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LONGER THAN FOREVER
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ロンギヌスの槍に貫かれるた時、可動時間の限界に達し弐号機が停止した。
弐号機の周りで、再起動したエヴァシリーズが、弐号機をめがけて攻撃を開始する。

「動け! 動け!」

どうにかして、弐号機を起動させようとするが、微動だにしない。目前まで群れをなし
たエヴァシリーズが迫ってくる。

「アスカーーーー!!!」

「シンジ!!!??」

その時、エヴァシリーズとアスカの間に初号機が割って入った。

「うわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

自分の身を犠牲にしても、動けないアスカを守りながら戦う。

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そして、最後の戦いは終わった。

                        ●

あの戦いの後シンジは、2ヶ月の間意識が戻らず、集中治療室で入院するという重傷を
負った。その後、さらに1ヶ月の入院生活を経て、現在は、自宅でリハビリを行ってい
る。

この数ヶ月の間、アスカは一人でシンジの面倒を見てきた。最初は、自分を守る為に命
を捨てようとしてくれたことに対して負い目を感じてのことであったが、世話をするう
ちに心惹かれていることに気付くこととなる。

あの戦いの痛手が酷く体の自由がきかないシンジは、生活のほとんどをアスカに頼る形
となり、逆に負い目すら感じる日々を過ごしていた。

<ミサトのマンション>

「シンジーーーーご飯ができたわよーーーーーー。」

「わかった。今行くから。」

毎朝聞く、アスカの明るい呼び声。
部屋から、壁伝いにゆっくりと歩いていく。まだ足が完全に回復していない。

「わぁ、今日は豆腐の味噌汁なんだ。」

「好きでしょ。」

「うん。」

「食べましょうか。」

「ごめん・・・。もう少し歩けるようになったら、家事もできるようになるから。」

「余計なこと気にしない。気にしない
  さっさと治しちゃいなさい。はい、ご飯。」

お茶碗にご飯を入れてあげ、笑顔で差し出す。シンジの世話をすることが、今一番の生
き甲斐。

「ありがとう。」

「ねぇ。今日、いい天気だから、散歩に行きましょうか。」

「まだ・・・あまり歩けないから。」

「だからよ。家の中だけでリハビリしてたって、なかなか回復しないって。いいよね?」

「そうだね。」

本日の予定も決定。急いで朝食を掻き込む。外出なんて、数ヶ月振りのことだろう。

「そうだ!」

なにかを閃いたようだ。ポンと手を叩いて、お日様のような笑顔をアスカが見せる。

「お弁当作って行きましょ。」

「それいいな。外でご飯食べるのって、久しぶりだね。」

「頑張って作るから期待してて!」

それからのアスカは、鼻歌を歌いながらご機嫌そのもの。弁当を用意したので出発が遅
れたが、昼前には家を出ることができた。

<川辺の自然公園>

「ごめん、アスカ。」

「いいから、しっかり掴まってなさいよ。」

アスカの肩を借りながら、松葉杖をついてゆっくりと歩く。

「いい天気ねぇ。川辺に行きましょうか。」

「それでいいよ。」

肩を寄り添わせてゆっくりと土手の階段を降り、暖かくお日様に暖められた河川敷の芝
生の上に腰を降ろす。

「どう? 久しぶりに外の空気を味わった気分は。」

「気持ちいいよ。」

「だいぶ回復してきてるじゃん。もうちょっとで、1人で何処へでも行けるようになる
  って。」

「そうだね。ちゃんと回復したら、やりたいこともあるから。」

「何?」

「その時になったら言うよ。」

「何よ! 気になるじゃない!!」

「もうちょっと、待ってて・・・。」

そう言いながら、よろよろと立つ。だがまだおぼつかない足取りで、すぐに転びそうに
なってしまう。

「あ!」

慌ててアスカが肩を支える。

「もう! 急に立ち上がったら危ないじゃない!!」

少し怒っているようだ。

「いいんだ。いつまでも甘えているわけにいかないから、ちゃんとリハビリしなくちゃ。」

シンジはアスカから離れると、ふらつきながらもゆっくりと芝生の上を歩いて行く。

どうしてよ・・・。アタシが、ちゃんと世話してあげてるのに・・・。
うっとうしいの? 迷惑なの?

自分がいなければ何もできなかったシンジ。世話をすることが、アスカの愛情表現であ
り、恩返しだった。しかし、今、シンジはアスカから独立しようとしている。

何よ! ここまでこれたのも、アタシのお陰じゃないの!
自分でできるようになったら、もうアタシは用済みってわけ?

シンジが1人で歩いている姿を見ると、涙がこぼれそうになる。このまま自分の元から
何処か遠くへ行ってしまいそうで、寂しくて、不安で、切なくて・・・。

「アスカーー! この辺奇麗だよ。お弁当にしようよ!」

「わかった!!」

それでも、まだ自分を呼んでくれている。アスカは、バスケットを持って駆け寄って行
く。

「外で食べるお弁当が、こんなに美味しいなんて、初めて思ったよ。」

「また、今度も来ましょ。」

「うん。もう少しで回復しそうだから、今度はぼくがお弁当を作るよ。」

「・・・・・・・・・・そうね。」

徐々に回復していくシンジの体が、恨めしい。ずっと今のまま、こんな時間が続いたら
いいのに。

「さっ、どんどん食べてね。」

「おいしいや。さすがはアスカだ。」

「アンタは、アタシの手料理が食べれるんだから、世界一の幸せ物よ!」

「そうだね。」

「なんなら、ずっと作ってあげてもいいのよ。」

「もうちょっとしたら、家事くらいできるようになるから、そうしたら、ぼくも家事す
  るよ。」

「・・・・・・・・・・冗談よ、冗談に決まってるでしょ!! うちは当番制なんだか
  ら、早く回復してよね!!!」

「ごめん・・・頑張るよ。」

その後、シンジは一人で歩く練習をしたり、物を投げる練習などを夕方まで繰り返した。

<ミサトのマンション>

「さって、できたわよ。」

晩御飯の用意ができたので振り向くと、さすがに疲れたのか、シンジが横になって眠っ
ていた。

寝ちゃったのか・・・。あれだけ動いたら疲れるわよね。

アスカは、タオルケットを自分の部屋から持ってくると、シンジの上に掛けた。

あとちょっとで、こんな世話をすることも無くなるのね。
フフ・・・いいことじゃない。
何を悩んでるのよ・・・アタシ。

次第に回復するシンジの体力。それに伴い失われていく自分の存在理由。
シンジの隣で横になり、寝顔をしばらく見つめるのだった。

翌日。

「シンジーー! ご飯ができたわよーー!」

朝食の用意もできたので、少し大きめの声で呼びかけるが、なぜか全く返事が無い。

「シンジーーー!!!」

少しボリュームを上げ、何度か呼ぶものの、呼べども呼べども一向に返事が無い。

どうしたのかしら?
昨日は早く寝たのに・・・。

「シンジ? 開けるわよ。」

ガラ。

「!!!」

そこにはこれまでにない光景が広がっていた。1人で自由に動くこともままならなかっ
たシンジは、いつも部屋にいたはずなのに・・・そこにその姿が無い。

「シンジ!!!!」

風呂やトイレを探すが、どこにも見当たらない。まさかと思い玄関に行くと、靴が無く
なっているではないか。

「まさか! あのバカ!」

まだよろよろ」歩けるようになった程度である。交通量の多い所を、1人で歩ける状態
では無い。

いてもたってもいられず、脱兎のごとく駆け出した。

どーせ、たいして遠くには行けないわ。
この近辺にいるはず。

エレベータなんか待っている心の余裕はなかった。一段飛ばしで階段を駆け下り、マン
ションの外に飛び出す。

「あ、アスカ。どうしたの?」

そこには、手すりに掴まりながら、歩く練習をしているシンジの姿が。

はぁぁ・・・・。

シンジの無事な姿を見て、腰が抜けそうになる。

「アンタ!!! 何してるのよ!!!」

無事だということがわかると、無性に腹が立ってくる。

「え? リハビリ。もう、1人でもマンションの周りくらいなら大丈夫みたいだから。
  あまり、迷惑かけたくないし。それより、アスカ、何しに来たの?」

「何しに来たって・・・・なんでも無いわよ!!! ご飯なんだから、さっさと戻って
  きてよね!!!!!」

エレベーターに1人で乗り、カンカンに怒って上がって行く。そのアスカは、シンジに
心配をかけられた怒りより、寂しさでいっぱいだった。

そう・・・。
もう、リハビリも一人でできるのね。
もう、アタシなんて必要無いのね。

目尻から、水滴が流れる。

「クッ!」

手で涙を拭き取ると、なんでもないことだと自分に言い聞かせるように、精悍な顔で正
面を睨み付けるアスカ。

シンジが回復していってるのよ!!!
アタシ、何考えてるのよ!!!
喜ばなきゃ!!!

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                        :
                        :

あれからシンジは毎日必死にリハビリを行い、急速に回復し始めた。それに伴い、アス
カが世話をしなければならないところも、日に日にすくなくなって行く。

はぁ・・・、今日もいい天気ね。

最近、朝食の準備をする為に早起きしているアスカ。今日の朝食の味噌汁用にとうふを
買ってある。

服を着替えて、リビングに出る。

「おはよう、アスカ。」

リビングに出たアスカが見たものは、朝食の準備をしているシンジの姿だった。

「シ、シンジ!!」

「今日から、家事をちゃんとすることに決めたんだ。今まで、迷惑をかけてごめんね。」

「そんなこといいけど、大丈夫なの? ほんとに?」

「大丈夫だって。」

「だって、まだダメよ。危ないわよ。」

「ほら、もう大丈夫だよ。」

シンジはぴょんぴょんと飛び跳ねて、元気なところを見せる。

「・・・・・・。」

「ほら、大丈夫だろ?」

「・・・・・・。」

「もう、心配ないから。いままでありがとう。」

「ははは。」

アスカは、乾いた笑いを一瞬浮かべた。

「これで完全にリハビリ完了ね!」

シンジに微笑みかけるアスカ。

「まだ、完全ってわけじゃないけど。もう大丈夫だと思うよ。」

笑顔でシンジも答える。




ポツリ・・・。




笑顔のアスカの目尻から、水滴が一滴。

「ん?」

あわてて涙を拭うが、次から次へと涙が出てくる。

「あれ・・・どうしたのかしら? 嬉し涙かな?」

アスカは涙を拭いながら、あわてて洗面所に駆け込む。

「どうしたの? アスカ?」

「なんでも無い・・・後でそっちに行くから、ご飯作っておいて。」

「わかった。」

もう・・・朝ご飯も作らなくていいのね・・・。
おめでとう・・・シンジ。

流れ出る涙がおさまるのを待って、リビングへと戻る。

「大丈夫? アスカ?」

「何が? いいからさっさと食べましょうよ! 久しぶりのシンジのご飯だもんねぇー。
  腕が落ちてんじゃ無いの? アタシが作った方が美味しいかもよーーー。」

「そうかもしれないなぁ。最近、料理なんてしてなかったから。」

「あまりにもまずかったら、アタシが毎日作ってあげようか?」

「そこまで酷く無いよ。食べてみてよ。」

「では、いただきまーーーーす。」

パクッ。

おいしい・・・・。
アタシよりもおいしい。
アタシは・・・アタシの意味は・・・。

また、涙がこぼれでそうになるのを、必死でこらえて、シンジの作った朝食を味わうア
スカ。

「ねぇ、シンジ・・・・。」

「ん?」

「家事とかって、まだ辛くない?」

「そんなこと無いよ。いや・・・正直、まだしんどいこともあるけど・・・。」

「そ、それなら、アタシがまだやってあげるから!!」

アスカの顔が明るくなる。

「でも・・・、いつまでもアスカに頼ってちゃダメなんだ。」

「え・・・!?」

「自分で、何でもできるようになって、アスカに頼らなくても生きて行けるようになら
  ないと、いけないんだ。」

「どうしてよ!」

「どうしてって・・・当たり前だろ?」

「どうしてよっ!」

「だから・・・」

「頼ってくれたっていいじゃない!!」

必死で抑えていた感情が、つい噴出してしまう。自分に頼ってくれない。自分はもう必
要の無い人間という疎外感。それがアスカの心を締め付ける。

「あれだけの大怪我したんだもん! 誰もアンタのこと責めたりしないわよ!!!」

叫ぶアスカ。

「なにさっ! アタシが迷惑なわけっ! もう用済みなわけっ!!!!!」

「もう、嫌なんだ!」

「くっ! イヤなら、イヤって・・・。うっ・・・。」

我慢していた涙が、あふれ出てしまう。

「そんなに、アタシに頼って生きるのが嫌なの!!!?
  ねぇ!!
  アタシが、シンジの世話をしたら迷惑なの!!!!?」

涙声で叫ぶアスカ。

「アスカ!!」

「アタシが・・・アタシが、義務だけでこんなことしてると思ってるの!!?
  アタシの気持ちをアンタは、知っててそんなこと言ってるの!!?」

叫び続ける。

「アスカ!! アスカ!!」

「アタシが、どんな気持ちでアンタにいままで接してきたかも知らないで、アンタは自
  分の体が回復したら、もうアタシはいらないっていうの!!!?」

ダン!!

「アスカ!!!!!!」

テーブルを両手で思いっきり叩き、シンジが立ち上がる。

「違うんだアスカ!!!!!!!」

「何が違うのよ!」

「アスカの気持ちは知ってる!!!」

「何を知ってるのよ!!! 今まで何も言わなかったくせに!!! アタシがどれだけ、
  アンタのことを想っているか、アンタにはわからないのよ!!!」

アスカも立ち上がる。

「違うんだ!!!!!
  自分がまだ回復する前に、そのことを言うのが嫌だったんだ!
  アスカの負い目に付け込むような形で、言いたく無かったんだ!!」

「なにがよっ!」

「バカアスカっ! なんでわからないんだっ!」

「どうせバカよっ! アタシはバカよっ!」

「聞いてよっ! 体力が回復してから言いたかったんだっ! それまで待ってて欲しかっ
  たんだっ!」

ガッチリとアスカの肩を両手で掴み、有無を言わせない表示で涙でぐちゃぐちゃになっ
たその顔を覗き込む。

「シンジ・・・?」

ただシンジの目を見つめ返すことしかできない。

「アスカ。」

今までのトーンとうってが変わり、やさしい声で口を開く。

「シンジ・・・。」

潤んだ瞳の向こうに優しいシンジの顔。

まるで天使の翼に包まれたかのように、心が癒されていく。

「今まで、待っていてくれてありがとう。ぼくは、アスカのことが好きだ。永遠に、い
  やそれより長く共に生きていきたい。」

「シンジ〜。」

涙を流し胸に顔を埋めて来るアスカを、シンジは優しく包み込むのだった。






Thank you for waiting. I love you longer than forever.

                                                     ※BOOWY 「LONGER THAN FOREVER」より

fin.
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