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アスカちゃんとレイちゃん
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作者注:この小説は、チルドレンはシンジ1人であり、アスカとレイはごく普通の仲良
        し女子中学生です。
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<学校>

慌ただしく生徒達が登校してくる朝の学校の下駄箱で、靴を上履きに履き替えている少
女が2人。アスカちゃんとレイちゃんは、今日も仲良く2人揃って登校してきた。

「おはよう。綾波。」

アスカより少し早く履き替え終わったレイが、ふと振り返ると世界でただ1人の適格者
であるシンジが朝の挨拶をして通り過ぎて行った。

「あっ。おはよう。碇君。」

世界中の憧れの的であり想い人でもあるシンジに声を掛けられ、少し顔を赤くして返事
をするレイ。一方アスカは、下を向いていたので声を掛けられず面白く無い。

「どうして、アンタだけ声を掛けられるのよっ!」

「偶然、目が合ったから。」

ポッと頬を染めるレイ。

「ずるーーーいっ! しまったぁーーもうちょっと早く履き替えとくんだったーーっ!!」

朝から機嫌の良いレイと、地団太を踏むアスカの1日が今日も始まろうとしていた。

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昼休み。机をくっつけて弁当を食べるアスカとレイは、相も変わらずシンジのことで盛
り上がっていた。

「ねぇねぇ、アタシがお弁当作って来たら、碇くん食べてくれるかなぁ?」

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作者注:この小説はアスカとシンジは付き合いが薄い為、アスカも”碇くん”と呼んで
        います。ちなみにレイは漢字の”碇君”で呼ぶことにします。
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「無理ね。」

「どうしてよぉ。」

「碇君が自分で作ってるお弁当の方が、ずっと美味しそうだもの。」

「うぅぅぅ。じゃぁ、アンタが作ってきて、みんなで一緒に食べるってのは?」

「洞木さんくらいよ。碇君より美味しそうなお弁当が作れるの。」

「ダメよぉ。ヒカリは碇くん狙いじゃないんだから。」

「諦めるのね。」

「む〜〜。」

毎日飽きもせず、そんな話をしながら弁当を食べる2人。あまり大声で言うと、女子の
大半を敵にまわすことになるので、ひそひそと喋るのだが、またそれも面白い。

「だいたい、なんで鈴原や相田が碇くんと一緒にお弁当食べてるのに、アタシ達にはそ
  のチャンスが無いわけぇ?」

「それなら、『一緒に食べましょ』って言ってみれば?」

「言えるわけないでしょっ!」

「それなら、諦めるのね。」

「そう言うアンタは、どうなのよぉぉ。」

「私は来週、碇君と週番だからそのチャンスを狙うわ。」

「ずるーーーーいっ!! ずるいずるいずるーーーーいっ!!」

「週番だもの。ずるくないわ。」

「アタシも、その週番手伝うぅ!」

話に花を咲かせながらも、落ち着いて弁当を食べるレイと、喋る度にいちいちリアクシ
ョンの大きなアスカの凸凹コンビだが、それはそれで仲が良いのだ。

トントン。

アスカが、お喋りに夢中になっていると不意に後ろから肩を叩かれた。

「なによっ!!!」

話の腰を折られたアスカが不機嫌そうにバッと振り返ると、そこにはアスカの大声に驚
くシンジの姿があった。

「い、碇くん・・・・。」

ポッ。

「あ、あの。邪魔だったかな?」

「そ、そんなことないわよ。うん、そんなことない。ねっ、レイ。」

なにが「ねっ、レイ」よっ!と言ったしらけ顔でレイに見つめ返されるが、そんなこと
はお構い無しに、アスカは先程の暴言の名誉挽回とめいいっぱい愛想を振り撒く。

「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」

「お願い? いいわよ。いいに決まってるわ。もっちろんよっ! まっかせなさいっ!」

「ははは・・・。まだ、何も言ってないんだけど・・・。」

「そ、そうね。で、何かしら? なんでもするわよ。」

「なんでもって・・・・ははは。」

少し、たじたじになるシンジ。

「実は、来週の週番なんだけど。ネルフの用事で早く帰らないといけなくなったんだ。
  惣流は綾波と仲がいいから、当番変わって貰えないかな?」

ガビーーーーーーーーーーン!!

そのシンジの願い事を聞いてショックを受けたのは、他でも無いレイだった。週番の当
番で2度と同じペアになることは無いので、今年唯一のチャンスだったのだ。

「うん。いいわよ。」

もっと、何か嬉しい願い事かと期待していたアスカも少し消沈したが、レイのことを考
えると救われた気分になる。

「そう。ごめんね。今度惣流の当番の時は、ぼくが代わるから。お願いするよ。」

「そんなこと気にしなくていいわよ。来週の週番は、このア・ス・カに任せてね。この
  ア! ス! カ! が代わってあげるから。」

「ありがとう。それじゃ、よろしく。」

笑顔でシンジに手を振ったアスカが振り返ると、顔を引きつらせて苦笑いを浮かべなが
ら手を振っているレイがいた。

「アンタのチャンスって、なかなか来そうにないわね。」

「はーーーぁ。」

どんよりした顔で、がっくりと肩を落とすレイ。

「元気出しなさいって。放課後、あんみつに付き合ってあげるから。」

「おごり?」

「えーーーっ! そこまでは知らないわよっ!」

「はーーーぁ。」

どんよりした顔で、がっくりと肩を落とすレイ。

「わ、わかったわよっ。おごってあげるわよっ!」

「じゃぁ、行くわ。」

「まったくぅ。」

コロっと表情を変えるレイを、アスカは呆れた顔で眺めるのだった。

<通学路>

放課後、約束通りにあんみつ屋に来たレイであったが、悪いことは重なる物で偶然にも
定休日だった。

「おごるって言ったのに・・・。」

「そんなこと言ったって、休みなんだからどうしようもないじゃないっ!」

「おごるって言ったのに・・・。」

「アンタもそうとうひつこいわねぇ。見てみなさいよっ! ”定休日”って書いてある
  でしょうがっ! ”定!休!日!”って!」

「おごるって言ったのに・・・。」

「あーーっ! もうっ! うっとうしいわねっ! 公園で缶ジュースおごってあげるから、
  がまんなさいっ!」

問答無用で公園に向かって歩き出すアスカの後ろから、レイはどよどよと下向き加減に、
短い前髪で目を隠つつ付いて行く。

「そうだわ、レイっ! 一度ネルフへ行ってみましょうよ。」

「え?」

「もしかしたら、碇くんのプラグスーツ姿ってのが見れるかもしれないじゃない。」

「そんなの駄目よ。」

「駄目じゃないわよ。ネルフに近寄っちゃダメなんて規則は無いじゃない。」

「それは、そうだけど・・・。」

「行ってみましょうよ。」

「でも碇君は、ネルフの中にいるわ。」

「ダメで、元々じゃない。行くだけならタダよっ!」

「電車代がかかるわ。」

「細かいこと言う娘ねぇ。どうすんのよ!? 行くの? 行かないの?」

「・・・・・・・行く。」

「行きたいんなら、最初っからそう言えばいいのよ。」

落ち込んでいたレイだったが、少し元気になる。また、アスカも噂に聞くプラグスーツ
姿のシンジが、一目見れるのではないかと期待していた。

<ゲート>

JRに乗って、ネルフ本部のゲートまで辿り着いた2人は、これからどうしたものかと
立ち往生していた。

「やっぱり、中には入れそうにないわね。」

ここまで来たら中に入りたいアスカだったが、行く手には警備員とIDカードを通さな
ければ開かないゲートが立ちはだかり、立ち往生していた。

「アタシの生徒手帳じゃ、入れないわよねぇ。」

「あなたばか?」

シラーっとした目でアスカを見つめるレイ。

「ウッサイわねっ! ちょっと言ってみただけでしょっ!」

なんとかならないものかと、きょろきょろしていたアスカだったが、少し向こうの公園
で遊んでいる子供達に目を止めた。

「ん? あれは?」

しばらく、公園で戦争ごっこをしている子供を見ていたアスカは、何か思い付いたのか、
目を輝かせて走って行く。

「ねぇねぇ僕達? これ1つお姉ちゃんにくれないかなぁ?」

子供達の側へ寄ってきたアスカがにこにこしながら指差した物は、爆弾代わりに使って
いた爆竹だった。

「これ欲しいの?」

「うん。1つでいいから、お姉ちゃんに頂戴よ。」

「じゃぁねぇ。1つ100円で売ってあげるよ。」

「ひゃ、ひゃくえんって・・・。高いわよっ!」

「それじゃ、あーーげないっとっ!」

まったくぅ! 最近のガキ共はぁっ!

「わかったわよ。それでいいわよっ!」

アスカはしぶしぶ100円を出すと、子供から20連発の爆竹1つとマッチを受け取ろ
うとする。しかし子供は、100円を取ると爆竹だけを渡してマッチを引っ込めた。

「駄目だよ。マッチは50円だよ。」

ニヤニヤしながら得意気に言う子供。

「なっ! なんですってぇぇぇぇ!!」

「いらないならいいよ。爆竹だけ持って行ったらいいよ。」

こ、このガキぃぃぃぃぃ!!

頭にきてキレかかるアスカだったが、マッチが無いと話にならないので、ここは押さえ
て笑顔で交渉することにする。

「せめて30円よっ。」

「やーーだよっ! べぇぇぇぇぇ!」

ムッカーーーっ!!

「じゃ、じゃぁ、せめて40円っ!」

「50円じゃなきゃ、駄目だよーーーだっ! いらないみたいだぜぇ。みんな行こうぜ
  ぇぇぇ!! へっへっへーーーっ!!」

ブッチーーーーーーーーーーッ!!

音が聞こえんばかりに切れたアスカだったが、殴り掛かろうと一度振り上げた右手を左
手で押さえて、青筋を立てながらも拳を握り締めて我慢するアスカ。

「わ、わかったわよっ! はいっ! 50円っ!」

「まいどーーーっ!」

まったく最近のガキ共はっ! どういう仕付けをされているのかしらっ!

今にも爆発せんばかりにムカムカしていたアスカだったが、目的の爆竹とマッチを手に
入れてレイの元へと戻って行った。

「何してたの?」

「たっかいお金を出して、これを買って来たのよっ!! まったくっ!!」

「何それ?」

「爆竹よっ!」

「それをどうするの?」

「これを投げて警備員が気が取られているうちに、入り込むのよ。」

「なっ! なにをする気よっ!」

「まぁ、見てなさいってっ!」

「ちょっとっ!」

言うが早いか、アスカはレイが止めるのも聞かず爆竹とマッチを両手に持ってゲートへ
と走って行く。レイはそんな様子をあっけに取られた顔で、ただ見送っていた。

よーーーしっ! 行くわよアスカっ!

シュッ!

ぽーーーーーい。

パンパンパンパンパンパンパンパンパン!!
パンパンパンパンパンパンパンパンパン!!

アスカの投げた爆竹が、ゲートの近くで大きな音を立てて爆発し始める。そのタイミン
グを狙ってゲートへ走って行くアスカだったが。

「なんだっ! あの女はっ!」

「え?」

「爆竹を投げてきたぞっ! 怪しいぞっ! 捕まえろっ!」

計画では爆竹に集まるはずだった警備員が、それを投げたアスカに向かって一斉に走り
寄って来たのだ。当然である。

「ゲーーーーーっ!! どうしてこっちに来るのよぉぉぉぉぉ!!」

慌てふためいたアスカは、握り拳を固めた両手を思いっきり振って顔を引きつらせなが
ら逃げまどう。その時レイは、我感せずと物陰に隠れていた。

いきなり、何するのよあの娘は・・・。

物陰であまりにも無様な相棒の逃げまどう声を聞きながら、レイは泣きたい気持ちで両
手で顔を覆っていた。

「いやーーーっ!! こっちへ来ないでーーーっ!!」

「おいっ! 早く捕まえろっ!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

「いやぁぁぁぁぁ。アタシは無罪よーーーーっ!!」

しばくすると、ようやく警備員の包囲網を突破したアスカが、物陰に隠れているレイの
元へ逃げ込んで来た。

「まずいことになったわっ! レイっ!」

レイの顔を見た途端、真顔で迫るアスカ。

「ちょっと、こっちへ来ないでよっ!」

しかし、自分にまでトバッチリがきてはたまらないと、スタスタとアスカから離れて行
くレイ。

「とにかく、一緒に逃げるのよっ!」

「だから、1人で逃げてよっ! 近寄らないでっ!」

スタスタとアスカから離れて行くレイ。

「待ってよ。アタシをほってかないでよっ! どうして、そんな冷たいこと言うのよっ!」

「あなたが、あんなにばかだったとは知らなかったわ。」

スタスタとアスカから離れて行くレイ。

「バカとは何よっ! バカとはっ! 追いかけられるとは思わなかったのよっ!」

「あれじゃ思いっきり怪しい女子中学生にしか見えないわよっ!」

スタスタとアスカから離れて行くレイ。

「なにが怪しいのよっ! ちょっと待ちなさいよっ!」

「もうっ! こっち来ないでっ! 来ないでって言ってるでしょっ!!」

レイは片手でアスカをシッシッと追い払いながら、スタスタとゲートを離れて行く。そ
の後ろから、アスカはブツブツ言いながら付いて行くのだった。

<団地>

夜、隣に住む一人暮らしのレイは、いつもの様に晩御飯をおよばれに来ていた。

「あーぁ、今日は酷い目にあったわねぇ。」

キョウコが作る夕食が食卓に並ぶのを待ちながら、アスカはブチブチと愚痴を言う。そ
んなアスカの前で、レイは頭を抱えていた。

「酷い目にあったのは私の方よ。週番は駄目になるし。あんみつはおごって貰えないし。
  友達がとんでもないばかだったって発覚するし。」

「だから、あれはちょっとした失敗だったって言ってるでしょっ!」

「はーーーあぁ。」

反論するアスカを無視して、ただただ溜息をつくレイ。やはり一番ショックだったのは、
楽しみにしていたシンジとの週番が消えたことの様だ。

プルルルルルルルル。

その時、響き渡る電話の音。キョウコは夕食の支度が忙しいので、代わりにアスカが出
ることになった。

「はい。惣流です。」

「アスカ? わたし。ヒカリ。」

「あぁ、ヒカリ? 何?」

「学校の連絡なんだけどね。出席番号順で回そうとしたんだけど、綾波さん家にいなく
  て。そっちにいる?」

「いるわよ。」

「よかったぁ。じゃ、綾波さんから連絡回してって言っておいて。連絡はねぇ・・・。」

「伝えとくわ。」

「でね。男子の方にも伝えてくれないかしら?」

「いいわよ。相田に回せばいいのね?」

「ううん。相田くんには、もう言っちゃったんだけど、回して貰う様に言うの忘れちゃ
  ったから、碇くんから回してくれないかしら?」

「えっ!?」

「どう?」

「いいわよ。いいに決まってるでしょ。」

「それじゃ、宜しくね。」

「サンキューっ! ヒカリっ!」

電話を切ったアスカは、喜び勇んでレイの元へ駆け寄ると、今の電話の内容を話した。

「ほんとぉ!? 早速電話するわ。」

「ちょっと待ちなさいよっ! アンタだけ電話するなんてずるいわよっ!」

「だって、洞木さんは私に電話してって言ったんでしょ?」

「あーーーーっ! そんなこと言っていいと思ってんのっ!?」

「うそうそ。じゃわたしから電話して、詳しいことは直接聞いたアスカから言うからっ
  て電話代わるわ。」

「それ、いいわね。それでいいわ。」

「じゃ、さっそく電話しましょ。」

アスカとレイは、電話の前にいそいそと食卓の椅子を運ぶと、学校の名簿を開いて電話
をかける準備をした。

「緊張するわね。」

電話のプッシュボタンを押そうとするレイの指が、緊張の為か僅かに震える。

「いいから、早くかけなさいよっ! 早くぅ!」

「うん。」

ピッポッ・・・。ガチャン。

「なんで切るのよっ!」

「最初に何を話そうかなって・・・。」

「そんなの、学校の連絡があるからって言えばいいじゃないのよっ!」

「普通、最初は『こんばんは』とかじゃない?」

「はぁ? 普通は『もしもし』でしょ? 電話は。」

「あっ。そうよね。」

「訳わかんないこと言ってないで、さっさとかけなさいよっ!」

「うん。」

ピッポッ・・・。ガチャン。

再び、かけ始めた電話を切るレイ。

「何やってんのよっ! アンタわっ!」

「その後は、何を言えばいいの?」

「もうっ! 代わんなさいっ! アタシがかけるわっ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。」

「まったくっ! 『綾波です』って言えばいいでしょうがっ!」

「そ、そうね・・・。」

ゴクン。

生唾を飲み込んだレイは、電話機をじっと見据えると全神経を人差し指の先に集中して
シンジの家に電話をかけた。

ピッポッパッポッパ。

レイの耳元に当てた受話器の向こうから、幾度かの発信音が聞えてくる。その後ろでは、
期待に胸を膨らませたアスカが緊張するレイのことを見据えている。

ガチャ。

『もしもし、碇ですが。』

「あっ・・・。あの・・・。こ、こんばんはっ!」

ボカッ!

「いったーーーーーーーいっ!」

「『もしもし』だって言ってるでしょーーがっ!!」

後ろから頭を殴られたレイは、涙目で頭を押さえながらも電話の話に神経を集中する。

『あの? どちらさまですか?』

「ご、ごめんなさい。綾波です。」

『あぁ、綾波か。どうしたの?』

「うん。その・・・学校の連絡があって・・・。」

『なんだ、そのことなら、ケンスケから聞いたよ。』

「え?」

『それだけ?』

「うん・・・それ・・・だけ・・・。」

『そっか。わざわざありがとう。それじゃ。』

「うん。じゃ。」

ガチャン。

電話を切るレイ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

いつ自分に順番が回って来るか、期待に胸を膨らましていたアスカはぎょっとして言葉
を詰まらせる。

「な、な、な、な、な、なんで切るのよーーーっ!!!!」

「碇君・・・相田君から、もう連絡聞いたって・・・。」

「だからって、だからって! 切ることないでしょーがっ! 切ることはぁぁぁぁっ!!」

「だって・・・。」

「ひっどーーーいっ!! なんてことすんのよーーーっ!!!」

むぎゅーーーー。

あまりのことに、アスカはレイの首を閉めながら迫って行く。レイは、そんなアスカに
押されて椅子から転げ落ちる。

「く、くるしい・・・。許して・・・。」

「許せることと、許せないことがあるのよーーっ!!」

むぎゅーーーー。

馬乗りになってレイを攻め続けるアスカ。レイもこれはたまらないと、とうとう反撃を
開始した。

「仕方ないでしょっ! 碇君が切っちゃったんだからぁっ!!」

制服のスカートを翻して、玄関先でプロレスを始める2人。ドタンバタンと大きな音が
惣流家に響き渡る。

「アスカにレイちゃんっ! 何してるのっ! 下に住んでいる人に迷惑でしょっ!」

その音を聞きつけたキョウコが、玄関先まで走り寄って来たので、アスカもレイもしぶ
しぶプロレスをやめた。

「まったくもう。あなた達は女の子なんだから、もう少し女の子らしくしなさいっ!」

「おばさま、ごめんなさーい。」

「だって、レイが・・・。」

怒られながらもブチブチと文句を言って肘でレイをコツコツとこずくアスカ。せっかく
のチャンスだったのに、電話できなかったことが心残りなのだろう。

「もう、許してよ・・・。」

「明日あんみつおごりなさいよねっ!」

「わかったわよ・・・・。」

こうして、波瀾万丈の2人の1日が終わっていった。

その夜、それぞれの家でそれぞれの毛布に包り幸せな眠りについた2人は、それぞれの
自分勝手な幸せ一杯の夢を見た。

2人の恋路の行く先はまだまだ遠い未来になりそうだが、仲良しアスカちゃんとレイち
ゃんは、今まさに花も恥じらう恋する乙女真っ只中であった。

fin.
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