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サンタさんと子供達
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眩いばかりの太陽は西の空へその身を隠し、空一面に星が瞬き始めた2030年のクリ
スマスイブ。

第3新東京市の大きなお屋敷から、男の子の大きな声が門の外に並ぶ雪化粧した街路樹
にまで聞こえてくる。

「こんなのいらないよっ!」

「どうしてじゃ? 高かったんじゃぞ?」

「こんなんじゃないやいっ!」

大金持ちの相田家に生まれた今年4歳になるケンスケは、クリスマス用の豪華な料理が
並ぶ大きなテーブルの前で、両親になにやらしきりに文句を言っている。

「あなた。ケンスケちゃんは気に入らないみたいですよ?」

「そうかぁ。他のを買って来るかのぉ。」

歳をとってからようやく子宝を授かった相田夫婦にとって、ケンスケは目に入れても痛
くない程かわいい愛息子。気に入ってくれると思い買ってきた100万は下らないオー
ダーメイドのロボット犬だったが、どうやらお気に召さないようだ。

「世界一高いプレゼントが欲しいんだいっ!」

「待ってておくれ。直ぐ買ってくるからのぉ。」

「その間にママとお料理を食べてましょうね。1番高級なホテルのコックさんに作って
  貰ったのよ。」

「この料理が1番高い料理なんだねっ!」

「そうよ。これ以上高価なクリスマス料理なんてないわよ。」

「わーいっ! いただきまーすっ!」

どうやら納得したようで、とても食べきれるはずもない量の料理が並ぶテーブルを前に、
好きなものからパクパクとあっちもこっちも食べ、ご機嫌なケンスケ。

「今のうちに、ケンスケちゃんが気に入るクリスマスプレゼントを買って来て下さいな。」

「おお、そうじゃな。急いで行ってくるからのぉ。」

父親は急ぎ運転手に車をまわさせ、おもちゃ会社の社長や家電メーカーの社長に、連絡
を取り始めた。

「こんな不味いの嫌だいっ!」

「あらあら、キャビアは美味しくないわね。こっちのおりんごを食べましょうね。」

「うんっ!」

高級料理が数々並ぶ食卓だったが、まだ5歳のケンスケの口に合うのは甘いものばかり、
シェフが力を注いだ品々はちょっと手を付ける程度で皆ほったらかしにされている。

「おいっ! お前っ! 馬になれっ!」

「えっ!? わたくしですかっ!?」

「そうだお前だっ! はやくしろっ!」

「これこれ、ケンスケちゃんが言っているのよ。早くなっておあげなさい。」

「は、はい。奥様。」

お腹も膨れ遊びたくなってきたケンスケは、食堂の端で立っていたメイドの女性を馬に
して楽しそうだ。

「馬っ! 鳴けっ!」

「ひひーーん。」

「もっと鳴けっ!」

「ひひーーんっ!」

「わはははは。バカみたいだっ!」

メイドの口に加えさせた輪になった紐をぐいぐいひっぱり、背中に乗ってお馬さんごっ
こにはしゃいでいる。

「お前は敵だっ! 敵をやれっ!」

「かしこまりました。」

今度は老齢な執事を呼びつけ悪役にする。もう気分はテレビアニメのヒーローなのだろ
う。

「馬っ! 敵に突撃だっ!」

「ひひーーんっ!」

「とーーーーーっ!!!」

悪役に見立てた執事目掛けメイドの馬を走らせたケンスケは、テーブルに並んでいた1
つの料理を掴み投げ付ける。

ベシャッ。

顔に皿ごと料理をぶつけられ倒れる執事を前に、得意な顔で馬の上に立ちガッツポーズ。

「まいったかっ! 悪者めっ!」

そこへ、幾人かの男達に大きな箱を持たせた父親が、ニコニコしながら戻って来た。

「ケンスケや。どうじゃ、ロボットじゃぞ。」

「ロボット?」

「見てごらん?」

馬遊びにも飽き、新しいプレゼントに目を輝かせてケンスケは大きな箱に駆け寄る。

「ほら、見てごらん。世界一高いおもちゃだよ。」

「ほんとに?」

「あぁ。ほんとじゃとも。」

得意気に大きな箱を開けると、中から出て来たのは人工知能を搭載した人型ロボット。
ケンスケは目を輝かせてそのロボットを見詰める。

「すごーーーいっ! ロボットだぁっ!」

「そうかそうか。気に入ってくれたか。200万もするプレゼントなんて、ケンスケだ
  けじゃぞ?」

「200万?」

「そうじゃ、すごいじゃろう?」

「やだいっ! パパの車の方が高いじゃないかっ!」

「あ、いや・・・。あれは、車じゃからの。」

「やだいっ! やだいっ! こんな安物いらないやいっ!」

「だ、だめなのか? 困ったのぉ・・・。もうこんな時間からじゃのぉ。さすがのワシ
  でものぉ。」

「やだいっ! もういらないよっ!」

「ケンスケや、待っておくれ。このロボットで我慢してくれんか?」

「やだやだやだっ! いいもんっ! サンタさんに、世界で1番いいもの貰うもんっ!」

散々我侭を言っていたが、そろそろ眠たくなってきた。ケンスケは、サンタクロースに
世界で1番高いプレゼントのお願いをして、眠りについたのだった。




ここは同じ第3新東京市に佇む小さなアパート。そんなに裕福な家庭ではなかったが、
蝋燭のついた小さなケーキを若い夫婦が囲み、クリスマスイブの夜を楽しんでいる。

「おい。ナツミ? 窓が開いてるんじゃないか?」

「ええ。少し。」

「坊主が風邪ひいちまうぞ?」

旧姓、鈴原ナツミは結婚しこの家に嫁いだ。今ではもうすぐ1歳になる子供を持ち、幸
せな家庭を築いている。

そして今日が愛しの赤ちゃんの初めてのクリスマイブ。

「ちゃんとお布団着せてるわ。」

「いや。だからって、窓を開けることないだろ?」

「あなたは、忘れてしまったの?」

「何をだ?」

「あの鈴の音を・・・。」

<サンタの国>

日本のみんながクリスマスイブ一色に包まれている頃、日本担当のサンタさん達はひっ
ちゃかめっちゃかの大忙し。

「ほらっ。サンタの袋が開いてるじゃない。」

「あっ。ほんと・・・。」

「零号機のバッテリーはっ?」

「大丈夫。ちゃんと充電したわ。」

「プレゼント忘れてない?」

「うんっ。」

初めてナツミに会った時はあかちゃんだったレイも、今ではもう14歳。今年から正式
なサンタになって、弟のサンタ見習いのカヲルと2人で始めてのお仕事。

そんな娘のレイの世話をやきながら、少し心配そうに見守るアスカ。

アタシも14でデビューしたんだし。
レイも大丈夫よねっ!

「アスカ? やっぱりぼく達も一緒に行った方が・・・。」

一方29歳になってもサンタ見習いをしているシンジは、少しどころかこの世の終わり
が来たかと思わせるくらい心配そうにオロオロしている。

「そろそろ1人で行かなくちゃ。アタシ達はお義父さんやお義母さんの所へ孫の顔見せ
  に行くことになってるでしょ。」

「そうだけど・・・レイ、気をつけるんだよ。プラグスーツはちゃんと着てるかい?
  インターフェイスヘッドセットもちゃんと付けてるかい?」

「ほらほら、レイは大丈夫だから、マユミをちゃんとだっこしてなくちゃ。」

「ばぶぅ。」

シンジと14歳で一緒に暮らし出してからもう15年。そして、今年で15人目の赤ち
ゃんが生まれた。14歳のレイを長女に、13歳のカヲル、12歳のマナ、11歳のム
サシ・・・と年子がずーーーっと続いて、0歳のマユミ。計17人の大家族。

「レイ。困ったことがあったら、連絡するんだよ。」

「わかったわ。」

「カヲルもちゃんと姉ちゃんを手伝うんだよ。」

「わかってるさ。父さん。」

まだシンジは心配で仕方ないようだ。だが、もうレイも立派なサンタさん。初仕事は1
人でやらなければならない。

「ママ,パパ。行ってきます。」

「ほんとーに、気をつけて行くんだよ。」

「わかったわ。パパ。カヲル行きましょ。」

「クリスマスイブか。好意に値するね。」

レイの零号機の背中にカヲルと立つ。

ガッシャン!

全身につけられた金色の鈴が揺れた。

起動。

零号機に灯が灯る。

リフトオフ。

「いってきまーーーーーーーすっ!!!!」

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

大きなサンタの白い袋を肩から掛けて、中にペンギンの人形などたくさんのプレゼント
を詰め込み、レイサンタは飛び上がって行く。

「さ、アタシ達は、お義父さんの所へ行くわよ。」

「そうだね。1年振りかぁ。喜んでくれるかな。」

「そりゃ、今年も新しい孫の顔が見れるんだもん。」

「そうだねっ!」

今年で29歳になったアスカは、そろそろサンタは引退してシンジの家で一緒に暮らす
ことにしていた。

「クラッカー持ったわねっ!」

「こんな巨大なクラッカー、うちに入らないってば。」

「いいからいいから。さぁ、行くわよ。」

「わかったよ・・・。」

アスカの弐号機に火が灯る。今年はサンタじゃないけど、クリスマスイブだからちゃん
と鈴もつけた。

碇家でのパーティー用に大きなクラッカーを持っていく為、サンタの袋も背負っている。

今年が最後の飛行だから、夜空をおもいっきり楽しまなくちゃっ!

「みんな、乗ったぁっ?」

弐号機の後につけた1本のワイヤーに、子弐号機が連凧のように連なって、子供達1人
1人が乗っている。マユミをだっこしたシンジは、アスカの隣が指定席。

「いくわよっ! レッツゴーっ!」

大サンタ様にお別れを言って、ピュアな子供にしか見えなくなるサンタフィールドを張
り、アスカは第3新東京市へ飛び立って行った。

                        ●

夜空に星が降りました。

見渡す限りのその空に、たくさんたくさん降りました。

窓から顔を出してお空を見ていた男の子。

綺麗な夜空を見ていた女の子。

空一面に降り注ぐお星様の瞬きも、そのピュアな瞳の輝きにはかないません。




誰かが、あくびをしましたか?

誰かが、眠い目を擦っていますか?




ツリーのてっぺんに飾ったお星様を取ろうとしてたやんちゃな男の子も。

ママに作って貰ったケーキを、お口にいっぱい頬張ってた女の子も。

みんなお空を見上げて待ってたけれど。

そろそろおねむの時間です。




1つ。また1つ。輝くピュアな瞳が閉じていき、夢の世界へご招待。

でも、大丈夫。

お空のお星様はいつまでもいつまでも、この夜を照らしてくれます。

楽しい夢を見ているみんなへの道しるべ。




かわいいお人形が欲しいの。

かっこいいおもちゃが欲しいな。

みんなが夢で願うこと。楽しい夢で願うこと。

いつもは夢で終わるけど、今日はいつもと違う夜。魔法の粉が撒かれる日。




お願いごとはしましたか?

靴下は吊るし忘れていませんか?




大丈夫ですね。忘れるはずがありません。

だって今夜は。

良い子のみんなが楽しみにしていた日ですから。

ピュアな心を持った子供達が、待ちに待った日ですから。

そう。今日は年に1度の特別な夜。




今日はクリスマスイブなのですから。




きよしこの夜この街に、今年も夢のカーテンが引かれます。

時計の針が新たな奇蹟の日を生み出しました。

しーーーー。静かに。

耳を澄ませてみてください。

澄み渡る聖夜の夜を見上げみてください。




あなたには聞こえてきませんか?

心ときめくあの音が。




シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!




ほらほら、聞こえてきましたよ。




シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!




聞こえてきました。夜空いっぱいに広がる鈴の音が。




シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!




やってきました。やってきましたよっ。

今年もサンタさんが、この街にやってきたのですっ!




♪ まっかなおめめの〜っ レイサンタさんは〜 ♪

チャンチャン。

♪ いつ〜もみんなの〜っ にんきものぉ〜♪

チャンチャン。




ピュアな子供達がずっと良い子にして待っていたサンタさんがやってきました。

おや? 新しいサンタさんですね。

♪ まっかなおめめの〜っ レイサンタさんは〜 ♪

去年のサンタさんよりも、少し静かなレイサンタさん。羽のついた杖の形のマイクを持
って、やる気もいっぱい。

背中には、誰かのプレゼントかな? 大きなペンギンの縫いぐるみがサンタの白い袋か
ら顔を出しています。

チャンチャン。

後ろでは、サンタ見習いのカヲルくんも、一生懸命に鈴を振っていますね。

♪ いつ〜もみんなの〜っ にんきものぉ〜♪

チャンチャン。

さぁ、今年もサンタさんの活躍が始まります。




ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!

体に鈴をいっぱいにつけた零号機が、第3新東京市に向けて降下し始めました。プレゼ
ントを待つ子供達に、今年もサンタさんが舞い降りました。

「行きましょ。」

シュルシュルシュル。

いよいよとっても初々しいサンタさんの初仕事。レイサンタさん、頑張ってねっ。

「どうしても歌わなくちゃいけないの?」

「母さんが、そう言ってマイクを渡してくれただろ?」

「そうだけど・・・。」

「さぁ、そろそろプレゼントを配らないかい?」

「ええ。」

いよいよ初めてのプレゼントです。レイサンタさんは、ある一件の家へスルスルスルと
ロープを伝って降りて行きます。

えっと・・・鍵はヘアピンを使うのね・・・。
うーん。

窓の鍵を開けようとヘアピンを取り出して、頑張るレイサンタさん。

ママは簡単に開けていたのに、なかなかうまくいきません。

「開かないわ。」

「姉さん。ちょっと貸してくれないかい?」

サンタ見習いのカヲルくんが、場所を入れ替わって挑戦します。

レイサンタさんは、邪魔しないようにお庭の隅へ行きました。

ドンガラガッシャーーーンっ!

「姉さんっ! しーーーーっ!」

「なにかに当たったわ。」

大変です。高価な盆栽が落ちちゃいましたよ? でも大丈夫。アスカサンタさんは、も
っともっと派手なこといっぱいしてましたから。それくらい大丈夫。

「あら。こんな狭いところじゃ、可愛そう。広いお庭に植えてあげましょう。」

さすがはレイサンタさんです。思い遣りの心を持って、盆栽の木をお庭に植えてあげま
した。でも、サンタさんじゃなかったら、大迷惑です。良い子のみなさんは真似しちゃ
駄目ですよ。

「姉さん。窓が開いたよ。」

「プレゼントを靴下に入れましょう。」

早速家の中へ入り、枕元に掛けられている靴下にプレゼントを入れようとします。
レイサンタさんにとっての初めてのプレゼント。とってもドキドキの瞬間です。

「・・・・・・。」

またまた大変です。靴下が小さ過ぎて、持って来た大きなペンギンの縫いぐるみが入り
ません。

「入らないわ。」

初めてのプレゼントは、やっぱり靴下に入れたいのでしょう。レイサンタさんは、一生
懸命押し込みます。

ぎゅーーーーーー。

「う〜んっ。」

ぎゅーーーーーー。

「う〜んっ。」

ベリベリベリっ!

「・・・・・・。」

あらあら、靴下が破れてしまいました。

「これで・・・いいの。ええ。問題無いわ。問題無いの・・・ええ。」

レイサンタさんは、自分に言い聞かせるように何度も呟き、破れた靴下の上にポンとペ
ンギンの縫いぐるみを置いて、その家を後にします。

無事にプレゼントも渡せて良かったですね。

シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!

♪ まっかなおめめの〜っ レイサンタさんは〜 ♪

チャンチャン。

♪ いつ〜もみんなの〜っ にんきものぉ〜♪

チャンチャン。

カヲルくんの鈴の音に合わせて、レイサンタさんは歌を歌いながらプレゼントを次から
次へ配ります。ピュアな子供の枕元に、夢を乗せて配ります。

「はっ!」

今度は何があったのでしょう?

ワンワンワン。

これはどうしたことでしょう? 大きなワンちゃんが玄関の前に繋がれています。レイ
サンタさんは、驚いてしまっていますよ?

「どうして鎖に繋がれているの?」

「きっと、可愛そうな犬なのさ。」

「離してあげましょう。」

なんて慈悲深いレイサンタさんなのでしょう。早速ATフィールドで鎖を切ってあげる
ると、ワンちゃんは喜んで遊びに行きました。でも、サンタさんじゃなかったら、大迷
惑です。良い子のみなさんは真似しちゃ駄目ですよ。

「さぁ、プレゼントを渡しましょう。」

「そうだね。いいことをした後は気持ちいいね。」

プレゼントを配ったレイサンタさん。そろそろ残りも僅かです。後ちょっと頑張って下
さいね。

シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!

♪ まっかなおめめの〜っ レイサンタさんは〜 ♪

チャンチャン。

♪ いつ〜もみんなの〜っ にんきものぉ〜♪

チャンチャン。

「あら? 窓が開いてるわ。」

今度はヘアピンを使わなくても、最初からちゃんと開いてるおうちでした。なんて親切
な人が住んでるでしょう。

えっと・・・くつしたくつした。
これね。

窓の側に寝ている可愛い赤ちゃんの靴下に、ふかふか絵本を入れてあげます。きっと喜
んでくれますよ。

「ばぶぅぅ。きゃっきゃっ!」

あらら、赤ちゃんが目を覚ましちゃったみたいですね。

「あっ。起こしちゃったのね。ごめんなさい。」

「ばぶぅぅ。」

赤ちゃんもサンタさんに会えて大喜び。良かったね。プレゼントが貰えましたよ。

「来年までピュアな心を持っていてね。」

レイサンタさんは、赤ちゃんの頭を優しく撫でると、最後のプレゼントを持って飛び立
ちました。

                        ●

ナツミはリビングで、夫とクリスマスイブの夜をシャンパンを飲みながら幸せに過ごし
ていた。

ガラ。

その時突然窓が開く。

「おい。なにか音がしなかったか? 何の音だ?」

「決まってるでしょ? 今日はクリスマスイブよ?」

ベビーベッドに駆け寄ってみると、キャイキャイ喜ぶ赤ちゃんの姿と開いた窓が見える
だけ。

「あら?」

不思議にナツミが見つめていると・・・。

キラリと靴下が光り、プレゼントがぱっと現れた。

「サンタさん・・・。」

閉まる窓。ナツミには全てがわかっていた。だが、ナツミにその姿は見えなかった。

そう・・・。
もうわたしには見えないのね。

ナツミの記憶に蘇る、赤いサンタさんと夜空の散歩をした素敵な思い出。

「おい、窓が勝手に閉まらなかったか?」

「ええ。ほら、あの子ったら、あんなに喜んで。」

「なんだ? いい夢でもみたのか?」

「そう。この子にだけ見える素敵な夢を・・・。」




レイは最後のプレゼントを持って、大きなお屋敷へ向かっていた。

「後は、ケンスケくんだけ。」

「世界一高いプレゼントかい?」

「ええ。だから、これを持ってきたの。」

レイが取り出したのは、異様に糸の長い凧。これより高くまで上がるおもちゃは無いだ
ろう。

「最後のお仕事。これが終われば、初仕事は成功ね。」

「成功。好意に値する言葉だね。」

レイとカヲルは、早くも笑みを浮かべながら大きなお屋敷のベランダにスルスルスルと
降りて来た。

「開かないわ・・・。」

「やけに頑丈な窓だね。」

だが、大金持ちの家だけあって、ヘアピンくらいではビクともしない程分厚い窓に、大
きな鍵をつけている。

「仕方ないわ。」

レイはアスカに習ったように拳を握り大きく振りかぶった。

ぱ〜〜〜〜〜〜〜〜んちっ!

ごいーーーーーーーーんっ!

「いっ、いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」

「しっ! 姉さんっ! 大声出しちゃ駄目だろ?」

「いたいの・・・。」

涙目のレイ。

「母さんは、本当にそう教えてくれたのかい?」

「ええ。開かない時は、ぱんち。」

アスカに貰った非常事態マニュアルを見せる。

「零号機でって書いてないかい?」

「はっ! そうだったのね。」

レイは早速零号機を呼ぶと、アスカに教えて貰った通りパンチさせてみる。

ひっさつっ! ぜろごーきぱ〜〜〜〜〜〜〜〜んちっ!

ぐわっしゃーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!!!!!
バリバリバリバリバリーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

さすがは尊敬するアスカサンタマニュアル。見事に窓が開いた。

「開いたわ。」

「さぁ、プレゼントを入れよう。」

「ええ。」

ところが、その音でケンスケが目を覚ましてしまった。

「あっ! サンタさんっ!」

「起きてしまったのね・・・。」

「世界一高いプレゼント持って来てくれたんだねっ!」

「ええ。凧よ。」

「・・・・・・・。」

最後の1つになったプレゼントを手渡そうとするレイ。だがケンスケは、ジトっと睨ん
で不満そう。

「これのどこが高いんだよっ!」

「お空に高く上る物。」

「そんなんじゃないやいっ! こんなのやだーーーーっ!」

「はっ!」

その言葉に、レイは大きなショックを受けた。用意したプレゼントが気に入って貰えな
い。それはサンタにとって致命的なミス。

「カヲル・・・違ったみたいなの。」

「困ったね。このプレゼントは好意に値しないかい?」

「ぼくは世界で一番か価値のあるプレゼントが欲しいんだいっ!」

困り果てるレイ。このままでは、1人の子供の夢を叶えられず朝になってしまう。それ
は初仕事の大失敗。

「そうだわっ。」

素晴らしいアイデアが思い浮かんだようだ。レイはカヲルの頭に付いてた、通信用のイ
ンターフェイスヘッドセットを2つ取って、ケンスケの前に差し出す。

「これならいいでしょ?」

「なにこれ?」

「これをね。」

2つのヘッドセットを1つづつ手に持ち、ケンスケの目の前に持っていくと。

「かち。かち。」

真剣な目で『かち。かち。』と言いながら、カチカチと打ち付けてみせる。確かにカチ
カチなプレゼントだが・・・。あの・・・ケンスケは価値がある・・・その・・・。

「ちがうよーーーっ! そんなんじゃないよっ!!!!」

「どうして? ほら、聞いてみて。」

それでも頑張って、ヘッドセットを目の前で打ち付け続け説得を試みる。

「かち。かち。」

「違うって言ってるだろーーーっ!」

大失敗は嫌・・・。
大失敗は嫌・・・。
大失敗は嫌・・・。

「かち。かち。」

しつこく『かち。かち。』言いながら納得して貰おうとするが、ケンスケはイヤイヤし
て暴れるばかり。さすがにカヲルも見るに見かねてレイの肩に手を置いた。

「よく聞いて。ほら。」

じーーーーーーっと、真剣な顔でケンスケを見ながらヘッドセットを打ち付ける。

「かち。かち。」

「姉さん・・・。恐いだけよ。」

「うえーーーーーーーーんっ!!!」

あまりのレイの迫力に、だんだん涙目になってくるケンスケ。

「はっ! 大失敗っ! そう・・・もう駄目なのね。」

「そんなことないさ。母さんに連絡してみようよ。」

「そうね・・・。もうそれしかないわ。」

レイは自分のインターフェイスヘッドセットに手を掛け通信スイッチを入れた。最後の
頼みは、やはり頼りなるアスカサンタ。

<碇家>

その頃、シンジの家は物凄い盛り上がりをみせていた。13人の孫とシンジとアスカが
帰ってきて、ゲンドウもユイも嬉しくて仕方がない。

「うぅぅぅ・・・クラッカー・・・。」

「だから、入らないって言ったろ?」

「うぅぅぅ・・・。」

だが、アスカはたくさん持ってきた巨大クラッカーが大き過ぎて玄関に入らなかったの
が、悲しくて仕方ないようだ。

「おぎゃーーーっ!」

その時、マユミが泣き出した。どうやら、おむつを取り替える時間のようだ。

「あらあら、おしめを取り替えなくちゃね。」

「ばぶーーーっ。」

「元気な子ですこと。あなた見てください。」

「うむ。アスカくん似だ。シンジに似なくて良かった。」

ゲンドウもユイも夜遅くまでとても嬉しそうだ。だがシンジは・・・。

どういう意味だよ。
父さんっ!

「で、アスカちゃん? ほんとに、一緒に暮らしてくれるの?」

「はい。サンタ通信教育もできたんで、子供達にはそれで勉強させます。でも、10歳
  からは、サンタ学校の寮に入らなくちゃいけないんですけど。」

「あらそう。マナちゃん達とはしばらく一緒に暮らせないのね。」

「それはつまらん。シンジっ。お前が寮へ帰れっ!」

「・・・・・・。」

なんでそうなるんだよっ!
いいんだ。どうせぼくなんか。

いじいじ。

せっかくのクリスマスだが、どんより暗くなってしまったシンジがテーブルに”の”の
字を書いていると、インターフェイスヘッドセットが音を奏でた。

レイ達からの連絡だ。きっと何かあったに違いない。

大急ぎでインターフェイスヘッドセットを取ったアスカが、なにやら事情を聞いている。

「ええ。ええ。わかったわ。」

受け答えも終わり、通信終了。

アスカの青い瞳が輝いた。

「シンジっ! 最後の仕事よっ!」

アスカサンタさんの最後の仕事。

最後までサンタになれなかったシンジサンタ見習いの最後の仕事。

そして・・・。

真っ赤な弐号機に火が灯り、大きな鈴の音がコンフォート17マンションのその空に響
き渡った。

<ケンスケのお屋敷>

あの後レイは、カッチンうどんを作ってみたり、カチカチ山のたぬきさんの絵本を出し
てみたり、カチュウシャを出してみたりしたが、もうケンスケくんは地団駄を踏んで嫌
がってばかり。

「姉さん・・・価値とカチュウシャは・・・だんだん厳しくなってきてないかい?」

「でも・・・世界一価値のあるものなんて・・・。」

「そんなの無理さ。きっと、大サンタさんもわかってくれるよ。」

「ええ。でも・・・私はサンタ。みんなの夢を叶えたいの。」

そう。もうレイは立派なサンタなのだ。サンタの夢は、子供達の夢を叶えること。
どうしても、最後の1人になったケンスケの夢も叶えてあげたい。

レイは星降る夜空を見上げた。

ママ、助けて。
もう、オヤジギャグじゃ切り抜けられないの・・・。

その時・・・レイの瞳に映ったものは・・・。

レイの顔が笑顔に変わる。

そして、聞こえてくる音色に合わせ、レイとカヲルは体を左右に振り出した。

                        ●

きよしこの夜、この聖夜。やっぱり今年も、流れます。

幸せいっぱい、この街に。いつもの歌が、流れます。

初々しくて、かわいくて。とっても頑張ったレイサンタさん。

でも、やっぱり・・・。

クリスマスイブにはこの歌を。

さぁ、耳を済ませましょう。

聞こえてきますよ。あの歌声が。




シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!




真っ赤な弐号機が空を舞い、後ろに連なる子弐号機。ウェーブを描き楽しそう。

ほらほら、聞えてきましたよ。




ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪




ピュアな子供の夢を乗せ。

レイサンタさんの願いも乗せて。

今年もやってきました。第3新東京市にやってきました。




ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪




マイク片手に、体を振って。

アスカサンタさんがやってきましたっ!




ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪

♪ ジングルベールっ ジングルベールっ 鈴がなる〜っ ♪

ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!




とっても賑やかなアスカサンタさんの歌に合わせ、子弐号機に乗ったマナちゃんがシン
バルを叩きます。子供達みんなも、それぞれ持った賑やかな楽器を演奏します。




♪ 今日はぁ〜 楽しい〜 クリスマスっ! ♪

「へーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!」

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ぶんちゃかぶんちゃっ♪

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!




弐号機の背中で踊るアスカサンタさん。

足元に置かれたスピーカーもウーハーつきの大音量。

めきょめきょめきょっ!!

ケンスケくんのお屋敷の、屋根を突き破り大急ぎでご登場。でも、サンタさんじゃなか
ったら、犯罪です。良い子のみなさんは真似しちゃ駄目ですよ。

「ママっ!」
「母さんっ!」

レイサンタさんと、カヲルくんが見上げる弐号機から、スルスルスルとロープを伝って
降りて来るアスカサンタさん。とっても早いご到着。

「あなたが、ケンスケくんねっ!」

「そうだよっ!」

「いらっしゃいっ。世界一価値のあるものあげるわ。」

「ほんとぅ!」

「ええっ。」

アスカサンタさんは、ケンスケくんの手を取り、弐号機へ上って行きます。

シンジくんも、子供達もみんな笑顔で嬉しそう。

どんなプレゼントが貰えるのかな? ケンスケくんも嬉しそう。

弐号機が空へ上がります。

「レッツゴーーっ!」

アスカサンタさんの掛け声と共に、サンタさん一家とケンスケくんは、聖夜の空へ舞い
上がります。

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪

♪ ジングルベールっ ジングルベールっ 鈴がなる〜っ ♪

ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

♪ 今日はぁ〜 楽しい〜 クリスマスっ! ♪

「へーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!」

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ぶんちゃかぶんちゃっ♪

ケンスケくんを乗せた弐号機は高く高く舞い上がり、大きなお屋敷も米粒のよう。

まだまだ高く上がります。

第3新東京市の街明かりが、ケーキの蝋燭1本の明かりより小さくなるまで上がります。

「わーーーーっ! すげーーーっ!」

「ほら、これが地球よっ!」

青い美しい星が広がります。ケンスケくんは、目を輝かせその美しい星を見下ろします。

「この星でたくさんの子供がピュアな心を持って生まれてるわ。」

「うん。」

「あなたも、その中の1人なの。どう? あなたの大きなお屋敷見える?」

「ううん・・・。」

「パパの大きな会社見える?」

「ううん・・・。」

「あなたの大きなお屋敷も、見えないくらい小さいものなの。」

「・・・・・・・。」

「でもね。とっても大きなものをあなたは持ってるわ。」

ニコリと微笑みかけるアスカサンタさん。

「ほんと?」

「この地球より大きなもの。」

「そんなのないよっ!」

「パパやママの愛情を持ってるんじゃないかしら?」

ケンスケくんは、お父さんやお母さんの顔を思い浮かべます。

「どんなに価値のあるおもちゃも、ここからじゃ見えない程小さなものだけど、愛情は
  見えなくても大きなものでしょ?」

「うん・・・。」

「ケンスケくんも、パパやママに愛情いっぱい持ってるはずよね。パパやママに優しく
  してるかしら?」

ケンスケくんの顔が、だんだん泣きそうになってきました。

「パパ、ママ・・・ごめんなさい。」

「これがあなたへのプレゼント。」

「パパやママの愛情?」

「ううん。愛情のありがたさがわかったこと。これ以上価値のある物は地球にないわ。」

「うんっ!」

ケンスケくんは笑顔で頷きました。

とても素敵なプレゼント。良かったですね、ケンスケくん。

レイサンタさんもニコリと笑顔を浮かべます。

「ママ、ありがとう。」

インターフェイスヘッドセットの「かち。かち。」じゃ駄目だったレイサンタさんだっ
たけど、ママサンタさんの愛情に助けて貰って嬉しそう。

「さっ! 夜が明けるわっ! サンタはおうちに帰るわよっ!」

ケンスケくんをおうちに送り届けたサンタさん達は、第3新東京市の夜空へみんなで舞
い上がります。

ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!

シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!

大きな鈴が鳴り響きます。

弐号機と零号機のランデブー。

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪

体を左右に振って、アスカサンタさんが踊ります。

レイサンタさんも曲に合わせて踊ります。

♪ ジングルベールっ ジングルベールっ 鈴がなる〜っ ♪

ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

マナちゃんの大きなシンバルが、ウーハー付きスピーカーで第3新東京市に奏でられ。

子弐号機が、ウェーブを描いて続きます。

♪ 今日はぁ〜 楽しい〜 クリスマスっ! ♪

「へーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!」

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ぶんちゃかぶんちゃっ♪

サンタ一家の大合唱が、第3新東京市の大空を響かせて、とっても賑やかな聖夜の夜。

おや? アスカサンタさんが、何かを持ち出しましたよ?

「へへーーん。クラッカー。使わなくっちゃもったいないもんねぇっ!!!」

いっきに何個も巨大クラッカーを持って・・・何をするつもりですか?

「さーーーーーーーーーーーーっ! 行くわよーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

紐を引っ張ろうとしていますよ? 何をするつもりですか?

「そーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーれっ!!!!!」

パパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっっ!!!!!
パンパンパンパンパンパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっっ!!!!!

さすがはアスカサンタさんです。静まり返って寂しい聖夜を賑やかに盛り上げてくれま
した。でも、サンタさんじゃなかったら、犯罪どころかとんでもない騒音公害です。良
い子のみなさんは真似しちゃ駄目ですよ。

「なに? なに? 何の音?」
「あの音はなに?????」

おやおや、第3新東京市の子供達がみんな起きちゃいました。

楽しい夢の世界から飛び出した子供達。

でも、ピュアな子供達のその目に見えたのは、まぎれもなく今見ていた夢の続き。

ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪

♪ ジングルベールっ ジングルベールっ 鈴がなる〜っ ♪

ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

♪ 今日はぁ〜 楽しい〜 クリスマスっ! ♪

「あっ! サンタさんだっ!」
「わーーーーいっ! サンタさんだーーーーーーっ!!!!」

眠いおめめもぱっちりと、大声を出しピュアな子供達が手を振ります。

「おいおい。どうしたんだ?」
「サンタ? 何を言ってるんだ?」

大人の人達が不思議そうに見上げます。子供達の手を振る先を見上げます。

すると・・・・。

ヒラリ。

赤いリボンや、紙吹雪が空からひらひら舞い降ります。

アスカサンタさんのクラッカー。星空の第3新東京に、綺麗な雪を降らせます。

「サンタさーーーーーーんっ! ありがとーーーーーーーーっ!」
「素敵なプレゼントありがとーーーーーーーっ!!!」

子供達が大声で呼び掛けます。

みんなで声を出して喜んでいます。




思い出しましたか?

思い出しましたね。

大人の人達も思い出しました。

あの日あの時、きよしこの夜。朝が来るのを楽しみに、胸をときめかせ眠った夜を。

「あっ! あれっ! 見て、あなたっ!」

「どうした?」

「サンタさんよっ!」

大人になってしまったナツミさん。

一緒に夜空を飛んだよね。

今年が最後のプレゼント。

「また・・・。また、わたしにも見えたの。」

瞳を輝かせて、愛する夫に振り向きます。

「あぁ。俺も思い出したよ。あの鈴の音を・・・。」

ピュアな心を持っていれば、大人になっても見える夢。

この街のみんなが思い出してくれた、輝く瞳に映る夢。

素敵な夢をありがとう。

シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン! シャン!

これで、アスカサンタさんのクリスマスはもうおしまい。

この街のみんなに夢を残し、アスカサンタさんは帰っていきます。

とっても素敵なプレゼントをありがとう。

最後に素敵な夢を、ありがとう。




だけど、寂しくなんかありません。

だって、来年からはレイサンタさんが来てくれるのですから。

ピュアな心を持った子供達の胸膨らませる夢を持って。




でも、この歌は今年まで。最後にみんなで聞きましょう。あの素敵な歌声を。




             ずんちゃっ♪ ずんちゃっ♪ ずんちゃちゃずんちゃっ♪




            ♪ ジングルベールっ ジングルベールっ 鈴がなる〜っ ♪




             ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!




                        ♪ 今日はぁ〜 楽しい〜 ♪




        ♪ ク〜〜〜〜 リ〜〜〜〜 ス〜〜〜〜 マ〜〜〜〜 ス〜〜〜〜っ! ♪




                        チャーーーーーーーーーン!




                            チャーーーーン!






「ヘーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイッ!!!!!!!!!!!」






fin.
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