・・・・・ATフィールドは心の壁。
・・・・・人から自分の心を守る壁。
・・・・・ATフィールドが、人の心をわからなくする。

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ATフィールド 〜綿帽子の様に〜
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作者注:レイが可哀相です。アヤナミストの方はご注意下さい。
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<ネルフ本部>

「ひ、ひっどーーーーーーーーーーい!!」

額に青筋を立てて叫ぶアスカ。申し訳ないという気持ちはあるものの、ミサトにはどうす
ることもできない。

「ファースト! アンタも何とか言いなさいよ!」

「仕方が無いわ。もう私には絆が無いんだから。」

「アンタは、こんな仕打ちを認めるっての!?」

アスカが怒るのも無理は無かった。エヴァシリーズを倒した今、既にネルフには敵は無
く、残ったエヴァは初号機のみ。シンジ以外のパイロットは不要という判断により、ア
スカとレイには解雇通知が渡されたのだ。

「それから・・・その言い辛いんだけど、機密に関わるから部外者のアスカには、うち
  を出ていって貰わなくちゃいけないの・・・。
  レイもあの団地の取り壊しがあるから・・・その・・・。」

「な、な、なんですってぇーーーーー!! 明日からの生活は、どうするのよ!!」

「わたしもねぇ、がんばって反論したんだけど・・・・、ゴメン!!」

本当に申し訳無さそうにミサトは、両手を合わせてアスカに謝る。

「謝られたって、生きて行けないわよ!!」

「一応、退職金は2人に出るから・・・。」

「いくらよ!」

「今、街の復旧とかで、予算が足りなくて・・・。」

「そんなことは、どうでもいいから、いくら貰えるか聞いてるのよ!」

「さ・・・300万。」

「え? 何?」

「300万・・・。」

「ドル?」

「円。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「その・・・、退職する人間に予算を掛けるなら、次期ネルフ司令となるシンジくんに
  予算を使えって・・・。その・・・。」

「さ、さ、300万でどーしろってのよ! 半年も生活できないじゃないのよ!!!!」

「これが、その300万円なんだけど・・・。」

300万円の入った封筒をアスカとレイに手渡すと、ミサトは再び両手を合わせて平謝
りする。

「ゴメン!!」

「もぉいいわ!! こんな所なんて、こっちから願い下げよ!! ファースト行くわよ!!」

アスカとレイは、深々と頭を下げるミサトに目もくれずネルフ本部を後にした。

<喫茶店>

「ファースト! これからどうするのよ。」

「わからない。」

「そんなこと言ってる場合じゃ無いでしょーが!! 寝るところも無くなったのよ!」

「そうね。」

「そうねって・・・アンタねぇ。」

今は、目の前でジュースを飲むレイだけが、相談相手だという現実をアスカは呪った。
レイに相談しても無駄だと思ったアスカは、これからの身の振り方について、1人考え
に没頭する。

どうしようかしら・・・ドイツへ帰ろうかしら?
エヴァのパイロットとしては優秀なくせに、まったくこの女だけは、何の役にも立たな
いんだから・・・・ん? エヴァ?

何かが閃いたアスカは、目を輝かせてストローでジュースを飲むレイに顔を近づける。

「アンタ、エヴァに乗らなくてもATフィールド作れるのよね!」

「ええ。」

「それよ! せっかく特技があるんだから、利用しない手はないわ!」

「どういうこと?」

「2人でチームを組んで商売するのよ!」

アスカの発案は、アスカが営業とマネージメントを担当し、契約が成立した時点でレイ
がATフィールドを使って仕事をするというものであった。

「それでいいわ。」

「それじゃ、決まりね! ということはぁ、まずは事務所になる家を、探さないといけ
  ないわね。」

自分の考え出した案に満足したアスカは、早速レイを引き連れ、手頃なマンションを探
して歩いた。

<マンション>

幾つかのマンションを見て回り、ここは5件目。

「ねぇ、ここって結構良くない?」

「そうね。」

交通の便も良く、3LDKのマンション。アスカとレイの部屋が1つづつと、事務所と
なる部屋が1つ。

「ここに決めましょ。いいでしょ?」

「いいわ。」

こうして、アスカとレイの新たな生活が始まった。アスカは、荷物の整理だけを済ませ
ると早速営業活動を開始し、レイは足りない生活用品の買い出しに出かけた。

その夜。

レイは夕食の準備をしている。アスカは営業活動に出かけたままだ。

ドタドタドタ!!

「契約相手を見つけたわよ! 早速だけど、明日が初仕事よ!」

野菜炒めを作っている所へ、ドタドタと嬉しそうな顔をしたアスカが帰ってきた。初め
ての契約が成立したのが嬉しいのだろう。

「もう、決まったの?」

「そりゃ、このアタシが直々に営業活動してるんですからねぇ。」

「何をすればいいの?」

「シンジケートZとか言う10人の凶悪テロリストグループがあるらしいわ。明日、そ
  の一斉検挙を行うの。そこで、ATフィールドの出番よ。」

「わかったわ。」

「500万の仕事よ! いい? この会社を大企業に成長させて、ネルフの奴等を見返し
  てやるのよ! 傷つけれれたプライドは、10倍にして返してやるんだから!!」

燃えるアスカの横で、レイは野菜炒めを食べながら、明日の仕事の手順書をじっくりと
読むのであった。

<テロリストのアジト>

「では、よろしくお願いします。」

「まかせときなさい。」

自慢気に、胸を叩くアスカ。

「じゃぁ、レイ。後は頼んだわよ。」

「わかったわ。」

20人くらいの警官を率いたレイは、大勢の警官にぐるりと取り囲まれたビルに潜入し
て行く。小さな古いビルには狭い階段がついており、その先には廊下があった。

ガタン。

突然、廊下の先にあるドアが開いたかと思うと、数人の男達がマシンガンを連射し始め
る。いきなりの出来事に警官達は身構えるが、レイは涼しい顔でATフィールドを展開
しながら、先へ先へと進んで行った。

「どうなってるんだ!!!」

テロリスト達は、マシンガンが効かない空色の髪の女子中学生に慌てふためく。バズー
カなども持ち出すが、何の効果も無い。みるみる追いつめられるテロリスト達。

「おどれーーーーーー!!!」

逃げ場の無いテロリストの集団は、最後は日本刀で切りかかって来るが、コンクリート
以上に固い壁に対して切り付けるような物だ。ものの数分でシンジケートZは、お縄と
なってしまった。

「ありがとうございました。シンジケートZのメンバーが2人ほど行方不明ですが、本
  拠地も押さえたことですし、じきに捕まるでしょう。では、契約金の方は振り込んで
  おきますので。それから、お礼金として100万円上乗せしてあります。」

「お安い御用よ。また、よろしくね。」

アスカはレイを連れると、意気揚々と現場を後にした。

<事務所のマンション>

仕事の成功と稼いだ金額の量に、家に帰ったアスカの顔からは笑顔が途絶えなかった。

「ネルフの退職金以上に、1日で稼いでやったわ! じゃ、300万はアンタの講座に
  入れておくからね。」

「ええ、まかせるわ。」

「アンタ本当に、無頓着ねぇ。商売してるんだから、そんなんじゃダメよ!」

「そう?」

「明日から、ガンガン営業して仕事をいっぱい取ってくるわね! 稼いで稼いで、大企
  業にして、ネルフの奴等を見返してやるんだから!!!」

翌日、アスカが取ってきた仕事はビルの破壊だった。爆破で取り壊すとしても莫大な予
算が必要となるのだが、ATフィールドを利用すれば非常に低額で実現するのだ。しか
もビルの破片が飛び散ることも無く、安全であり衛生面も良い。

<破壊現場>

「あのビルを破壊すればいいのね。」

「そうよ。がんばってね。」

レイはビルの周りにATフィールドを張り巡らせると、内へ内へと力を絞っていく。一
瞬のうちに、辺りに被害を加えることも無く、ビルは完全に破壊された。

「では、約束の1000万は講座に振り込んでおきますので・・・。」

「よろしく頼むわね。」

                        :
                        :
                        :

それから、アスカはネルフの人間を見返したい一心で営業活動に励んだ。どんな仕事で
も依頼されたら受け、その仕事をレイは着実にこなしていった。

                        :
                        :
                        :

一ヶ月後。

アスカの営業の上手さと、レイのATフィールドの融合で、短期間で莫大な財産を築き
上げ、また、仕事の数も1日に何件も仕事をこなさなければならないという、忙しい毎
日を送っていた。

<事務所のマンション>

ふふふ、これこそが、アタシの求めていた世界よ!

ある朝、巨額の金額が記載されている通帳と、数々の表彰状を前にアスカは浮かれてい
た。

このまま続ければ、ネルフに対しても影響を及ぼせるくらいのビッグカンパニーになる
わ! 見てなさい! みんな首にしてやるわ!!!

アスカが、一人妄想にふけっていると、レイが部屋から出てくる。

「おはようレイ。今日は忙しいわよ! 8件もあるからがんばってね!」

しかし、レイは食卓に座り込んでしまう。なんだか、いつもと比べて様子がおかしい。

「なんだか、体調が悪いわ。」

「え・・・、それは困ったわね。でも、契約破棄するとまずいし・・・。風邪?」

「大丈夫・・・だと思う。」

「残りの契約は、今日を入れて3日分だから、それが終わったらバカンスに行きましょ
  うか?」

「バカンス?」

「そうよ。1ヶ月くらい奇麗な海の近くで、スクーバダイビングしたり、美味しいもの
  食べたりして遊びまくりましょうよ。だから、もうちょっとだけがんばってよ。」

「わかったわ。大丈夫だと思う。」

「終わったらバカンスに行きましょう。」

<仕事現場>

レイは初めて行くバカンスを夢みて、それから3日間、重い体をひきずりながらも、仕
事をこなし、いよいよ契約している最後の仕事となった。

「レイ、これが終われば、バカンスだからがんばってね。」

「ええ。」

しかし、もう日は沈みかけており、辺りは暗くてアスカにはよくわからなかったが、そ
の時のレイの顔色は、真っ青だった。

この仕事が終われば・・・。

力を振り絞って、レイはATフィールドを展開する。ATフィールドが輝いた瞬間、ア
スカの目の前でバタっと地面にレイが倒れた。

「レイ!!!!」

突然の出来事に驚き、レイの側に駆け寄るアスカ。しかし、レイは身動き一つせず、地
面に倒れたまま気を失っていた。

「レイ! レイ!」

レイを抱きかかえたアスカは、レイの顔を覗き込む。かすかな光に照らされたレイの顔
には生気を感じることができない。

「ちょっと! 誰か救急車を呼んで!! 早く!!」

<病院>

その後、レイは救急病院で診断を受けたが、別段異常は見られなかった。医者の判断で
は、単なる過労であろうということだった。

レイ・・・こないだから、体調が悪いって言ってたもんね。

病室のベッドで、意識を失ったまま横たわるレイを見つめるアスカ。

体調が悪いなら、言ってくれたら・・・。

その日、面会時間が終わると、『明日になれば元気になるでしょう』という医者の言葉
に安心して、アスカは家に帰った。
しかし、医者の言葉とは裏腹に、レイは3日間も気を失ったままだった。

「ちょっと! いくら過労って言ったって、3日間も意識を取り戻さないわけないじゃ
  ない!!」

病室に医者を呼び付け、問い詰めるアスカ。

「しかし、あれから再検査を2回も行いましたが、どこにも異常は見られないんですよ。」

「異常が無いわけないじゃないの!! ちゃんと検査してるんでしょうね!!」

「そうは言われましても、問題無い物はそうとしか言えませんから。」

アスカと医者の言い合いが、果てしなく平行線のまま長々と続いていた時、ふいに病室
の扉が開く。

「アスカ、久しぶりね。」

入ってきたのは、ネルフ技術部部長のリツコだった。リツコは、アスカに軽く挨拶する
と、医者に向き直りIDカードを見せる。

「ネルフ技術部部長、赤木リツコと申します。レイを預からせて頂きます。」

「ネ。ネルフ・・・。」

今や敵対組織の無くなったネルフは、世界の覇権を握っていた。ネルフという名前を聞
いただけで、たじろいでしまう医者。

「アスカ、あなたも来て頂戴。」

「もちろんよ。」

リツコは、気を失っているレイとアスカを伴って、ネルフ本部へと向った。

<ネルフ本部>

「あなた達、ATフィールドで商売をしていたらしいわね。」

「そうよ! アンタ達に首にされたから、商売でもしないと生きていけないんだから、
  仕方無いでしょ!」

「私達も、もっと注意しておくべきだったと、後悔してるわ。」

「何がよ。」

「レイ・・・死ぬわよ。」

「え・・・・・・・・・・今、何て言ったの?」

「既にかなり危険な状態だわ。このまま今の商売を続けたら間違いなくレイは死ぬわね。」

「どういうことよ!」

ATフィールドとは、個人を形成する心の壁である。それを外部に向って放出すること
は、個人を形成する力を消耗するのだ。つまり、リツコの話では、レイを支えるATフ
ィールドには、限界があり、それを超えるということは、レイの死を意味しているとい
うのだ。

「そんな・・・。」

「今、ICUでレイの治療を行っているわ。幸い最悪の事態は避けられたけれど、もう
  1度強力なATフィールドを展開したら、レイを守っているATフィールドは無くな
  るわ。つまり、命は無いでしょうね。」

「・・・・・。」

「わかったわね。」

「ええ。」

アスカはその日、レイをリツコに預けると、家に帰った。

<事務所のマンション>

数々の賞状がアスカを出迎える。

これだけやったんだもん。十分よね。

アスカは、その日のうちに、自分達の商売の広告を出している雑誌や広告会社に、営業
停止の連絡を入れた。

<ネルフ本部>

翌日、ネルフ本部の病室でレイは目覚めた。

「レイ、起きた?」

「ここは?」

「ネルフよ。久しぶりでしょう。」

「ネルフなの?」

「そうよ。アンタが倒れた後、病院へ運び込まれたんだけどね原因がわからなくて、ネ
  ルフで治療することになったの。」

「あ、仕事は?」

「ATフィールドはちゃんと展開されたから、仕事は成功したわ。」

「じゃあ、バカンスに行けるのね。」

「そうよ。その前にちゃんと体を治してからね。」

レイは、見知らぬバカンスに夢をはせ、笑顔でアスカに微笑みかける。

「あのね・・・・。」

「何?」

「アンタ、ATフィールドを使うと体調に異変を来すこと知ってたの?」

「知らないわ。」

「そう・・・。リツコがね、ATフィールドを使ったらもう駄目だって。」

「それじゃ、仕事はどうするの?」

「もう、おしまいね。」

「・・・・・・・・・・・・私はもういらないのね。」

「は?」

「ATフィールドが無くなったら、私とあなたとの絆が無くなるわ。」

「アンタ・・・、そんなわけないでしょ! まさか、そんなこと考えて無理して仕事を
  したの? もう一生生活に困らないくらい稼いだんだから、仕事は止めましょ。」

「でも、それじゃアナタの希望だった、ネルフを見返すことはできないわ。」

「アンタバカぁ? そんなのもうどうでもいいじゃん!」

「アスカ・・・。」

「アタシ達は、仲間なんだから。絆なんてわけわかんないこと言ってないで、体を治し
  てバカンスに行きましょうよ!」

「仲間・・・・アスカ。」

その後、レイは3日間ネルフの病室にとどまったが、ようやく退院できる日が来た。

「さ、レイ。明日からバカンス、バカンス!」

「ええ。」

はしゃぐアスカと、嬉しそうなレイは、リツコから今後の生活方法などの指示を受けた
後、ネルフを後にした。

<市街地>

「さって、修学旅行も行けなかったんだし、思いっきり遊びましょうね!」

「うん。」

レイもバカンスを前に、買い物を楽しんでいた。

「レイ、この水着買ったら?」

「え・・・。」

あまりのきわどさ,派手さに絶句する。

「これくらいじゃないと、時代に乗り遅れるわよ!」

「私・・・これでいい・・・。」

レイは結局地味なワンピースの水着を選んだ。

「なんで、そんな地味なの選ぶのよ?」

「アスカの選ぶのって、恥ずかしいから・・・。」

その時アスカは、レイから初めて恥ずかしいと言う言葉を聞いた気がした。

「ま、アンタがそう言うんならそれでいいわ。」

その後、バカンスの話に花を咲かせながら、2人は買い物をしてまわった。買い物の途
中、レイは、初めてのバカンスに胸をときめかせ、アスカにいろいろ話をしてくる。ア
スカも、楽しそうに受け答えを繰り返した。

<アスカとレイのマンション>

アスカとレイは、買い込んだ水着や旅行の用意を両手いっぱいに持ちながら、マンショ
ンへ帰り着いた。

そして、玄関の扉を開け、家の中に入った時・・・

「おい! おまえら。」

リビングに1人の男の影が見える。

「何よ、アンタ達。」

「おまえらに潰されたシンジケートZの生き残りだよ。ヘヘヘ。」

「な・・・・逃げるわよ! レイ。」

アスカとレイは、逃げようとしたが、玄関にはいつのまにかもう1人の男が立ちはだか
っていた。その手にある拳銃が、レイに向けられている。

「レイ!」

ガン!

拳銃を見たアスカは、咄嗟にレイに飛び掛かり突き飛ばす。

「キャーーーーーーーーーーー!!」

おかげでレイは難の逃れたが、銃弾がアスカの足をかすめ、白い足から血が滲み出る。

「アスカ!!!」

レイが立ち上がり、男達を睨み付ける。

「ダメ! レイ! 今度使ったら!!」

男達の拳銃が、アスカに向けられる。

「アスカ、仲間って言ってくれたことうれしかったわ。」

アスカに微笑み掛けるレイ。

「ダメーーーーーーーーーーーー!!」

レイの意図を理解したアスカは、慌てて立ち上がろうとするが、足が思うように動かな
い。

「仲間の復讐だ。」

ニヤリと笑った男達の指が引き金にかかった瞬間、赤い8角形の光が輝き辺り一面を支
配した。

「嫌ぁーーーーーーーーーーー!! やめてぇーーーーーーーーーー!!」

アスカの絶叫と同時に、男達は一瞬のうちに吹き飛ばされていた。目の前では、光に包
まれたレイが、アスカに微笑みかけている。

「アスカ・・・・。今迄ありがとう。」

赤い輝きの中、レイの体が薄れてゆく。痛い足をひきずって、手を伸ばしながらレイに
近寄るアスカ。

「レイ? ねぇ、嘘でしょ? ねぇ、たった、1回使っただけじゃない、ねぇ。」

「アスカ・・・はじめて仲間として見てくれたアスカ・・・。」

「お願い、行かないで! 明日からバカンスじゃないの! ねぇ! 嘘でしょ、嘘なんで
  しょ? ねぇ、水着も買ったじゃない。ねぇ!!!!!!」

「最後に生きる喜びを教えてくれて、うれしかったわ。」

ようやく、アスカがレイの側にたどり着いた時、レイの体はたんぽぽの綿帽子が飛んで
いく様に、空気の中へと溶け込んで行った。

「どうしてなのよ! なんでよ! 嘘って言ってよーーーーーーーーーーーーーー!!!
  ねぇ!!! 行かないでよ!!!  レイーーーーーーーーーーーーー!!!」

レイが消えると同時に、赤い光は消え去り、暗闇がアスカとレイのマンションを支配す
る。つい、数秒前までレイが立っていた場所にうずくまるアスカ。

「うっ・・・うっ・・・そんなのって・・・。なんで・・・うっうっ・・・。」

光の消えた部屋の中、アスカの瞳からは、涙の粒があふれ出た。

































アスカは、泣き続けました。

この日、アスカは生まれて初めて人の為に泣きました。

心の底から泣きました。

その涙が枯れた時、流した涙の数だけ、アスカは人の心を理解できるでしょう。










・・・・・ATフィールドは心の壁。
・・・・・ATフィールドを乗り越えた時、心は通じ合えるのかもしれません。

fin.
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