みんなでいっしょにっ!!!!」

アスカちゃんの青い瞳が、眩い無数の星を散りばめたように輝いた。キラン☆

「しゅきしゅきしゅき。しゅきしゅきしゅき。」

アスカちゃんに合わせて、兵士達も繰り返す。

「「「「しゅきしゅきしゅき。しゅきしゅきしゅき。」」」」

ずぶとい声の兵士達、みんな目をハートにかえて、シンジに向かって『しゅきしゅきし
ゅき。』

ハッ!? ハッ!?

何か様子がおかしくなっていることに気付いたシンジは、LCLの中で回りに目を向け
ると、屈強な男達から熱い視線が送られているではないか。

ゾゾゾゾゾゾ!!!

これ以上ないという程、寒気を感じるシンジ。

「「「しゅきしゅきしゅき。しゅきしゅきしゅき。」」」

「わーーーーーーっ! アスカっ! やめてくれーーーーーーっ!!!」

空挺師団は全てLCLに飲み込まれ、みんな一緒に『しゅきしゅきしゅき』。シンジに
向かって図太い声で、ハートを込めて『しゅきしゅきしゅき。』

「やめてくれっ! やめてくれっ! たすけてくれーーーーっ!」

もがき苦しむシンジ。

「あっあーーーん。シンジぃぃ、だいしゅきよぉぉ。
  アタシのだいしゅきハートをうけとってぇーーっ!!!」

おっきなおっきなピンクのハートが、シンジ目掛けて、投げキッス。

それに続いて兵士たち。

「「「あっあーーーん、シンジくん、だいしゅきじゃぁぁっ!
      ワシのだいしゅきハートを受け取って欲しいんじゃぁぁぁぁーーっ!!!」」」

おっきなおっきなドドメ色のハートが、無数にシンジ目掛けて、投げキッス。

「ぎゃーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

シンジ気絶寸前。

口から泡を吹き始める。

そこへようやく事態を把握したミサトが発令所から、命令を発動した。

「シンジくんが、戦略自衛隊と接触したですって! 危険だわっ!
  すぐに保護してっ!」

濁流のごとく沸いてでいてたLCLがバイパスを伝い、回収されていく。それと同時に、
目をハートにして浮かんでいた全ての戦自衛隊の兵士は、LCLと一緒にネルフ内部に
飲み込まれて行き監禁されたのだった。

To Be Continued.
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