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合い言葉
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<学校>

「バカシンジ!」
「ごめん。」

今は、美術の授業時間。2人ペアとなって割り箸で塔や、家などを作っている。クラス
の中でシンジとアスカ、トウジとヒカリだけが男女でペアを組んでいた。こういう場合、
冷やかしがおきそうなものだが、ヒカリを冷やかしたりしたら、トウジが恐いので、誰
も何も言わない。ましてや、もう1組の方となると、トウジより恐い。

「どうして、アンタはいつも、いつもアタシの邪魔ばかりするのよ!」

「ごめん。」

アスカがコツコツとくみ上げたエッフェル塔を、シンジが崩してしまったのだ。

「あー、またやっとるわ。」

シンジ達を見ながら、トウジがヒカリに話し掛ける。

「いいのよ、あれでけっこう仲いいんだから。」

「しかしやなぁ、男に向ってバカバカ言うもんや無いやろぉ。シンジもシンジやで、男
  っちゅーもんは、そー簡単に謝るもんやないで。」

「あーやって、お互いの存在を確かめ合ってるのよ。」

「そういうもんかいのぉ。」

「あの2人も明るくなったわ。」

「一時は最悪やったからなぁ。」

使徒を全て倒し終わった頃、アスカは入院していた。シンジもアスカの見舞いに行く以
外、決して外には出ようとせず、人との接触を避けていた時期があった。

「あの2人には、誰よりも幸せになってほしいわ。」

「そやなぁ。」

キーンコーンカーンコーン。

授業の終了のチャイムが鳴り響く。

「バカシンジ! アンタのせいで終わらなかったじゃないの! 次は、邪魔しないでよ!」

「ごめん。」

<ミサトのマンション>

「ねぇ、シンちゃん、アスカちょっと話があるんだけど。」

帰宅したミサトが、シンジとアスカを呼ぶ。

「なんですか?」

シンジとアスカが部屋から出てくる。

「来週の連休さぁ、沖縄に行かない?」

「へ? 沖縄ですか?」

「ほんとう!」

両手を机につき、体を乗り出して、アスカがはしゃぐ。

「あんた達、修学旅行も行けなかったじゃない。だから、旅行でもしようかなって思っ
  てるんだけど。どかな?」

「行くに決まってるじゃない。ね、シンジ行くわよね。」

「うん。」

「それからさぁ、洞木さんも誘ってあげてほしいんだけど。」

「えーーー、ヒカリもいいのぉ!?」

「ペンペンが世話になったからねぇ。」

「じゃぁ、ミサトさん、トウジもいいですか?」

「いいわよん。」

電話の方へそそくさと移動し、さっそく、ヒカリに電話するアスカ。

プルルルルルルルルルルルルル。

『はい、洞木ですが。』

「あ、ヒカリー!?」

『いえ、コダマです。お姉ちゃんですか? ちょっと、待ってください。』

「あ、ごめんなさい。ヒカリお願いします。」

『アスカ?』

「ヒカリ? もぉ、声が似すぎてていっつも間違うじゃない。」

『アスカは、ちゃんと確認しないで、いきなり話するからよ。』

「むーーーーー。それよりさぁ、来週の連休なんだけど、ミサトが沖縄に行こうって言
  うのよ。」

『へぇ、よかったじゃない。アスカは修学旅行に行けなかったもんねぇ。』

「それでね、ペンペンが世話になったから、ヒカリも誘ってあげてって。」

『え! 本当?』

「うん、行けるかなぁ?」

『でも、コダマのこともあるから、ちょっと考えさせて。』

「それからねぇ、あのねぇ、えへへへへへ。」

『何よ。』

「聞きたい?」

「もったいつけてないで、早く言ってよ。」

「鈴原も誘うことになってんだけどなぁ。」

「えぇぇぇ!! 鈴原!!!」

「どう? 行けるかなぁ?」

『・・・・・行く。』

「じゃ、鈴原には、連絡しといてね。」

『えーーーー、私がぁ?』

「じゃ、頼んだわよ。」

『ちょっと、アスカ待って・・・・・』

ガチャ。

「これでよしと。」

その後も、沖縄の予定に、ミサト家は話の花が咲いた。

<デパート>

今日は、旅行の前日。アスカとヒカリは、沖縄で着る水着を買いにデパートへ来ていた。
シンジとトウジは、付き添い兼荷物持ちである。

「なんで、女はこう買い物が長いのかのぉ。」

多量の荷物を抱かえて、水着売り場の外でぶーたれるトウジである。

「仕方無いよ。」

こちらも多量の荷物をかかえているシンジである。

「毎年、毎年水着買わんでもええやないか。」

「そういうもんなんだよ。きっと。」

「しかしやなぁ。」

「じゃぁ、委員長に言ってみたら?」

「・・・・・・。」

所変わって、水着売り場。

「ねぇ、これ、かわいくない?」

「あ! かわいい。あ! こっちのもいいわよ。」

「あー、でも、ちょっときわどくない?」

「そっかなぁ? じゃーこれは?」

いつ終わるとも知れない2人であった。

ウーーーーーウーーーーーウーーーーー。

突然デパートに警報が鳴り響く。

「何だろう?」

「火事でもあったんかいな?」

「シンジ!」

アスカが水着売り場から出てきた。

「ミサトから電話があったわ。使徒よ!」

「使徒! そんな、もう全て倒したって。」

「来てるもんは、来てるのよ! 行くわよ!」

「わかった。じゃ、トウジ! 明日!」

2人はネルフ本部へ向った。トウジとヒカリは、そのままデパートで避難することとなった。

<ケージ>

「零号機が、まだ、修復できてないから、シンジくん、アスカ2人で頼むわ。」

「わかりました。」

「まかせて。でも、使徒って全部倒したんじゃなかったの?」

「17使徒は、本当の使徒じゃ無かったのよ。これが本当に最後の使者。」

「そう。明日、楽しみにしてるからね。」

「まかせといて! エヴァ初号機、2号機発進!」

初号機と2号機が打ち出される。数ヶ月振りの出撃だった。
使徒は、ゼルエルを太らしたような形をしており、頭には、シャムシェルのような触手
が数本生えている。
初号機と2号機が、第3新東京市郊外に打ち出される。

<第3新東京市郊外>

「シンジくん、アスカ、ポジトロンライフル装備。迎撃して様子を見るわ。」

初号機と2号機はポジトロンライフルを一斉射撃する。

ズギューーーーーーーーーン。

2つのポジトロンライフルの火線が使徒に直撃し、火花が散る。しかし、ゼルエル以上
に装甲が厚くびくともしない。

「ATフィールドは中和してるのに、なんで!!?」

「アスカ! コア一点に集中するんだ!」

「わかったわ。」

2つの火線がコアに集中するが、コアを守る防壁も固くダメージを与えられない。

使徒が第3東京市にせまる。

「ダメ! そっちには、ヒカリと鈴原が!」

アスカが、デパートを守る形に配置を変える。

「シンジくん! バズーカを出すわ! 受け取って!」

ミサトの指示が飛ぶ。

「了解。」

シンジは、打ち出されたバズーカを2本手に持ち、使徒に連射する。

ズガーンズガーンズガーンズガーンズガーンズガーン。

「くっ、ダメか。うぉぉぉぉぉ!!!」

バズーカでも効果が無いことを知り、シンジは使徒に突撃する。

「近距離からなら・・・。」

ガーーーーーーン。

初号機が使徒と激突する。

「これ以上近づかせたら、トウジ達が・・・。」

<デパート>

「ワイらを守ってくれてるんや! 思うように動けないんや!」

「アスカ! わたし達はいいから、戦って!」

デパートの窓から外を見ていた、ヒカリがアスカに叫ぶが、聞こえはしない。

<第3新東京市郊外>

ズババババババババ。

パレットガンを連射する2号機。

「ちっ、効果無しか。」

アスカは、スマッシュ・ホークに持ち変えデパートの前方に立ちふさがる。

ズガーンズガーンズガーンズガーンズガーンズガーン。

シンジは、使徒と接触し、近距離からバズーカを連射している。あまりの近距離の為、
初号機の装甲が崩れ出す。

「くそ! なんでこんなに固いんだ。」

ズガーンズガーンズガーンズガーン  カチカチ・・・。

「弾切れ・・・!? こんな時になんでだよ!」

装甲がボロボロになった初号機で、使徒を押しもどそうとするシンジ。

ズババババババババ。

使徒の触手が初号機の体に何本も突き刺さる。

「ぐあーーーーーーーーーー。」

苦痛の中、後ろを振り返えると、市内を守っているアスカが目に入る。もう、後が無い。

「アスカ!」

「なによ!」

通信回線を開きアスカに話し掛けるシンジ。

「後は頼む。」

それだけ言うと、シンジは自爆レバーに目を向ける。

「シンジ! 何する気! シンジ!」

「シンジくん! 撤退しなさい! シンジくん!」

2号機の中のアスカも、司令室のミサトも叫んでいた。

既に装甲は崩れ落ち、体中から血を吹き出した初号機は、最後の力を振り絞って、使徒
を押し戻す。

「うぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「先に行くよ。」

シンジがアスカに話し掛ける。

「シンジ! シンジ! シンジ! シンジぃー!!!」

アスカは泣き叫ぶ。

「ごめん。」

ピカッ。
ズガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

「シンジ? シンジ? シンジ? シンジーーーーーーーーーー!!!
  いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

アスカが2号機の中で絶叫する。

「シ・シンジくん・・・・。シンジくん!!!!!!!!!!!」

ミサトも司令室で絶叫していた。
司令室のあちこちから、悲鳴のような声が聞こえる。

<デパート>

「な、なに? ねぇ、何が起こったの? ねぇ、鈴原! ねぇ!」

「シ、シンジ・・・! そないなことがあるかいな! シンジ!!!」

「私達の為に・・・。碇くん・・・。うわぁーーーーーーーーーん。」

トウジもヒカリもその場に崩れ落ちた。

<ネルフ司令室>

「エネルギー反応有り! 使徒健在!」

ほとんどの職員が我を失う中、日向がいち早く立ち直り状況報告をする。

「な、なんですって!!!」

モニターを見つめるミサト。

そこには、体のほとんどを破壊された使徒がゆっくりと進行していた。

「そ、そんな・・・。」

ミサトは、膝を落とす。

<第3新東京市郊外>

「よくも! よくも! よくもシンジを!!!!!!!!」

アスカがスマッシュ・ホークを振りかざして、使徒に突撃する。

「こんちくしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

ズガガガガガガガガガガガ。

コアに目掛けて、スマッシュ・ホークを叩き付ける。火花が四方八方に散る。

しかし、崩れかかっているがコアの防御壁は固く、コアが露出しない。

ズガーンズガーンズガーンズガーン。

「このー! このー! このー! このー!」

何度も叩き付けるが、効果が無い。

使徒は、戦車のようにジリジリと2号機を押して、第3新東京市にせまる。

必死におさえるアスカ。

「くっ、このままでは・・・。」

後ろを振り替えると、街がすぐそこまで来ていた。

「シンジのかたきだーーーーーーーーー!!!!」

アスカは、自爆レバーに手をやる。

<ネルフ司令室>

「アスカ! やめなさい! シンクロ全面カット! エヴァ全機能停止! 急いで!」

シンジのことがある。ミサトは即、マヤに司令を出す。

「はい!」

マヤがコンソールを叩く。

しかし、間に合わなかった。

「アタシ独り置いて行くんじゃないわよ! なんでアタシを置いていくのよ! バカ!!
  バカシンジ!!!!!!!!」

ピカッ。

                        ●

8年後。

「どないや、シンジとアスカは?」

ここは鈴原家、ヒカリとトウジは結婚し双子を生む。名前はシンジとアスカ。
自分たちを、第3新東京市を、世界を守って死んでいった、尊敬すべき親友の名前。

「今日ね、初めて喋ったの。」

「どっちがや?」

「それがね、2人同時になの。その最初に喋った言葉がね・・・。」

ヒカリの視線の先には、積み木をして遊ぶ青いベビー服を着たシンジと赤いベビー服を
着たアスカがいた。
アスカが積み木を積んでいく。そこへシンジがやってくる。

ガラガラガラ。

アスカの積み上げた積み木が崩れ落ちる。

ペチ。

シンジを叩くアスカ。

「バキャチンヂ!」
「ゴミェン。」

fin.
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