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逆行なシンちゃんがスーパーの事情
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<サードインパクトの世界>

とうとうサードインパクトが発生してしまった。何もなくなった世界で、呆然と立つシ
ンジ。

ふとレイの声が聞こえる。

『何を望むの・・・。』

「みんな1つになっちゃうなんて・・・。ぼくはこんな世界を望んでなかった。」

『何を望んでたの・・・。』

「ぼくは、アスカや綾波と分かり合いたかっただけなんだ。」

『そう。私やアスカと・・・。』

「もう1度チャンスがあれば・・・。」

『碇くんの想い。わかったわ。』

「どういうことさ。」

『もう1度やり直しましょ。』

「そんなことができるの?」

『ええ。碇くんの想い受け取ったもの。』

「本当にもう1度やり直せるんだねっ! 綾波っ!?」

『時間を遡るわ。』

「うんっ!」

『私と惣流さんが、碇くんと合体すればいいのねっ。』

「えっ! ちょっと待ってっ!? なんか違うよ? 綾波ぃ!?」

『あの時に戻って・・・合体しましょ。』

「違うっ! 綾波っ! なんか間違ってるっ! 待ってっ!!! 待ってよっ!!!!」

レイに向かって叫ぶシンジだったが、既にレイが時の歯車を逆回転させた後だった。

「合体ってなんなんだよっ! 綾波ってばっ!! 綾波っ!!!」

ギュイーーーーーーン! 逆行開始。

「綾波ーーーーーーーっ!!!! ぼくの話も聞いてよーーーーーーっ!!!!!
  綾波ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

シンジの悲痛な叫びは、逆回りする時間に飲み込まれ掻き消されて行くだけだった。

<第3新東京市>

次にシンジが気付くと、あの日あの時、父の手紙を手にこの街へ来たJRの駅に立って
いた。

ぼ、ぼく。
戻って来たんだ・・・。

ぺたぺたと自分の体を触って、おかしなところはないかと確認する。

別に変なとこないな・・・。
うん。大丈夫だ。

アスカ(アンタバカーーーーっ!! アタシの体どーしてくれんのよっ!!!)

え? え? え?
アスカ?

アスカ(アンタん中に取り込まれちゃったじゃないのよっ!!!)

ど、どうしてアスカの声がっ????
どうなってるんだーっ???

きょろきょろ見回すが、何処にもアスカらしい人影はない。それなのに、先程から煩い
程のアスカの声がキンキン聞こえて来る。

レイ(碇くんが、私とあなたと1つになってやりなおしたいって。)

アスカ(ファーストっ! アンタねぇっ! どういう解釈したらそーなんのよっ!)

レイ(碇くんが合体したいって・・・。)

アスカ(違うでしょーがっ!!!!)

綾波の声まで聞こえる?
ま、まさか、本当に・・・。
合体???

か、考えたくない・・・。

レイ(そう。碇くんの願いを叶えたの。合体したの。)

や、やっぱり・・・。
なんで、そーなるんだよぉ!

JRの駅前で頭を抱えて蹲るシンジ。合体したということは、この2人が四六時中自分
の中に・・・? 嗚呼、考えたくない。考えたくない。考えたくない。

綾波に頼った僕が馬鹿だったんだ。
ぼくが・・・。
ぼくが・・・。

レイ(碇くんは、馬鹿じゃないわ。)

アスカ(ファーストっ! アンタがバカなのよっ!)

レイ(どうしてそういうこと言うの? 私・・・馬鹿じゃないもの。)

お願いだから、ぼくの中で喧嘩はやめてよーーーーっ!!!!

レイ(碇くんのお願いなのね。なら、もうやめるわ。)

アスカ(ハンっ! シンジの言うことなら、なんだってきくのねっ!)

レイ(猿の言うことは、ききたくないもの。)

アスカ(ムキーーーーーーっ!!)

そこへ懐かしいあの青いルノーが、猛スピードで迫って来た。ミサトがまだ生きている
のだと、少しシンジは嬉しくなる。

「ミサトさーーんっ!」

アスカ(アンタバカぁっ!? まだアンタ、ミサトのこと知らないはずでしょうがっ!)

あっ、そっか。
初対面だったね。

「葛城さーんっ。」

アスカ(苗字に変えろって言ってんじゃないわよっ!)

あ、ごめん・・・。

目の前に止まる青い車。そこからいつもネルフで着ている赤い服を羽織ったミサトが、
車の扉を開けて顔を出した。

「乗ってっ!」

レイ(乗っては駄目。葛城三佐の運転は危険。)

そんなこと言ってる場合じゃないよ。
乗るよっ!

レイ(嫌。前に1度乗って、死にそうになったもの。)

綾波ぃ。

レイ(嫌なの。)

ぼくがネルフへ行かないと、この世界の綾波が出撃しなくちゃいけないんだよ?

レイ(早く乗って。碇くん。私が可哀想だもの。)

・・・・・・。

自分から言い出したこととはいえ、なんとなく納得いかないシンジだったが、とにかく
乗らないわけにはいかないのでミサトの車に乗り込んだ。

<ネルフ本部>

あれから前回と同じくN2を落とされたり、すったもんだはあったが、めでたくネルフ
に到着・・・したまでは良かったのだが、やはり道にミサトが迷っている。

ミサトさーん。
だから、そっちじゃないってばぁ。

アスカ(しゃーないじゃない。方向音痴なんだからっ。)

レイ(アスカも方向音痴。)

アスカ(なんですってーーーっ!!!)

レイ(マトリエル戦の時、あなたのお陰で暗闇を行ったり来たりしたもの。)

アスカ(アンタも古いこと蒸し返すんじゃないわよ!)

レイ(古くないわ。まだ未来のことだもの。)

アスカ(つまんないこと、突っ込むわねぇっ!!)

あーっ! もう2人とも静かにしてよっ。
ミサトさんが、何言ってるのか聞こえないじゃないか。

「ごめんねぇ、シンジくん。まだ、よくわかんなくてぇ。」

アスカ(聞かなくたって、道に迷った言い訳、さっきから繰り返してるだけよっ!)

そうだけど・・・。
ぼくがミサトさんに、道教えてあげたら駄目なの?

レイ(怪しまれるわ。)

アスカ(つくづくバカシンジねぇ。アンタがネルフの中知ってるわけないでしょっ!)

そりゃ、そうだけど。
そこまで、バカバカ言わなくても・・・。

ぐるぐるネルフの中を回ったあげく、ようやくリツコのお迎えと合流。これでケージへ
行けそうなので、ちょっと安心。

<ケージ>

ケージに辿り着くと、今や愛着すらある初号機の顔がLCLから出ており、その上には
ゲンドウが立ってこちらを見下ろしている。

「よく来たなシンジ。」

どうしよう。
なんて答えたらいいんだろう?

アスカ(とりあえず、前回と同じセリフ言ってみたらぁ?)

そうだね・・・。
って、ぼくなんて言ったっけ?

アスカ(アンタっ! 自分の言ったことも覚えてないわけぇぇっ!!!?)

ごめん・・・。

レイ(碇くんは、こう言ってたわ。)

綾波知ってるの?

レイ(『綾波っていう、可愛いパイロットに会いたいんだ。』って・・・。)

そんなこと言ってない。

レイ(そう・・・違うのね。)

アスカ(あったりまえでしょうがっ! とにかく、
       『Hello! ゲンドウ! イエーッ!』
        とでも言っとけばぁっ!?)

えーーーーっ!
そんなこと、ぼくがぁ?

アスカ(言うのよっ!)

「へ、へろ〜。げ、げんどう・・・。いえー。」

シンジのその言葉を聞き、引き攣るゲンドウ。この5年の間に、自分の息子のキャラが
何か変わったのではないかと疑う。

とにかく、返事をしなければならない。慌てたゲンドウは、焦って同じ言葉を返す。

「へ、へろー。」

わっ!
アスカ、父さんが返事したよっ!
父さんが、『へろー』だってっ。見て見てっ!

喜ぶシンジ。

アスカ(・・・・・・・・なに喜んでるのよ。)

挨拶はそのくらいで終わり、いよいよゲンドウが初号機発進の命令を出す。ミサト達が
パイロットがいないと抗議するが、そんなことを聞くゲンドウではない。

「今、予備が届いた。」

アスカ(予備って何?)

ぼくのことだよ。

アスカ(ぬ、ぬわんですってーっ! アンタ、そんなこと言われてたのーーーっ!!!)

だって、父さんだもん。
仕方ないよ。

アスカ(アンタ、それで黙ってたわけーーーっ!!!!!)

仕方ないじゃないか。

アスカ(ざけんじゃないわよっ!!!)

さらに追い討ちをかけるように、ゲンドウが言葉を続ける。

「乗るなら早くしろ。でなければ帰れっ!!!!!」

アスカ(ムカーーーーっ! 自分が呼んどいて、帰れですってーーーーーーっ!!!
        ウガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!)

解説しよう。アスカとレイは、あらゆる感情が頂点に達した時、シンジの体を乗っ取っ
てしまうことがある。

「やかましいぃっ! 髭おやじっ!!!! 
  今すぐ乗って、エヴァで踏み潰してやるーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

わーーーーっ! アスカっ!
やめてよーっ!
父さんになんてこと言うんだよっ!!!!

「その髭っ! 全部抜いてやるぅぅぅぅーーーーーーーーっ!!!」

シンジの体を乗っ取って暴れ出したアスカは、ケージからゲンドウの所へ向かって走り
出した。もう、シンジは大慌て。

やめてよーーーっ!
父さんの前で、変なことしないでよーーっ!

お願いだから、おちついてっ!!!!
早くエヴァに乗らなきゃ、人類は滅びちゃうよっ!!!!

アスカ(ふーふーふー。今度あんなこと言ったら、ただじゃ済まさないんだからっ!)

はぁ。
落ち着いてくれた・・・。
助かった。

そんなシンジの様子を見ていたゲンドウは、なんとか無言で威厳を保とうとしていたが、
ちょっぴり怖かったようである。

「じゃ、ぼく乗るよっ!」

「乗ってくれるのね。パーソナルデータをシンジくんに書き換えてっ!」

あまりアスカを刺激すると何をしでかすかわからないので、とにかくエヴァに乗ること
にする。が、速攻でレイが抗議してきた。

レイ(碇くん。駄目。)

どうしてさ。
ぼくが乗らなきゃ。

レイ(今すぐ素直に乗ったら、この後私が包帯を巻いて出て来るシーンがカットされる
      もの。)

いや、別に無理に出て来なくても。
怪我してるんだし。

レイ(あのシーンは重要。だから、カットは駄目。)

アスカ(使徒が来てんのよっ! そんな場合じゃないでしょーがっ!)

レイ(大丈夫。私が登場した後でも、前回ちゃんと間に合ったもの。)

わかったよ。
嫌だって言えばいいんだろ。

「やっぱり、乗るのやめるよ。」

「シンジくんっ! 今、乗るって言ったじゃないっ。」

エントリーの準備を始めていたミサトとリツコが、びっくりして振り返る。

「もう1人パイロットがいるんですよね。その子を呼んで下さいっ。」

「レイは怪我してるのよ。」

ねぇ、綾波ぃ?
怪我してるのに、呼んだら可愛そうだよ。

レイ(私自身が許可するもの。問題ないわ。)

はぁ〜。
なんだかぼく、極悪人みたいじゃないか。

「いいから、その子を呼んで下さい。」

「シンジくん・・・あなた酷いこというのね。」

ジロリとミサトに睨まれてしまった。なんて嫌な役回りなのかと、天を恨みたくなる。

それから間もなく、ベッドに乗った包帯だらけのレイがケージへ運ばれて来た。

レイ(とっても、私の健気さが出てて素敵。)

アスカ(もうこれで気が済んだでしょっ! さっさと使徒退治に行くわよっ!)

レイ(まだ駄目。ここからが大事なの。)

レイがそう言うや否や、ジオフロント全体がぐらぐらと地震のように揺れた。サキエル
が直接攻撃してきたのだろう。

レイ(碇くんっ! 早く私を守ってっ!)

もー。
わかってるよ。

レイに言われるまでもなく、ほおっておくわけにもいかないので、ベッドから転げ落ち
るこっちの世界のレイを抱き起こしに行く。

レイ(そこで前回は、確かキスをしてくれたわ。)

アスカ(ぬわんですっってーーーーーっ!
        アタシがファーストキスだったってのは、ウソだったのねーーーーっ!!!)

してないっ! してないよっ!!!!
綾波っ! いい加減なこといわないでよっ!

レイ(つまらないことだけ覚えてるのね。)

してたら、忘れないよ。
キスなんか・・・。

「レイっ! シンジくん、大丈夫っ!!!?」

倒れるレイとシンジに、ミサトが驚いて駆け寄って来る。

レイ(もういいわ。僕が乗りますって言って。怪我してる私を乗せるわけにいかないも
      の。)

わかったよ。

「ぼくが乗りますっ!!!」

「えっ? の、乗るのっ!!?
  またパーソナルデータの書き換えしなくちゃ。
  もう乗らないなんて言わないでね。まったく・・・。」

「・・・・だって。ぼくは。ぼくは。しくしく。」

乗ると言ったり乗らないと言たりするシンジに、ミサトもリツコもちょっと怒った表情
である。使徒戦が始まる前から、シンジは泣きそうだった。

<エントリープラグ>

エントリーしたシンジのシンクロ率がいきなりの80%を超え、発令所から感嘆の声が
漏れる。

あはは。
ぼくって、凄いんだっ。

アスカ(アンタバカぁ? エヴァシリーズと闘った頃のシンクロ率なんだから、あった
        りまえじゃん。)

そうだけど。
いいじゃないか。
誉められたんだから、ちょっとくらい喜んでも。

アスカ(まずいわねぇ。)

なにがだよ?

アスカ(よく考えたら、40%でもイヤーな気がしたのに、いきなりのシンクロで80
        %なんて、ドイツのアタシがこんなこと聞いたら、きっとショックを受けるわ。)

仕方ないじゃないか。

アスカ(アンタっ! シンクロ率、落とすのよっ!)

カヲルくんじゃないんだから、そんなことできないよっ。

アスカ(うーん・・・。
       『アンタ、使徒にヤキモチやいたんだってぇ? うんっ、使徒に嫉妬ーっ!
         なんちゃってぇぇっ!』)

ぶははははははははっ!!!!

『シンジくんっ! シンクロ率が落ちてるわよっ? どうしたのっ!!?』

マヤが驚いて通信で呼び掛けてくる。

「す、すみません・・・。」

アスカ・・・変なこと言わないでよ。
笑っちゃったじゃないか。

レイ(あれで、笑える方がおかしいと思うの・・・。)

なにはともあれ、エヴァの出動準備が整った。いよいよ発進、リフトオフ。サキエル戦
である。

<ジオフロント直上>

高シンクロ率で出撃したまでは良かったが、はてさてどうやってこの使徒を倒そうか思
案にくれてしまう。

どうしよう。
あまり動いたら、トウジの妹が・・・。

アスカ(アンタバカー? 1度倒した使徒くらい、ちょちょいってやっつけちゃいなさ
        いよっ!)

だって、前回は暴走したんだ。
ぼくが倒したわけじゃないよ。

レイ(早くしないと、どんどん迫ってくるわ。)

うーん。
弱点は何処なんだろう?
ぼく、気失なってたからなぁ。

『シンジくんっ! とにかく歩くことだけを考えて!』

うだうだ考え事をしてエヴァを動かさない為、どうしたらいいのかわからなくなってい
るのではないかと、ミサトから指示が入ってくる。

だって、動いたら・・・。
街が壊れて、トウジの妹が。

アスカ(うがーーーーーっ! じっとしてた方が使徒が暴れて危険でしょうがっ!!!)

レイ(碇くんには、任せておけない!!!)

ぎゅいーーーーーーーん!!!

うわっ!
なんだ?
何が起こったんだっ?

「ATフィールド・・・こんちくしょー・・・全開っ!・・・うりゃーーーっ!!!」

わけの判らない言葉を、勝手に自分の口がわめきだした。

「ちょっとっ! 半分乗っ取らないでよっ!」

「おかしいわ。唇が半分しか動かない・・・。」

「アンタまでシンジを乗っ取ったからでしょうがっ!」

どうやら体を2人で乗っ取ってしまったので、同時に喋ると唇が半分づつ違う動きをし
てしまい、何を言っているかわけがわからなくなるようだ。

『凄いですっ! シンクロ率が100%を超えましたっ!』

マヤの声が通信で入ってくる。単にアスカとレイが2人でシンクロしているので、シン
クロ率もその合計になっているだけだが。

「とにかく、アンタはATフィールドで防御担当っ! アタシのATフィールドは中和
  に使うわっ! いいわねっ!」

「わかったわっ。」

「いくわよーーーーっ!!!!」

まるで初号機は暴走した時のような勢いで使徒に迫って行く。その勇猛果敢な姿に、発
令所からまた歓喜の声が上がる。

『凄いっ! 初号機がっ!』

『本当に凄いわ。スーパーシンジくんねっ!』

通信からマヤとリツコの声が聞こえる中、サキエルに猛攻をしかける初号機。レイがA
Tフィールドで完璧に防御する中、アスカはもう1つの自分のATフィールドで敵のそ
れを中和し、圧倒的な力で殲滅・・・見事な勝利っ!になるはずだった。

「アンタバカっ! アンタバカっ! アンタバカっ! アンタバカっ! アンタバカっ!」

ところが、なぜかサキエルにプログナイフなどでは攻撃せず、初号機は往復ビンタの応
酬、アンタバカ攻撃の連打を始めた。

わーーーーっ!
アスカ、なにしてるんだよっ!

「とーりゃーーっ! ヒップアターーーックっ!」

続いて初号機は飛び上がり、お尻からズドン。サキエル、お尻の下で下敷き。

「かいーのぉぉっ!」

そのサキエルに向かって、おしりを擦り付け始める。

ちょ、ちょ、ちょっとっ!
なにするんだよっ! やめてよっ! アスカっ!

「だーいたい、アンタは登場が格好良すぎたのよっ!
  だーから、アタシが苦労したんじゃないっ!」

ちょ、ちょっとっ! 
だからって、かいーのなんてやめてよっ!

「サキエルなんて、よわっちーんだから、おもしろおかしく不細工に勝ってあげるわっ!
  格好良過ぎてこっちのアスカが、アンタを好きになったりしたら困るしねーーーっ!!!」

やめてくれーーーーっ!
おねがいだーーーーっ!

「とーーーりゃーーーっ! おなら攻撃ぃぃぃっ!」

プス!

サキエルの目の前で初号機がおならをかまし、空気が黄色くなる。ぶっ倒れるサキエル。

自分の体なら、そんなことしないくせにーーーーっ!

「女の子が、こーんなことできるわけないじゃん。アンタの体だからできんのよっ!
  いっくわよーーーっ! いえーーいっ! シェーーーッ!」

アスカーーーーっ! 暴走しないでよーーーっ!
初号機の暴走の方がずっと理性的だったよーーーーっ!

シェーの決めポーズまで初号機にとらせるアスカ。体を乗っ取られたたシンジは、涙を
流しながら、なんとか自分の体と取り戻そうとあがき続けるが・・・。

動けっ!
動けっ! 動けっ!
今動かなくちゃっ! 意味がないんだっ!

ぼくのキャラが壊れるぅぅぅぅっ!!!

『シンジっ! 強いのはわかった。真面目にやれ!』
『シンジ君。対面というものもあるんだ。遊んで貰っては困る。』

勝ってはいるものの、あまりにも不細工な戦い方に、とうとうたまりかねたゲンドウと
冬月が怒ってきた。

『シンジくんっ! いい加減になさいっ!』

ミサトまでかなり怒っている。なんとか体を取り替えそうとあがいていたシンジだった
が、それも叶わず、更に怒られまくり滝のような涙を流す。

みんな怒ってるじゃないかーっ!
おねがいだーっ!
もうやめてよーっ!!!!

「とりゃーーーっ! 浣腸攻撃ぃぃぃっ!!!」

プスっ!

聞く耳を持たないアスカは、初号機の左右の人差し指を合わせ、サキエルのお尻に向か
って浣腸っ! これは厳しい。

悶えるサキエル。

「とどめよーーーっ! 電気あんまで、コアを砕くのよーーーっ!」

わーーーーーっ! 
そんなフィナーレやめてくれーーーーーっ!!!!

「とーーーーりゃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

ズドドドドドドドドっ!!!!

電気あんま炸裂。

コアが粉砕。

アスカーーーっ!
酷いよーーーーっ!!!
酷すぎるよーーーーーーーーっ!!!!!!

シンジはもう、黄河か揚子江を思い浮かべるくらいの涙を流し、幽体離脱しそうになっ
ている。

そして、コアを電気あんまで砕かれたサキエルは、あっけなく爆発して消滅したのだった。

「勝ったわーーーっ! 決めのポーズよーーっ!
  コマネチっ! コマネチっ! いえーーっ! コマネチっ! コマネチっ!」

コマネチポーズを決める初号機。その瞬間、ゲンドウの顔がモニタに映し出される。

『お前には失望した!!!』

わーーーーっ!
父さんっ!
違うんだーーっ!

「違うんだーーーーっ!」

ようやく声が出た。戦闘も終わりアスカ達が体の中へ戻って行ったようである。

アスカ(疲れたわ。ちょっと寝るわね。)

レイ(私も・・・お休み。)

『話がある。帰還次第、司令室へ来い!!! この愚か者がっ!!!』

わーーっ! 父さんが怒ってるよっ!!!
アスカぁぁぁっ!
こんなことだけ、ぼくに押し付けないでよーーーーっ!

起きてよっ! アスカーーーっ!
起きてよっ! 綾波ぃぃぃぃっ!

『聞いているのかっ! シンジっ!!!!』

おもいっきり怒った声でゲンドウが怒声を上げる。その後ろで、温和な冬月まで顔を赤
くして激怒している様子がモニタに映っている。

「はい・・・わ、わかりました。しくしく。」

こうして逆行後の最初の闘いは、みごと圧倒的な勝利で飾ることとなった。

スーパーシンジくんの伝説の幕開けである。








ちょ、ちょっと待ってよっ。
こんなの幕開けないでよっ!!!

もうやだよっ!
誰か、ぼくにやさしくしてよっ!

もっとも、一発ネタのストーリーなので、ここでこの物語はおしまいである。

ほっ。
よかった。

アスカ(ちょっと待ちなさいよっ! アタシの来日はどーなるのよっ!
        せーかくドイツのアタシの為に、お膳立てしたのにぃっ!)

レイ(せめて、ラミエル戦の私の笑顔までやってほしいわ。)

もういいよっ!
おしまいにしてくれていいよっ!
お願いだよっ!!!

続編の予定がないので、これにておしまい。さようなら。

アスカ(ちょっと待ちなさいっ! アンタっ! バカ作者っ!!!)

レイ(逃げるのね・・・。)

助かった・・・。
ほっ。

fin.
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