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ハッピーハッピープレゼント
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<ミサトのマンション>

「今日も疲れたなぁー。」

アタシはアスカ。よく天才とか美少女とか言われるけど、本当は普通の天才で美少女の
中学生の女の子。

ただ、普通の子と違うのは、天才で美少女・・・じゃなくてエヴァっていうのに乗って
ることかな。

今日もねぇ、学校の後ネルフって辛気臭い所に寄ってたから、もうへとへとぉ。

「んーーーー。よいしょっと。」

ベッドに倒れ込んだアタシはこの鶴の様なあんよを伸ばして、机の上のカレンダーを足
の親指と人差し指で挟んで取ったの。誰も見てないから、いいわよね。

そのカレンダーの6の数字に注目っ。

明日はアイツのバースデーかぁ。
プレゼント期待してるのかなぁ?

・・・でもねぇ。

プレゼントをあげてみたい気もするけどさぁ、なんだかちょっと恥ずかしいじゃない?

まっ、いっか。
アイツが催促してきたら、何かあげようかな。

って、言ってもアイツがアタシに催促なんてしてくるとは思えないけどねぇー。
そん時は、催促しないアイツが悪いのよ。

そうよっ、アイツが悪いんだからねっ。

やっぱり今日は疲れてたみたいで、カレンダーを枕元に置いたまま何時の間にか寝ちゃ
ったみたい。明日も朝から学校だしねぇ。

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                        :
                        :

『カーー。』

ん? ・・・・すやすや。

                        :
                        :
                        :

『スカーーー、そろそろ・・・』

むぅぅぅぅ。ウルサイわねぇぇぇ。・・・・すやすや。

                        :
                        :
                        :

『アスカっ! いい加減に起きてよっ! 遅刻しちゃうよっ!!』

「あーっ! もう朝っぱらからウルサイわねーーっ!」

ん? 遅刻?

慌てて枕元に置いてある目覚まし時計を見ようと、ベッドの下に目を向けたの。案の定
床の上で電池を飛び出させて転がってたわ。

「キャーーーーっ! なんで、もっと早く起こさないのよーーっ!!」

まったくもう、アイツはもうちょっと人の起こし方ってのを、身に付ける必要があるわ
ね。毎朝、朝シャンもゆっくりできないじゃない。

ドタバタ。ドタバタ。

制服は・・・制服・・・あれ? ん?
あーーーっ! アタシ、制服のまま寝てたじゃないっ!

やだー、しわだらけじゃないのぉ。

ブラウスと下着を慌てて着替えて、洗面所へ駆け込んで朝シャン。こんな時、シャンプ
ードレッサーって便利なのよねぇ。

「もうっ。時間無いんだから、髪の毛なんか洗うなよぉ。」

「うっさいわねぇっ! アンタがもっと早く起こさないから、いけないんでしょうがっ!」

「だって、アスカが・・・ぶちぶち。」

「なんですってーーっ!?」

「もごもご。」

まったくもう、いい加減女の子の気持ちくらいわかってよねっ!
汗臭い髪で学校行けるわけないじゃないっ!
髪って、一番気にする所なんだからねっ!

やっと身だしなみもそれなりに整ったし、朝ご飯を食べて・・・って、もうそんな時間
無いわよっ!

「時間無いから、早く行こうよ。」

「わかってるわよっ!」

はーぁ、今日も朝ご飯にありつけなかったわ。
明日こそは、ちゃんと食べてやるんだからっ。
食べれなかった朝食は、10倍にして・・・って、そんなことしたら太っちゃうわよ。

なんだかんだで、今日も走って学校へ行くことになっちゃった。

<通学路>

毎朝、毎朝、これじゃぁ、体が持たないわよぉ。

「はっはっ。」

そうそう、今日はコイツのバースデーよねぇ。
どうしよっかなぁ・・・っていっても、何も用意してないけどねぇ。

「アスカぁ、今日さぁ・・・。」

ん? バースデープレゼントのことかな?

「英語のテストだろ? 昨日ネルフへ行ってたから、勉強できなかったんだ。出そうな
  所教えてよ。」

「そーんなの、自分でやらなきゃ意味ないじゃない。」

「そりゃ、そうだけどさぁ。」

「だーめ、教えてあげない。」

「けちっ。」

今日は、英語のテストより大事なイベントがあるでしょうがっ!
どうして、プレゼント欲しいって一言が言えないのかしらぁ?
欲しいって言われたら、アタシだって考えてあげてもいいのにねぇ。

その後、他に何か言ってくるんじゃないかって気にしてたけど、走ってるんだからお喋
りしてる余裕は無いわよねぇ。

<学校>

滑り込みセーーーフっ!
もう、朝からへとへとよぉ。

教室に入ると同時に、チャイムが鳴ったのよねぇ。あと1分遅かったら、遅刻してたじ
ゃない。よくもまぁ、毎日こんなぎりぎりで間に合うもんだわ。

ん? アイツ早速、英語の勉強してる?
今更やったって、手遅れなのにねぇ。
しゃーない。ヤマを教えてやるか。

机の上に置いてある赤いノートPCに向かって、出そうなところをアイツにメールして
やったの。

ん? 気付いたみたいね。振り返って笑ってるわ。
こんな甘い顔してやんのも、今回だけなんだからねっ!


                        ●

4時間目の英語のテスト。

あれ?
なにこれ?

あーーーーーーーーーーーーっ! 出題範囲、間違えちゃった。
アタシは英語なんて日本語より楽なくらいだから、どうでもいいんだけどねぇ。

ちらっ。

あっちゃーー。アイツ、泣きそうな顔してるじゃない。
ま、これも日頃の鍛錬を怠った報いってやつね。
しーーらないっっと。

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                        :
                        :

「アスカぁ、ひどいじゃないかぁ。」

英語の授業が終わって放課後・・・今日は半日授業なの・・・。

「アンタが、勉強してないから悪いんでしょーが。」

「何も、嘘教えなくても。」

「ちょいまちっ、嘘じゃなくて間違っただけよ。そこんとこ、間違えないでよね。」

「一緒だよ。」

「一緒じゃないわよ。悪意があったか無かったかの違いだけでも、大きな差ってもんだ
  わ。」

「そうだけど・・・。じゃ、アスカはどうやって勉強したのさ。」

「アタシが? 英語を? 勉強? アハハハハハッ! するわけないじゃんっ!」

「・・・・・・。」

その時、周りのクラスメートがみんな帰る準備をしてる中、不意にコイツの友達の鈴原
っていういつもジャージを着てる奴と相田って奴が、近寄って来たの。

「よぉ、お前今日誕生日やろ?」

「俺とトウジで、安いもんだけどプレゼント買ってきたんだ。やるよ。」

「え? いいの?」

「いっつもエヴァに乗って大変やろうからなぁ。たまにはええやろ、こういうのも。」

「ありがとう。なにかな?」

「大したもんちゃうから、開けてもええで。」

なにさっ、自分達だけでコイツにプレゼント渡してさっ。
フンっ!

会話がそれちゃったし、コイツも鈴原や相田とプレゼントのことで盛り上がり出したか
ら、アタシは帰る用意をしに自分の席に戻ったの。

なによ。あーんな安そうなプレゼントで喜んじゃってさっ。

やっぱり、アイツもプレゼント欲しかったのかなぁ。
それならそうと、もっと早く言いなさいよねぇ。
やんなっちゃうわ。

そう思いながらも、何かあげれるものが無いかと机の中とかカバンの中見てみたけど、
やっぱりなーんも無いのよねぇ。

いいや。どうせ、あげるつもりなんてなかったし。
鈴原達に貰えただけで、十分でしょ。

自分の使ってる鉛筆やノートを手に取ってみたけど、どれもプレゼントになんかならな
いし・・・そのままカバンにしまって帰る用意をしたの。

「アスカ? 帰ろうか?」

ん? もう、アイツらとの話は終わったの?
なによ。嬉しそうな顔しちゃってさっ。

「そうね。」

ちょっと、ぶすーっとしながら素っ気無い返事を返してやったわ。

「どうしたの?」

「なによ!」

「なんか、ご機嫌斜めみたいだからさ。」

「折角英語のヤマ教えてやったのに、文句ばっかり言うからよっ!」

「だって・・・。」

「そんなこと言うんだったら、もう教えてあげないわよっ!」

「ごめん・・・。」

まったくぅ、コイツはどうしてすぐに謝るのかしらねぇ。
ま、アタシには悪いところなんてこれっぽっちも無いけどねぇ。

「私も帰るから・・・。」

「ムっ!」

どうして、ファーストが近寄ってくんのよっ!
いつも、1人で帰ってるくせにっ!!!

ただでさえ虫の居所が悪かったのに、ファーストが近寄ってきたから余計にムカムカし
てくるじゃないっ!

「そうだね。じゃ一緒に帰ろうか。」

「ええ。」

なんで、誘うのよーっ!
まったく。何考えてるのよ、コイツはぁっ!

「アスカもいいだろ?」

ちょっとぉ、こっちに振らないでよねぇっ!

「いいけど?」

そう言うしかないじゃないのよ。
しゃーない。いつも1人で帰ってるんだから、今日くらい一緒に帰ってやるか。

アタシ達は、3人で通学路を家へ帰って行くことにしたの。どうせ、ファーストは途中
でさよならだから、いっか。

<通学路>

学校を出てから、しばらく無言で歩いてたの。
見てみなさいよ。ファーストなんか誘うから、会話が出てこないじゃない。

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                        :
                        :

その曲がり角で、ファーストは曲がっていくのよねぇ。

「あの・・・。」

「何?」

なによぉ。さっさと曲がりなさいよね。
今日は、よく喋るわねぇ。

「今日。誕生日。」

「え? あ、うん。そうなんだ。よく知ってね。」

むーーーーーっ! なんで、コイツまで知ってるのよーっ!
何よーーっ! 余計なことするんじゃないわよっ!

「個人記録にあったから。」

「そっか。」

「こういう時、プレゼントをあげるのよね。」

「あ、そんなのいいよ。べつに。」

「ううん。これ。」

「え?」

ちょっとっ! なによっ! なによっ! なによっ! なによっ!
なによそれーーーーーーーーっ!

「誕生日。おめでとう。」

「あ、ありがとう・・・。綾波がプレゼントくれるなんて、嬉しいな。」

「そう・・・。」

「開けてみていいかな?」

「ええ。」

なんで、ファーストまでっ! なんで? なんでなのよっ!?

「わーーーっ。綺麗なハンカチだね。」

「何をあげていいのか、わからなくて・・・。ごめんなさい。」

「嬉しいよ。ありがとう。」

なにさっ! なにさっ!
ファーストまでっ!

やっぱり、アタシもプレゼント用意しとけばよかった・・・。
どうしよう・・・。

アタシもプレゼントあげたいっ!

今、あげたいっ!

ファーストがいる前でっ!

今っ!

今、あげたいっ!

今、あげれるものって・・・。

アタシは、カバンの中をゴソゴソと漁ってみる。なにもない・・・。

「アスカ? 何してるの?」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」

みてなさいよーーっ! ファーストっ!
アタシだって、アタシだって、アタシだってっ!

ゴソゴソゴソ。

何もない・・・。

ハッ! そうだわっ!

ブチっ!

い、いったーーーーーっ!

アタシは、自分の髪にいっつもくっついてる真っ赤なインターフェースヘッドセットの
片方を、急いでもぎとったの。

慌ててたから、髪の毛が抜けちゃって・・・。

「これっ!」

ぎゅっと、インターフェースヘッドセットを握ると、その握りこぶしを固めた手をぐい
とアイツに突き付けたの。

「なにこれ?」

「プレゼントよっ!」

「へっ?」

「プレゼントよっ! プレゼントっ! ほらっ! プレゼントっ!」

「あ、ありがとう。」

アイツは、ちょっと躊躇したみたいだけど、にこりとアタシに微笑み掛けると受け取っ
てくれた。

アタシ・・・何してんのよっ!?

か、顔が急に熱くなってきちゃったーーーっ!

は、はずかしい・・・。

「良かったわね。」

ファーストは、それだけ言って曲がり角を曲がっていったの。アタシとコイツの2人だ
け、その曲がり角に残されちゃった。

うーーーー、はずかしい・・・。

どうして、こんなことしちゃったんだろう。

「これ、使わせて貰うよ。」

「と、当然よ、あげたんだから。」

「でも、アスカはどうするの?」

「いいのよ。また、リツコに作って貰うから。」

ちょっとぉ、あんまり顔みないでよぉ。絶対、赤い・・・。

「でも、髪の毛ぐちゃぐちゃだよ?」

自分の頭に手を乗せると、いつもインターフェースヘッドセットで束ねている髪が、だ
らしなく垂れ下がってる。

うーーーーー、アタシ、何してんのよぉ・・・。
はずかしいよぉ。

慌てて、髪の毛を手でゴシゴシとといてみたけど、止めてた物がなくなっちゃったから、
直るわけないのよね・・・。

うーーーーーーー。

「これ、使えば?」

「え?」

アイツは、自分のカバンをごそごそと漁ると、1つの小さな物を出してアタシに手渡し
てくれたの。

「これって。」

「もう、いらないし。」

「うん・・・。」

コイツのインターフェースヘッドセット・・・。

「あのさぁ。」

アタシ・・・何を?

「あのさぁ。」

「なに?」

「あのぉ・・・。」

そう・・・。そうなの。まだ言ってなかった一言が・・・。

「あのさっ!」

「なに?」

恥ずかしくて。なぜだか、とっても恥ずかしくて・・・。アタシは、走り出しながら顔
を隠して、本当に短くて簡単な一言を・・・。



言いたくて、言えなかった、なんでもない一言を・・・。



心を込めて・・・。



想いを隠して・・・。



                「ハッピーバースデーっ!! シーンジっ!」

fin.
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