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きゅんきゅんアスカちゃん
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<ミサトのマンション>

ユニゾンの訓練が切っ掛けとなりここで暮らし始めた頃からだろうか、アスカは体の調
子が悪くなってきた。ときおり胸が苦しくなる。

医者へ行っても異常無しとの診断。5件医者を変えたが結果は同じ。おかしい・・・本
当に胸が痛いのに・・・。

しかし、医者にこの病を治すことは、古より不可能とされているのだから仕方がない。
アスカは、初めて経験する恋の病・・・きゅんと締め付ける胸の痛みに戸惑っていた。

「んーーーー。」

日曜日はいつもより少し早いお目覚め。両手に軽く握り拳を作り全身で伸びをすると気
持ち良い。カーテンを開けると、空いっぱいのブルー。白い雲がぷっかりぷっかり。

「今日もいい天気ねっ! 日曜はこうでなくちゃっ!」

元気一杯に飛び起きると、洋服ダンスから今日のお気に入りを選ぶ。どうやらお目に適
ったのは、グリーンのワンピース。かっわい。

うん、これこれ。
最近これ、着てなかったし。

ちょっとお洒落気分。選んだワンピースをハンガーから取り、腰の所で2つに折って手
に掛けると、朝シャンへ向かう準備。

「アスカぁ。ご飯できたよー。まだ寝てるのぉ?」

きゅん。

シンジの声がした時だった。また今日も、胸に締め付ける様な痛みを感じ、指の先まで
電気が走ったアスカは、パサリと服を落とす。

ドキドキドキ。

ま、まただわ・・・。
お医者さんも病気じゃないって言うし・・・。
でも、やっぱり最近変よ。

痛む胸を押さえてしばらくじっとしていると、早鐘を打っていた心臓も落ち着いてきた。
ひとまず一安心。落としてしまったワンピースを拾い上げ、リビングへと出て行く。

「早く、お風呂出てね。ご飯冷めちゃうから。」

きゅんきゅんっ。

食事の用意をしていたシンジが、笑顔で振り返る。その顔を見た途端、手の指の先から
脳天まで電流が流れた様になる。

「わ、わかってるわよっ!!!」

またしても心臓はドキドキフル回転。顔は熱くなってしまい、何がなんだかわからない。
なぜか隠れてしまいたい気持ち。早くこの場から逃げ出したいアスカは、必要以上に大
声を出して、バスルームへ逃げ込む。

ドキドキドキ。

ま、まずいわ。
心臓が変。
破裂しそう。
苦しい・・・。

アコーディオンカーテンを閉め、バスルームの前でパジャマ代わりのホットパンツとタ
ンクトップを脱ぐ。自分の胸を押さえると凄い音。その鼓動に焦る。

そうだわっ!
とにかく冷やさなくちゃっ!

大急ぎでバスルームへ飛び込むと、冷た目のお湯で全身を冷やす。次第に落ち着きを取
り戻して来る。

ご飯だって言ってたわね。
早く上がらなくちゃ。

手早く朝シャンを済ませ、先程選んだワンピースをその身に纏う。ドライヤーは、ご飯
の後。タオルを巻いておけば良い。

身嗜みもある程度整え終わり、ダイニングテーブルで朝食をパクパク。そこへ、ミサト
の食事を作り終わったシンジが対面に座る。顔を上げると、シンジの笑顔。素敵な笑顔。

きゅんっ!

まただ・・・。この頃、食事の時になると、胸の辺り痛くなる。ここでアスカはその原
因にようやく思い至った。これは胸が悪いんじゃなく、実は胃が悪いのではないかと。

今度お医者さんに行ったら・・・。
胃が悪いかもしれないって言ってみよう・・・。

「あのさ、アスカ?」

きゅん。

また、胸が痛い・・・。
どうしよう。

「なによっ!?」

「今日、暇かな?」

「別に用事は無いけど?」

胸が苦しい上に、わけもわからず視線を上げることがなんだか恥かしくてできない。そ
れでもなんとか平静を装おうと、ぶっきらぼうに言葉を返すのが精一杯。

「昨日、新聞屋さんが映画の券置いてったんだ。」

「ふーん。」

「2枚あるから、一緒に行かない?」

「!!!!!!」

きゅんっ。きゅんっ。きゅんっ。

もう駄目だ。強烈に苦しくなって来た。苦しい! 苦しい! 苦しい苦しい・・・嬉しい
嬉しい嬉しい嬉しい・・・ん? なんだかよくわからないが、まぁいい。何の映画か知
らないが、その映画は見たかったのだから。

「どうしてもってんなら、べ、べつに・・・いいけど。」

その後、朝食がどんな味だったか、それ以前に何を食べたのかすら覚えていない。ただ
ただ心は映画に早り、俯いたまま顔を上げることすらできずに、急いで口に掻き込んで
いた様な気がする。

<繁華街>

シンジと並んで映画に向かう。折角見たかった映画なのに、今日は体調が悪い。胸がひ
っきりなしに痛くって。

「天気が良くて良かったね。」

きゅんっ。

「面白い映画だったらいいね。」

きゅんっ。きゅんっ。

駄目だ。胸が苦しい。早く映画館に入って、ゆっくり休憩しなければ心臓病になるかも
しれない。

「あった。この映画だ。なんか、恋愛物みたいだなぁ。」

この映画だったんだ・・・。
いいじゃん。いいじゃん。

それは上映してからかなり経ち2流の映画館に落ちてはいるが、封切り当初はかなりセ
ンセーショナルな悲しい恋愛物語ということで、話題を呼んだ作品だった。

「これだけど・・いい?」

「ええ。いいわよ。」

「うーーん。」

シンジはどうも乗り気でない様だが、入場券を渡し中へと入って行く。客も少なくまば
らにいるだけなので、ゆっくりしてても十分座れるだろう。
2人はポップコーンとパンフレットだけ1つ買い、映画館の中へと入って行った。

この映画、見たかったのよねぇ。
かなり話題になったし。

じーーっと映画を見るアスカ。なかなか面白い。気付かぬうちに、映画館に入るまでド
キドキしていた心臓も落ち着いており、映画に集中できる。

そうそう、ポップコーンがあったんだ。

椅子の間に挟んであったポップコーンに手を伸ばした時、同じタイミングでシンジもポ
ップコーンを取ろうとした。シンジに握られてしまうアスカの手。

きゅんっ!

心臓の鼓動が一気に跳ね上がった。

「あっ、ごめん。」

「も、もうっ! アタシの、ポポポ、ポップコーン取らないでよっ!」

その後、一生懸命映画に集中しようとするが、意識は先程シンジに握られた手の方へば
かりいってしまい、今誰が何を演じているのかさっぱり頭に入ってこない。

どうしよう。
苦しくなって来た。
せっかくいいとこなのに・・・。
せっかくいいとこなのに・・・。

映画館が暗くて良かった。なぜだかわからないが、今シンジに顔を見られるのが、なん
だか嫌だ。恥かしい。

映画見なくちゃ・・・。
映画見なくちゃ・・・。

高鳴る胸を撫でる様に軽く摩りながら、映画に意識を集中させていると、ようやく落ち
着きストーリーがわかるようになってきた。その時。

ぽて。

「ぐぅぅぅぅぅ。」

恋愛映画が嫌いなシンジは眠ってしまった様だ。小さないびきをかきながら、アスカの
肩に頭を乗せ、ぽてりと凭れ掛かって来ている。

きゅんっ!

せっかく落ち着いた心臓が爆発しそうになる。横に少し振り向くと、そこにはシンジの
寝顔のアップ。

ドキドキドキドキドキドキ!!

全身がビリビリとしびれる。熱まで出て来た様だ。心臓は飛び出んばかりに爆音を上げ
ている。

苦しい。苦しい。苦しい。
言葉1つ言えないくらいに苦しい。

『しくしくしく。』

周りの席から女性のすすり泣く声が時折聞こえて来る。いよいよ映画も有名になった主
人公が恋人の首を締めるという、悲しいクライマックスシーンなのだろう。

ドキドキドキドキドキドキ!!

しかし、真っ正面のスクリーンに視線を向けてはいるが、全身が硬直してしまいその映
像は瞳の中には届かない。

ドキドキドキドキドキドキ!!

真横にはシンジの顔。視界に映る景色は真っ白。頭の中も真っ白。感じるのは、ただ胸
を締め付ける痛みのみ。

きゅん。きゅん。きゅん。

とうとうアスカは、さっぱり映画の内容がわからないまま、映画館を出て行くことにな
ってしまった。

<繁華街>

「面白い映画だったね。」

「そ、そうね。」

映画館を出た2人は、辺り障りの無い会話を交わすがどちらも映画の内容については、
触れ様としない。

その後、アスカは・・・。

昼食を食べながら、ちらりを顔を上げるとシンジの笑顔。

きゅん。

ショッピングをしながら、互いの手が触れ合うと。

どきどき。

楽しくもあり、苦しくもある今日という日曜日を過ごして行った。

そして早くも夕方。そろそろ家に帰って夕食の準備をしなければならない。2人は電車
に乗って家路に付く。夕日が綺麗。

<電車>

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

電車到着。運悪く混雑する時間帯に重なってしまった様だ。満員電車が止まり扉が開く。
アスカはシンジに手を引かれ、人を掻き分け奥へ奥へと分け入る。

「こっち来て。」

「えっ?」

手を引っ張られたアスカは、電車の壁に背中を押し付けられ、シンジの両腕の中に収ま
る。目の前には、肩ごしに両手を壁に付きアスカ1人分の空間を頑張って作っているシ
ンジの顔。

きゅんっ。

シンジの顔がわずか数センチの所にある。自分を守ろうとしてくれている手が、電車が
揺れる度に髪をくすぐる。

きゅん。きゅん。

肌の温もりを感じられる程の位置で身を寄せ合う2人。わけもなく恥かしくて仕方がな
く、俯いてしまった顔が上げられない。

「凄い・・・人ね。」

なんでも良かった。何か言葉を言わなければ、その沈黙に耐え切れなくなり思い付きで
絞り出す言葉。

「そうだね。」

腕に血管を浮かべて自分を守りつつ、すぐ目の前でシンジがニコリと笑みを浮かべる。

きゅんっ。

鼓動が高鳴る。息苦しい。顔が熱い。満員電車のせいだろうか?

ガシャー。

電車のドアが開く。それと同時に、更にに多くの人が乗って来て。

ぎゅーーーーーー。

さすがにシンジも耐え切れなくなった様で、べしゃりと潰される。潰されて。アスカに
体を押しつけられて。全身密着。顔まで密着。

ドッッッキーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!

跳ね上がる鼓動。心臓が止まるかと思った。これはまずい。末期症状かもしれない。早
く降りる駅に付いてくれなければ、本当に死んでしまう。

早くついてっ! 早くついてっ! 早くついてっ! 早くついてっ!
でも、このままでもいいかもいいかも・・・。

心臓が暴れ狂っている。

ドキャンっ! バキャンっ! ドキャンっ! バキャンっ!

ま、まずいわ。
こんなに苦しくなったの初めて。
シ、シンジぃぃ、アタシ死んじゃうよぉぉぉ。

「アスカ、大丈夫?」

紙切れ一枚も入らないくらいに体を密着させたシンジが、顔を真っ赤にしあまりにも苦
しそうにしているアスカを心配して声を掛けて来る。

ドキャンっ! バキャンっ! ドキャンっ! バキャンっ!

大丈夫じゃないっ! 大丈夫じゃないっ! 大丈夫じゃないっ! 大丈夫じゃないっ!
でも、大丈夫かもかも・・・。

コクコク。

今声を出すと裏返ってしまいそうなので、コクコクと頷くことが精一杯。

「もうちょっと頑張って。次の駅で、人降りるし。楽になるよ。」

「えっ?」

きゅん・・・。

なんだか、胸が苦しい。さっき迄とは違う感じの苦しさ。

<家の近く>

最寄りの駅に付き、ミサトのマンションへ向かって歩き出す。

はぁー。今日はなんだか楽しかったなぁ。
もっと、体調が良かったらよかったんだけど・・・。

1日中ずっと体調が悪く、胸の痛みに困っていたアスカだったが、思い返してみると、
今日は楽しかった様に思える。

「さ、早く帰らないと、ご飯が間に合わないよ。」

「・・・・・・そうね。」

駅の周りに立ち並ぶ家の屋根の向こうに、自分達の帰るマンションが見えて来る。いつ
も見慣れた街の風景。

そっか・・・。
もうおしまいなのね。

きゅん・・・。

胸が締め付けられる。電車の中でも感じた、切ない様な気持ちになる胸の締め付け。な
んだかイヤな・・・悲しい気持ち。

「ね、ねぇ、シンジ? もう帰るの?」

「もうって。今帰ってるとこじゃないか。」

きゅん・・・。

昼間感じていたもとは全然違う。胸に突き刺さる様な痛み。

「ね、ねぇ、シンジ? 次はいつ映画の券貰えるの?」

「新聞屋さん、3ヶ月に1度くらい持って来てくれるけどね。どうだろうね。」

きゅん・・・。

3ヶ月に1度・・・。次はまだまだ先。徐々に徐々に俯いてしまうアスカの顔。それは、
さっきまで感じていたなんだか恥ずかしいものではなく、寂しくて寂しくて。

「疲れた。」

急にぼそりと呟いて立ち止まる。

「え? どうしたの?」

「満員電車で、疲れた。」

「凄い人だったね。」

「公園で、休みたい。」

ふてくされ気味に、うつむき加減でボソボソ言いながら、歩こうとしない。歩いたら家
はすぐそこ。歩きたくない。

「公園に寄るんなら、家に帰った方がいいよ。」

「疲れた。」

「どうしたの?」

「歩けない。」

アスカのほっぺたが、ぷっくり膨らんでいる。

「公園まで歩けるんなら、家に帰れるじゃないか。」

「公園なら行ける。」

「・・・・・・。」

なんだかアスカの様子がおかしい。しかし、あまり遅くなるとミサトのご飯が間に合わ
ない。帰って来て摘みが無いと暴れるかもしれない。

「疲れた・・・。」

「はぁ〜。」

てくてくとシンジが近付いて来る。

「疲れた・・・。」

ブツブツとそればかり言っている。仕方が無い。

「じゃ、ちょっと公園で休憩していこうか?」

「え?」

ふてくされていた顔を上げると、そこにはシンジの笑顔があった。

嬉しいっ! 嬉しいっ! 嬉しいっ! 嬉しいっ!

笑顔に戻ったアスカは、スキップしたい気分でいそいそと公園に向かう。疲れて歩けな
かったのが嘘の様だ。

公園が近付いて来る。

アスカはふと考えた。どうしてこんな公園に来たかったんだろう。どうして、家に帰る
のがイヤだったんだろう?

わからない・・・。

だけど、家に帰ってしまうのがなんだか勿体無くて。家が近付くに連れ、胸がどんどん
苦しくなって。

<公園>

アスカはベンチに座る。シンジの隣に腰を下ろす。

学校帰りに見慣れた公園。そのはずなのに、なんだかいつもと違って見える。

どうして、こんな所へ来たかったんだろう・・・。
ただの公園なのに。
見慣れた公園なのに・・・。

「どう? ちょっとは疲れとれた?」

「うん。」

アタシ疲れてたの?
なんで、あんなこと言ったんだろう。

チャリン。チャリン。

2人の前を自転車に乗った子供が、公園を横切って走って行く。もうみんな家へ帰る時
間。

そうよね。
もう帰んなくちゃ。

「よっ!」

アスカは飛び跳ねると、ベンチの前に立ち、座っているシンジの顔を見下ろす。

「いつまでボケボケっとしてんのよ。帰るわよ。」

「なんだよそれ・・・。」

何がなんだかわからず立ち上がろうとするシンジ。その時、また別の子供が自転車に乗
りアスカの後ろを通り過ぎる。

ドン☆

子供がアスカの背中にぶつかる。よろけるアスカ。前のめりに転ぶ。立ち上がりかけて
いたシンジに覆い被さり、ベンチに倒れ込む。

ドスン。

「いたたたたたたた。酷いなぁもう。」

急にアスカに倒れ込まれて、ベンチに尻餅をつきながら、シンジは走り去っていく悪ガ
キっぽい男の子を見る。

アスカ、目をぱちくり。

気がついたらシンジの腰に手を回し、抱き着いて倒れている自分を発見。

「大丈夫? 怪我無い?」

頭の上から聞こえてくるシンジの声。恐る恐る顔を上げると、すぐ目の前にシンジの顔。
両手で抱きついてしまったシンジの体から、鼓動を感じる。

きゅんっ。

ぼーーっとその顔を見上げてしまう。顔が熱い。胸が痛い。でも、切ない痛みじゃない。
なんだか心地良い痛み。

「どうしたの?」

「え、えっ!?」

声を掛けられ我に帰ったアスカは、マジマジとシンジの顔をじっと見上げてしまってい
た自分に気付く。

きゅんっ! きゅんっ! きゅんっ!

顔が火が出そうな程熱い。慌てて飛び起きるアスカ。心臓がドキドキする。

「大丈夫?」

「だ、だいじょうぶよっ。」

「そう。じゃ、行こうか。」

シンジも立ち上がり歩き出す。やはり帰るとなると、寂しい気持ちになるが、もう帰ら
なければならない。

「ねぇ、何か見たい映画あるの?」

「え?」

「だって、さっき映画の券とかって・・・。」

「あっ、う、うん・・。」

「券が無くても、また行こうか?」

シンジが振り向いて微笑み掛けて来る。

きゅんっ。

また、映画・・・。
映画スキ・・・。

「何が見たいの?」

「なんでもいい・・・。」

「へ? 見たい映画があったんじゃなかったの?」

「なんでもいいの・・・。」

「?????」

今日という日は、今日で終わらない。明日も明後日もそのまた次も、また今日という日
はやってくる。

横を振り向くとシンジの顔。
肩を寄せ合い歩くシンジの顔。

きゅんっ。

胸が苦しい。
いてもたってもいられない程、胸が苦しい。

きゅんっ。

アスカは思った。

次は体調を完璧にして、映画に行かなくっちゃ!!!

<病院>

「だからっ! 胸が痛いのよっ!」

「病気じゃないですから、気にしないでください。」

「本当に痛いって言ってるでしょっ! きゅーーっと締め付けられるの。」

「ですから・・・。それは、恋の病と言って・・・。」

「やっぱり、病気なんじゃないっ!」

「何度も言ってる様にですね・・・。」

「シンジの笑った顔を見るとねっ! こう、きゅんきゅんってっ!」

「ですから・・・・・。ちょっとはわたしの話も聞いて・・・。」

「シンジと一緒に歩いてると、ドキドキドキってっ!」

「・・・・・・あの・・・。」

「シンジに抱き付かれたら、もうドキューーーーンって感じよぉぉっ!」

両手を広げて、その時の気持ちを必死で表現しようとするアスカ。

「・・・・・・。」

もう何も言う気がしない医者。

「おーーーい、誰かぁぁぁっ!」

アスカのカルテを、ごみ箱に捨てる。

「ちょっとっ! アンタ聞いてるのっ!」

「はやくコレ連れ出してくれっ! 代金はいらんっ!」

「ちょっとっ! アンタっ! アンタっ!」

看護婦に追い出されるアスカ。

「このヤブっ! アタシが死んでもいいのっ! アンタっ! アンタっ!!!」

またここでも、禄に診察して貰えなかった。
日本の医者はヤブ医者ばかりだと、しみじみ思うアスカであった。

fin.
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